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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年05月17日

ねじれた恋愛小説じゃないと 面白くない。「邪恋」 藤田宜永

主人公は、「私は異様なほど女に

惹かれているくせに、やはり、心底、

女という生き物を信じることができない、

いや、もっと正確に言えば、女を信じるのが

怖いらしい」と思ってる、40代後半の

義肢装具士。

親友の妹とも付き合ってる、まぁ、嫌な男だ。 

この男が新しく惹かれた女が、下肢を失った

裕福な人妻。

なんかすでに不穏な空気が流れる設定でしょ(笑)。



僕はこの男とは全く対岸にいる、もてないおじさん

だけど、捻じれてるところだけは似てる。

印象に残ったのは、女性に関する筆記。

さすが、浮名を散々流した作家、文章に

元手がかかってます。



「好きな男ができると、女はいかようにも身を

変えることができるものだ。といっても、女に

主体性がないというのではない。そのとき、女は

本気で変わることができる。アクロバットの芸人の

四肢のような、柔らかい精神構造を持っているのである」



「女という生き物は、事あるごとに”分からない”と言う。

誤魔化そうとして、そう言うのではなく、本当にわからなく

なってしまうらしい。若い頃は、そんな物言いが不誠実に

見えて腹が立ったものである。しかし、いつかしら、

怒りは覚えなくなり、平静な気持ちで聞くことが

出来るようになった」



もちろん女性全般をこうやって一言で表現するのは

「いまどき」と思わないでもないが、でも書けと

言われたら、なかなか書けるものじゃない。

共感するところも多くある。



なかでもこの文章。

「自分のことはさておき、私はいい関係の夫婦を

見るのが好きである。ときめきや情熱とは無縁かも

しれないが、平木夫妻には深い絆が感じられる。



子どもたちの健やかな成長を願い、小さな借金で

頭を痛め、町内に馴染まない余所者の悪口を言い、

時には些細なことで住民運動に参加し、内心腹を

立てていても両親には逆らわず、勧誘者が遠縁

だからという理由だけで、必要もない保険に

入ったりしながら年老いていく。



そして人生の終焉を迎えると、何もかもが懐かしく

涙腺を緩ませてしまうような一生。

ただ日常に流されているだけではないか、と批判

しようと思えばいくらでもできる暮らしだが、

生まれ変われることがあったら、私はそんな暮らしが

してみたいと、本気で思ってる」



読みようによっては、平凡な人生を上から目線で

バカにしているようにも見えるが、

この主人公は、そして作家は本気で書いてると

僕は思った。



暖かいホームドラマを観たら感激するくせに、

家族団らんは苦手という、僕と同じ人がいたら、

この小説をおすすめします(笑)。




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