2014年02月08日
ダマスカス鋼
ダマスカス鋼(ダマスカスこう、英: Damascus steel)は、かつて生産されていた、木目状の模様を持つ鋼である。強靭な刀剣の素材として知られるが、19世紀に生産が途絶えたため製法がはっきり分かっていない。
この鋼材の起源はインド発祥のウーツ鋼であるが、それがシリアのダマスカスで刀剣等に加工されていた。中世の十字軍遠征で兵士が西洋に持ち帰り、ダマスカス刀あるいはダマスカス鋼として西欧世界に知られるようになった。
目次 [非表示]
1 2種類のダマスカス鋼
2 再現の試み
3 デリーの鉄柱
4 脚注
5 関連項目
6 外部リンク
2種類のダマスカス鋼[編集]
現在は異なる2種類の鋼が同様にダマスカス鋼と呼ばれている。本来のダマスカス鋼による刀剣などの製品は10世紀頃から18世紀頃まで現在のシリアにあたる地域で製造されていたが、現在はインドでの鋼材の製造法など、製造技術が失われている。
ウーツ鋼とも呼ばれる高炭素鋼材、インドの一部地域に由来する鉄鉱石を原料とする。ウーツとは地名ではなくサンスクリット語で「硬い」あるいは「ダイヤモンド」の意。その特殊な不純物の組成から、るつぼ内で製鋼されたインゴット内にカーバイド(Fe3C)の層構造を形成し、これを鍛造加工することにより表面に複雑な縞模様が顕れる。刀剣用の高品質の鋼材として珍重された。その後の学術的な研究により、ほぼ完全な再現に成功していたと思われていたが、ドイツのドレスデン工科大学のペーター・パウフラー博士を中心とする研究グループによる調査で、ダマスカス鋼からカーボンナノチューブ構造が発見された[1][2]ことで、現代のダマスカス鋼の再現は完全でないことが判明した。
異種の鋼材を積層鍛造して、ウーツ鋼を鍛造したときに現れるものとよく似た縞模様を表面に浮かび上がらせた鋼材。安来鋼などと混ぜ合わせることにより現在は主に高級ナイフ用に用いられる。模様の映えを優先させる場合、炭素鋼と併せてニッケルが用いられることが多い。鋼材をモザイク上に組み合わせ、折り返し鍛造を行わないことによって任意の模様を浮かび上がらせることも可能である。また、鋼製のチェーンやワイヤーを鍛造することで製作するチェーンダマスカスやワイヤーダマスカスといった鋼材も知られる。
ウーツ鋼、積層鍛造鋼のどちらの場合でも、表面を酸で腐食させ、腐食度によって現れる凹凸や色の濃淡で模様を際立たせることが多い。
再現の試み[編集]
ダマスカス剣をうたった偽物(1580年から1600年ごろの製造)
ダマスカス刀剣の製法は19世紀に途絶えた。材料工学者の J. D. Verhoeven とナイフメーカーの A. H. Pendray らが、現存するダマスカス刀剣を解析することにより、当時の製法で同等の刀剣を鍛造している[3][4]。
製法はまず、鉄鉱石に木炭や生の木の葉をるつぼに入れ、炉で溶かした後にるつぼを割ると、ウーツ鋼のインゴットを得る。次に、ウーツ鋼からナイフを鍛造する。
ダマスカス刀剣の特徴となるダマスク模様として炭素鋼の粒子が層状に配列するためには鋼材に不純物として特にバナジウムが必要であったとされる。このことから、ウーツ鋼とダマスカス刀剣の生産が近代まで持続しなかった原因をインドに産したバナジウムを含む鉄鉱石の枯渇に帰する推測を行っている。
また本研究ではこの模様の再現についても検討を行っている。鍛造中のナイフ表面に縦に浅く彫り込みを入れた後に鍛造を行うことで、彫り込みの形状に沿った模様が生じた。直線状に彫り込んだ場合ははしご模様 (ladder pattern)、丸く彫り込んだ場合はバラ模様 (rose pattern) が生じる様が報告されている。 類似する模様出しの方法に日本伝統工芸の「木目金」(もくめがね)がある。
デリーの鉄柱[編集]
詳細は「デリーの鉄柱」を参照
インドのデリーにあるイスラム教礼拝所など歴史的建造物が集まっているクトゥブ・コンプレックス内には、紀元415年頃に作られたと見られている鉄柱(デリーの鉄柱、チャンドラバルマンの鉄柱とも呼ばれる)がある。
この鉄柱は1600年にわたって雨ざらしの状態であるにも拘らず錆びていないとして良く知られている。ダマスカス鋼が錆びにくいということからこの柱はダマスカス鋼ではないかと考えられたこともある。ただし地中内部は腐ってきている模様。(もっとも、ダマスカス鋼は「錆びにくい鉄」であって「錆びない鉄」ではない)。
