2018年01月14日
4-2-1.(c1) 米国景気指標「NY連銀製造業景気指数」発表前後のUSDJPY反応分析(2018年版)
米国景気指標「NY(ニューヨーク)連銀製造業景気指数」の指標発表前後の反応分析には総合値のみを用います。
この分析の調査範囲は、2015年1月集計分〜2017年12月集計分(同年12月発表分)の36回分です。
NY連銀管轄のNY州製造業約200社の経営者の景況感と現状を指数化した指標です。
具体的内容は、仕入価格・販売価格・新規受注・出荷・入荷遅延・在庫水準・受注残・雇用者数・週平均就業時間などの11項目を、1ヶ月前と比較した「現状」と6ヶ月後の「期待」を、「良い」「同じ」「悪い」から選択して指数化したものです。
米国の主要製造業景気指数には、NY連銀製造業景気指数、Phil(フィラデルフィア)連銀製造業景気指数、RVA(リッチモンド)連銀製造業景気指数、ISM製造業景況指数があります。
各指数の過去3年間の直後1分足跳幅と直後11分足値幅を比較すると、NY連銀指数=ISM指数>Phil連銀指数>RVA連銀指数となります。
おやっと思った方も多いと思います。
最近のNY連銀指数への反応はISM指数に匹敵しているのです。尤も、米国製造業景気指数は個々の指数への反応は大きくありません。4回の発表の合計で30〜50pips跳ねると思っておけば良いのです。
そして「おやっと思った方が多いのでは」と書いたのは、多くの指標解説で「NY連銀指数で様子を見て、Phil連銀指数でそれを確認し、ISM指数を迎える」と良い旨が記されているからです。この話では、ISM指数が最も重要視され、NY連銀指数が最も軽んじられているようにも読めるからです。
詳細はISM製造業景況指数の稿で記したように、この関係はそこそこアテになります(NY連銀指数とPhil連銀指数の実態差異が方向一致した集計月は、ISM指数の実態差異もそれらと方向一致率が82%にもなる)。
この関係がそこそこアテになるから、ISM指数への反応が小さくなる、とも言える訳です。
反応を大きくするのは指標発表時に限らず、@ 予想対象外の意外性や新たな判断基準の判明、A 新たに判明した事実が、それまでの多くの予想(市場予想)とどれだけ差異があるか(事後差異の方向と大きさ)、B 新たに判明した事実(発表結果)が、前回の同様発表時の結果とどれだけ差異があるか(実態差異の方向と大きさ)、です。
経験上の話で定量的検証を経ていない話で恐縮ながら(厳密な定義が難しいために定量化できない)、指標発表に限らず反応に寄与するのは、@>A>B、の順です。
@とABの違いは、切り口の違いや当局新方針の判明の有無です。例えば、ここ数年では日銀の「異次元」緩和、です。それまでと違う切り口や今後の取引方針が新たに示されたことが意外性や基準の判明です。
AとBの違いは、定例化・定型化された指標発表や当局コメント発表が、市場予想内容や直近過去内容とどれだけ違うかです。
NY連銀指数やPhil連銀指数の結果が判明してからISM指数が発表されるので、ISM指数にはもともとBが期待されています。前述の「NY連銀指数で様子を見て、Phil連銀指数でそれを確認し、ISM指数を迎える」という話は良い知られているので、若干の@が期待されています(NY連銀指数とPhil連銀指数の実態差異が一致しているにも関わらず、ISM指数の実態差異がそれと一致しない、という意外性への期待)。
ともあれ、こうしてよく考えてみると、NY連銀指数は調査対象企業が少なく大したことのない指標の割に反応が大きい、と言える訳です。説明が長くなって取引上の実益に結び付かないこうした話こそが、本指標最大の特徴と言えるでしょう。
過去の4本足チャートの各ローソク足平均値と、最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅の分布を下表に纏めておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足跳幅は、過去平均で14pipsです。平均の2倍を超えて跳ねたことが14%ある一方、平均の1/2以下しか反応しなかったことも31%あり、反応がばらつく指標です。
次に、直近3年間の反応平均値の推移を下図に示します。
毎回の発表で直後1分足跳幅がばらつく割に、過去3年間の反応は年ごとに平均すると安定していることがわかります。
そして、直後1分足値幅と直後11分足値幅の分布を確認しておきます。
直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが1.11となっており、平均的には反応が伸びる指標、と言えます。
