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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年05月16日

人生は短い。だから、とことん…。 「愛して生きて 宇野千代伝」  工藤美代子

恋多き人とは聞いてはいたが、

いやー、ここまでとは。

しかもお相手は、尾崎士郎、梶井基次郎、

東郷青児、北原武夫と才にあふれ

一癖も二癖もある芸術家ばかり。

まだ無名だった彼らを、当時流行作家の

千代は、惜しげもなくお金を費やし

尽くす。

とはいえ、彼女もつわもの。



なにしろ、

「初めて千代に出合った男の多くは、魅入られた

ようにその面を凝視する」ほどの美人だし、

千代も、好きな男に出合ったら、

「どこかから滾々と自分の体内で湧き上がって

くる強い疼きが、全身を駆け巡る」のだ。



だから火がついたら、止まらない。

千代曰く、

「だって、寝てみなければ、何もわからないじゃない。

(中略)何かが刺激されたら、寝てみたいと思う。これは

恋なのだと確信する」のだ。



とうぜん、二股、三股もなんのその。

「床に倒れた千代は、尾崎の嫉妬にも梶井の

情念にも、どちらにも怒りを感じることが

できないでいた。

愛しいのは尾崎だし、好きなのは梶井なのだ。

ただ、それだけの話」だから。



なぜそうなるのか。それは、

「あたしの身体の中には、いつも二人の女が住んでいる。

優しい気持ちで、ひたすら男に尽くす女と、

その男の愛情も尊厳も平気で踏みにじる残忍な女と、

きっと二人の女がいるに違いない」からだ。



一方でこうも思う。

「恋の出逢いは最初の一瞥だ。言葉ではない。

頭のてっぺんから足の先まで、何かがとおり抜ける。

つまりは身体が相手の男を許容し、すべての細胞の

緊張が解き放たれる。

そのとき女は抱かれたいと思う」



この情熱は年をとっても変わらない。

「最後の男は誰だったのですか、と聞かれたときは

微笑むだけだ。

寝た男なら、七十八歳のときの相手が最後よと、

胸の中で答える。

五十八歳の大学教授の男が、那須の別荘に

遊びに来て泊まったとき、あたしたちは

抱き合って眠った」



九十歳を過ぎて千代は色紙に記す。

「この頃、思うんですけど、何だか私、死なないような、

気がするんです。ははははは」



享年九十八歳。

まさしく、「愛して生きた」人生だった。

いやー、あっぱれ。



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