2018年03月06日
4-2-1.(e1) 米国雇用指標「ADP雇用統計」発表前後のUSDJPY反応分析(2018年改訂版)
米国雇用指標「ADP雇用統計」の指標発表前後の反応分析には「民間雇用者数」のみを用います。
この分析の調査範囲は、2015年1月集計分〜2018年1月集計分(同年2月発表分)の37回分です。
本指標は、米国雇用統計を翌日(ないしは翌々日)に控え、NFP(非農業部門雇用者数)の直前先行指標としての重要度・注目度が高いものです。
本指標についてはおもしろい話があります。
確か「前月結果に対する増減を無視し、市場予想に対する増減だけに着目します。このとき、ADP発表結果に沿ってポジションを持つと、ほぼ3勝2敗で2日後のNFPの増減方向と一致する」と言われています。そして、「本指標発表後にポジションを取得し、雇用統計直前に解消するポジションの持ち方をADP手法という」のだそうです。ADP手法の勝率は60%付近だそうです。
これらについては、まことしやかに語られていたものの、調査期間や実際にポジションを持って継続的に取引を行ったという記録が見当たりませんでした。当会では真偽を調べたことがないので、責任を負いかねます。が、もし成立するのなら何となく納得できそうな話ですね。
但し、ポジションを持ち続ける期間が長すぎるため、このブログでは扱いません。ポジション保有時間が長くなるリスクの割に期待的中率が低すぎます。
このように、本指標は雇用統計のNFPの先行指標としてアテになります。がしかし、直近の雇用統計は、NFPよりも平均時給に反応しがちなので、今では更に勝率が下がっている可能性があります。
分析には、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
過去の4本足チャートの各ローソク足平均値と、最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅の分布を下表に纏めておきます。
直後1分足跳幅は過去平均で15pipsです。過去の反応分布を見ると、全体の半分以上59%が平均値以下の反応となっています。多くの経済指標解説で重要度・注目度が高く位置づけられている割に、反応は小さなことがわかります。
気を付けましょう。重要度や注目度が高く位置づけられている指標で、思ったほど反応が伸びないと、利確の機会を逃して、せっかくの含益が含損になってしまうことがあります。
本指標は反応程度が平均的で、大きく反応する指標ではありません。
次に、直近3年間の反応平均値の推移を下図に示します。
過去3年間は少しずつ反応が大きくなっていたものの、2018年発表分は反応が小さくなっています。この現象には説明がつきます。
本指標は、そもそも1・2日後に発表される米国雇用統計の先行指標という位置づけです。けれども、FRBは既に雇用者数や失業率に満足しており、最近の関心事は平均所得に移ってきています。実際、雇用統計の稿を参照頂ければ、その直近の反応は徐々に小さくなっていることがわかります。
現状、雇用者数や失業率によってFRBが利上げ方針を転換するとはあまり考えられません。よって、雇用統計や、その先行指標である本指標への関心が以前よりも薄まっているのでしょう。
直近の雇用統計への反応が毎年小さくなっているのに、本指標ではそうなっていません。それは、本指標の市場予想が「やる気あるのか」と言いたくなるぐらい凸凹がないことに起因します。2016年後半からは以前に比べて発表結果と市場予想が大きく乖離することが多くなっていました。その結果、本指標への2016年・2017年の反応は大きくなっていた、と解釈できます。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。本指標発表値は前月分の集計データです。
グラフ横軸は集計月基準となっています。データは集計月基準で整理しておかないと、他の同時期集計の指標と対比するのが不便になるからです。
また、市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
グラフは、市場予想の上下動が小さく、発表結果の上下動はかなり大きく見えます。特に2016年後半からその傾向が顕著です。
こうした指標では、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、という予想解説が多くなります。
こういうことは確認しておきましょう。
確認は、データを確認できる2015年2月以降前回までの36回で行いました。その結果、この期間に前月と翌月の予想と結果の大小関係が入れ替わったことが11回(入れ替わり率31%)しかありません。
つまり、本指標は「前月の反動」を起こすというより、「市場予想が指標トレンドを追いかける後追い型」である点に着目した方が良さそうです。その期待的中率が69%です。
次に、事後差異に対する直後1分足の反応分布を下図に示します。
分布は右上がりで、指標結果が市場予想と比べて良ければ良いほど(悪ければ悪いほど)、直後1分足は素直に大きく反応しています。
注意すべき点は、事後差異が小さくマイナスのときだけ、必ずしも陰線で反応していません。
そして、直後1分足と直後11分足の相関分布を下図に示します。
直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが1.05で1を僅かに上回っています。平均的には反応を伸ばすものの、その伸び幅はあまり期待できず、上下動にうまく乗ることが必要なようです。
週次失業保険申請件数は毎週木曜に発表されています。この指標内容のひとつに、4週平均失業保険受給申請というのがあります。4週平均失業保険受給申請数は、原理的にADP民間雇用者数と原理的に逆相関の関係があっても不思議ではありません。
