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2014年10月03日

鶏頭・けいとう

ケイトウ
事務局の畑の片隅で、真っ赤に咲いている鶏頭を見つけた、と写真が届きました。

鶏頭は、ヒユ科、ケイトウ属の一年生草。熱帯アジアの原産で、日本には中国を経て万葉時代にはすでに渡来しています。

「鶏冠花」(けいかんか)、「韓藍」(からあい)という別名があります。

学名はCelosia cristata です。 Celosia : 燃えるような(赤い)様子をした(ケイトウ)属の 、cristata : 鶏冠(とさか)状の種類、ということらしいですね。写真を見ますと「なるほど」と思わせる学名です。朱い鶏冠状に広がるのは細かい花の集合体です。
ケイトウ

では、万葉集から短歌を二首上げておきます。

山部赤人(『万葉集』3・384)
わが屋戸(やど)に韓藍蒔き生(おほ)し枯れぬれど懲りずてまたも蒔かむとそ思ふ  

歌意:わが家に韓藍(からあい)、すなわちケイトウを蒔いたが、枯れてしまった。しかしそれにこりずに、また種をまこう。

赤人がこう詠んだ裏には、韓藍を美女になぞらえ、〈苦労して育てた恋も結局実らずに終つてしまつたが、懲りずにまた別の美女にアプローチしよう〉といった真意があつたのだらう、と賀茂真淵をはじめ梅原猛など多くの論者がこの歌を比喩の歌としています。

作者不詳(『万葉集』7・1362)
秋さらば写(うつし)もせむとわが蒔(ま)きし韓藍(からあい)の花を誰(たれ)か採(つ)みけむ

歌意:秋になったら染めようと、私が蒔いた韓藍の花を誰がいったい摘んでしまったのだろう。

この歌は、万葉集で花に寄せた恋の譬喩歌として分類されています。真っ赤な韓藍の花を女性に見立て、〈あの娘は、いったい誰のものになってしまったのだろう〉という意味が言外にあります。

艶麗な花であるケイトウは女性の比喩。万葉人の姿が広がって来るようですね。(参考:『広辞苑』『季節の花300』
『万葉集』『赤人の諦観』『植物語源辞典』ほか)


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