あっ。そっか。。アッチの、三太夫の方のアニキも確か
わざわざ時間が無いのに東京から俺が死んだプルメリア島まで来てくれてたんだっけ、ベルモのブーコから聞いたけど。へー、アニキの同級生か、この女性。アニキの事もいろいろ聞きたいし、四朗も目の前にいるし、今にも話しに混ざりたいけど混ざれない。。。俺はもともと喋るのが好きだまぁ。死んでからもそれはなんとなくそう自覚はあるけど。幽霊の吾朗太さんは、海の家クワタで残念ながらただボーっと賑やかで楽しそうな真昼の宴を見ているしかなかった。異母兄の一人、仲良かった四朗が元気で幸せそうな姿にはホッとしたけど。
楽しさはすべて遠い過去の在りし日の優しいはかない記憶の中で。。。楽しかったあの日は遠い昔の物語。。。
繰り返す蝉の声も溢れる生命より消えゆくものの物哀しいひとときのはかなさを感じる時々夜に打ち上がるうたかたの夢のような花火も。。。強がりみたいに真夏にギラギラしてるくせにいくら派手だろうが華やかだろうが注目を集めようとも、栄華を極めても
しょせんは儚く消えて散る。。。
余韻すら消えていく祭りのあとのような虚しいあの感じで。
生まれては消えていくを繰り返して誰かの生命なんてはかないもの。楽しかったその時はまさか、自分が今日死ぬ明日死ぬなんて思ってはいない。なんだか後悔ばかりきっと誰もがあの時もっとああしとけばって。。。死ぬってそんなもんなんだろうな。ここにいる、目の前の幸せそうな四朗を含めて、笑い合う今、それが永遠ではないとは知りながら、消えるのはいますぐではない、明日ではないと錯覚しているのだろう。
今とか瞬間とか、毎日は日々その積み重ねなのに。それは流れる流星のようにきらめきながら猛スピードですぎて消えていく。
過ぎていく時はきらめいているなんて、多分気づきもせずに跡形もなくスーッと消えていく。
わあっ三太夫の知り合いというダイヤという女性が
「運転だからお酒は飲めないんだけどでも、ここのノンアルコールカクテルって楽しいのよ。あっ、冷たいショコラ、いいわね。」
あれは。。。と、幽霊の吾朗太さんがハッとした時に
「それ、というか、吾朗太。。。あいつは本当にショコラ系が好きで小さい時に、私は小さい時から手先は器用で料理も母親にやらされていてやらされていたけど好きで自分からやってたこともありますが、吾朗太によくアイスショコラを作ってあげてたんです。温かいより冬でも冷たいショコラの方が好きでしたね。」
ゴクッ。。。甘い記憶が優しくよみがえってきた。オヤジは下戸で甘いものが好きで若い衆にアイスショコラやココアを作らせていたが、俺も好きで若い衆が作るより四朗が作る方が断絶美味いのだった。だから、オヤジも四朗がいる時は四朗にアイスショコラや、それからスイーツも作らせていた。元はというと、四朗の母親の本妻の要が、四朗に冷たく当たって家事をやらせていて。若い衆には組長のオヤジに言うなと口止めしていたし、若い衆も姐さんの言うことには逆らえないし俺も四朗同様に、本妻の要からは目の敵にされていたけど俺なんか要の言うことなんかきくわけがないし、家事なんかやるわけがない。オヤジに寵愛されていてもしも俺に暴力を振るったりしたら後から大変な事になる、というか後から要はオヤジにボコボコにぶん殴られるだろう。
だからか、俺は要にいろいろ文句を言われたら口答えをしながら叩いたり蹴ったりしていた。まぁ、あの時は小さかったし、要を殴る蹴ると言ってもたかがしれてるたまにヤクザの
オヤジが本妻の要を殴っていたり若い衆や幹部を殴る事があったので俺は女なんか気に入らなければ殴ればいいと思っていたんだろう。
複雑な想い出とともにじわっとやんわり優しい甘さがよみがえる。。。確かに。。。冷たいのにあたたかい気持ちになる遠い記憶の懐かしい甘さ。今はもう死んであの世からこの世を見つめてさまよって、腹も減らない喉もかわかない。飲む事も食べることもできないが。。。それでもなお、あの幼い頃の甘い美味しさがよみがえる。。。チョコレートなんて、はっきり言って、オヤジが甘党で贈答でしょっちゅう贈られてきたり、女がキャーキャー言ってバレンタインで当分見るのも嫌なぐらい山ほどチョコレートは集まってきたけどうなるほどにもそんな高い高級品みたいなのも山ほど集まってきてたけど。。。
