2019年07月04日
融合篇〈いばら姫〉一章
一節
「――はい。それでは次の曲を……。」
え?ニュース?これを読むんですか?
えーと……えー……?」
「速報です。現在、都内各地の
病院で原因不明の
突然死が発生しています。
感染症の疑いもありますので、
緊急の用が無い方は病院に行くのを
控えてください」
「――との事なんですが……
本当に……?
リスナーの皆さんも、
気を付けてください。
爆発騒ぎといい、
物騒な事が続きますね……」
○月×日。
数年間担当していた少女が亡くなった。
最後まで原因を究明できないままだった。
それが悔やまれる。
Normal
- 【 いばら姫 】私、寝ていたはず……だよね……?
- 【 いばら姫 】ううん、違う。寝たんじゃなくて──
- 【 いばら姫 】確か私は、もう……
Hard
二節
そう。私は確かに目を閉じた。
病院のベッドの上で。
パパとママの優しい声を聴きながら。
……最後のお別れを聴きながら。
三節
それなら、今のこの状況は夢の続き?
それともここは……死後の世界……?
四節
そうなのかな。
そうなのかも。
だって怖いバケモノがたくさんいる。
私は地獄へ来てしまったのかもしれない。
五節
私はパパとママをたくさん悲しませたから。
生きて一緒にいることより、
自分の眠りを優先した悪い子だから……
六節
おはようございます。
シャッキリモーニングです。
まずは心配なニュースから。
昨夜発生した新宿での爆発事故ですが――
七節
「厚生病院、総合病院も満床です!」
「くそっ、他の爆発事故の患者か!」
「それもありますが、電車の脱線事故。」
「何とか受け入れ先を探すんだ!」
八節
「救急車から受け入れ要請です」
「もう無理!今は院内感染も疑われている
のに!別を当たってもらって!」
「先生!また突然死の患者が!」
九節
爆発、脱線、突然死……
色々な声が聴こえてくる。
周りから死の臭いが漂ってくる。
ああ、ここはやっぱり地獄なのかも。
十節:前半
次々と起きる災厄に混乱する街中を、
少女は彷徨っていた。
その様子に、
すれ違った人々が目を見張る。
少女が病衣のままだから?
――いや、それよりも。
少女が裸足のままだから?
――それよりも、しっと。
少女は眠ったまま。
足を僅かに地上から浮かせて。
宙を滑るように、
眠りながら
移動していたからだ。
○月×日。
都内の騒ぎで救急センターに駆り出される。
あの子の死を悼む暇もない!」
ご両親と話して解剖の許可を取りたいのに。
Normal
- 【 いばら姫 】待って。
- 【 いばら姫 】まさかこれって……現実……なの?
- 【 いばら姫 】え?私、どうなってるの?
Hard
- 【 いばら姫 】
十節:後半
「お疲れ様。今日は2交代制?」
「うん、人手が足りないし。
患者さんも不安に陥っているから……」
「そういえば聞いた?突然死の続報」
「ううん、まだ。何か判ったの?」
「そういう訳じゃないんだけど、
最初に発生した病院あるじゃない?
そこに友達がいるんだけどさ……
奇妙な事が起きたんだって」
「へえ、どんなの?」
「原因不明の眠り病で、
数年間入院していた女の子が
いたんだけど、とうとう衰弱死
したらしいのね。そうしたら――」
「体ごと消えたんだって」
○月×日。
不思議な事が起きた。
霊安室から少女の遺体が消えていたのだ。
いったい、誰が……?
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