2014年02月13日
ニオブ
ニオブ (英: niobium) は原子番号41の元素。元素記号は Nb。バナジウム族元素の1つ。
目次 [非表示]
1 概要
2 用途
3 主な産出国
4 歴史
5 製造
6 ニオブの化合物
7 同位体
8 出典
9 関連項目
概要[編集]
銀白色の軟らかい金属(遷移金属)。常温、常圧で安定な結晶構造は体心立方格子構造 (BCC) で、比重は8.56、融点は2415 °C(異なる実験値あり)、沸点は2900 °C(4758 °Cという実験値あり)。空気中で表面が不動態となる。耐食性、耐酸性があるが、酸化力のある酸やフッ化水素酸には可溶。水酸化カリウムに微溶。原子価は2価から5価までをとる。単体金属としては最高の絶対温度9.2 K(常圧下)で超伝導転移を起こす。
コルンブ石 (Fe,Mn)(Nb,Ta)2O6、パイロクロア(英語版)鉱石にタンタルと共に含まれる。資源としては埋蔵・産出とも世界の90 %以上をブラジルが占めている。日本名はドイツ語に由来。
タンタルに化学的性質がよく似ていて、鉱物中の結晶構造上でも共存している。金属としては、より軟らかく展性・延性に富み、加工し易い。
用途[編集]
鉄鋼添加剤としての用途が9割と大部分を占めているが、光学、電気、電子分野でも重要である。
鉄鋼添加剤フェロニオブとして添加される。自動車や石油パイプライン用の高張力鋼、海水に対する耐蝕性を高めたステンレス鋼、発電所や戦闘機エンジンのタービン用耐熱超合金など鋼中のニオブが炭素を安定化し粒間腐食を防止する。これにより鋼材の微小構造が保たれ、耐蝕性、耐熱性、耐衝撃性を高める効果を発揮すると考えられている。超硬工具炭化ニオブとして切削工具用超硬合金。スパッタリングターゲット材スズまたはチタンとの合金、高純度酸化物などが利用されている。高屈折率レンズ五酸化ニオブとして、光学ガラスの添加剤(鉛フリーの代替材としても検討されているが、価格が20倍)。光学薄膜主に蒸着やスパッタリングによって形成される。自動車・建築資材用ガラスやディスプレイ装置用の低反射膜、光学ディスク装置用ミラーの多層膜。光触媒酸化ニオブ(ニオビア、niobia)やニオブ酸塩に見られ、層状酸化物から得られるナノシートを利用した触媒や吸着機能の研究が進められている。これを利用した防汚ガラスがJR西日本により開発され、新幹線への導入が計画されている。超伝導磁石Nb3Ti、Nb3Sn などの金属間化合物として、MRI装置で普及しているほか、リニアモーターカーや核融合炉、粒子加速器などへの利用が予想されている。セラミック系の高温超伝導物質を除けば、比較的高い超伝導転移温度を持ち、金属として加工しやすいことから実用化が進んだが、転移温度が10-20 Kと低いため、長期的には新素材へ移行するものと見られる。圧電素子ニオブ酸リチウム(ナトリウム、カリウム塩も同様)の単結晶が強誘電体であることから、高周波発生装置、光変調素子(レーザー光の波長を変える)、表面弾性波フィルター(携帯電話などのノイズフィルタ)など。熱電素子チタン酸ストロンチウムにニオブを添加し、極薄導電体を挟み込んで熱電素子を作ると、温度差1 °Cに付き800 μVの起電力を発揮する。730 °C前後のエンジン/燃料電池排気の熱エネルギーを電気エネルギーとして回収できると期待されている[1]。コンデンサ金属粉末を焼結するなどした酸化物による、ニオブコンデンサ(電解コンデンサとセラミックコンデンサ)の誘電体。タンタルによる小型コンデンサが、携帯電話などの小型電子製品に不可欠となっている。埋蔵量が多く(タンタルの100倍とも)安定供給されているニオブを、その代替とする研究がすすめられてきた。放射化学天然安定同位体が1種しかないことから、人工同位体を作る材料として。その他高圧ナトリウムランプの電極部、垂直磁気記録方式の磁性体、ジョセフソン素子
主な産出国[編集]
ブラジル:特にミナスジェライス州のアラシャ(Araxá)鉱山だけで総産出量の8割を担っている。 ブラジルのパイロクロア鉱石は露天掘りされる上に品位が高く、採掘時で数%のニオブを含んでおり、選鉱すると酸化ニオブ(V)として65 %程度の精鉱が得られるという(価格安定の背景)。
カナダ:ブラジルに次ぐ。両者を合わせると99 %に達する。
このほか精製副産物としてタンタルの産出国などで回収されている。鉱石中のニオブとタンタルの含有比率は一定しておらず、特にコルンブ石とタンタル石は同じ構造で、どちらが多いかで名称が変わるため、コルタンと総称される。
