2014年11月19日
進む低所得化 円安が10円進むごとに中小企業は1兆3000億円の減益
進む低所得化 円安が10円進むごとに中小企業は1兆3000億円の減益
円安が10円進むごとに中小企業は1兆3000億円の減益〜衝撃のGDPは、過度な円安誘導政策の結果
本連載の8月27日のコラム「アベノミクスで、地方は貧しくなっている」では、
野村証券、大和証券、SMBC日興証券が公表した7〜9月期の実質成長率の見通しが
4%台〜5%台であるのは全く理解できない、という趣旨について説明し、
「私の考えがおかしいのでしょうか。それとも、大手3社のエコノミストの考えがおかしいのでしょうか」と、素朴な疑問を投げかけたつもりです。
11月17日、内閣府が公表した7〜9月期のGDP速報値では、年率換算の実質成長率が
マイナス1.6%となりましたが、当然と言えば当然の結果でしょう。アベノミクスには、とくに日銀の大規模な量的緩和には、
富裕層と大企業を中心に考えた効果しか見込めないのは、最初からわかっていたからです。
民間シンクタンク12社の当初の予想成長率は平均して4%強であり、各社は速報値の発表1週間前に仕入れた新しい
資料やデータを用いて予想成長率を平均して2%程度に下方修正しましたが、それでもマイナスを予想したシンクタンクは1社もありませんでした。
もっとも私にいたっても、3月あたりからずっと「7〜9月期のGDPはゼロ成長あたり(-1パーセント〜+1パーセントのレンジ)だろう」
と言ってきましたので、細かい数字の予想は本当に難しいと実感している次第です。
それはさておき、私が安倍政権誕生以降、ずっと言い続けてきたのは、日銀の過剰な量的緩和がもたらす副作用が
国民生活を疲弊させるということです。国民生活の疲弊とは、具体的には、大半の国民の実質賃金が下がるということ、
富裕層と一般層、大企業と中小企業の格差が拡大するということなどを指しています。これは、アメリカの直近の歴史を振り返れば、簡単にわかったはずのことです。
まさにアメリカのQE1(量的緩和第1弾)〜QE3(同第3弾)がもたらしたのは、企業と富裕層が莫大な利益を受ける傍らで、
通貨安により庶民がガソリン代や電気代、食糧費といった生活コストの上昇に苦しみ、格差の拡大をいっそう推し進めてしまったことです。
さらに、主要な大都市圏では景気回復が進む一方で、地方や貧しい地域ではとても回復しているとはいえない状況にあります。
「過剰な金融緩和+株主資本主義」の帰結と
2013年の時点で、物価を考慮した実質の最低賃金は1970年代の水準を下回っているというのに、主要企業の業績は最高水準となり、
企業トップと従業員の所得格差は1990年代半ばの120倍から270倍へと急拡大しています。「リーマンショック後の景気回復過程
での所得増の9割は、上位1%の富裕層が得ている」という試算もあるくらいなのです。
カリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ教授によると、
「金融危機以降、上位1%層の所得は31%増えたが、残る99%の所得の伸びは0.4%にとどまった」といいます。
毎年の物価上昇率を考慮すると、残り99%は実質賃金がマイナス10%になってしまうほどなのです。
過剰な金融緩和と株主資本主義が結び付くと、このように恐ろしい社会が到来することになります。
イエレンFRB議長は直近の講演で、「上位5%の富裕層に富の6割以上が集中している」と警鐘を鳴らしていますが、
私はこの点だけでもウォール街寄りだったバーナンキ前議長より評価しています。今後の彼女の金融政策の行方に期待したいところです。
翻って日本では、過剰な金融緩和策が中小企業や庶民の生活を苦しめています。円安の進行は輸入価格を押し上げますが、
中小企業の多くはこのコストを販売価格に転嫁することができていません。
その結果として、利益が減少し、賃上げの原資が枯渇するばかりか、経営が苦しくなっているのです。
中小企業の多くでは労働者は名目賃金さえも上がっていないのに、電気代やガソリン代、食糧費などが上がっていけば、
庶民の生活は苦しくなるのが避けられないのは当然でしょう。
先進国も新興国も例外なく、どの国においても、中小企業が雇用の中核を担っています。
日本でも雇用のおよそ7割を中小企業が占めているので、中小企業が豊かになる政策を考えなければならないのです。
みずほ銀行産業調査部の推計では、円安が10円進むごとに、上場企業は2兆円の増益になるが、
中小企業は1兆3000億円の減益になるということです。安倍政権発足後、30円の円安が進んだところで、
日銀の追加緩和によりさらに円安が進んでいるので、大企業と中小企業の格差はいっそう拡大することになるでしょう。
ただでさえ現状では、円安を受けたコスト上昇による倒産が増えてきています。とりわけ、今年の8月から円安が急激に進行したために、
原材料高に耐えきれなくなり、円高倒産する中小企業が増えているのです。
ここで注意すべきは、決して中小企業の倒産件数だけで、事の深刻さを判断してはいけないということです。
倒産件数よりも廃業件数のほうが、件数自体も多いし、増加基調に拍車がかかっていると考えられるからです。
双方の件数を合計して、初めて中小企業の実状が把握できるのです。
日本の経済構造の変化に合わせて、「行き過ぎた円高」または「行き過ぎた円安」の水準は変わってくるはずです。
政権や日銀はそのことをしっかり考慮に入れて、経済政策や金融政策を決めていかなければならない。
安倍政権が選挙に勝っても、日本は疲弊する衝撃のGDPは、過度な円安誘導政策の結果。
進むワーキングプア及び低所得化。
更にそれが進めば結婚育児も厳しくなり人口激減。
それからの国力衰退と・・・。さてさてどうなるんだか。
