以下ははげしくネタバレを含んだ記述になりますので、「ODDTAXI」のTV版と劇場版を未見の方は、読まない方が賢明です。念のためにご注意です。
「ODDTAXI in the woods」 2022年製作/128分 監督 木下麦 脚本 此元和津也 |
最初にお断りですが、この映画は、TVシリーズを全部見た方に向けて作られています。
いきなりこの映画を観ても、なんだかよくわからないし、もったいない。
基本的に「総集編」です。
「総集編」映画は、なかなか難しい代物で、上手く出来たためしがないのが通説です。
奇跡的に上手くいった作品もありますが、ぼんやりしていると名場面集になってしまう。
見せ方にいろいろ工夫が必要なのです。
ということで、この映画ですが、わりと頑張っています。
作品内のある事件に焦点を当てて、「探偵」が関係者から次々と話を聞きだす方式で全体を俯瞰させています。
TV版には「探偵」は登場しなかったので、誰が「探偵」なんだよって思ったら、知らない子でした。
うそです。じつは本編に少し出ていたのですが、完全に忘れていた人です。お前らかよ。
「探偵」の目的は、映画内でも明らかにされていませんが、いくつか考察はできます。
そして、この「探偵」の活躍のおかげで、劇場版のエンディングに辿り着いたのかと推察されます。
ということで、この映画の一番の見どころというか、唯一の「新ネタ」である「最終話のその後」です。
TV版は、1クールの作品として完全に仕上がっていますので、特に加えるものはないのです。完璧です。
この映画は、いわば「蛇足」です。最終話のラストの続きが気になる人への、余計なお節介です。
個人的にはOKです。ちょっと安心しました。
というのは、最初話のラストは、派手な騒動が落ち着いた数日後、主人公のタクシーに「殺人鬼」が乗り込むシーンで終わっているのです。
主人公が「殺人鬼」の正体に気付いているのかは不明なことと、「殺人鬼」は主人公を殺す目的で乗り込んだことが示されており、その結末が明かされないまま「おしまい」になっています。
気になるよね。劇場版を観に来た人の9割は、これを確かめるためだと思う。まんまとのせられてやったぜ。
さて、結論からいいますと、主人公は危機を回避します。
映画版でも派手な立ち回りはないのですが、二人が会話を交わした後、いよいよ、というところでカメラは引き絵になり、タクシーを上から俯瞰します。
おそらく主人公が背後からの攻撃に対応したのか、後席のドアが勢いよく開き、車体が大きく揺れます。
そこでシーンが変わって、ラストシーン、エンディングに流れてゆきます。
ラストは主人公と彼女のドライブデート、それからエンディングでいくつかの情報が示され、TV版で殺害されたかと思われた居酒屋のおかみさんが入院していること、主人公を襲った「殺人鬼」が逮捕されたこと、その逮捕に関係して、主人公が命を救った友人が協力しており、警察から表彰されたことなどが分かります。
じつは居酒屋のおかみさんが今回の「探偵」の依頼主と思われます。彼女を襲ったのも同じ「殺人鬼」だったことから、あらかじめ主人公にはいずれ「殺人鬼」がやってくることが知らされており、その対策が講じられていたようです。罠にかかったのは「殺人鬼」のほうだった、という見方が正しいと思います。
この「殺人鬼」を特定したり、おびきだしに成功したのは、この「劇場版」で活躍した「探偵」の報告が、予めおかみさんに届いていたからだと思います。おかみさんが「殺人鬼」に殺害されなかったのも、事前に情報をつかんでいて、最悪の事態を避けることが出来たのかなあと思います。
綺麗に終わった作品に、わざわざ付け足しをするのは無粋なマネとは思いますが、こういう2段オチも、まあアリかと思います。ハッピーエンドで終わってほしいと願うのは、そんなに悪いことでもないと思うのですよ。
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