2010年06月26日
『闇の列車、光の旅』
〜この映画を通して、なぜ家族と離れ、命をかけて、国を捨てねばならないのか、ということを理解してほしい。
移民・難民それぞれの背景・実情を知ることによって、同情ではなく一人の人間として接してほしい。
― ファム・ディン・ソン(三島・熱海・沼津カトリック教会主任司祭コメントより)〜
本作は移民についての賛否を描いた映画ではありませんが、移民の現実を監督の綿密なリサーチによってリアルに描いた衝撃のドラマです。
米国では4月にアリゾナ州で成立した新しい不法移民対策法が、いよいよ7月末に施行されます。メキシコとの国境で拘束された不法移民の数も州内の犯罪率も、ここ数年は減少傾向にある中、中間選挙を前にメディアは反移民ムードを作っており、オバマ政権を苦境に追い込んでいます。5月にカルデロン・メキシコ大統領が訪米した際には、アリゾナ新法を「努力の方向を誤っている。差別的に使われる恐れがある」と人権差別を懸念し批判する一方で「意見が分かれる新たな課題にすぐに取り組む意欲は、議会にはなさそうだ」とも発言、選挙の争点となるこの問題に民主党がどう取り組んでいくのか、波紋を広げつつあります。
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移民を狩るハンターたち!〜法律の下に蹂躙される移民の現実〜
■米国の移民の現状
人口約3億人の米国で、国外出身者は約3千万。うち「合法移民」が約1,860万人、「不法移民」が約1,080万人。
不法移民数を出身国別に見ると、6割強がメキシコ、ついでエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスなどの中米諸国(09年1月現在)。
米国の不法移民には二つの顔があり、農業や建設など単純労働の現場を支える一方、メキシコの麻薬組織とつながり、治安を乱す者もいる。
現在、全米のヒスパニック人口はアフリカ系を超え、最大のマイノリティーとなった。
■不法移民対策法とは
「不法滞在を疑われる理由があれば、警察官は身分書類を確認しなければならない」とする、自治体の警察官に不法移民取締の権限を与える法律。
*米国では不法移民取締は連邦政府の仕事である
少子化の日本でも遅かれ早かれ移民の争奪戦に!?
不況を乗り越えるためには、移民政策へ本格議論を
日本は現在、本格的な人口減少時代に突入している。高齢化を踏まえると事態は更に深刻で、今後50年間年平均1.2%程度のペースで減少を続け、2055年には4,595万人と現在のほぼ半分になると言われている。
わが国のデフレ対策は金融政策主導だが、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「デフレ脱却には需給ギャップとともに、人口政策の抜本的強化が不可欠」と主張する。つまり、現在のわが国は人口減少による需要の減少が供給の減少を生むという負のスパイラルに陥っているのだ。人口政策とは"少子化対策""海外からの観光客誘致""移民政策"。少子化については既に様々な対策が取られつつある。観光客誘致は年による変動が大きい。そこで人口減の抜本的な食い止め策として、移民政策への議論は避けて通れない。世紀が変わり、人口減に危機感が高まり、03年には民主党有志6人が「移民1000万人構想」を発表、08年には自民党でも外国人材交流推進議員連盟が「移民1000万人受け入れ」を表明、09年1月には内閣府に定住外国人施策推進室ができた。しかし、国内の失業対策が急務であることと、移民政策に批判的な労働組合への配慮から、昨年の民主党政権誕生以降、移民論議は消えた。目先のことで言えば、現状、国内の雇用環境は厳しい。しかし、数年も経てば日本は深刻な労働力不足に直面することになるだろう。人口減はデフレのみならず国内経済に様々な歪みをもたらす可能性がある。わが国も、移民政策へ本格議論を始めなければならない時期にきていることは間違いない。
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『闇の列車、光の旅』は、自国での生活破綻を理由にアメリカを目指す移民の姿を描いています。
日本にも戦争、貧困...様々な理由で自国を脱し、暮らしている移民、難民の方が多くいらっしゃいます。中でも、現在三島・熱海・沼津カトリック教会主任司祭を務めていらっしゃるファム・ディン・ソン氏はボートピープルとして、過酷な旅を経て日本に渡っていらっしゃいました。
ファム・ディン・ソン (Pham Dinh Son)
1963年、ベトナムのサイゴン生まれ。1981年にボートでベトナムを脱出、フィリピンの難民キャンプを経て、1982年に来日以後、日本に定住。
1994年、司祭となる。2005年、自身の経験を振り返る「涙の理由・救われた難民と船長の再会物語」(女子パウロ会)を出版。現在は、静岡県内のカトリック三島教会と熱海教会、沼津教会の主任司祭を務める傍ら、在日ベトナム人連絡協議会代表、滞日・在日外国人の支援活動にあたっている。
