2016年03月12日
命売ります 三島由紀夫
書店をふらふら歩いているときに、ドンと目に飛び込んできた「命売ります」という刺激的なタイトルに、作者名「三島由紀夫」というインパクト。
そして手書き風の帯の言葉が秀逸でした。
”もっとはやく教えてほしかった・・・・・・
隠れた怪作小説発見!
想像よりも数十倍オモシロイ”
三島由紀夫は名前は勿論知っているけれども、なんだか敷居が高いような気がして実はほとんど読んだことがありません。
でもこの本はそんなに堅苦しくなさそうな雰囲気で、何よりも「命売ります」というフレーズに興味をそそられる!
ということで買ってしまいました。
どんな本だった?
これはオモシロイ!
なんだか型破りというか、神秘的でミステリアスなストーリーに、癖のある登場人物。。。どれもが魅力的で、一気に不可思議な世界に引きずり込まれます。
それにこの表現力!
三島由紀夫という人は天才なんだなあと脱帽してしまいます。
例えば、割と序盤に出てくるフレーズですが、
”落ちた新聞の上で、ゴキブリがじっとしている。そして彼が手をのばすと同時に、そのつやつやしたマホガニー色の虫が、すごい勢いで逃げ出して、新聞の、活字の間に紛れ込んでしまったのだ。”
ありえない光景です。
しかし、この小説中で読んだ時、私にとっては不思議とごく普通の景色のように自然と受け止められて、その様がありありと映像化されて、息づかいさえ聞こえてくるかのような錯覚をもたらしました。
どうしたらこんな文章が生み出せるのだろう。
そして全編がもうずっとこのような飄々とした、しかし不可思議な、ありえない、何とも奇妙珍妙な文章で綴られていくのです。
でも、それでいて、ストーリーやテーマをしっかりと感じる事ができます。これだけ意味不明な主人公、登場人物、世界観で構成しておきながら、最終的にはするするとそれらの要素が繋がりを見せ始めていくところは圧巻です。
テーマはやはり「命」ということかな、と感じました。
いや、もう一つ踏み込むと、「命についての”思考”がもたらす事象の変化」を、ちょっと変わったテイストで描いてみせたという言い方に変わるでしょう。
ストーリーの序盤から中盤にかけては「命なんてどうでもいい」と心の底から考えていた主人公は、怖いものなんて何もないという豪胆なふるまいを見せて妙に魅力的な輝きを放ち、様々な活躍を見せます。
一方、「命を大事にしたい」という思考が生まれた途端、目に見えない危険に怯えるただの人間に姿に成り下がってしまいます。
これがこの作品の中で見せたかった「命」の一つの形なのだと感じました。
ちょっと仏教的です。
執着が恐れを生み出すのだという考えは、まさに仏の教えそのものですから。
心を解き放て・・・そうすれば安息が訪れますよ、という話なのでしょうか。
イヤイヤ。
違います。
それにしては、この小説は毒々しすぎます。やたらとくどい言い回しや、胡散臭い登場人物たち、どこか間の抜けた敵対者たち・・・。
そこに私は、「命というものに対して普通の人間が抱く考え方」を風刺したかのような、あるいはそれは得体のしれないものなんだぜと言っているような、そんな著者の意図が潜んでいる印象を受けました。
読んで単純に面白い、しかしただ面白いだけでは済ましてくれない、気が付けば心の中に楔を知らず打ち込んでくるような、そんな本でした。
レビューがちょっと支離滅裂な感じになってしまいましたが、この本に対しては、こういうレビューになるのもしょうが無い・・・
まだまだ、文章力、読解力が足りない!ということを痛感させられました。
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