そして、対角線(黒線)上下のドット分布を見ても、いわゆる「抜けたら追う」べき閾値(しきいち)が、直後1分足が陽線だったときに20pips強付近にあるようです。
分析には、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
本指標発表値は前月分の集計データです。グラフ横軸は集計月基準となっています。データは集計月基準で整理しておかないと、他の同月集計の指標(例えばPhilr連銀製造業景気指数やISM製造業景況指数)と対比するのが不便になるからです。
グラフ推移は、2016年1月集計分をボトムに上昇基調が続いています。
この傾向はISM指数と一致し、Phil連銀指数とは少し様子が異なります。Phil連銀指数のみは、2017年後半頃から上下の変動が大きく、ISM指数との相関が薄れているように思えます。
だから、NY連銀指数への反応がPhil連銀指数への反応より大きい、という訳ではありません。反応程度が、NY連銀指数=ISM連銀指数>Phil連銀指数、となっているのは2017年後半になって始まった話ではないからです。
指標一致性分析は、各差異と反応方向の一致率を調べています。
市場予想は前回結果より高くなりがち(69%)、発表結果は市場予想より低くなりがち(61%)です。けれども、実態差異はプラス率もマイナス率も50%です。
これは2016年から本指標が上昇基調だったからではありません。上昇基調のときより下降基調のときの方が市場予想は高めになりがちです。それより、2016年以降は上昇基調なのに、実態差異の方向に偏りがないことの方が面白いですね。実態差異のプラスのときに差異が大きく、マイナスのときに差異が小さくないと、上昇基調は維持できません。
事後差異と直後1分足の方向一致率が71%、実態差異と直後11分足の方向一致率が69%、となっています。一方、事前差異と直前10-1分足や直前1分足とは方向一致率が40%未満です。
指標発表前は事前差異と逆方向に反応しがち、指標発表後は事後差異や実態差異と順方向に反応しがちです。後者は当たり前ですが、前者は意外ですね。
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
直前1分足の陰線率が80%と、かなり偏りがあります。直後1分足と直後11分足はやや陽線だったことが多いようですが、これは調査対象期間の2/3が上昇基調だったことから、自然な偏りだと言えるでしょう。
直前10-1分足と直前1分足の方向一致率は30%(不一致率70%)で、両者は逆方向に反応しがちです。そして、直前1分足は直後11分足との方向一致率が30%(不一致率70%)となっています。
本指標では直前1分足の方向が鍵となることが多いようです。
反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は72%です。その72%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは77%です。
指標発表後の反応が暫く伸び続けるのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃開始です。そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが65%あります。この数字なら早期追撃開始で得たポジションを、比較的長めに持っても良いかも知れません。
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しておきます。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足の過去平均跳幅は6pips、同値幅は5pipsです。値幅方向に対する逆ヒゲが5pips以上となったことは3回しかありません(頻度8%)。
直前10-1分足が10pips以上跳ねたことは過去5回あります(頻度14%)。
その5回の直後1分足跳幅は平均16pipsで、直後1分足跳幅の過去全平均(14pips)とほぼ同じです。回数で見ると、5回のうち3回が平均を超えて跳ねており、2回は平均以下しか跳ねていません。また、この5回の直前10-1分足の値幅方向が直後1分足の値幅方向と一致したことは2回(一致率40%)です。
よって、直前10-1分足が大きく跳ねても、それが指標発表直後1分足の反応程度や反応方向を示唆している訳ではありません。だから、慌てて釣られないようにしましょう。
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
反応一致性分析の項で述べたように陰線率が高いことは一目瞭然ながら、最近に限ってははそうとも言えません。
