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2014年02月07日

アカシックレコード

アカシックレコード、アカシャ年代記(英: Akashic Records、アーカーシックレコードとも)は人類の魂の活動の記録の概念であり、アーカーシャに映る業(カルマ)の投影像とされる[1]。一般に話題に上るものは、暗黙的に、様々な問いかけに回答するエドガー・ケイシーのものを指しており、用語の影響力の及ぶ範囲では神智学上に定義されたものである[2]。

記録のあるアカシャ(サンスクリット: आकाश、アーカーシャ、阿迦奢)の漢訳は「虚空」であり、「上空」、「空間」を意味し、地と対をなす[注 1]一切を存在させる六界の一つ[注 2]である。虚空は目視できないが、存在が音によって確認され[注 3]、創造と帰滅または輪廻転生を象徴する蛇として象徴されることもある[3]。



目次 [非表示]
1 歴史 1.1 原型 - 「因果律」と「生命の書」
1.2 発祥の過程・神智学にて
1.3 顕在化・「アカシャ年代記より」
1.4 神智学協会内の権力抗争の過程にて
1.5 ニューエイジ思想の柱として

2 アクセスと性質
3 脚注 3.1 注釈
3.2 出典

4 参考文献
5 関連項目
6 外部リンク


歴史[編集]





Le livre du Ciel et du Monde 1377 ニコル・オレーム著。画家は不明。グノーシスの天使の領域「アストラル層」を描いたもの。神智学ではアイテール、アーカーシャ




ストア派(Stoicism)小宇宙図。アストラル体について、魂の乗り物と拘束の二面性が表現されている




神智学協会 Adyar 1890




ブラヴァツキー夫人(中央:創設者)とミード(右:秘教部門事務局長)[注 4]1891 London、ブラヴァツキー夫人は同年逝去。ミードは1909年にレッドビーター復職に反対して退会
原型 - 「因果律」と「生命の書」[編集]

「アカシックレコード」の直接の原型はブラヴァツキー夫人著作「シークレット・ドクトリン」の中の「生命(いのち)の書」(the Book of Life)[注 5]であり、源流はプラトン(BC427 - BC347)の神性(divine thought)とされる。この「生命の書」は七大天使の子である言葉、声、霊から創造された「リピカ」(記録者)が綴るアストラル光 (Astrsral light)で構成される見えざるキャンバスであり、アトランティス時代では「第三根本人種」の者達(多神教の神)が読み取ることができたという[4]。「アーカーシャ」に、壮大な画廊が形成されて人間の行動(カルマ)を記録するとともに[5]、この記録に対する応報の法則として、縁起(ニダーナ)や幻影(マーヤー)[6]を通じて因果律として機能し、また、すべての人はこの記録をたどるとしているが[7]、このうち、「アカシックレコード」として閲覧されるものは、アーカーシャに映るアストラル光の幻影(マーヤー)である。

「生命の書」は諸宗教に同様の定義があり、イスラム教では天の書板(al Lawf)[8]、仏教では四天王の記録、カバラでは四天使の記録と表現され、エゼキエル書や世界 (タロット)に描かれる四生物は人間の行動の記録者のイメージである[9]。

リピカの記録の媒体であるアストラルはギリシア語の「星」であるが、プラトンやアリストテレス(BC384 - BC322)は、星は四大元素と異なる物質「エーテル」(アストラル光)とし、人間の体が四大元素に加えアストラル体を含む小宇宙とされたことから、当時は「生命の書」を占星術により読み解くことができると考えられていた。
参考占星術は、プトレマイオス(83-168)著作の天文学書「アルマゲスト」及び占星術書「テトラビブロス」を基本とするが、前提の天動説では太陽や月は惑星であり、地動説に照らすと矛盾が生じる。シークレット・ドクトリンでは、特に太陽の扱いに苦慮しており、本来は天王星に与えられる位置づけを太陽に適用したものと説明している[10]。 この転換の過程において占星術では、ケプラー(1571 - 1630)がアスペクトという新しい考え方を提唱し、広く受け入れられるようになった。想定より遠方にある恒星は影響力が疑問視され、黄道十二星座はハウスに意味を残すのみになった[注 6]。
四大元素について、シークレット・ドクトリンでは太陽系内の人間の表現の性質としており、現代的な意味での元素と異なる概念としている[11]。また、第五元素「エーテル」は四大元素の内部の裏打ちとしてアカシャに存在しているという[12]。
シークレット・ドクトリンは1905年にアインシュタインの特殊相対性理論が発表される以前の著作物であり、光はエーテルを媒体とした波動であるという考えが強く残っていた時代の叢書として、随所に媒体としての記述が残っている。
アカシャの属性である音は、科学的には真空中を伝わらないとされるが、シークレット・ドクトリンでは「言葉」"Logos"に相当する、第4根源人種の後期において物質的な大きな発展を遂げた際に失われた器官によって認識されたものとしている。
神智学ではダーウィンのような進化論(evolution)を魂に適用した点が特徴的だが、適者生存ではなく成長に近いイメージが置かれるなど、内容は全く性質の異なるものである。神智学では、人類は自然界の中で上位の階層の霊的存在(大師)の導きによって進化することから、高位指導霊の霊媒からの情報が根幹となった。

発祥の過程・神智学にて[編集]





旧インダス川流域

「現代文明による科学によって明らかにされていない自然の"occult side"[13][注 7]を明らかにする」 - Eelena Petrovna Blavatsky 

− The Secret Doctrine PREFACE

神智学(Theosophy)は現代版グノーシス主義であり、名称はウァレンティノス派グノーシス神話における、プレーローマ(天)の30番目のアイオーン"Sophia"(女性格[14]の叡智・哲)に由来する。「神智学」はヤコブ・ベーメ[15](1575-1624)のオマージュであり[16]、推進団体である神智学協会の創設者はブラヴァツキー夫人とオールコットである(米国で独立社団となった米神智学協会の後継者のウイリアム・ジャッジ(1851-96)も設立時の創設者の一人に数えられる)。

神智学協会はインダス川流域(旧シンドゥ川とサラスヴァティー川)の弥勒菩薩・ミトラ神[注 8]信仰を多くの宗教の源流とする、比較宗教学の考え方に基づく普遍宗教の構築を目指す社団であって、人間の本来の居住地である「天上の世界」から、自らの好奇心によって地上に捕らえられ、天からの救出活動によって帰還するという、世界の神話に共通する元型としての宗教観を基本とした啓蒙活動を展開していた。

顕在化・「アカシャ年代記より」[編集]





左から初代会長オールコット、第2代会長アニー・ベサント、レッドビーター Adyar 1905

未熟な者が扱うと権力につながる危険がある - ルドルフ・シュタイナー 

− 「アカシャ年代記より」講演における回答(『アカシャ年代記より』補遺)

アカシャと記録を結びつけた成果物を公表したのは、ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)の「アカシャ年代記より」が最初であるが、同記中では、すでに神智学において定義されたものと解説されており、実際にヤコブ・ベーメや霊媒を用いた他の神智学者の年代記との類似性が見られ[17]、神智学協会における霊媒を用いた文献に近い内容になっている。ルドルフ・シュタイナーの主張から判断するところ、アカシャの記録は「形式」として権威付けを意図したものであり、ブラヴァツキー夫人のマハートマーレターも同様の「形式」として、文献の作成過程は個々の研究に依存していると暗示しても、意外感は持たれなかったようである。

神智学協会ドイツ支部事務総長ルドルフ・シュタイナーは、1904年から1908年の5年間にわたり「ルツィフェル・グノーシス」[18]において「アカシャ年代記より」を寄稿し、同時期の1910年にはレッドビーター(C.W.Leadbeater 1854-1934)が、アディヤールにおいて、アトランティス時代から28世紀の間の地球の歴史に関するアカシックレコードの霊視を行っている。
アカシャ年代記の世界観は、ニーチェの主張した、アポロン的な理性の暴走の時代へのアンチテーゼ[注 9]に沿っており、五感で認識できないディオニュソス的な精神世界の認識が説かれている。太陽紀が初期に置かれ、仮説としての水星の内惑星である高炉星の時代「ヴルカン紀」を後期に置いているが、ここにディオニュソス的な芸術や感性を重視したニーチェの思想の支持が表現されている。天上の精神世界観は、明示的にゲーテを参照したとしている。

神智学協会内の権力抗争の過程にて[編集]





シュタイナーとアニー・ベサント 1907。マイトレーヤ擁立を契機として離反
1907年に初代会長オールコットが死去すると、第二代会長となったアニー・ベサントが、神智学協会上層部(アディヤール派)に限定されたモリヤ大師による指示への絶対服従を各支部、全会員に求めはじめると、同社団はカルト集団的様相を帯び、学究的雰囲気が失われて形式的な組織になっていった。この動きに対する反発が、ブラヴァツキー夫人の跡目争いと暴露合戦の呈を示し始めると、退会者が相次ぎ、社会的な信用が目に見えて崩壊していった。

