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2014年02月06日

人身売買

人身売買(じんしんばいばい)とは、人間を金銭などによってこれを売買する行為の事である。自ら身を売り出したり(借金の返済、親族に必要な金銭の用立てなど)、親が子を、また奴隷状態にある人を売買する事もあるが、誘拐などの強制手段や甘言によって誘い出して移送しする事も多い。人の密輸、ヒューマン・トラフィッキング(Human Trafficking)或いはトラフィッキング(Trafficking=交通)ともいわれ、また警視庁等はこれを人身取引と表現している。

その目的は、強制労働、性的搾取、臓器移植、国際条約に定義された薬物の生産や取引、貧困を理由として金銭を得る為の手段などにあり、人の移送が国境を越えて行われる場合も多い。1990年代以降、特に1996年の児童の商業的性的搾取に反対する世界会議以降、国際的な人身売買が国際問題として取り上げられることが多くなっている。 現代社会においては、おおむねどの国においても犯罪行為とされており、国際社会から忌み嫌われている。また、1949年に発効した国際連合の人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の「人身取引」に関する議定書、さらにジョグジャカルタ原則第11原則に於いても禁止されている。 裏を返せば人身売買は世界中で現在も行われているということでもあり、中国政府は児童誘拐年1万人(専門家は7万人)としている[1][2]。


概要[編集]

国際的な人身売買者に関わる国は、送出国・中継国・受入国の三つに分類される。 送出国には政情不安、軍国主義、社会不安、内戦、自然災害、経済状況の変化、差別、周囲や家族からの圧力などの要因(プッシュ要因)があり、また受入国には、性関連のサービスおよび児童との性行為、非合法な臓器移植や実験、テロリスト、過酷な条件下の労働等に対する需要(プル要因)がある。このため非合法な人身取引がビジネスとして成立する。

日本は性的搾取を目的とした女性の移送目的国となっているとされ、諸外国、特にアメリカ合衆国や欧州連合から批判を浴びている。

警察庁の人身取引被害者統計によれば、中国雲南省をはじめ地方農村部、メコン川流域のタイ、ミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナム、ウクライナなどの移送が多いとされている。

略取の対象には、反抗する力のない貧困層、少数民族、災害の罹災者、移民などのマイノリティーや、子供が選ばれやすい。これらの対象者は、出生届や身分を証明する書類もなく行政等の保護を受けづらいため、人身売買の対象とされやすい。 2005年のスマトラ島沖地震の際には、大災害の混乱に紛れ、人身売買を目的とした子供の誘拐が多発した。

ケースと流通[編集]


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この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(2012年2月)

まだ確認されていないケースや職業ごとの違いを除くと、人身売買が行われる過程の始まりは、甘言による騙しのケースが多い。 仲介者が対象に接触する際は、対象それぞれが持つ目的(貧困を解消するため、特定の職業や都会に対する夢など)に対して好意的な条件を持ち出し、対象とその家族を騙す。取引が成立したら、家族にお金を払い、対象を連れて行く。目的地はケースや職業によって違う。人身売買がされる職業は工場などでの強制労働や家政婦、性的搾取などである。 人身取引のケースに関してどれも共通していることがある。まず、逃げることが出来ないという点である。彼らが強制的に入れられている施設には監視カメラや有刺鉄線、鍵によるロックがされている。逃げようとした際には雇い主から暴行を受けるなどというケースもある。逃げた場合は家族を対象にするという脅迫や、将来に対する絶望、虐待、暴行により精神的に限界になり、気力を失ってしまったり、自殺を考え、逃げるという選択肢を失ってしまうこともある。 他に共通しているのは、雇い主、客から肉体的及び精神的なダメージを受けているということである。 また、警察が雇い主からお金を受け取り、対応をしないというケースも存在する。

世界的統計[編集]





米国国務省の2010年度レポート。緑ほど撲滅規制基準を達成している
「:en:Category:Human trafficking by country」も参照

アメリカ国務省は、「人身売買に関する年次報告書」を毎年発表している[3]。

国務省報告書の分類


Tier1
基準を満たす

Tier2
基準は満たさないが努力中

Tier2 WatchList
基準は満たさないが努力中で被害者数が顕著、かつ前年より改善が見られない、または次年以降の改善を約束しない

Tier3
基準を満たさず努力も不足

Tier2 WatchListとTier3は監視対象国。

[icon] この節の加筆が望まれています。

また、2010年報告書によると、不法に戦略核(戦術核)を保有・製造している国であるイランおよび北朝鮮の2ヶ国が最低ランク(Tier3)と発表している。2013年には、中国とロシアが最低ランクの「第3段階」に引き下げられた[4]。




