現実篇〈アリス〉一章: 【シノアリス】シナリオ

2019年01月04日

学生服を着た少女が立っている。
高層ビルの屋上の端。
落下防止の鉄柵を越えた
一番危ない場所。

眼下に広がるのは新宿の雑踏。
人の声や車の音が一体となり
ゴウゴウという塊のような
音となって街を包み込んでいる。
少女に気づく者は誰もいない。
誰もが自分の事に執着し。
誰らが他人の事に無関心だから。

誰かに呼ばれた気がして、
少女は目を閉じる。
そこに広がってるのは見たこともない
荒廃した街だった……

都会の片隅で、少女は知っていた。
自分を助ける者などいないという事を。
この世界は、絶望に満ちているという事を。

気づいたら私は、見知らぬ場所で
バケモノに襲われていた。
叫び声をあげても、聞いてくれる人はいない。

私は何故戦っているんだろう？
私は生きている意味があるんだろうか？
というか、私は……
本当に生きているんだろうか？

その場所にいる「敵」の正体はよくわから
なかった。虚ろな目からは、生きているか
どうかすらわからない。

「敵」は不思議なうめき声を上げた。
それはまるで、赤ん坊の鳴き声のような音。
私は思わず、耳をふさいだ。

これは夢なんだろうか。
これは妄想なんだろうか。
私は元の現実に戻りたいんだろうか？
それとも、この場所に居続けたいのか？

もしかしたら私はこの場所に逃げ込んだの
かもしれない。現実世界で私を取り巻く暗
い状沢よりも、この場所の方がはるかにマ
シだから。

ふと、現実世界の事を想うと憂鬱な気持ち
になる。貴方もそうでしょう？

この世界には失生がいない。
大事で大事で大嫌いな先生が。

妄想の中で戦っていた少女は、
不思議な気持ちに、
満たされていた。

化物達に襲撃され、
戦うしかないこの世界にいる事が
妙に居心地が良かったのだ。
現実世界の煩わしい人間関係が無い、
未来の事を考えなくてもいい
この場所は、少女にとっては
楽園のような場所だった。

そうだ。私は、もう、人間と
関わりたくないんだ。そう気づいた時に、
心のどこかに大きな穴が、
空いたような気がして、目眩に襲われる。
そして、妄想の中で、
少女は嘔吐した。

そこは現実世界ではなかった。
しかし少女には住み心地の良い場所に思えた。
だが心の奥底では判っていた。彼女がいずれ、
闇の中に引きずり込まれるという事を……

妄想から少女が目を開けると、
再び現実の街の
様子が見えてくる。
忙しそうに働いているサラリーマン。
無神経に鳴らされるクラクション。
冷たく反射するビルの窓ガラス。
自分の苦しみとは関係なく
回り続ける世界。

あの別れから、私にとってこの世界は
意味のない世界に
なってしまった。
「死のう」
呟いた小さな声を聞く者は、
誰一人としていなかった。

どこに逃げ込んでも同じ。
彼女は知っていた。
あの人がいないのなら同じ。
でも彼女は、気づかないフリをしていた。

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