直前1分足跳幅が10pips以上だったことは過去1回しかありません(頻度3%)。
その1回の直後1分足跳幅は6pipsで、そのときは直後1分足が直前1分足と逆方向に反応しています。事例が少なすぎて参考になりませんね。
直前1分足の過去平均跳幅は4pips、同値幅は3pipsです。陰線だったときには、陽線側に1・2pipsの逆ヒゲを形成することが多いことが見て取れます。
だからこの期間に取引するなら、陽線側に2pips跳ねたら、ショートで逆張りです。それで年間を通して勝てそうです。利確・損切の目安は2・3pipsとしておけば良いでしょう。陽線側に跳ねなければ、取引を止めれば良いのです。
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
まずは逆ヒゲを形成したことがほとんどなく、順方向も含めても大きなヒゲを形成することが少ないことに注目しましょう。平均的なヒゲの長さ(1ー値幅/跳幅=戻り比率)は跳幅に対して30%未満となっています。
これは反応方向に迷いが少なく、指標結果の良し悪しに対する反応持続時間が1分を超えているため、と解釈できます。
そのため、本指標の多くの細かな発表項目なんて無視して、主たる指数だけを見ておけば良いことがわかります。事後差異と直後1分足との方向一致率は、反応一致性分析で記したように71%あるのです。
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
反応性分析の結果、回数的には直後1分足終値を超えて直後11分足終値が反応を伸ばしたことは、50%未満となっています。前述の通り、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺うべきです。
例外は、直後1分足が陽線に跳幅20pipsを超えたときだけです。
直後11分足跳幅が20pipsを超えたことは過去15回あります(頻度42%)。そのうち陽線だったことは6回です。
この6回は直後1分足もほとんど上ヒゲがない陽線でした。そして、直後11分足跳幅が直後1分足跳幅を超えたことが過去100%です。
直後1分足が陽線方向に跳幅20pipsを超えたら、即時追撃開始です。
陽線だった場合、直後1分足終値が付けた時点で追撃を開始しても手遅れではありません。直後1分足値幅が20pipsを超えた場合と上述の6回は一致しています。値幅に関しては、その6回のうち1回が直後1分足値幅を直後11分足値幅が削っています。
6回のうち5回は反応を伸ばしているのだから、直後1分足終値で確実を期して追撃ポジションを追加しても良いでしょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択肢と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
本ブログを始めてからの本指標での取引成績を下表に纏めておきます。
2017年は、本指標で5回の取引を行い、指標単位で4勝1敗(勝率80%)、シナリオ単位で8勝1敗(勝率89%)でした。1回の発表毎の平均取引時間は4分10秒で、損益は年間で+21.42pipsでした。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
この分析の調査範囲は、2015年1月集計分〜2017年12月集計分(同年12月発表分)の36回分です。
T.定性的傾向
【1. 指標概要】
NY連銀管轄のNY州製造業約200社の経営者の景況感と現状を指数化した指標です。
具体的内容は、仕入価格・販売価格・新規受注・出荷・入荷遅延・在庫水準・受注残・雇用者数・週平均就業時間などの11項目を、1ヶ月前と比較した「現状」と6ヶ月後の「期待」を、「良い」「同じ」「悪い」から選択して指数化したものです。
米国の主要製造業景気指数には、NY連銀製造業景気指数、Phil(フィラデルフィア)連銀製造業景気指数、RVA(リッチモンド)連銀製造業景気指数、ISM製造業景況指数があります。
各指数の過去3年間の直後1分足跳幅と直後11分足値幅を比較すると、NY連銀指数=ISM指数>Phil連銀指数>RVA連銀指数となります。
おやっと思った方も多いと思います。
最近のNY連銀指数への反応はISM指数に匹敵しているのです。尤も、米国製造業景気指数は個々の指数への反応は大きくありません。4回の発表の合計で30〜50pips跳ねると思っておけば良いのです。
そして「おやっと思った方が多いのでは」と書いたのは、多くの指標解説で「NY連銀指数で様子を見て、Phil連銀指数でそれを確認し、ISM指数を迎える」と良い旨が記されているからです。この話では、ISM指数が最も重要視され、NY連銀指数が最も軽んじられているようにも読めるからです。
