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2022年12月08日

陰険な女の思い出話

「ふん、こんなものっ」と
彼女は試合会場で配られる所属選手の顔写真が載る
パンフレットをにらみつけ
自分の子供の部分を手でていねいに切り取り
その部分が切り取られたパンフレットを
思い切り手で破り
けっこう細かくなるまで
「くそ!馬鹿コーチ!くそ!くそ!くそ!」と
つぶやきながら破りまくり両手で握りしめ
会場の出口にある燃えるゴミ入れに
思い切りたたきつけるように 捨てて外に出た
お見送りのチームスタッフやチアの女子に
見えるように捨て去るのがポイントだ

彼女には
プロスポーツ選手の子供がいる
プロチームに所属しているが
コーチやオーナーによっては
所属選手を蔑ろにするチームがある
18人も選手を契約締結しておきながら
始めからその中の9人だけを使い
点差が大きくなったり
残り2分くらいで
その他の9人をじゅんぐりで試合に出す
まったく出さないのなら18人契約した意味は
なんだったのか
シーズン初めからのその差別は
彼女にとっては理不尽なことで
許されない
選手の力などまるで無視して
無能なコーチなだけなのに
一部の選手しか使わないのになんのために
選手契約したんだとずっと
コーチを怨み続けた

子供を含めその他9人が試合に出るとしても
1分くらいの戦力外扱い
遠征には参加できない
運がよければ参加はできるが
3軍並みのレベルのチームでその差別的な
扱いなど見るのも胸糞悪い

だが彼女は
見に行ける場所で試合がある時は
子供がそこにいるのだから
試合に出ようが出まいが
必ずかかさず会場に行くと決めた
意地でもそこで
ベンチにいるだけの子供を見守り
チームの勝敗などどうでもよく
かかすことなく会場に足を運んで
試合が終わったら
子供の顔写真だけ切り取って
パンフレットを粉々に破り裂き
ゴミ箱にたたきつけて会場を出る
という怨みの儀式を行った

陰険上等
そうしたいからそうしてきた
すこしでも気が晴れるなら
なんでもいい
パンフレットを破りまくる儀式は
子供命の彼女にとっては精神安定剤

直にコーチを殴るわけではないんだから
これくらいいいだろっ
っと
陰険な女があの頃 存在していた

彼女にとって何年も前の思い出だ


posted by 彩沙 at 21:55 | TrackBack(0) | 小説

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