国際的な取り組み[編集]

人身売買禁止議定書[編集]

2000年、国際組織犯罪防止条約を補完する議定書として国際連合国連総会で採択、2003年に発行された条約。日本は2005年(平成17年)6月8日、国会で承認した。日本国内では現在も人身売買が横行している状況である[5]。

民間人による防止策[編集]


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この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証し出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2012年2月)

国際的な手段および政府が防止策をとっているが、民間人にも日々の注意や関心で人身売買を防ぐのに貢献することができる。

主な手段としては、
人身売買についての情報や知識を正しく広める。
周りの人と話し合い、解決策を共に考える。
会社や人を雇ったり取引する際、取引の相手が人身売買や犯罪を犯していないかを確かめる。被害者の場合は警察や人身取引防止団体に連絡する。
人身売買に繋がる事が目の前で起きた際やその可能性、証拠を知った際、速やかに警察や人身取引防止団体に連絡する。
人身取引防止団体にお金や物品を寄付する。
海外に渡航する際は手続きを行ってくれる会社を良く考え、調べる。渡航後や手続き完了後、信頼を置ける会社だとわかれば友人などに伝えることも防止に繋がる。
以上のことを広める。

などが挙げられる。しかし、それでも日本では「人身売買撲滅のための最低基準を十分に満たしていない」とアメリカから批判されている[3]。

各国の事例[編集]

日本[編集]

日本人の人身売買[編集]

日本での人身売買に関する最古の記録は『日本書紀』676年(天武天皇5年)の売買許可願いである。下野の国司から凶作のため百姓の子どもの売買の申請が出され、不許可となっている。しかし、この許可願いの存在から、それ以前の売買の存在が推認されている。大宝律令・養老律令でも禁止はなされていたが、密売が行われていた。また奴婢の売買は公認されていた。

人買いの語が多く見られるのは鎌倉時代、室町時代である。「撰集抄」には幼童、青年、老人さえ金で売られることが記され、「閑吟集」には「人買船は沖を漕ぐ、とても売らるる身ぢやほどに、静かに漕げよ船頭どの」という歌がある。謡曲では「隅田川」「桜川」などが、古浄瑠璃の山椒大夫とともに有名である。

人身売買は現代においても暴力団が関与して発生したケースもあり、2007年には風俗店の女性従業員が遅刻や無断欠勤を理由に、暴力団員の同風俗店経営者に「罰金」と称して架空の借金(約150万円)を通告され返済を迫られ、女性は拒否して逃走するも同暴力団員に捕らえ、別の風俗店に売り渡される事件が発生、栃木県警が暴力団員と風俗店を人身売買罪を初適用して逮捕・検挙したことが報じられている[6]。

外国人労働者の人身売買[編集]

日本における日本人以外の人身売買も国内外から問題視されており、アメリカ国務省の2011年人身売買報告書[3]では、日本を「Tier2: 人身売買撲滅のための最低基準を十分に満たしていないが、満たすべく著しく努力している国」として挙げている。日本は目的国、供給国、通過国であることが指摘されている。

年次報告書によれば、日本企業の実施する「外国人研修・技能実習制度」が、賃金不払い、長時間労働、パスポートを取り上げるなどの不正行為によって移動の制限を行うなどにより、中国、東南アジア出身者の人権を蹂躙したり、暴力団組織が性風俗産業で外国人女性を強制労働させている実態を紹介し、日本政府による対応の不備を指摘した。Tier2の分類は7年連続となる。

警察庁が2000年から行なっている人身売買事例に関する統計[要出典]では、2003年までに検挙されただけでも81件・逮捕者164名で2003年度は前年度比+4件増加の一途を辿っていたという。同統計に関しては被害者の内173名がタイ、コロンビア53人、台湾25名などアジア・中南米が中心となっているが、ロシアからも12名が被害にあったと言う。これらでは、現地で「日本で働いて稼ごう」という募集に乗って応募したところ、渡航費や入国手続き・住む場所や職場の斡旋手数料などとして莫大な借金を負わせ、この完済に使役する・旅券などを取り上げ逃げ出さないよう行動を制限するというパターンが多いと言う。

