2023年05月18日
人情小説の傑作 「小説浅草案内」 半村良
何度読み返しても、著者の
名人芸に唸る。
半村良が終の棲家で選んだ
浅草を舞台に、実際に体験
したであろう、人との繋がり、
エピソードなどを虚実混ぜながら
粋な日本料理を食べたときの
ような味わいをもたらせてくれる逸品。
とにかく文章がいい。
あちらこちらに名文あり。
少し長くなるけど、ひきます。
’
だいたい浅草というものは少し歩きにくい町田。
参詣人や観光客が集まってくるのだから、みんな
気をゆるめて歩き方も遅くなる。
左右に並んだ商店を丹念にのぞき込み、
まっすぐには歩かない。
でも土地の人たちは、そういう人々のおかげで
繁昌しているのだという意識をしっかり持っていて、
いくら心急いでも決して人の肩に触れるような
歩き方はしないのだ。
’
下駄をはくたび死んだおふくろや親類の顔を
思い出すのは、足の裏から子供の自分がよみがえ
ってくるせいだろう。
下駄をはいて浅草をうろつく私は、ひと足ごとに
過去を踏んづけて歩いているわけだ。
’
浅草に吹く風と、私の揺れかたがよく合っている。
この町の人たちの気のきかせかたが、私のと
まるで同じなのだ。
押しつけがましく相手をいたわることをしない。
遠慮していることさえ相手に気づかせまいとする。
’
しかし、それでもここは徹底した庶民の町なのだ。
私の中には、この年になってもまだ、依然として、
金持ちぶる奴を毛嫌いする精神が残っている。
いい格好をしたがる奴をさげすむ心がある。
それは戦前の下町の、基本的なものだった。
晴れ着を着せられたときの恥ずかしさ、スカして
いる奴という最悪の軽蔑の言葉。
’
……もうキリがないのでこの辺で止めますが、
素敵なおっさん、おじさん、大人たちに会いたく
なったら、半村良の人情小説を開くといいですよ。
名人芸に唸る。
半村良が終の棲家で選んだ
浅草を舞台に、実際に体験
したであろう、人との繋がり、
エピソードなどを虚実混ぜながら
粋な日本料理を食べたときの
ような味わいをもたらせてくれる逸品。
とにかく文章がいい。
あちらこちらに名文あり。
少し長くなるけど、ひきます。
’
だいたい浅草というものは少し歩きにくい町田。
参詣人や観光客が集まってくるのだから、みんな
気をゆるめて歩き方も遅くなる。
左右に並んだ商店を丹念にのぞき込み、
まっすぐには歩かない。
でも土地の人たちは、そういう人々のおかげで
繁昌しているのだという意識をしっかり持っていて、
いくら心急いでも決して人の肩に触れるような
歩き方はしないのだ。
’
下駄をはくたび死んだおふくろや親類の顔を
思い出すのは、足の裏から子供の自分がよみがえ
ってくるせいだろう。
下駄をはいて浅草をうろつく私は、ひと足ごとに
過去を踏んづけて歩いているわけだ。
’
浅草に吹く風と、私の揺れかたがよく合っている。
この町の人たちの気のきかせかたが、私のと
まるで同じなのだ。
押しつけがましく相手をいたわることをしない。
遠慮していることさえ相手に気づかせまいとする。
’
しかし、それでもここは徹底した庶民の町なのだ。
私の中には、この年になってもまだ、依然として、
金持ちぶる奴を毛嫌いする精神が残っている。
いい格好をしたがる奴をさげすむ心がある。
それは戦前の下町の、基本的なものだった。
晴れ着を着せられたときの恥ずかしさ、スカして
いる奴という最悪の軽蔑の言葉。
’
……もうキリがないのでこの辺で止めますが、
素敵なおっさん、おじさん、大人たちに会いたく
なったら、半村良の人情小説を開くといいですよ。
価格:858円 |
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/11990544
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック