2008年02月07日
猫姫の舞踏 11
「ブラン起きて」
「んぁ・・・・んー・・・んぐぅ・・・・・・」
「ほら、起きてってば!
支度するわよ!」
「ええ〜・・・・
いま何時よぉ・・・・んんー・・・・
まだこんな時間じゃなぃ
なんの支度するのよぉ・・・」
「昨夜話し合ったじゃない
ここを出るのよ
さっ、早く起きて顔を洗って支度するのよ」
しぶしぶ起き上がったブラン
「昨夜話し合ったからって急すぎじゃない?
おばさんにもまだなんにも話してないのに・・・
もしかしたら今夜のごはんの用意してるかもしんないよ!?」
「そんなわけないでしょ
屁理屈いってないで早くしなさい」
「だってー・・・
なんでそんなに急ぐのよ
夜が明けたばっかりだよ?」
「だから急いでるの
昨夜あの男がここにきたこと忘れてるんじゃないの?
あいつがまたくる前にここを出てしまいたいのよ
できたら夜が明ける前に出発したかったくらいだわ」
「ああ・・・そっか・・・・
わかった」
ふたりは手早く支度をすませた。
旅なれているのでこういうことは早い。
1時間もしないうちに準備を整え、部屋のテーブルに
女主人にあてた丁寧な手紙とじゅうぶんすぎるだけの
宿代を入れた封筒を置いてそっと宿を出た。
「はぁ・・・しかたないことだとはいえ
おばさんにはちゃんと挨拶したかったなぁ
おいしいごはんいっぱい食べさせてもらったのになぁ
・・・・・ほんとのおかあさんみたいだったのにな」
「・・・・・・・・・・・・」
ノアールも同じ気持ちであった。
ブランと違ってかすかながらとはいえ母の記憶がある。
まだ幸せにのんびり暮らしていた頃の思い出が重なる。
たぶん、ブランよりもっとノアールのほうが寂しさは
大きいのだろう。
なにも言わないノアールを見て、ブランもその気持ちを
察したのか、宿の主人についてはそれ以上言わずにいた。
「ね、おねえちゃん
次はどこへ行くかはもう決めてあるの?」
「うーん・・・
ほんとに急に出てきちゃったからね
まだちゃんと決めてないなぁ
とりあえず駅までいって、どこへ行くか決めよう」
「おっけぃ
そうだなぁ・・・
今度はあんまりはやく夜が明けないほうがいっぱい寝ていられるから
西のほうがいいな!」
「ばかね、なにいってんの
西も東もそんなに変わりはしないわよ」
無邪気なブランを見て、ノアールの顔が少しほころぶ。
お互いの気持ちを汲みあってすごしていける。
改めて妹を愛しいと思えるノアールであった。
(キリン)