詳細はISM製造業景況指数の稿で記したように、この関係はそこそこアテになります(NY連銀指数とPhil連銀指数の実態差異が方向一致した集計月は、ISM指数の実態差異もそれらと方向一致率が82%にもなる)。
この関係がそこそこアテになるから、ISM指数への反応が小さくなる、とも言える訳です。
反応を大きくするのは指標発表時に限らず、@ 予想対象外の意外性や新たな判断基準の判明、A 新たに判明した事実が、それまでの多くの予想(市場予想)とどれだけ差異があるか(事後差異の方向と大きさ)、B 新たに判明した事実(発表結果)が、前回の同様発表時の結果とどれだけ差異があるか(実態差異の方向と大きさ)、です。
経験上の話で定量的検証を経ていない話で恐縮ながら(厳密な定義が難しいために定量化できない)、指標発表に限らず反応に寄与するのは、@>A>B、の順です。
@とABの違いは、切り口の違いや当局新方針の判明の有無です。例えば、ここ数年では日銀の「異次元」緩和、です。それまでと違う切り口や今後の取引方針が新たに示されたことが意外性や基準の判明です。
AとBの違いは、定例化・定型化された指標発表や当局コメント発表が、市場予想内容や直近過去内容とどれだけ違うかです。
NY連銀指数やPhil連銀指数の結果が判明してからISM指数が発表されるので、ISM指数にはもともとBが期待されています。前述の「NY連銀指数で様子を見て、Phil連銀指数でそれを確認し、ISM指数を迎える」という話は良い知られているので、若干の@が期待されています(NY連銀指数とPhil連銀指数の実態差異が一致しているにも関わらず、ISM指数の実態差異がそれと一致しない、という意外性への期待)。
ともあれ、こうしてよく考えてみると、NY連銀指数は調査対象企業が少なく大したことのない指標の割に反応が大きい、と言える訳です。説明が長くなって取引上の実益に結び付かないこうした話こそが、本指標最大の特徴と言えるでしょう。
【2. 反応概要】
過去の4本足チャートの各ローソク足平均値と、最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅の分布を下表に纏めておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足跳幅は、過去平均で14pipsです。平均の2倍を超えて跳ねたことが14%ある一方、平均の1/2以下しか反応しなかったことも31%あり、反応がばらつく指標です。
次に、直近3年間の反応平均値の推移を下図に示します。
毎回の発表で直後1分足跳幅がばらつく割に、過去3年間の反応は年ごとに平均すると安定していることがわかります。
そして、直後1分足値幅と直後11分足値幅の分布を確認しておきます。
直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが1.11となっており、平均的には反応が伸びる指標、と言えます。
そして、対角線(黒線)上下のドット分布を見ても、いわゆる「抜けたら追う」べき閾値(しきいち)が、直後1分足が陽線だったときに20pips強付近にあるようです。
U.定量的傾向
分析には、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
【3. 回数分析】
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
本指標発表値は前月分の集計データです。グラフ横軸は集計月基準となっています。データは集計月基準で整理しておかないと、他の同月集計の指標(例えばPhilr連銀製造業景気指数やISM製造業景況指数)と対比するのが不便になるからです。
グラフ推移は、2016年1月集計分をボトムに上昇基調が続いています。
この傾向はISM指数と一致し、Phil連銀指数とは少し様子が異なります。Phil連銀指数のみは、2017年後半頃から上下の変動が大きく、ISM指数との相関が薄れているように思えます。
だから、NY連銀指数への反応がPhil連銀指数への反応より大きい、という訳ではありません。反応程度が、NY連銀指数=ISM連銀指数>Phil連銀指数、となっているのは2017年後半になって始まった話ではないからです。
(3.1 指標一致性分析)
指標一致性分析は、各差異と反応方向の一致率を調べています。
市場予想は前回結果より高くなりがち(69%)、発表結果は市場予想より低くなりがち(61%)です。けれども、実態差異はプラス率もマイナス率も50%です。