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【作品概要】
ホンジュラス、メキシコからアメリカへ−
国境を目指す移民の少女とすべてを失った少年の
美しくもはかない魂の触れ合いに心震える。
ホンジュラスに住む少女サイラ。よりよい未来を求め父とアメリカを目指すことにした彼女は、移民たちがひしめきあう列車の屋根の上で、カスペルというメキシコ人少年と運命の出会いを果たす。彼は、強盗目的で列車に乗り込んだギャングの一員だが、サイラに暴行を加えようとするギャングのリーダーを殺しサイラを救う。裏切り者として組織から追われることになったカスペルと、彼に信頼と淡い恋心を寄せ、行動を共にするサイラ。命がけで二人は国境を目指すが・・・。無垢な少女と居場所も何もかもを失ってしまった少年の魂の触れ合いが熱く胸を打つ、感動のロードムービー。
本作の出発点は、フクナガ監督の短編「Victoria para Chino」(04)。トラックに閉じ込められたまま放置された不法移民の窒息死事件を題材にしたこの作品は、サンダンス映画祭をはじめとする複数の映画祭で賞を受賞し、フクナガに長編デビューのきっかけをもたらした。そのさい、移民のテーマをさらに深く掘り下げようと決意したフクナガは、メキシコのチアパス州に滞在。シェルターの移民たちにインタビューし、刑務所にいるギャングを取材。さらに、自ら列車の屋根に乗り込み、移民の足跡をたどる旅を三度にわたって経験した。
その身体を張ったリサーチが、作品のディテールとして生きていることはいうまでもないだろう。映画を通じて、私たちは、列車の屋根で移動する移民たちの過酷な現実を知り、12歳の無邪気な少年を凶暴な殺人者に変貌させる実在のギャング組織の恐るべき実態を目にすることになる。アカデミー賞候補になった『シティ・オブ・ゴッド』や『そして、ひと粒のひかり』がそうであったように、物語の中に中南米の"今"が息づいている本作は、社会派ドラマとしても超一流の輝きを放っている。
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ キャスト:パウリーナ・ガイタン/エドガー・フロレス 製作総指揮:ガエル・ガルシア・ベルナル/ディエゴ・ルナ/パブロ・クルス
原題:Sin Nombre ©2008 Focus Features LLC. All Rights Reserved. 2009/アメリカ・メキシコ/シネマスコープ/ドルビーデジタル/スペイン語/96分/PG-12
www.yami-hikari.com
移民・難民それぞれの背景・実情を知ることによって、同情ではなく一人の人間として接してほしい。
― ファム・ディン・ソン(三島・熱海・沼津カトリック教会主任司祭コメントより)〜
本作は移民についての賛否を描いた映画ではありませんが、移民の現実を監督の綿密なリサーチによってリアルに描いた衝撃のドラマです。
米国では4月にアリゾナ州で成立した新しい不法移民対策法が、いよいよ7月末に施行されます。メキシコとの国境で拘束された不法移民の数も州内の犯罪率も、ここ数年は減少傾向にある中、中間選挙を前にメディアは反移民ムードを作っており、オバマ政権を苦境に追い込んでいます。5月にカルデロン・メキシコ大統領が訪米した際には、アリゾナ新法を「努力の方向を誤っている。差別的に使われる恐れがある」と人権差別を懸念し批判する一方で「意見が分かれる新たな課題にすぐに取り組む意欲は、議会にはなさそうだ」とも発言、選挙の争点となるこの問題に民主党がどう取り組んでいくのか、波紋を広げつつあります。
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移民を狩るハンターたち!〜法律の下に蹂躙される移民の現実〜
■米国の移民の現状
人口約3億人の米国で、国外出身者は約3千万。うち「合法移民」が約1,860万人、「不法移民」が約1,080万人。
不法移民数を出身国別に見ると、6割強がメキシコ、ついでエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスなどの中米諸国(09年1月現在)。
米国の不法移民には二つの顔があり、農業や建設など単純労働の現場を支える一方、メキシコの麻薬組織とつながり、治安を乱す者もいる。
現在、全米のヒスパニック人口はアフリカ系を超え、最大のマイノリティーとなった。
■不法移民対策法とは
「不法滞在を疑われる理由があれば、警察官は身分書類を確認しなければならない」とする、自治体の警察官に不法移民取締の権限を与える法律。
*米国では不法移民取締は連邦政府の仕事である
少子化の日本でも遅かれ早かれ移民の争奪戦に!?