シュタイナーは、アニー・ベサントらが1911年に「星の教団」(Order of the Star in the East)[注 10]を設立した頃からアディヤール派と袂を分かち、1912年には人智学協会を設立する。世界各地において土着化したロッジ間、特に西洋と東洋の宗教の相違による各支部間の対立が顕在化し、アニー・ベサントによって高位霊媒への接触が禁止され、また、暴露合戦によってモリヤ大師等の書簡への信頼性が低下して[注 11]、退会者が相次いだ。

アニー・ベサントは1911年に社団の目的であった弥勒菩薩及び再臨キリストによる救済の実行者の擁立を目的として「星の教団」を組織し、世界教師の実体として養子ジッドゥ・クリシュナムルティ(1895-1986)を団長に擁立する。しかしクリシュナムルティは、絶対服従を拒む会員が退会して盲信的信者によって構成された「星の教団」に幻滅し、権威と組織の有害性を主張して1929年に教団を解散すると遊説生活を続けていく。

ニューエイジ思想の柱として[編集]

アカシックレコードという概念は、催眠状態における自我による説明に基づく医療行為によって、地元名士の娘を治療したことで、米国の新聞記事で取り上げられたエドガー・ケイシー(1877-1945)の名前とともに改めて知られるようになる。エドガー・ケイシーは神智学者アーサー・ラマース(Theosophist Arthur Lammers)[19]に導かれて、過去に疾病の治療に用いていたものを、神智学を応用するが如く人生の苦悩、輪廻転生やカルマの問題へ応用を広げている[20]。ニューエイジにおいて支持される同氏の神話的なエピソードは、アーサー・ラマースの時期に特に集中しており、必ずしもアカシックレコードのリーディング結果の神話的な的中率については、一部、記録によって確認できないものが含まれている。

同氏のリーディング結果に基づく啓蒙活動を行う米エドガー・ケイシーAssociation for Research and Enlightenment(A.R.E.)やルドルフ・シュタイナーの独・人智学協会は、ニューエイジ活動の積極的推進団体となっており、アカシックレコードが活動の構成要素として、あるいは神話化された思想や予言の源泉として、結果的に組み込まれていくことになる。A.R.E.の活動の背景には、以下のようなヤコブ・ベーメに由来するニューエイジ思想に特化した質問及びリーディング結果等がある。


ヤコブ・ベーメに多数の幻像が示された 〜 これはヨハネの黙示録の記述と等しい 〜 1998年、うお座とみずがめ座の狭間の変化 〜 うお座はキリストの入り口である 〜 この(みずがめ座の)時代には"Creative Force"の物質世界への応用に覚醒する...

− ECR 1602-3 3. 4. 8. 19. Ans.

ニューエイジは神智学を源泉として、ミトラ教とシークレット・ドクトリン[21]における、「水瓶座の時代の神話(春分点が黄道十二宮の宝瓶宮にある時代への、キリストに象徴されるうお座[22]からの推移の神話)」に由来する新しい占星術と精神世界の時代の幕開けを待望する思想である。これは、ネビル・ドゥルーリー(Nevill Drury b 1947)著作「ニューエイジ・四つの重要な予兆」においてスウェーデンボルグ(1688 - 1772)、フランツ・メスメル(Franz Anton Mesmer 1734-1815)、ブラヴァツキー夫人及びゲオルギイ・グルジエフ(George Gurdjieff 1872-1949)の4人の思想の重要性を説いたことが初端の一つにあり、同氏が同様に評価したヴィヴェーカーナンダ(Swami Vivekananda 1863-1902)を含め、カール・ユング[注 12]の主張例も交えて、エドガー・ケイシーやルドルフ・シュタイナーも参照される合成的な思想である。ルドルフ・シュタイナーは第六根源人種の出現をヨハネの黙示録の第六天使の象徴と重ねた友愛の時代[注 13]を宣言している。