これは2016年から本指標が上昇基調だったからではありません。上昇基調のときより下降基調のときの方が市場予想は高めになりがちです。それより、2016年以降は上昇基調なのに、実態差異の方向に偏りがないことの方が面白いですね。実態差異のプラスのときに差異が大きく、マイナスのときに差異が小さくないと、上昇基調は維持できません。
事後差異と直後1分足の方向一致率が71%、実態差異と直後11分足の方向一致率が69%、となっています。一方、事前差異と直前10-1分足や直前1分足とは方向一致率が40%未満です。
指標発表前は事前差異と逆方向に反応しがち、指標発表後は事後差異や実態差異と順方向に反応しがちです。後者は当たり前ですが、前者は意外ですね。
(3.2 反応一致性分析)
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
直前1分足の陰線率が80%と、かなり偏りがあります。直後1分足と直後11分足はやや陽線だったことが多いようですが、これは調査対象期間の2/3が上昇基調だったことから、自然な偏りだと言えるでしょう。
直前10-1分足と直前1分足の方向一致率は30%(不一致率70%)で、両者は逆方向に反応しがちです。そして、直前1分足は直後11分足との方向一致率が30%(不一致率70%)となっています。
本指標では直前1分足の方向が鍵となることが多いようです。
(3.3 反応性分析)
反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は72%です。その72%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは77%です。
指標発表後の反応が暫く伸び続けるのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃開始です。そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが65%あります。この数字なら早期追撃開始で得たポジションを、比較的長めに持っても良いかも知れません。
【4. 特徴分析】
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しておきます。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足の過去平均跳幅は6pips、同値幅は5pipsです。値幅方向に対する逆ヒゲが5pips以上となったことは3回しかありません(頻度8%)。
直前10-1分足が10pips以上跳ねたことは過去5回あります(頻度14%)。
その5回の直後1分足跳幅は平均16pipsで、直後1分足跳幅の過去全平均(14pips)とほぼ同じです。回数で見ると、5回のうち3回が平均を超えて跳ねており、2回は平均以下しか跳ねていません。また、この5回の直前10-1分足の値幅方向が直後1分足の値幅方向と一致したことは2回(一致率40%)です。
よって、直前10-1分足が大きく跳ねても、それが指標発表直後1分足の反応程度や反応方向を示唆している訳ではありません。だから、慌てて釣られないようにしましょう。
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
反応一致性分析の項で述べたように陰線率が高いことは一目瞭然ながら、最近に限ってははそうとも言えません。
直前1分足跳幅が10pips以上だったことは過去1回しかありません(頻度3%)。
その1回の直後1分足跳幅は6pipsで、そのときは直後1分足が直前1分足と逆方向に反応しています。事例が少なすぎて参考になりませんね。
直前1分足の過去平均跳幅は4pips、同値幅は3pipsです。陰線だったときには、陽線側に1・2pipsの逆ヒゲを形成することが多いことが見て取れます。
だからこの期間に取引するなら、陽線側に2pips跳ねたら、ショートで逆張りです。それで年間を通して勝てそうです。利確・損切の目安は2・3pipsとしておけば良いでしょう。陽線側に跳ねなければ、取引を止めれば良いのです。
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
まずは逆ヒゲを形成したことがほとんどなく、順方向も含めても大きなヒゲを形成することが少ないことに注目しましょう。平均的なヒゲの長さ(1ー値幅/跳幅=戻り比率)は跳幅に対して30%未満となっています。
これは反応方向に迷いが少なく、指標結果の良し悪しに対する反応持続時間が1分を超えているため、と解釈できます。
そのため、本指標の多くの細かな発表項目なんて無視して、主たる指数だけを見ておけば良いことがわかります。事後差異と直後1分足との方向一致率は、反応一致性分析で記したように71%あるのです。