このことを確認しておきます。
例えば、2017年10月集計分のADP民間雇用者数は、11月1日に発表されました。直前直近の4週平均失業保険受給申請数は、10月26日発表分となります。10月26日発表分の4週平均失業保険受給申請数は、9月25日〜10月20日までの集計分ということになります。
ADPの10月集計分とは誤差が生じますが、ここでは気にしないことにしましょう。
一方、その前月9月集計分のADP民間雇用者数は、10月4日に発表されました。直前直近の4週平均失業保険受給申請数は、9月28日発表分となります。9月28日発表分の4週平均失業保険受給申請数は、8月28日〜9月22日までの集計分ということになります。
さて、10月分ADPの発表結果は23.5万人、9月分ADPのそれは13.5万人でした。10月は9月よりも民間雇用者数が10万人増えました。
そして、10月26日発表の4週平均失業保険受給申請数は24.2万人、9月28日発表のそれは27.8万人でした。10月分を多く含む失業保険受給申請数は、9月分を多く含むそれよりも3.6万人減りました。
民間雇用者数と失業保険受給申請数とは逆相関になっています(定量逆相関でなく符号逆相関)。
同じことを、2015年1月集計分から2018年1月集計分について行うと、ほとんどの月で符号逆相関が成立しています。計37回のうち33回で成立しているのです(不一致率89%)。
つまり、少なくとも2015年以降に関しては、ADP民間雇用者数の実態差異(発表結果ー前回結果)と、その発表の直前直近の4週平均失業保険受給申請数の実態差異と、符号逆相関が成立しています。その期待的中率は89%にも達します。
ここで、この特徴はADPだから役立つことが多いのです。なぜなら、ADPの市場予想は、前述のように「やる気あるのか」というぐらい毎月の発表結果に対して一定です。
例えば、前月の市場予想と発表結果がほぼ一致しているのに、4週平均失業保険受給申請数の実態差異がプラスなら、当月発表結果は市場予想を下回る可能性が高い、ということになります。同様に、前月が市場予想よりも発表結果が大きいのに、当月の4週平均失業保険受給申請数の実態差異がマイナスなら、ADPの市場予想はほぼ一定のままなので、当月も発表結果が市場予想を上回る可能性が高い、ということになります。
応用可能な月は、かなり多い訳です。
指標一致性分析は、各差異と反応方向の一致率を調べています。
各差異の分布に特徴的な偏りはありません。ばらつきの範囲内です。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率は、それぞれ75%・81%です。発表結果の良し悪しには素直に反応する指標です。
事前差異や指標発表前のローソク足方向が、指標発表後のローソク足方向を示唆している兆しは見当たりません。
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
直前1分足の陰線率が83%、直後1分足の陽線率が78%と、異常な偏りが見受けられます。
直前10-1分足と直前1分足は、直後1分足と逆方向に動くことが多いようです。それぞれの方向一致率は31%・33%(不一致率69%・67%)。但し、過去の直前1分足の陰線率の高さと直後1分足の陽線率の高さを踏まえると、アテにできるのは直前10-1分足と直後1分足の方向不一致です。
また、直後1分足と直後11分足の方向一致率は78%と高く、反転リスクは小さそうです。
反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です。そして、その79%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは91%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは64%です。64%という数字は、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったり(14%)、直後11分足が直後1分足と反転したり(21%)する確率と比べ、他の起こり得る事象より約3倍高い確率です。
追撃は徹底した方が良いでしょう。
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しておきます。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
まず、直前10-1分足の過去平均跳幅が5pips、同値幅は2pipsしかありません。
陰線率は53%、事前差異との方向一致率は50%です。予め方向を示唆する兆候は、過去のデータから窺えません。
その跳幅が10pips以上だったことは過去3回(頻度8%)あります。
この3回の直後1分足跳幅平均は18pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均15pipsとほぼ同じです。また、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。
つまり、直前10-1分足が大きく跳ねても、そのとき直後1分足の反応程度や反応方向を示唆しているとは言えません。
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
直前1分足の過去平均跳幅は5pips、同値幅は4pipsです。