この鋼材の起源はインド発祥のウーツ鋼であるが、それがシリアのダマスカスで刀剣等に加工されていた。中世の十字軍遠征で兵士が西洋に持ち帰り、ダマスカス刀あるいはダマスカス鋼として西欧世界に知られるようになった。
目次 [非表示]
1 2種類のダマスカス鋼
2 再現の試み
3 デリーの鉄柱
4 脚注
5 関連項目
6 外部リンク
2種類のダマスカス鋼[編集]
現在は異なる2種類の鋼が同様にダマスカス鋼と呼ばれている。本来のダマスカス鋼による刀剣などの製品は10世紀頃から18世紀頃まで現在のシリアにあたる地域で製造されていたが、現在はインドでの鋼材の製造法など、製造技術が失われている。
ウーツ鋼とも呼ばれる高炭素鋼材、インドの一部地域に由来する鉄鉱石を原料とする。ウーツとは地名ではなくサンスクリット語で「硬い」あるいは「ダイヤモンド」の意。その特殊な不純物の組成から、るつぼ内で製鋼されたインゴット内にカーバイド(Fe3C)の層構造を形成し、これを鍛造加工することにより表面に複雑な縞模様が顕れる。刀剣用の高品質の鋼材として珍重された。その後の学術的な研究により、ほぼ完全な再現に成功していたと思われていたが、ドイツのドレスデン工科大学のペーター・パウフラー博士を中心とする研究グループによる調査で、ダマスカス鋼からカーボンナノチューブ構造が発見された[1][2]ことで、現代のダマスカス鋼の再現は完全でないことが判明した。
異種の鋼材を積層鍛造して、ウーツ鋼を鍛造したときに現れるものとよく似た縞模様を表面に浮かび上がらせた鋼材。安来鋼などと混ぜ合わせることにより現在は主に高級ナイフ用に用いられる。模様の映えを優先させる場合、炭素鋼と併せてニッケルが用いられることが多い。鋼材をモザイク上に組み合わせ、折り返し鍛造を行わないことによって任意の模様を浮かび上がらせることも可能である。また、鋼製のチェーンやワイヤーを鍛造することで製作するチェーンダマスカスやワイヤーダマスカスといった鋼材も知られる。
ウーツ鋼、積層鍛造鋼のどちらの場合でも、表面を酸で腐食させ、腐食度によって現れる凹凸や色の濃淡で模様を際立たせることが多い。
再現の試み[編集]
ダマスカス剣をうたった偽物(1580年から1600年ごろの製造)
ダマスカス刀剣の製法は19世紀に途絶えた。材料工学者の J. D. Verhoeven とナイフメーカーの A. H. Pendray らが、現存するダマスカス刀剣を解析することにより、当時の製法で同等の刀剣を鍛造している[3][4]。
製法はまず、鉄鉱石に木炭や生の木の葉をるつぼに入れ、炉で溶かした後にるつぼを割ると、ウーツ鋼のインゴットを得る。次に、ウーツ鋼からナイフを鍛造する。
ダマスカス刀剣の特徴となるダマスク模様として炭素鋼の粒子が層状に配列するためには鋼材に不純物として特にバナジウムが必要であったとされる。このことから、ウーツ鋼とダマスカス刀剣の生産が近代まで持続しなかった原因をインドに産したバナジウムを含む鉄鉱石の枯渇に帰する推測を行っている。
また本研究ではこの模様の再現についても検討を行っている。鍛造中のナイフ表面に縦に浅く彫り込みを入れた後に鍛造を行うことで、彫り込みの形状に沿った模様が生じた。直線状に彫り込んだ場合ははしご模様 (ladder pattern)、丸く彫り込んだ場合はバラ模様 (rose pattern) が生じる様が報告されている。 類似する模様出しの方法に日本伝統工芸の「木目金」(もくめがね)がある。
デリーの鉄柱[編集]
詳細は「デリーの鉄柱」を参照
インドのデリーにあるイスラム教礼拝所など歴史的建造物が集まっているクトゥブ・コンプレックス内には、紀元415年頃に作られたと見られている鉄柱(デリーの鉄柱、チャンドラバルマンの鉄柱とも呼ばれる)がある。
この鉄柱は1600年にわたって雨ざらしの状態であるにも拘らず錆びていないとして良く知られている。ダマスカス鋼が錆びにくいということからこの柱はダマスカス鋼ではないかと考えられたこともある。ただし地中内部は腐ってきている模様。(もっとも、ダマスカス鋼は「錆びにくい鉄」であって「錆びない鉄」ではない)。
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