2014年02月13日
アメリシウム
アメリシウム (英: americium) は原子番号95の元素。元素記号は Am。アクチノイド元素の一つ。第3の超ウラン元素でもある。安定同位体は存在しない。銀白色の金属で、常温、常圧で安定な結晶構造は六方最密充填構造 (HCP)。比重は13.67で、融点は995 °C (850-1200 °C)、沸点は2600 °C。展性、延性があり、希酸に溶ける。原子価は、+2〜+6価(+3価が安定)。化学的性質はユウロピウムに類似する。
目次 [非表示]
1 歴史
2 特徴
3 発生
4 用途
5 検出
6 同位体
7 出典
8 関連項目
9 外部リンク
歴史[編集]
アメリシウムはおそらくそれ以前の核実験でも生成されていたが、それが最初に意図的に、合成、単離されたのは、1944年の晩秋、カリフォルニア大学バークレー校でグレン・シーボーグ 等[2]によっての事だった。 原子炉内のプルトニウム239に2個の中性子を当てると、プルトニウム241ができ、これがβ崩壊して、アメリシウム241(半減期432.2年)となる。 元素は、化学的にシカゴ大学の冶金研究所(現アルゴンヌ国立研究所 )で同定された。 ネプツニウム、プルトニウム、キュリウムに続いて、アメリシウムが発見されたのは超ウラン元素として四番目だった。
発見された同位体の中で最も半減期が長いのは、アメリシウム243の7370年である。元素名はアメリカ大陸の名に由来する。
アメリシウムとキュリウムの発見は、密接にマンハッタン計画に関連していたため、1945年になるまで機密情報だった。 最初にそれが公表されたのは1945年11月11日にグレン・シーボーグが、アメリカの子供のためのラジオ番組、Quiz Kidsに出演した際、リスナーの1人に、「戦争の間にプルトニウムとネプツニウムの隣の新しい超ウラン元素が見つかった?」と質問された時だったが、それはアメリカ化学会の会議で公式発表する五日前の出来事だった。
特徴[編集]
アメリシウムは剥離性がある銀白色をした放射性の金属で空気中に放置すると白く曇る。純粋なアメリシウムはネプツニウムやプルトニウムより輝いている。アメリシウム241から放出されるα線は約5.4Mev、ガンマ線のエネルギーは非常に低く (0.06 MeV)、低エネルギーガンマ線源として蛍光X線分析装置などに用いられる。
プルトニウムを核燃料(MOX燃料を含む)とする原子炉では、アメリシウム241は邪魔者とされている。理由は、プルトニウム241は遅い中性子の照射で核分裂するが、アメリシウム241が核分裂を起す比率は低く中性子を捕獲しやすい。従って、核分裂は起こらないと考えられ中性子を無駄食いする核燃料中の毒物とされている。
また、特別な許可や大金を出さなくても一般人が手に入れられる番号の一番大きい元素である[3]。
発生[編集]
生成量は核爆弾の種類により変わり、大気中への放出量は不明である。半減期が最も長いアメリシウム243でも半減期は7370年のため、地球の形成時に存在していたアメリシウムは、今ではすべて崩壊している。したがって、現存しているアメリシウムは、チェルノブイリ原発事故のような原子力事故現場や大気圏核実験のため1945年から1980年の間に使用された領域と核燃料再処理施設周辺に集中している。例えば、アメリカ最初の水素爆弾アイビー作戦マイク実験(1952年11月1日、エニウェトク環礁)の核実験で使用された地点で回収された破片を分析したところ、高濃度のアメリシウムを含むアクチノイドが検出されたが、軍事機密のために検出の事実が公表されたのは1956年であった。
使用済核燃料にも含まれ、出力100万kWの軽水炉を2年間運転した後の使用済核燃料 1tには 5g(放射能強度、0.65兆ベクレル)が含まれるとされている。原子炉から取り出した後にもプルトニウム239 の崩壊により増加し、10年後に40g(放射能強度、5.2兆ベクレル)、100年後には93g(放射能強度、12兆ベクレル)となる[4]。また、再処理施設からの排水と共に排出される。
用途[編集]
アメリシウム 241 は、煙感知器や、厚さ計[5]に利用される。アメリシウム242は中性子ラジオグラフティーの中で使用される。しかしアメリシウムの合成は難しく、強い放射能のため非常に高価である。また、日本では使用されていない。
ベリリウムとの混合物は、中性子源となる。そのほか、放射線源としての利用もある。
検出[編集]
化学的に分離精製した測定試料から放出されるアルファ線を、シリコン半導体検出器で測定する。
同位体[編集]
詳細は「アメリシウムの同位体」を参照
アメリシウムには安定同位体が存在せず、すべてが放射性である。アメリシウムには18の同位体が確認されており、質量範囲はアメリシウム231からアメリシウム249までがある。
432年の半減期を持つアメリシウム241、141年のアメリシウム242、7370年のアメリシウム243が比較的安定している。残りは全てアメリシウム240の51時間よりも短い。さらにアメリシウムの同位体には八つの核異性体の同位体が存在している。
出典[編集]
1.^ Muller, W.; Schenkel, R.; Schmidt, H. E.; Spirlet, J. C.; McElroy, D. L.; Hall, R. O. A.; Mortimer, M. J. (1978). “The electrical resistivity and specific heat of americium metal”. Journal of Low Temperature Physics 30: 561. doi:10.1007/BF00116197.