歴史[編集]
化学的性質がタンタルと似ていたため、元素と確認されるまで紆余曲折があった。
18世紀初め、アメリカのニューイングランドでコルンブ石 (columbite) が発見。
1753年 コルンブ石が大英博物館に送られ、鉱物標本に。
1801年 標本を分析したチャールズ・ハチェットが未知の元素を発見し、鉱石名からコロンビウム (columbium, Cb) と命名[2]。
1802年 タンタルの発見[2]。
1809年 ウイリアム・ウォラストンによって両者は同じ元素とみなされ、タンタルに統合。
1846年 ドイツのハインリヒ・ローゼにより再発見され、ギリシャ神話のタンタロスの娘ニオベ (niobe) にちなんでニオブと命名。
1864年 コロンビウムがニオブだったことが確認される[2]。 その後、米英ではコロンビウム、日本を含む他の国ではニオブと呼ばれ、現在もアメリカではコロンビウムが使われている。
1949年 IUPAC により名称がニオブ (niobium) に統一。
製造[編集]
ニオブの主要用途である製鋼向けフェロニオブは、大部分がブラジルで精製鉱石を直接テルミット還元して生産されている。日本でも1950年代から1995年まで生産されていたが、ブラジルとカナダが鉱石の輸出を停止したため、撤退した(鉱石は日本でも産出するがコスト面から)。
一方、金属や高純度酸化物を得るための精製は主にアメリカで行われている。 方法としては溶媒抽出法が利用され、主成分が五酸化ニオブである精製鉱石を有機溶剤(MIBK、メチルイソブチルケトン)で抽出し酸で逆抽出する。条件を変えてタンタルとの分離を行い、またはアルカリ融解などでニオブ酸とした後、加水分解で酸化物を得る。 これを、アルミニウムテルミット還元、水素還元、電解還元などにより精製し、金属ニオブが得られる。
ニオブの化合物[編集]
炭化ニオブ (NbC)
酸化ニオブ(V) (Nb2O5)
塩化ニオブ(V) (NbCl5)
ニオブ酸バリウム (BaNb2O6)
ニオブ酸リチウム(LiNbO3) - 略称 LN
同位体[編集]
詳細は「ニオブの同位体」を参照
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1 概要
2 用途
3 主な産出国
4 歴史
5 製造
6 ニオブの化合物
7 同位体
8 出典
9 関連項目
概要[編集]
銀白色の軟らかい金属(遷移金属)。常温、常圧で安定な結晶構造は体心立方格子構造 (BCC) で、比重は8.56、融点は2415 °C(異なる実験値あり)、沸点は2900 °C(4758 °Cという実験値あり)。空気中で表面が不動態となる。耐食性、耐酸性があるが、酸化力のある酸やフッ化水素酸には可溶。水酸化カリウムに微溶。原子価は2価から5価までをとる。単体金属としては最高の絶対温度9.2 K(常圧下)で超伝導転移を起こす。
コルンブ石 (Fe,Mn)(Nb,Ta)2O6、パイロクロア(英語版)鉱石にタンタルと共に含まれる。資源としては埋蔵・産出とも世界の90 %以上をブラジルが占めている。日本名はドイツ語に由来。
タンタルに化学的性質がよく似ていて、鉱物中の結晶構造上でも共存している。金属としては、より軟らかく展性・延性に富み、加工し易い。
用途[編集]
鉄鋼添加剤としての用途が9割と大部分を占めているが、光学、電気、電子分野でも重要である。
鉄鋼添加剤フェロニオブとして添加される。自動車や石油パイプライン用の高張力鋼、海水に対する耐蝕性を高めたステンレス鋼、発電所や戦闘機エンジンのタービン用耐熱超合金など鋼中のニオブが炭素を安定化し粒間腐食を防止する。これにより鋼材の微小構造が保たれ、耐蝕性、耐熱性、耐衝撃性を高める効果を発揮すると考えられている。超硬工具炭化ニオブとして切削工具用超硬合金。スパッタリングターゲット材スズまたはチタンとの合金、高純度酸化物などが利用されている。高屈折率レンズ五酸化ニオブとして、光学ガラスの添加剤(鉛フリーの代替材としても検討されているが、価格が20倍)。光学薄膜主に蒸着やスパッタリングによって形成される。自動車・建築資材用ガラスやディスプレイ装置用の低反射膜、光学ディスク装置用ミラーの多層膜。光触媒酸化ニオブ(ニオビア、niobia)やニオブ酸塩に見られ、層状酸化物から得られるナノシートを利用した触媒や吸着機能の研究が進められている。