ツナグ・・・辻村深月さんという直木賞作家の著書です。
不思議な題名でパラパラとめくってみたら
面白そう・・・購入しました。
著書の帯に ”あなたがもう一度、会いたい人は誰ですか?” と
あります。
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一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれる ”使者(ツナグ)”
死者に会う・・・疑いながらも、もう一度あの人に会って話がしたい・・・
死者に会う・・・そんな馬鹿なこと出来るわけない・・・
そう思いながらも一縷の望みを それぞれの立場で ”使者”に託す
人たちの思いを丹念に描いていきます。
死者の住むあの世と現世を繋ぐ役目が使者ですが
いくら現世の人間が会いたいと言っても死者が会いたくないと
断れば会えないのです。また、死者が現世の人間と会えるのは
一度だけで、一人だけ。
読みながら思いました。自分なら誰と会いたいか・・・
”使者(ツナグ)” に頼むその相手は・・・・・やはり、父親かな・・・
だって、別れも言わずに突然、死んでしまいましたからね。
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私の父親は朝食の時に倒れてそのまま、帰らぬ人と
なりました。 もう、9年前のことです。
前の日に実に詰まらぬ仔細なことが原因で父親を咎めました。
もとより、親には優しくはない自分でしたが
この時のことは次の日に父親が死んだ・・・ということもあってか、
えらく鮮明に覚えています。
前の日に晩御飯のことで父親がブツブツ、イチャモンを
つけ始めました。いつもはこんなこと言いません。
父親から男は食事のことで文句を言うな、
みっともない・・・という事を
以前よく聞かされておりました。
その当の本人の口から思わぬ言葉を聴き、
最初は黙っていましたが、止まりそうにないので私が遮りました。
ところが私は言い始めると
ひどい言葉が次から次に出て、父親は何も言わず
テーブルから逃げていきました。
「何もそこまで言わなくても・・・」と私を止める母親にも
酷いことを言いました。
そんな他人から見ればどうでもいいような諍いのあった
次の朝、父は死にました。心筋梗塞であったようです。
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父にもし、会えたら二つだけ言いたいことがあります。
「この世にいた時は幸せだった? そう思える時があった?
こんな息子がいたから、そうじゃなかったかも知れないけど・・・」
もう一つ
「俺がおやじを殺しゃったようなものだね・・・・・・
あの朝、雪がものすごく降っていて渋滞がひどくって
俺、病院に行く途中、一旦家に帰って腑抜けのような状態の
お袋に声を掛けて病院に行ったけど結局、間に合わなかったよ。
あまりに急だったからサヨナラも言えなかった。 ごめんも・・・・
おやじが突然いなくなるものだから、あとでずいぶん苦労したよ。
まあ、これは日頃往生で自業自得だけどね。
おじさん、おばさん おやじの兄弟がみんな、そっちに行ったけど
楽しくやってるか? 俺もそっちへ行くけど嫌わないでくれよ」 ・・・
いやいや、父は案外もう私なんかに会いたくないと
”使者”に言うかも知れません。
コンドルは飛んでゆく サイモン&ガーファンクル
親父が好きな曲でした