こういった事情のうちには、従来これらの問題に際しては、刑法上の営利誘拐や(外国人の)不法就労、強制労働を禁じた法・売春防止法などで各々のケースに個別対応して、明確な奴隷および人身売買として深刻に対処されていなかったという背景と、これら人身売買被害者の外国人労働者では、このような被害の発覚の時点で不法就労により本国に強制送還され、人身売買加害者側の裁判では被害者を欠いた形で裁判が行なわれることも問題視されていた。このため2005年には刑法改正で人身売買が誘拐と並んで扱われるようになったり[7]、また人身売買被害者を強制退去させるのではなく、在留特別許可を与えて保護するなどの対応に切り替えている[8]。

このような対応の転換にもともない、アメリカ国務省は日本をTier2指定とするものの、依然として未解決の問題が存在していることを指摘している[3]。

日本の規制[編集]

2004年、日本は「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を経て「人身取引対策行動計画」を発表した。2005年6月には刑法を改正して「人身売買罪」を新設した。

朝鮮・韓国[編集]

李氏朝鮮[編集]

李氏朝鮮では強固な身分社会が築かれており、白丁や奴婢なる被差別階級が存在した。奴婢の人々は主人や政府の所有物とされ、金銭で売買されており、この身分から抜け出すのはかなりの困難を伴った。1894年の甲午改革によって廃止された。

日本統治下の朝鮮と慰安婦問題[編集]

[icon] この節の加筆が望まれています。





1933年に少女たちを誘拐して中国人に売り飛ばしていた朝鮮人男女が日本官憲によって検挙されたことを報じる東亜日報(1933年6月30日付)




朝鮮南部連続少女誘拐事件
日本統治下の朝鮮において朝鮮人売春斡旋業者による少女の誘拐・人身売買事件が多発した。犯人は女性業者の場合もあった。

詳細は「朝鮮南部連続少女誘拐事件」を参照

また日本軍慰安婦として人身売買が多発し、業者のみならず日本政府も関与していたとする主張があり、現在も日韓で歴史認識論争、外交問題にもなっている。

「慰安婦」も参照

脱北者と人身売買[編集]

北朝鮮脱北女性は人身売買の対象となっており、20−24歳の女性は7000元、25−30歳の女性は5000元、30歳以上は3000元で中国などに売られている[9]。

中華人民共和国[編集]

中華人民共和国では、毎年、数万人もの児童が誘拐され、売買されている。大半が男児とされる。背景には、一人っ子政策により、子供を多く持ちたくても持てないため、児童を買いたいという需要がある他、児童を買う家族に罰則が存在しないことがあげられる。多くは内陸の貧しい家庭から誘拐され、東部沿岸部の裕福な家庭に売られるという。家族が警察に訴えても、警察は捜査を拒むこともある。中国政府も対策には乗り出していない。児童売買に医師などが関与する例もある[10][11]。

中国では、東南アジアから売られてくる外国人の数も増えているとされる[12]。

アメリカ合衆国[編集]

「アメリカ合衆国の奴隷制度の歴史」および「アメリカ合衆国の人種差別」も参照

アメリカ合衆国では、特に南部のプランテーションで黒人奴隷が酷使されていた。西アフリカからアメリカには、1000万人もの奴隷が売られていった。アメリカでは、黒人を家族ごと購入する例があった。人道的な理由からではなく、こうすれば、その家族の子供が次代の奴隷となり、わざわざ奴隷商人から奴隷を買わなくても、奴隷の数を維持できるというのが主な理由であった。一部の州では奴隷制度廃止運動が盛んとなったが、アメリカ全土で奴隷制度が廃止されたのは、1840年、エイブラハム・リンカーンにより奴隷解放宣言、そして南北戦争による北軍が勝利した後のこととなる[13]。黒人以外にも、苦力と呼ばれた中国人など世界各地の有色人種が、労働力としてアメリカに売られていった。日本でも、石垣市にある唐人墓に眠る清人の悲劇などが伝わっている。

しかし、奴隷制が廃止されても、有色人種に対する苛烈な差別は根強く残り、現在でも根絶されていない。また、現在でも中南米などから女性を売買し、搾取する人身売買組織が存在する[14]。

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