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2024年09月14日

魯迅とカオス9 狂人日記

3 場面の認知プロセス

3.1 食人の非線形性

 上述の狂人の言動を認知プロセスに当てはめながら、それぞれの場面の認知プロセスを確認していこう。プロセスの要素は、以下の【】書きのものを採用する。

【脳の活動@】非線形性の認知プロセス(妄想気分)
認知能力のプロセス
@知覚と注意
【知覚】狂人の視神経が赵貴翁の目つきに反応する。他の7、8人、道行く人、子供たちも赵貴翁と同じ目つきであることがわかる。
【注意】グループ化と比較。
認知能力のプロセス
A記憶と学習
【外部からの情報】彼らの暗号を読み取る。
【スキーマ】話や笑いが毒や刀で、歯は人を食う道具である。
【既存の知識】歴史書にも食人の二字が書いてある。
【学習】にやけて笑いながら、怪しげな目つきで睨む人は、俺を食おうと思っている。
認知能力のプロセス
B計画と推論
【計画】狂気から覚醒する。
【問題分析】中国では儒教による封建主義が時代の思潮であった。しかし、留学先の日本で近代ヨーロッパの精神に触れて狂気に陥った。
【問題解決】食人行為は歴史からも見て取れるが、今でもずっと続いている。食人行為を捨てれば、楽しいはずである。
【推論】人を食べて自分を調節している人間は実在する。こうした人間が一線を越えて真の人間になるための振舞いは、無秩序で予測がつかない。

この認知プロセスのモデルから狂人の脳の活動に見られる非線形性が見て取れる。
食人の言動は、一見人を食べるための秩序に則っているように見える。道行く人や子供も道で会った女も陳老五も兄や小作人も皆、赵貴翁と同じ目つきで俺を見る(例、表2の(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(8))。ゾッとする。俺を食うかもしれない。しかし、一線を越えて本当の人になるための振舞いは、秩序を持って予測することが難しい。そこには順序とか確かな筋立てのような直線的なルールがあるわけではない。従って、食人の振舞いは、カオスの非線形性に通じる特徴になる。

花村嘉英(2015)「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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