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
反応性分析の結果、回数的には直後1分足終値を超えて直後11分足終値が反応を伸ばしたことは、50%未満となっています。前述の通り、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺うべきです。
例外は、直後1分足が陽線に跳幅20pipsを超えたときだけです。
直後11分足跳幅が20pipsを超えたことは過去15回あります(頻度42%)。そのうち陽線だったことは6回です。
この6回は直後1分足もほとんど上ヒゲがない陽線でした。そして、直後11分足跳幅が直後1分足跳幅を超えたことが過去100%です。
直後1分足が陽線方向に跳幅20pipsを超えたら、即時追撃開始です。
陽線だった場合、直後1分足終値が付けた時点で追撃を開始しても手遅れではありません。直後1分足値幅が20pipsを超えた場合と上述の6回は一致しています。値幅に関しては、その6回のうち1回が直後1分足値幅を直後11分足値幅が削っています。
6回のうち5回は反応を伸ばしているのだから、直後1分足終値で確実を期して追撃ポジションを追加しても良いでしょう。
V.分析結論
本指標の特徴は以下の通りです。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択肢と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
- 意外なことに、本指標は米国製造業景気指数の中で指標発表直後の反応がISM製造業景況指数と同程度に大きくなりがちです。
と言っても、直後1分足跳幅の過去平均値は14pipsしかありませんが。
市場予想は前回結果より高めになりがち(69%)で、発表結果は市場予想を下回りがち(61%)です。反応方向は、市場予想に対する良し悪しに素直で(方向一致率71%)、反応時間は指標発表後1分を過ぎても継続します。けれども、10分は保ちません。 - 指標発表前には、直前10-1分足や直前1分足が事前差異と逆方向に反応することが60%を超えています。
直前1分足の陰線率は80%とかなり偏りがあるものの、2017年以降の陰線率は70%です。勝率を高めるためには、直前10-1分足が陽線だったときだけ、直前1分足が陽線側に2pips跳ねた時点でショートで逆張りする方が良いでしょう。
直前10-1分足が陰線だったり、直前1分足が陽線側に跳ねなければ取引を止めれば良いのです。必然的に取引時間はかなり短くならざるを得ないので、利確・損切の目安は2・3pipsのつもりでいれば良いでしょう。 - 発表時刻を跨ぐポジションには、過去の発表結果が市場予想を下回りがちなこと(期待的中率61%)か、直前1分足と直後11分足の方向一致率が70%な点に着目すれば良いでしょう。
直前10-1分足や直前1分足がたまに10pips以上跳ねることがあります。けれども、それに釣られて追撃ポジションを持つことは避けた方が良いでしょう。
指標発表前のこの動きは、直後1分足の方向を示唆している訳ではありません。 - 指標発表後は、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は72%です。その72%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは77%です。
けれども、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは47%しかありません。指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺うべきです。 - 再追撃は、直後1分足が形成途中であれ終値であれ、陽線側に20pipsを超えたらロングを追加しても良いでしょう。
直後1分足が陽線で跳幅20pipsを超えた場合、直後11分足跳幅は直後1分足跳幅を過去100%超えています。値幅で見ても、直後1分足が陽線で値幅20pipsを超えたときは、直後11分足値幅が直後1分足値幅を削ったことが1回しかありません。
本ブログを始めてからの本指標での取引成績を下表に纏めておきます。
2017年は、本指標で5回の取引を行い、指標単位で4勝1敗(勝率80%)、シナリオ単位で8勝1敗(勝率89%)でした。1回の発表毎の平均取引時間は4分10秒で、損益は年間で+21.42pipsでした。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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