米国で一般に「ニューエイジ」が知られるきっかけになったのは、女優シャーリー・マクレーンの"Out on a Limb"(1983)の影響が大きく、アカシックレコードは全ての人の潜在意識とつながる神と人間の共通の基盤として紹介されている。ニューエイジは現代社会の否定としての意味が強く、新たな精神世界の時代の到来を宣告する一方で、日本では輪廻転生、業や瞑想は"New"というほど目新しいものでもなく、批判対象のキリスト教が広く普及していないため、前衛的な印象が薄い[23]。現代科学、大量消費、環境破壊といった諸問題に対するカウンターカルチャーを形成し、活動家によっては、キリスト教会に対して、終焉を迎えるうお座の時代の象徴として遠慮無い批判を加えており、普遍宗教、Oneness、占星術、瞑想、音楽、疑似宗教、ホリスティック医療、環境保護、女性解放、超能力、疑似科学、古代文明、輪廻転生等を積極的に推進している(参照:List of New Age topics)。

「アカシックレコード」へのアクセス方法(チャネリング又はリーディング)が、ニューエイジ活動の中で醸成されていく。これらの方法は、ヨハネの黙示録においてヨハネが瞑想中に出会った高次の自我のエピソード[24]の理解を参考にして、瞑想によって、ハイアーセルフがアクセスした情報を顕在意識の自我が受け取るというものが基本となっており、場合によってはエドガー・ケイシーのように、催眠療法で情報を引き出すものもある。「アカシックレコード」は「人類の魂の記録」から、「神の無限の記録又は図書館」とも再定義され、汎用性のある情報源として謳われることがある[25]。歴史的に神智学協会の影響を強く受けて過去のエピソードと混じりながら確立された一面があり[注 14]、内容もカウンターカルチャーの影響を強く受けて、世界破滅や世界の転換といった内容のものが多い(例:2012年の世界の破滅等)。

アクセスと性質[編集]





エドガー・ケイシー 1910年
現時点において、再現性のある実用的なアカシックレコードへのアクセス方法の実績例はないが、リーディングを客観的に表現した例がエドガー・ケイシーの記録に示されている。到達不可能ではあるが、信仰によって達し得る境地の一つとして、物質世界の出来事は魂(創造主)の世界が投影されたものであって、目に見える世俗的な心が隔てているが、善と悪や精神と肉体といった二つの選択肢を含みつつ、キリストを通じた無限に対する調和によって合一することが可能であり、肉体の休息時に滞在する惑星の領域や魂の接点となる水元素を通じて、精神が肉体を離れているときに精神世界を視覚化することでアクセスされるとしている[26]。

エドガー・ケイシーのリーディングによると、個人の魂の記録は「生命の書」といい、ヨハネの黙示録における「天にある証しの幕屋の神殿」がアカシックレコード又は生命の書と同一のものと位置づけられている[27]。生命の書は人の獣性が強い時期において停止し[28]、常に、人による積極的な運命への反逆(黙示録又はアカシックレコードの加筆)がある[29]と述べられている。「獣の数字」に象徴される者は、超常能力を有して欲望のためにヨハネの黙示録やアカシックレコードの能力を用いるとされるように[30]、必ずしもリーディングを行う者に高い精神性が付随しているわけではない。

人類の魂は、無限の中で時間の制約を受けない性質を持っているため、人間の生活における時刻は意味が乏しく、時刻と完全に一致した運命の情報は存在しないことから[31](必ず生じる事象であっても、適切な時でなければ発動しない)、アクセスによって得られる時刻の情報は、相対的に得られる推定又は蓋然性に過ぎない。また、リーディングを行う者と受ける者の求める理解や経験が限界であることが暗示され[32]、得られる内容は、真に探し求めている知識に応じて、実体の経験と願望によって定まるものだという[33]。

エドガー・ケイシーによるリーディングの場合の、アクセス結果に影響を与えている過去世の経験として、エジプト転生時の高僧「ラータ」が方向性を与え[34]、ペルシャ転生時の医師の「ユールト」(Uhjltd)の負傷下での数日間の生死の狭間の苦痛の忍耐が能力に力を与え[35]、医療に関する情報への同調を可能にしていると言及されている。一時的にギャンブルに助力している例があるが、これは過去に「ジョン・ベインブリッジ」という、後にならず者の放浪者になった英国の兵士[注 15]に転生した際に獲得した能力とされ、新約聖書時代のルカによる福音書の実質的な記者「キレネ人のルキオ」[36]への転生が聖書の解釈に関する能力を与えたと指摘されている。

いずれにしても、アカシックレコードから得られる情報は個人の過去生や意識上の関心に根ざした指向性が見られ、時々民族差別的な内容が含まれたり、エドガー・ケイシーの前世では経験のない油田発掘や富豪に至る能力を発揮したリーディング例がないなどに現れており、病院建設資金の収集や日々の生活に苦慮しているところにも見られる。
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