東京都老人総合研究所の水谷俊夫氏は、元気な高齢者の脳の形が萎縮こそしているもの、萎縮しているのは大脳が中心で、小脳や脳幹など生命維持に関係が深い領域ほど委縮しにくいと指摘しています。また大脳の形は、ちょうど20歳代の脳はそのまま委縮したようにバランスがとれた形をしているとして、このような健康者を「スーパーノーマル100歳」となずけています。
私も脳神経外科医として、CTやMRI画像で多くの人の脳を見てきましたが、脳は年齢とともに確実に萎縮していきます。認知症の人は脳の萎縮がみられることが知られていますが、特別な病気などがない正常な脳であってもそれは同じで、脳の形や大きさだけならその人の元気さ、物忘れの程度などはわからないというのは実感デス。昔から、人間が他の動物より知能が高いのはの脳が重いからだとか、脳のしわが多いほど頭が良いとかと言われてきましたが、脳の重さだけでいえば、クジラの脳(マッコウクジラ:9000g)のほうが人間よりはるかに重いといえます。また、相対性理論を生んだ2020世紀最大の物理学者と言われるアインシュタイン(1879~1955)の脳の重さは1230gと、人間の平均重量(約1400g)より軽いことがわかっています。また、しわの数や深さは炉偉人ほど多くなるわけですから、脳の重さやしわの数は頭の良さ(知能)とは関係がないといえます。
誰でも高齢になれば、脳にも萎縮が起こり、ある程度、認知力が低下していくのは避けられません。さらに記憶力も加齢によって低下します。しかし、歳をとると脳のすべてが機能が低下を起こすわけではなく、年齢にあまり影響されない脳機能というのもあります。
例えば言語についての知識や理解力、語彙などは年齢のお影響を受けることが少なく、むしろ年を取って逆に良くなることもあります。また、職人芸のような専門的なスキルも、手続き昨日と考えられ、年齢に比較的影響を受けにくいといわれています。
東北大学加齢医学研究所では、MRIなどを用いて脳の加齢変化を行っていますが、脳の萎縮は主に大脳の灰白質で起きており、白質は萎縮していないことがわかりました。つまり、加齢とともに灰白質の神経細胞の数は減るものの、白質の神経細胞を結ぶネットワークは減少しないということです。
また、加齢による脳の萎縮の場所によって違いがあり、前頭葉や側頭葉は、頭頂葉の前方や後頭葉に比べて強い萎縮が起きることがわかりました。 さらに大脳白質の血流量も30代から加齢とともに減少し、80歳代では60%にまで低下するのに対し、大脳白質の血流は70代までほぼ一定に保持されています。このことから、歳とともに物忘れがひどくなるのは正常な加齢変化と言えます。しかし、理解力や語彙力といった情報の使い方が衰えないのは、白質が年齢による影響をほとんど受けず、ネットワークが減らないためと考えられます。さらに、知的好奇心を持つことで灰白質体積柄持たれることもわかってきました。
また別の研究でも、脳の神経細胞(ニューロン)は加齢により減少しますが、認知症などの病的老化がない限り、細胞と細胞をつないで情報のネットワークを形成するシナプスはむしろ増加することがわかっています。つまり、新しいことを記憶したり想像する能力、すなわち記憶能力(流動性知能)は加齢のよって衰えるものの、物事を総合的にまとめる能力(結晶性知能)は生涯を通じて向上することが知られています。 昔から「亀の甲より年の功」という言葉がありますが、結晶性知能と箱の「年の功」ともいえる老化のもたらす恩恵です。<
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