2019年01月04日
現実篇〈アリス〉四章
一節
最初は、別に好き
じゃなかった。
むしろ、口ばかりの調子が良すぎる
教師だと感じていた。
実際の所、教師は口ばかりの
安っぽい人間で、
愛嬌だけで上手く世の中を
渡っているような男だった。
だけれど、何故か
そんな男に惹かれていった。
自分でも理由はわからない。
それが恋だと気づくまでには
何ヶ月も時間がかかったから。
そして、それが罪だと知るまでには、
もっと時間が必要だった。
青臭い感性が成熟したら、
愛とか恋とかで苦しまなくなる。
まるで、死体が痛みを感じないように、
あとは腐っていくだけになって。
Normal
- 【 アリス 】今となってはよくわからない。
- 【 アリス 】私がどうすべきだったのか。
- 【 アリス 】私が誰を好きになるべきだったのか?
- 【 アリス 】でも、そんな事の選択権は……
- 【 アリス 】私には無かった。
Hard
- 【リアルゴースト】答エガ判ラナイカラ迷走スル。
- 【リアルゴースト】迷走スルカラ生キテイル。
- 【リアルゴースト】モシ人生ノ答エガスグサマ得ラレルノナラ、
- 【リアルゴースト】生キテイル意味ナド……何モナイ。
二節
正しく出会って、正しく恋をして、
正しく結婚して、正しく死ぬ。
そんな事に価値なんて見いだせなかった。
三節
誰かにとってはただの石でも、
誰かにとっては宝石になりえる。
私にとっての先生がそれ。
四節
一緒にお風呂にはいった時に、
先生が頭を洗ってくれた事がある。
あの時は楽しかった。
……嬉しかった。
五節
先生の写真をコッソリ携帯に保存している。
誰にも見えない場所に隠すように。
六節
お腹の中の子供は、とても大切な宝物。
そしてその子供は、とても苦しい重荷。
2つの感情が私の中で共存している。
七節
どうしてこうなってしまったのか。
どうして先生がお別れをいうのか。
理解出来ない。理解したくない。
吐き気がする。吐き気がするよ、先生。
八節
たまに心が壊れてしまいそうな時がある。
時間が経てば治るって皆は言うけど、
本当に治るんだろうか?
九節
好き。優しいところも、卑怯な所も、好き。
十節:前半
私に優しい男は、誰にでも優しい。
そんな事に気づくまでに
随分時間がかかってしまった。
気づいた時には遅かった。
もう好きになってしまった。
もう囚われてしまった。
自分の胎内に宿る小さな命の事を
考えると胸が痛む。
彼は卑怯で、
私は愚かで、
貴方は無実だ。
そうやって懺悔する権利すら、
失っている事に、
私は気づいていなかった。
この世界は卑怯だ。
正解が判る時は、いつも苦しんだ後だから。
私達に出来るのは、
この世界を憎むことだけだというのに。
Normal
- 【 アリス 】気づいた時には全部終わっていた。
- 【 アリス 】最初から終わっていたのかもしれない。
- 【 アリス 】だけど、私は後悔していない。
- 【 アリス 】謝ったりも、しない。
- 【 アリス 】そんな事を口にしたところで……
- 【 アリス 】私は赦されないから。
Hard
- 【リアルウィスプ】アア、歌ガ聴コエル。
- 【リアルウィスプ】彼女達ノ、命ノ歌ガ聴コエル。
- 【リアルウィスプ】私達ノ、死ノ歌ガ聴コエル。
- 【リアルウィスプ】ヨウヤク理解シタ。私達ハ踏ミ石ダ。
- 【リアルウィスプ】アノ世界ヲ救ウタメノ養分ダ。
- 【リアルウィスプ】呪イアレ。呪イアレ。コンナ世界ハ滅ビヨ。
十節:後半
ビルの屋上、
風に吹かれながら女子高生は想う。
自分が壊れている事は
自覚していた。
だけれど、どうしようもなかった。
「彼を好きだ」という感情が
奔流のように
体中を駆け巡っていた。
「ごめんね……
ありがとう……」
まだ生まれてきていない
お腹の中の子供に意味不明の
言葉を語りかけながら、
彼女はビルから飛び降りた。
心の暗い奥底に眠っていた勇気をふりしぼり
彼女は、一歩前に、足を、出した。
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