これを利用した防汚ガラスがJR西日本により開発され、新幹線への導入が計画されている。超伝導磁石Nb3Ti、Nb3Sn などの金属間化合物として、MRI装置で普及しているほか、リニアモーターカーや核融合炉、粒子加速器などへの利用が予想されている。セラミック系の高温超伝導物質を除けば、比較的高い超伝導転移温度を持ち、金属として加工しやすいことから実用化が進んだが、転移温度が10-20 Kと低いため、長期的には新素材へ移行するものと見られる。圧電素子ニオブ酸リチウム(ナトリウム、カリウム塩も同様)の単結晶が強誘電体であることから、高周波発生装置、光変調素子(レーザー光の波長を変える)、表面弾性波フィルター(携帯電話などのノイズフィルタ)など。熱電素子チタン酸ストロンチウムにニオブを添加し、極薄導電体を挟み込んで熱電素子を作ると、温度差1 °Cに付き800 μVの起電力を発揮する。730 °C前後のエンジン/燃料電池排気の熱エネルギーを電気エネルギーとして回収できると期待されている[1]。コンデンサ金属粉末を焼結するなどした酸化物による、ニオブコンデンサ(電解コンデンサとセラミックコンデンサ)の誘電体。タンタルによる小型コンデンサが、携帯電話などの小型電子製品に不可欠となっている。埋蔵量が多く(タンタルの100倍とも)安定供給されているニオブを、その代替とする研究がすすめられてきた。放射化学天然安定同位体が1種しかないことから、人工同位体を作る材料として。その他高圧ナトリウムランプの電極部、垂直磁気記録方式の磁性体、ジョセフソン素子
主な産出国[編集]
ブラジル:特にミナスジェライス州のアラシャ(Araxá)鉱山だけで総産出量の8割を担っている。 ブラジルのパイロクロア鉱石は露天掘りされる上に品位が高く、採掘時で数%のニオブを含んでおり、選鉱すると酸化ニオブ(V)として65 %程度の精鉱が得られるという(価格安定の背景)。
カナダ:ブラジルに次ぐ。両者を合わせると99 %に達する。
このほか精製副産物としてタンタルの産出国などで回収されている。鉱石中のニオブとタンタルの含有比率は一定しておらず、特にコルンブ石とタンタル石は同じ構造で、どちらが多いかで名称が変わるため、コルタンと総称される。
歴史[編集]
化学的性質がタンタルと似ていたため、元素と確認されるまで紆余曲折があった。
18世紀初め、アメリカのニューイングランドでコルンブ石 (columbite) が発見。
1753年 コルンブ石が大英博物館に送られ、鉱物標本に。
1801年 標本を分析したチャールズ・ハチェットが未知の元素を発見し、鉱石名からコロンビウム (columbium, Cb) と命名[2]。
1802年 タンタルの発見[2]。
1809年 ウイリアム・ウォラストンによって両者は同じ元素とみなされ、タンタルに統合。
1846年 ドイツのハインリヒ・ローゼにより再発見され、ギリシャ神話のタンタロスの娘ニオベ (niobe) にちなんでニオブと命名。
1864年 コロンビウムがニオブだったことが確認される[2]。 その後、米英ではコロンビウム、日本を含む他の国ではニオブと呼ばれ、現在もアメリカではコロンビウムが使われている。
1949年 IUPAC により名称がニオブ (niobium) に統一。
製造[編集]
ニオブの主要用途である製鋼向けフェロニオブは、大部分がブラジルで精製鉱石を直接テルミット還元して生産されている。日本でも1950年代から1995年まで生産されていたが、ブラジルとカナダが鉱石の輸出を停止したため、撤退した(鉱石は日本でも産出するがコスト面から)。
一方、金属や高純度酸化物を得るための精製は主にアメリカで行われている。 方法としては溶媒抽出法が利用され、主成分が五酸化ニオブである精製鉱石を有機溶剤(MIBK、メチルイソブチルケトン)で抽出し酸で逆抽出する。条件を変えてタンタルとの分離を行い、またはアルカリ融解などでニオブ酸とした後、加水分解で酸化物を得る。 これを、アルミニウムテルミット還元、水素還元、電解還元などにより精製し、金属ニオブが得られる。
ニオブの化合物[編集]
炭化ニオブ (NbC)
酸化ニオブ(V) (Nb2O5)
塩化ニオブ(V) (NbCl5)
ニオブ酸バリウム (BaNb2O6)
ニオブ酸リチウム(LiNbO3) - 略称 LN
同位体[編集]
詳細は「ニオブの同位体」を参照
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