2019年09月04日
IT講師 5/6 「職業柄」
施設には数名の講師がいて、普段複数の講座が並行して行われていました。
それぞれの講座には専任の講師がおり、学校でいうならば「担任」のようなものです。
講座は数ヵ月から半年に及びます。すると、受講生たちはそれぞれ「クラス」に属するようなもので、もし私が手塚という名前だったら、手塚組、山本組といった色分けがいつのまにかできていきます。
講師にも強い分野とそうでない分野があって、IT基礎講座は私が他の教室へ出向いて行うこともあるし、他の教科なら逆もあります。
初めてIT基礎講座をするとき、隣の教室へゲストで伺いました。
そこでは施設のテッパンであり、メインともいえる講座が行われていて、いちばん大きな教室を使い、モニター、スピーカーなどの機材も充実、私はピンマイクを付け、大きなホワイトボードを使い講義します。
IT基礎講座は数ある教科の中の、一教科でした。
本当に大きなホワイトボードだったので、足元には左から右端まで高さ20cm程の踏み台がありました。
確か私が講義を始める前、課長クラスの人が前説というか、少し話したあと私にバトンタッチされました。
その前説の中で課長クラスの人がホワイトボードを使うのに踏み台に乗るとき、
「私は高所恐怖症なので、」
と言いました。踏み台は高さ20cmくらい。本人はきっとボケたのです。なのに教室はスルー。
私の本番になってから途中、ホワイトボードに書きながら、そのことを引っ張り出しました。
「〇〇先生、きっとツッコんで欲しかったんですよ。」
と。
すると、後ろから笑い声が聞こえました。
あとから同い年の女性だと知りました。「ツボ」だったといいます。
以来、その方とは必要以上に仲良くなりました。
IT基礎講座はゲスト参加。私には私の生徒さんたちがいます。
情報処理技術者試験に向けた長い講座です。時おり習得具合の確認と相談があればそれも兼ねて「面談」をしていました。空いている教室を使い、一人ずつ話します。
そのとき、入ってくる生徒さんたち、ニッコニコして入ってくるんです。
面談が楽しみだったのでしょう。中に、姉妹で受講した生徒がいました。
姉の明朗闊達な性格に比べ、妹は自信がなさげな性格でした。
私は元気づけるため、妹さんを
「笑顔が可愛いよ。」
と褒めました。
50分に一度、10分休憩が挟まります。しかし、どの講座も一度に休憩すると廊下が混み合います。
講座の進行具合にもよりますが、大抵、少しずれて休憩になります。
それでも隣の教室と休憩時間が重なるときがあります。
ある日、休憩が重なったので、私が必要以上に仲良くなった人と座って話しているとき、妹さんの視線に気づきました。妹さんが、私と話している相手を睨みつけています。
ありがたくないんですけど、私たち講師は「先生」なんです。
初めは
「先生はやめてください。」
と言っていましたが、途中から面倒くさくなりました。
確かに隣の教室の講師は〇〇先生なのに、私は〇〇さんと呼ぶわけにいかないでしょう。
ただ、「先生」と呼ばれることに、優越感というか、喜びを感じる人が多いのは確かなことです。
講師の間でも私は〇〇先生と呼ばれていましたが、それは自分も先生と呼ばれたいから相手を先生と呼んでいるのではないか?そう感じることがありました。
同じく「先生」と呼ばれる職業に、自動車学校があります。
自動車学校に私は、生徒とのスキャンダルというイメージがぬぐえません。
職業柄というのはあることです。
私はイケメンと呼ばれたことがありません。
それでもIT講師をしていると職業柄というのはありました。
休憩時間、長椅子に座って資料を見ていると、女性から横に座ってきます。
また休憩時間で生徒さんたちが立ちあがると一人近づいてきて、私に黙ってメモを渡します。
見ると、名前と携帯電話の番号が書いてあります。
家探しもありました。
「先生、聞いたんですけど、先生は〇〇町に住んでいるんですか?」
って。
あるとき、生徒さんが言いました。
「先生は夜、家でブラックライトのある部屋でジャズを聞きながらウイスキーを飲んでるイメージがある。」
と。
んなわけないじゃないか。
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