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日本の南端、この黒島ではその昔、夜這いは日常の出来事で、公然と行われていた。
勿論、夜這いが成立するには、お互いがある程度、好意を持ち、受け入れられていたのである。
昭二は二十歳。隣村の十八歳、明子に、ほのかな想いを寄せていた。
夕陽が真っ赤に沈みかけた頃、隣村との間にある森へ、牛の草刈リに出かけた。
その森へ明子もまた、薪ひろいに来ていた。二人は森の中で、出会わしたのである。
明子の素振りも決して昭二が嫌いと言う訳ではなく、好意を持っているかに見えた。
明子は流行歌を口ずさみ、さも楽しそうに嬉しそうに薪拾いをしていた。
声をかければよかったのだが、昭二は寡黙で気が小さく、そのまま別れてしまったのである。
夜は村の中心にある大きなガジュマルの下で青年達は、さんさんごご集まって酒を酌み交わす。
昭二も先輩達といっしょに飲んでいたが、話題が夜這いの話で盛り上がっていた。
「おい! 中里村の明子はよ今一番いい、熟しているぞ、誰が夜這いをかけるんだ」
他の先輩が「中里村の秀雄がよあの子に気がある、近々間違いなく夜這いをかけるはずだぞ」
「お前ら甲斐性なしだな、この村から先に夜這いかける奴いないのか」
「久雄! お前度胸ないのか?」
久雄はやってもいいかな。と打診をし乗り気になっている。
親父の行動を注意しろ、力仕事で疲れ果てぐっすり寝込んだ夜をねらへ、この空になった二合ビンに水を入れ、戸走りをたっぷり濡らし音が出ないようにしろ、など久雄に夜這いの注意点をこと細かに伝授しているのである。
昭二は、決して明子はこいつらの夜這いを受け入れないだろうと期待しながらも、もしかして、と不安が次々に膨れ上がっていく。
先輩は、俺が夜這いをかけた時、布団からそっと足元に忍び寄ったが、相手は男だった。
その娘は弟と一緒に寝ていたのだ、その日は失敗に終わった。
そこで、運動会の夜、弟がぐっすり寝ている時に夜這いをかけたら、大成功。
あの娘はよかった、おいしかったぞ、と色々と自慢話をし煽り立てている。
夜這いの話、明子の話題で、その晩は持ちっ切りだった。
昭二は、寝ようとしたが、夜這いの話が頭にこびりつき、久雄の夜這いに屈する明子の顔で、悶々と寝られなかった。
夜中の三時、特に意識した訳ではないが、いつの間にか明子の家の近くをうろついていた。
周りはどの家も真っ暗闇で寝静まっている。
先輩の、早くしないと他の奴らに夜這いをされるぞ。その言葉が頭の中で、エコーとなって止まらない。
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