あの、四朗の入れてくれたショコラは忘れられない。あの頃、子どもの頃俺中心で生きてきて、わりと楽しい事ばかりだった。。わすれていた何かを今、思い出す様な。。生まれながらにして生馬の目を抜くような環境ながらも多分、本当に幸せだった。
「それじゃあ、僕たちから、お亡くなりになった弟さん、吾朗太さんに、ショコラのノンアルコールのカクテルを。尊敬してるんです。うちの社長がお世話になったとか、うちの社長、新宿でかなり若い頃は女性のヒモをやりながら喧嘩したり、フラフラしてたらしくって。。。で、そんな社長を吾朗太さんが強く当時の吾朗太さんの店の極楽鳥夜。。。ストレリチヤの社長にあの人はかなり売れるから絶対に口説き落として店で働くようにとどうしても、とかなり強く押したようです。うちの朔夜社長も最初はホストのスカウトなんか嫌がって逃げ回ったりバカにしていたみたいだけど。吾朗太さんの先見の明なんでしょうね。今ではあの時、元ストレチリヤの社長のマヒルさんがしつこくスカウトしてくれたからだとでも、そのマヒル社長に指示していたのはマヒル社長が寵愛していた吾朗太さんがあってこそ、です。吾朗太さんは、自分が直接朔夜社長をスカウトするとホストの従業員の若造なんか相手にしないかもしれない、それに自分は未成年だし
ここは、オーナーが説得すべきだと店の人材育成に陰で貢献したんです。マヒル社長も吾朗太さんには弱いし寵愛していましたようですから、」駿栄というあのビーグルの知的で爽やかそうなホストクラブ熱帯夜の駿栄が言う
そうだった、幽霊の吾朗太さんも生きているあの頃は若い頃も子どもの頃も自分は昔から可愛がられて当たり前、寵愛されて当たり前、優しくされて当たり前だった。それが普通の事だったオヤジをはじめ、オヤジの蓮気が死んでもなお、誰かが。。。家族だった四朗がよくしてくれたのも組の若い衆が良くしてくれたのも
群がって勝手に尽くしたり世話焼いて貢ぐ女達も。それから。。。ホストクラブとかそのところはまだまだどうだったのかとかの、記憶を取り戻してはいない。でも、大きな優しさに包まれていた、とか、でかい後ろ盾があったのはオヤジが亡くなってからもあったんだと思う、多分ホストクラブの社長のマヒルって奴なんだろう。まぁ、少しでもそれを思い出すきっかけになったらと
夜、こいつら駿栄と饗の仕事についていく事にする。朔夜という社長は社長だから毎営業に店には来るかどうかわからないけど
そいつを見たらまた何か、思い出すかもしれない。思い出して、早く昇華されて。。
もう一度、やり直せたら。。。今度は、きっと。。。
昇華するのは、いい。昇華できたらいい、俺のようなやつでも虫が良く天に昇って
嘘かほんとかは知らないが、ある程度したら魂はまたこの世に転生するとブーコは言う。そんな事は嘘かもしれないが
でも、失う物なんかもうなにも俺にはないのさ。だったら前に進むだけ。。また、この世に。。
でも。。。
なんだろうか、その前にとても大事な事があるような気がして。。記憶が少しずつよみがえり、明るい兆しが見えてきたのだけど。
あっ。。。
どうも気になる、純という女。。。記憶が戻らない俺の記憶を戻すためにブーコが俺について尽力して情報を集めてくれていたんだけど。そこにあった、ハタチぐらいの神野純という女。
俺の元嫁という女、顔も思い出せないがそいつが神野という姉に押し付けて逃げた俺か次の旦那の子どもかわからないからそれが嫌なのか。。
俺の子なら。。俺の子どもなら。。オカルト話しみたいでばかばかしいが、いま、俺は死んで自分が幽霊だし。生きていた頃には信じられないだろうが、死後とか、霊界はあり、で。
剣崎家の血統の娘、剣崎の男子が外に出て養子に出たりしてできた女児、
という事は。。。俺の娘なら、もうそろそろ寿命が。。
だけど。。ヤクザのどうしようもなかった俺と子ども捨てて顔のいいだけの男に貢ぎ暴力を振るわれていた女。。。
そんな夫婦にできた子どもだけいい子ってあり得ないだろブーコは純ちゃんはおっとりしていると書いてある、そんな性格。。。
お、俺の娘なんかじゃあない知らない
そうだ、俺は生前女扱いに慣れていたらしい
そんな。。。剣崎の血統の女が産まれたら夭折するってきいて、子どもなんかつくるだろうか。有り得ない、幾らちゃらんぽらんな俺でも罪のないガキまで無責任に不幸に陥れるわけない。。。
2023年08月22日
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