2.^ グレン・シーボーグ 、レオン・モルガン、ラルフ・ジェームズ、アルバート・ギオルソ
3.^ 世界で一番美しい元素図鑑 セオドアグレイ著
4.^ アメリシウム-241 原子力資料情報室
5.^ アメリシウム厚み計 (TOSGAEG 153) 計測と制御 Vol.9 (1970) No.7 P543-544
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1 歴史
2 特徴
3 発生
4 用途
5 検出
6 同位体
7 出典
8 関連項目
9 外部リンク
歴史[編集]
アメリシウムはおそらくそれ以前の核実験でも生成されていたが、それが最初に意図的に、合成、単離されたのは、1944年の晩秋、カリフォルニア大学バークレー校でグレン・シーボーグ 等[2]によっての事だった。 原子炉内のプルトニウム239に2個の中性子を当てると、プルトニウム241ができ、これがβ崩壊して、アメリシウム241(半減期432.2年)となる。 元素は、化学的にシカゴ大学の冶金研究所(現アルゴンヌ国立研究所 )で同定された。 ネプツニウム、プルトニウム、キュリウムに続いて、アメリシウムが発見されたのは超ウラン元素として四番目だった。
発見された同位体の中で最も半減期が長いのは、アメリシウム243の7370年である。元素名はアメリカ大陸の名に由来する。
アメリシウムとキュリウムの発見は、密接にマンハッタン計画に関連していたため、1945年になるまで機密情報だった。 最初にそれが公表されたのは1945年11月11日にグレン・シーボーグが、アメリカの子供のためのラジオ番組、Quiz Kidsに出演した際、リスナーの1人に、「戦争の間にプルトニウムとネプツニウムの隣の新しい超ウラン元素が見つかった?」と質問された時だったが、それはアメリカ化学会の会議で公式発表する五日前の出来事だった。
特徴[編集]
アメリシウムは剥離性がある銀白色をした放射性の金属で空気中に放置すると白く曇る。純粋なアメリシウムはネプツニウムやプルトニウムより輝いている。アメリシウム241から放出されるα線は約5.4Mev、ガンマ線のエネルギーは非常に低く (0.06 MeV)、低エネルギーガンマ線源として蛍光X線分析装置などに用いられる。
プルトニウムを核燃料(MOX燃料を含む)とする原子炉では、アメリシウム241は邪魔者とされている。理由は、プルトニウム241は遅い中性子の照射で核分裂するが、アメリシウム241が核分裂を起す比率は低く中性子を捕獲しやすい。従って、核分裂は起こらないと考えられ中性子を無駄食いする核燃料中の毒物とされている。
また、特別な許可や大金を出さなくても一般人が手に入れられる番号の一番大きい元素である[3]。
発生[編集]
生成量は核爆弾の種類により変わり、大気中への放出量は不明である。半減期が最も長いアメリシウム243でも半減期は7370年のため、地球の形成時に存在していたアメリシウムは、今ではすべて崩壊している。したがって、現存しているアメリシウムは、チェルノブイリ原発事故のような原子力事故現場や大気圏核実験のため1945年から1980年の間に使用された領域と核燃料再処理施設周辺に集中している。例えば、アメリカ最初の水素爆弾アイビー作戦マイク実験(1952年11月1日、エニウェトク環礁)の核実験で使用された地点で回収された破片を分析したところ、高濃度のアメリシウムを含むアクチノイドが検出されたが、軍事機密のために検出の事実が公表されたのは1956年であった。
使用済核燃料にも含まれ、出力100万kWの軽水炉を2年間運転した後の使用済核燃料 1tには 5g(放射能強度、0.65兆ベクレル)が含まれるとされている。原子炉から取り出した後にもプルトニウム239 の崩壊により増加し、10年後に40g(放射能強度、5.2兆ベクレル)、100年後には93g(放射能強度、12兆ベクレル)となる[4]。また、再処理施設からの排水と共に排出される。
用途[編集]
アメリシウム 241 は、煙感知器や、厚さ計[5]に利用される。アメリシウム242は中性子ラジオグラフティーの中で使用される。しかしアメリシウムの合成は難しく、強い放射能のため非常に高価である。また、日本では使用されていない。
ベリリウムとの混合物は、中性子源となる。そのほか、放射線源としての利用もある。
検出[編集]
化学的に分離精製した測定試料から放出されるアルファ線を、シリコン半導体検出器で測定する。
同位体[編集]
詳細は「アメリシウムの同位体」を参照
アメリシウムには安定同位体が存在せず、すべてが放射性である。アメリシウムには18の同位体が確認されており、質量範囲はアメリシウム231からアメリシウム249までがある。
432年の半減期を持つアメリシウム241、141年のアメリシウム242、7370年のアメリシウム243が比較的安定している。残りは全てアメリシウム240の51時間よりも短い。さらにアメリシウムの同位体には八つの核異性体の同位体が存在している。
出典[編集]
1.^ Muller, W.; Schenkel, R.; Schmidt, H. E.; Spirlet, J. C.; McElroy, D. L.; Hall, R. O. A.; Mortimer, M. J. (1978). “The electrical resistivity and specific heat of americium metal”. Journal of Low Temperature Physics 30: 561. doi:10.1007/BF00116197.
2.^ グレン・シーボーグ 、レオン・モルガン、ラルフ・ジェームズ、アルバート・ギオルソ
3.^ 世界で一番美しい元素図鑑 セオドアグレイ著
4.^ アメリシウム-241 原子力資料情報室
5.^ アメリシウム厚み計 (TOSGAEG 153) 計測と制御 Vol.9 (1970) No.7 P543-544
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