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2022年03月20日

転職か?残留か? 氷河期世代のキャリア戦略 40歳からの判断基準は「善は急げ」

時代の波に翻弄されてきた氷河期世代

 氷河期世代はバブル崩壊やリーマン・ショックといった不況の波や、製造業中心の社会からインターネットや人工知能(AI)中心のデジタル社会へのシフトによって、就活や転職で他の世代に比べて、非常に苦労を強いられてきた世代です。結果的に希望する会社や仕事に就職できなかったり、正社員になることがかなわず、フリーターで生きていくしかなかった人が数多く生まれた世代でもあります。

 「1億総活躍社会」「人生100年時代」というキャッチフレーズが掲げられた安倍政権時代の2019年には、それらの実現のための目玉政策として発表された「就職氷河期世代支援プログラム」において、厚生労働省の指揮のもと、3年間の集中支援プログラムの対象となっています。

 氷河期の第1世代はすでに社会に出て30年。年齢で言えば50代前半を迎えています。氷河期の最後の世代もすでに40歳を超える時期にさしかかっています。二重三重に世の中の変化のしわ寄せを受けてきたこの世代に、いまさらに早期退職勧告など、リストラの波が襲いかかってきています。

 しかし、残り20年近い仕事人生を前にしてここでリタイアするわけにもいきません。これからのキャリア形成にどう向き合っていくべきなのか。いくつかの視点で考えてみたいと思います。
「このままのキャリア」はどんな未来につながるのか?

 まずは、現在のキャリアをこのまま続けていくか、なんらかの方向転換をするかどうかの判断です。

 キャリアについて懸念を抱きながらも、明確なアクションをせず、「何となく将来が不安」「でも、可能な選択肢は限られている」「できるだけリスクは取りたくない」ということをぐるぐる考えて時間ばかりが経過してしまう。40歳、45歳、50歳、55歳と、いつの間にか年を取り、結局、さらに選択肢が狭まって身動きが取れなくなる。転職支援の仕事をしていると、そういう悪循環に嵌まり込んでしまう人がいかに多いかが見えてきます。

 今の会社で頑張り続けるのも、転職するのも、起業するのも、すべては単なる選択肢でしかありません。ただ、どの選択肢を選ぶかどうか、自分の中で覚悟を決めずに、ずるずる悩ましい状態を続けることが最も精神衛生的にもよくない状態だと思います。

未来を予想するための要素

 はっきりと意思決定するために大切なことは、このままの延長で仕事を続けていった場合の未来予想図を、主観や思い込みを排除して考えてみることです。

 予想するための要素としては、次のようなものがあります。

・業界の発展動向
・会社の成長動向
・職種の需要動向
・自分の能力の開発可能性
・自分のモチベーションの活性動向

 これらを総合的に判断したとき、このままの状態を続けた場合に右肩上がりなのか、逆にどうがんばっても右肩下がりになるのか。5年後、10年後という単位で現実的なシミュレーションをしてみてください。そうやってできた未来予想図をもとに、自分がそこに残り続けるほうがいいのか、逆にキャリアチェンジをしたほうがいいのかの覚悟を決めていく方法です。

 ちなみに未来のシミュレーションに関しては、個人ごとの思考の癖が出やすいので、楽観と悲観の2種類のシナリオを作り、両方の真ん中を妥当ラインと考えるようにすることをお勧めします。

 もし、現在の延長線上に残り続けることが難しいと考えた場合は、年齢が上がれば上がるだけ、身体的にも精神的にも負担が大きくなることを考え合わせると、行動は早いにこしたことはありません。40歳からの判断基準は、あらゆることが「善は急げ」なのです。
自分の中の常識を徹底的に疑う

 40代以降の自分のキャリアを、現在の延長線上ではなく、何らかのアクションを起こして変化させていくことが必要だと意思決定したら、いよいよ行動計画の立案と実行に入ります。その際、円滑な計画と実行を邪魔するのは、過去の「成功体験」や「失敗体験」が積み重なってできた「自分の中の常識の枠組み=認知バイアス」です。これが選択肢の過剰な排除や食わず嫌いを生み、多くの人から選択肢を奪ってしまう傾向があります。

 反射的に発生する認知バイアスには、以下のようなものがあります。

・未経験ゾーンを反射的に嫌悪して排除するパターン
「これまでやってきた業界でしか通用しないのでは」
「経験のない職種なんか今さらゼロからやるのは無理」
「この年齢で転職しても条件が悪くなるだけだろう」
「自分は絶対に起業には向いていない」
「フリーランスみたいに何の保障もない働き方はしたくない」

・自分の都合や好き嫌いを優先してしまうパターン
「今さら現場はしんどい。人材を育成する側に回りたい」
「経験を生かして経営にかかわりたい」
「もともと興味のあった業界にチャレンジしたい」

 今後の選択肢を検討する段階で、これらの「思い込み」や「自分が常識だと思っていること」をいかに排除して、「自分の残りの仕事人生を充実したものにする」ことだけに立脚した選択肢を洗い出せるかどうかが、キャリア戦略立案の成否を分ける最大のポイントだと言っても過言ではありません。
自分の「商品性」を分解して売り方を模索する

 次に着手してほしいのが、自分自身の経験や手持ちのスキル、過去の成功体験から得たノウハウ、そもそもの仕事観や価値観など、自分自身を構成する要素をすべてバラバラに分解して、売り物になるパーツを見きわめていく作業です。パーツを分解したら、次は、社会から見た需要の確認です。

 自分の中で売り物になりそうなパーツを起点にするのではなく、現時点の社会での能力やスキルの需要を調査して、需要にはまりそうなパーツを探り出していくという手順で、自分自身の「商品性」を確認していきます。

 この時点では、「社員としての転職」「起業」「フリーランス」「顧問」などの、「自分を売るパッケージ形態」はいっさい考える必要はありません。むしろ、この段階でそんな表層的なことにとらわれているとすれば、まだ認知バイアスから抜け切れていない証拠です。

 また、商品性を確認する際には、業界や職種の経験年数や、役職などの一般的なものさし以外に、下記のような「能力」「スキル」「取り組み姿勢」などの特徴も視界に入れて、自分の強みや商品性を確認してみてください。この時、自分の強みをピックアップしながら、できるだけそれを証明する過去のエピソードとひもづけておくと、後々、職務経歴書(セルフプロモーション)をまとめる際などに役に立ちます。

●自分の中の商品性を分解する際の視点例
・課題発見力
・課題設定力
・課題解決力
・企画発案力
・計画立案力
・実務遂行力
・変化対応力
・社外対応力(社会・株主)
・社外対応力(顧客)
・社外対応力(協力会社)
・社内対応力(上司)
・社内対応力(組織間)
・社内対応力(部下)

 上記のような流れで、自分の意思決定や強み・弱みを分析した上で、最終的にどんな相手が自分のスキルを必要としていそうかの仮説を立て、実際に売り込みを仕掛けていくという流れになります。

 この段階でも、雇用契約か、顧問契約か、個人事業主か、あるいは1社だけへの売り込みなのか、複数の企業と契約をしていくのかということも、幅を持って考えておいたほうが交渉は進めやすくなります。まずはぜひ一度、フラットに検討してみてください。もし一人では難しい場合は、友人や転職エージェント、キャリアコンサルタントの有資格者などに相談に乗ってもらうと、よりスムーズに考えられるかもしれません。

 大切なことは、会社に留まるか、転職するか、起業するかという外形的なことではなく、いかに「自分の残りの仕事人生を充実したものにする」かという1点です。ぜひ納得感のある未来を自らつかんでほしいと思います。
















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