2013年04月01日
一からわかるキプロス問題─なぜ地中海の小国がユーロ危機を招くのか - WSJ.com
騒ぎの発端は、ユーロ圏がキプロスへの支援規模を100億ユーロ(約1兆2300億円)に圧縮するため、キプロスの銀行預金者から58億ユーロを捻出するよう求めたことだった。
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Reuters
この銀行預金課税の58億ユーロは、ユーロ圏全体の国内総生産(GDP)の約0.06%にすぎない。キプロスの銀行の総資産は1月現在で1264億ユーロにとどまり、ドイツ第11位のデカバンク・ドイツ・ジロツェントラーレよりも小さい。
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Emotions ran high as Cypriot bank workers gathered outside of Parliament in Nicosia on Thursday, fearful for their jobs and savings. WSJ's Matina Stevis reports via #WorldStream.
問題の規模と、選択された「解決策」のリスクの間には、大きなミスマッチがある。どうしてこうなったのか。
為政者の一部の間にはキプロスの問題はユーロ圏の金融システムを揺るがすシステミック・リスク(市場全体に及ぶドミノ倒しリスク)ではないとの確信があった。
それは、キプロス危機が発生した時に金融市場が平静だったことが示すように、ある程度は正しい。キプロスの銀行が破たんし、人口80万人の経済が崩壊したとしても、あまりに規模が小さく、その他の欧州諸国には直接的な影響は与えない。
確かに銀行預金者のポケットに手を突っ込むというタブーを犯したことで、スペインやイタリアの預金者が動揺してもおかしくはない。しかし、これまでのところ、いずれの国も落ち着いている。
キプロスがシステミック・リスクを引き起こさないと予想されているのは、同国がユーロ圏にとどまると想定されているからだ。同国がユーロ圏を離脱すれば、すべてがだめになる。欧州中央銀行(ECB)がキプロスの銀行に供給している流動性を打ち切れば、ユーロ圏離脱は現実に起こり得る話になる。ECBは、キプロス議会が預金課税案を否決すれば、資金引き揚げに踏み切ると警告している。
ゼネラル・エレクトリック(GE)の主席エコノミストであるマルコ・アヌンツィアータ氏は「キプロスが無視すれば、ECBは警告を実施に移すだろう」と指摘、「その結果、キプロスは本格的な金融危機に見舞われ、ユーロ圏を離脱せざるを得なくなろう」と予想する。
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ユーロ圏で救済を受けている国々。救済資金の額の大きさは、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、スペイン、キプロスの順になっている
そうなれば、ユーロ圏は未踏の領域に入る。ユーロ圏は不可逆的な通貨同盟であるにもかかわらず、便宜上の偽装結婚になってしまうからだ。1つの国が離脱できるのであれば、他の国も離脱できることになる。アヌンツィアータ氏は「欧州の政策立案者は一定の環境下でユーロ圏からの離脱を容認することを、マーケットは考慮にいれなければならなくなる」と話した。
キプロスが離脱すれば、ECBは残りの16カ国を囲い込む劇的な防衛措置を講じることだろう。いずれにしても、ECBもユーロ圏も未知の世界に飛び込むことになるだろう。
ユーロ圏財務相たちは16日の会合で、キプロスへの預金課税の決定が、そのようなロシアンルーレットに似た危険な賭けになると覚悟していた節はない。
ドイツなどは、国内の有権者や議会を説得しやくするため、自国の負担を軽くすることが主眼だった。また、ゲームのルールを厳しくして規律をもたせることも重要だった。キプロスに低利の融資を供与するという安易な策を施せば、他のユーロ諸国も政策の失敗の責任を負わなくても済むというシグナルを送ることになる。その結果、すべてのユーロ圏諸国が将来、システミック・リスクを抱えるようになる。
キプロス人は、実際にどんなルールを自分たちが破ってしまったのか戸惑っているかもしれない。キプロス政府は債務を低く抑え、同国の銀行は経済規模に比べれば確かに大きすぎるかもしれないが、気まぐれな金融市場に依存せずに、安定した預金に恵まれてきた。
キプロスがユーロ圏にとどまったとしても、離脱したとしても、キプロスの国民にとってはめでたい話にはならないだろう。いずれにしても、金融機関の危機と深刻な経済縮小は避けられそうもないからだ。
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それは、キプロス危機が発生した時に金融市場が平静だったことが示すように、ある程度は正しい。キプロスの銀行が破たんし、人口80万人の経済が崩壊したとしても、あまりに規模が小さく、その他の欧州諸国には直接的な影響は与えない。
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ゼネラル・エレクトリック(GE)の主席エコノミストであるマルコ・アヌンツィアータ氏は「キプロスが無視すれば、ECBは警告を実施に移すだろう」と指摘、「その結果、キプロスは本格的な金融危機に見舞われ、ユーロ圏を離脱せざるを得なくなろう」と予想する。
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そうなれば、ユーロ圏は未踏の領域に入る。ユーロ圏は不可逆的な通貨同盟であるにもかかわらず、便宜上の偽装結婚になってしまうからだ。1つの国が離脱できるのであれば、他の国も離脱できることになる。アヌンツィアータ氏は「欧州の政策立案者は一定の環境下でユーロ圏からの離脱を容認することを、マーケットは考慮にいれなければならなくなる」と話した。
キプロスが離脱すれば、ECBは残りの16カ国を囲い込む劇的な防衛措置を講じることだろう。いずれにしても、ECBもユーロ圏も未知の世界に飛び込むことになるだろう。
ユーロ圏財務相たちは16日の会合で、キプロスへの預金課税の決定が、そのようなロシアンルーレットに似た危険な賭けになると覚悟していた節はない。
ドイツなどは、国内の有権者や議会を説得しやくするため、自国の負担を軽くすることが主眼だった。また、ゲームのルールを厳しくして規律をもたせることも重要だった。キプロスに低利の融資を供与するという安易な策を施せば、他のユーロ諸国も政策の失敗の責任を負わなくても済むというシグナルを送ることになる。その結果、すべてのユーロ圏諸国が将来、システミック・リスクを抱えるようになる。
キプロス人は、実際にどんなルールを自分たちが破ってしまったのか戸惑っているかもしれない。キプロス政府は債務を低く抑え、同国の銀行は経済規模に比べれば確かに大きすぎるかもしれないが、気まぐれな金融市場に依存せずに、安定した預金に恵まれてきた。
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posted by hilde at 14:57| メディアが報道しない日本の真実