不況を乗り越えるためには、移民政策へ本格議論を
日本は現在、本格的な人口減少時代に突入している。高齢化を踏まえると事態は更に深刻で、今後50年間年平均1.2%程度のペースで減少を続け、2055年には4,595万人と現在のほぼ半分になると言われている。
わが国のデフレ対策は金融政策主導だが、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「デフレ脱却には需給ギャップとともに、人口政策の抜本的強化が不可欠」と主張する。つまり、現在のわが国は人口減少による需要の減少が供給の減少を生むという負のスパイラルに陥っているのだ。人口政策とは"少子化対策""海外からの観光客誘致""移民政策"。少子化については既に様々な対策が取られつつある。観光客誘致は年による変動が大きい。そこで人口減の抜本的な食い止め策として、移民政策への議論は避けて通れない。世紀が変わり、人口減に危機感が高まり、03年には民主党有志6人が「移民1000万人構想」を発表、08年には自民党でも外国人材交流推進議員連盟が「移民1000万人受け入れ」を表明、09年1月には内閣府に定住外国人施策推進室ができた。しかし、国内の失業対策が急務であることと、移民政策に批判的な労働組合への配慮から、昨年の民主党政権誕生以降、移民論議は消えた。目先のことで言えば、現状、国内の雇用環境は厳しい。しかし、数年も経てば日本は深刻な労働力不足に直面することになるだろう。人口減はデフレのみならず国内経済に様々な歪みをもたらす可能性がある。わが国も、移民政策へ本格議論を始めなければならない時期にきていることは間違いない。
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『闇の列車、光の旅』は、自国での生活破綻を理由にアメリカを目指す移民の姿を描いています。
日本にも戦争、貧困...様々な理由で自国を脱し、暮らしている移民、難民の方が多くいらっしゃいます。中でも、現在三島・熱海・沼津カトリック教会主任司祭を務めていらっしゃるファム・ディン・ソン氏はボートピープルとして、過酷な旅を経て日本に渡っていらっしゃいました。
ファム・ディン・ソン (Pham Dinh Son)
1963年、ベトナムのサイゴン生まれ。1981年にボートでベトナムを脱出、フィリピンの難民キャンプを経て、1982年に来日以後、日本に定住。
1994年、司祭となる。2005年、自身の経験を振り返る「涙の理由・救われた難民と船長の再会物語」(女子パウロ会)を出版。現在は、静岡県内のカトリック三島教会と熱海教会、沼津教会の主任司祭を務める傍ら、在日ベトナム人連絡協議会代表、滞日・在日外国人の支援活動にあたっている。
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【作品概要】
ホンジュラス、メキシコからアメリカへ−
国境を目指す移民の少女とすべてを失った少年の
美しくもはかない魂の触れ合いに心震える。
ホンジュラスに住む少女サイラ。よりよい未来を求め父とアメリカを目指すことにした彼女は、移民たちがひしめきあう列車の屋根の上で、カスペルというメキシコ人少年と運命の出会いを果たす。彼は、強盗目的で列車に乗り込んだギャングの一員だが、サイラに暴行を加えようとするギャングのリーダーを殺しサイラを救う。裏切り者として組織から追われることになったカスペルと、彼に信頼と淡い恋心を寄せ、行動を共にするサイラ。命がけで二人は国境を目指すが・・・。無垢な少女と居場所も何もかもを失ってしまった少年の魂の触れ合いが熱く胸を打つ、感動のロードムービー。
本作の出発点は、フクナガ監督の短編「Victoria para Chino」(04)。トラックに閉じ込められたまま放置された不法移民の窒息死事件を題材にしたこの作品は、サンダンス映画祭をはじめとする複数の映画祭で賞を受賞し、フクナガに長編デビューのきっかけをもたらした。そのさい、移民のテーマをさらに深く掘り下げようと決意したフクナガは、メキシコのチアパス州に滞在。シェルターの移民たちにインタビューし、刑務所にいるギャングを取材。さらに、自ら列車の屋根に乗り込み、移民の足跡をたどる旅を三度にわたって経験した。
その身体を張ったリサーチが、作品のディテールとして生きていることはいうまでもないだろう。映画を通じて、私たちは、列車の屋根で移動する移民たちの過酷な現実を知り、12歳の無邪気な少年を凶暴な殺人者に変貌させる実在のギャング組織の恐るべき実態を目にすることになる。アカデミー賞候補になった『シティ・オブ・ゴッド』や『そして、ひと粒のひかり』がそうであったように、物語の中に中南米の"今"が息づいている本作は、社会派ドラマとしても超一流の輝きを放っている。
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ キャスト:パウリーナ・ガイタン/エドガー・フロレス 製作総指揮:ガエル・ガルシア・ベルナル/ディエゴ・ルナ/パブロ・クルス
原題:Sin Nombre ©2008 Focus Features LLC. All Rights Reserved. 2009/アメリカ・メキシコ/シネマスコープ/ドルビーデジタル/スペイン語/96分/PG-12
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