娘が無事でいてくれる。
その安堵から、私は夢心地でぼーっと
惚けていた。
その間、私の頭に息子のことは出てこなかった。
そんな自分に、心底びっくりする。
この時、息子は高校3年生。
大学受験を控えていた。
受験に成功してほしかったので、私の生活は
息子中心で動いていた。
夫に怪我をさせられて、学校の授業に出れな
くなったらどうしよう。
利き手を怪我させられて、字が書けなくなった
らどうしよう。
息子がずっと勉強をがんばってきたのに、
夫に台無しにされたらどうしよう。
どうか受験まで、息子に無事に過ごしてほしい。
早く大学に合格して、一人暮らしを始めてほしい。
そうすればすべてがうまくいく。
それまでは、夫を怒らせないように。
刺激しないように。
娘が夫を怒らせたら、
「◎◎(息子)が家を出るまでは、お父さんを怒ら
せないようして。」
と言い続けていた。
息子のために、娘に我慢を強要していた。
この頃までは、娘より息子に対する暴力の方がひど
かったから。
息子に大怪我してほしくなかった。
息子が夫に大怪我させて、警察沙汰になってほしくなかった。
息子さえ家から出たら、家の中が穏やかになる。
夫と娘と私の3人なら、もっと穏やかに暮らせる。
誰も大怪我する事態にならないし、警察沙汰にもならない。
ただその一心。
娘からみたら、私は娘より息子の方が大事なんだと
思っていただろう。
でも娘が家から脱出してくれた。
無地に過ごしてくれている。
そのことがただただうれしかった。
そうしてふと我に返る。
家に残った、私と息子はどうなる?
家を出た娘は、当然だが2度と戻ってこない。
娘が家に帰ってこないことを、夫になんと言う?
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