円安が10円進むごとに中小企業は1兆3000億円の減益〜衝撃のGDPは、過度な円安誘導政策の結果
本連載の8月27日のコラム「アベノミクスで、地方は貧しくなっている」では、
野村証券、大和証券、SMBC日興証券が公表した7〜9月期の実質成長率の見通しが
4%台〜5%台であるのは全く理解できない、という趣旨について説明し、
「私の考えがおかしいのでしょうか。それとも、大手3社のエコノミストの考えがおかしいのでしょうか」と、素朴な疑問を投げかけたつもりです。
11月17日、内閣府が公表した7〜9月期のGDP速報値では、年率換算の実質成長率が
マイナス1.6%となりましたが、当然と言えば当然の結果でしょう。アベノミクスには、とくに日銀の大規模な量的緩和には、
富裕層と大企業を中心に考えた効果しか見込めないのは、最初からわかっていたからです。
民間シンクタンク12社の当初の予想成長率は平均して4%強であり、各社は速報値の発表1週間前に仕入れた新しい
資料やデータを用いて予想成長率を平均して2%程度に下方修正しましたが、それでもマイナスを予想したシンクタンクは1社もありませんでした。
もっとも私にいたっても、3月あたりからずっと「7〜9月期のGDPはゼロ成長あたり(-1パーセント〜+1パーセントのレンジ)だろう」
と言ってきましたので、細かい数字の予想は本当に難しいと実感している次第です。
それはさておき、私が安倍政権誕生以降、ずっと言い続けてきたのは、日銀の過剰な量的緩和がもたらす副作用が
国民生活を疲弊させるということです。国民生活の疲弊とは、具体的には、大半の国民の実質賃金が下がるということ、
富裕層と一般層、大企業と中小企業の格差が拡大するということなどを指しています。これは、アメリカの直近の歴史を振り返れば、簡単にわかったはずのことです。
まさにアメリカのQE1(量的緩和第1弾)〜QE3(同第3弾)がもたらしたのは、企業と富裕層が莫大な利益を受ける傍らで、
通貨安により庶民がガソリン代や電気代、食糧費といった生活コストの上昇に苦しみ、格差の拡大をいっそう推し進めてしまったことです。
さらに、主要な大都市圏では景気回復が進む一方で、地方や貧しい地域ではとても回復しているとはいえない状況にあります。
「過剰な金融緩和+株主資本主義」の帰結と
2013年の時点で、物価を考慮した実質の最低賃金は1970年代の水準を下回っているというのに、主要企業の業績は最高水準となり、
企業トップと従業員の所得格差は1990年代半ばの120倍から270倍へと急拡大しています。「リーマンショック後の景気回復過程
での所得増の9割は、上位1%の富裕層が得ている」という試算もあるくらいなのです。
カリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ教授によると、
「金融危機以降、上位1%層の所得は31%増えたが、残る99%の所得の伸びは0.4%にとどまった」といいます。
毎年の物価上昇率を考慮すると、残り99%は実質賃金がマイナス10%になってしまうほどなのです。
過剰な金融緩和と株主資本主義が結び付くと、このように恐ろしい社会が到来することになります。
イエレンFRB議長は直近の講演で、「上位5%の富裕層に富の6割以上が集中している」と警鐘を鳴らしていますが、
私はこの点だけでもウォール街寄りだったバーナンキ前議長より評価しています。今後の彼女の金融政策の行方に期待したいところです。
翻って日本では、過剰な金融緩和策が中小企業や庶民の生活を苦しめています。円安の進行は輸入価格を押し上げますが、
中小企業の多くはこのコストを販売価格に転嫁することができていません。
その結果として、利益が減少し、賃上げの原資が枯渇するばかりか、経営が苦しくなっているのです。
中小企業の多くでは労働者は名目賃金さえも上がっていないのに、電気代やガソリン代、食糧費などが上がっていけば、
庶民の生活は苦しくなるのが避けられないのは当然でしょう。
先進国も新興国も例外なく、どの国においても、中小企業が雇用の中核を担っています。
日本でも雇用のおよそ7割を中小企業が占めているので、中小企業が豊かになる政策を考えなければならないのです。
みずほ銀行産業調査部の推計では、円安が10円進むごとに、上場企業は2兆円の増益になるが、
中小企業は1兆3000億円の減益になるということです。安倍政権発足後、30円の円安が進んだところで、
日銀の追加緩和によりさらに円安が進んでいるので、大企業と中小企業の格差はいっそう拡大することになるでしょう。
ただでさえ現状では、円安を受けたコスト上昇による倒産が増えてきています。とりわけ、今年の8月から円安が急激に進行したために、
原材料高に耐えきれなくなり、円高倒産する中小企業が増えているのです。
ここで注意すべきは、決して中小企業の倒産件数だけで、事の深刻さを判断してはいけないということです。
倒産件数よりも廃業件数のほうが、件数自体も多いし、増加基調に拍車がかかっていると考えられるからです。
双方の件数を合計して、初めて中小企業の実状が把握できるのです。
日本の経済構造の変化に合わせて、「行き過ぎた円高」または「行き過ぎた円安」の水準は変わってくるはずです。
政権や日銀はそのことをしっかり考慮に入れて、経済政策や金融政策を決めていかなければならない。
安倍政権が選挙に勝っても、日本は疲弊する衝撃のGDPは、過度な円安誘導政策の結果。
進むワーキングプア及び低所得化。
更にそれが進めば結婚育児も厳しくなり人口激減。
それからの国力衰退と・・・。さてさてどうなるんだか。
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
posted by hilde at 19:28| メディアが報道しない日本の真実