過去の陰線率は83%と偏りがあり、事前差異との方向一致率は64%です。事前差異がマイナスのとき、ショートをオーダーし、利確・損切の目安を2・3pipsとしたら良いでしょう。
過去の直前1分足が陽線側に伸びたときは大きく、損切は確実に行いましょう。
直前1分足の跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度14%)あります。
この5回の直後1分足跳幅平均は13pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均15pipsとほぼ同じです。また、この5回の直前1分足と直後1分足の方向は4回(80%)一致しています。更に、直前1分足が陽線で、且つ、10pips以上跳ねたことは3回で、この3回は直前1分足と直後1分足の方向一致率が100%です。
まだ事例数こそ少ないものの、直前1分足が10pips以上跳ねたときは、直前1分足と直後1分足の方向が一致する可能性が高いと見込めます。特に、直前1分足が陽線側に大きく伸びたときは、直後1分足も陽線で反応しています。
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
直後1分足は過去平均跳幅が15pips、同値幅が11pipsです。
過去の陽線率は78%で、直前10-1分足との方向一致率は31%(不一致率69%)、直前1分足との方向一致率は33%(不一致率67%)です。最優先すべき例外は、前述の通り、直前1分足が10pips以上跳ねたら、直後1分足は同方向になりがちです。
よって、直前10-1分足が陰線だったときに指標発表直前にロングをオーダーし、発表直後の跳ねで利確・損切です。但し、直前1分足が10pips以上の陰線となったときは、ショートをオーダーします。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です。そして、その79%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは91%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは64%です。64%という数字は、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったり(14%)、直後11分足が直後1分足と反転したり(21%)する確率と比べ、他の起こり得る事象より約3倍高い確率です。
追撃は徹底した方が良いでしょう。
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
直後11分足の過去平均跳幅と値幅の差は7pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率35%)です。
直後11分足値幅が30pips以上だったことは8回あります(頻度22%)。この8回のうち、直後1分足値幅が20pips未満だったことが1回しかありません。
つまり、直後1分足値幅が20pipsを超えたことを確認次第、その方向に追撃開始すべきです。がしかし、これは直後11分足が終値を付けるまでポジションを保持した方が良い、という話ではありません。指標発表から10分以内に10pips以上の利確の機会があるだろう、という話です。
以上の分析結果に基づき、本指標は、
という特徴があります。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
この分析の調査範囲は、2015年1月集計分〜2018年1月集計分(同年2月発表分)の37回分です。
T.定性的傾向
【1. 指標概要】
本指標は、米国雇用統計を翌日(ないしは翌々日)に控え、NFP(非農業部門雇用者数)の直前先行指標としての重要度・注目度が高いものです。
本指標についてはおもしろい話があります。
確か「前月結果に対する増減を無視し、市場予想に対する増減だけに着目します。このとき、ADP発表結果に沿ってポジションを持つと、ほぼ3勝2敗で2日後のNFPの増減方向と一致する」と言われています。そして、「本指標発表後にポジションを取得し、雇用統計直前に解消するポジションの持ち方をADP手法という」のだそうです。ADP手法の勝率は60%付近だそうです。
これらについては、まことしやかに語られていたものの、調査期間や実際にポジションを持って継続的に取引を行ったという記録が見当たりませんでした。当会では真偽を調べたことがないので、責任を負いかねます。が、もし成立するのなら何となく納得できそうな話ですね。
但し、ポジションを持ち続ける期間が長すぎるため、このブログでは扱いません。ポジション保有時間が長くなるリスクの割に期待的中率が低すぎます。
このように、本指標は雇用統計のNFPの先行指標としてアテになります。がしかし、直近の雇用統計は、NFPよりも平均時給に反応しがちなので、今では更に勝率が下がっている可能性があります。
U.定量的傾向
分析には、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
【2. 反応概要】
過去の4本足チャートの各ローソク足平均値と、最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅の分布を下表に纏めておきます。
直後1分足跳幅は過去平均で15pipsです。過去の反応分布を見ると、全体の半分以上59%が平均値以下の反応となっています。多くの経済指標解説で重要度・注目度が高く位置づけられている割に、反応は小さなことがわかります。
気を付けましょう。重要度や注目度が高く位置づけられている指標で、思ったほど反応が伸びないと、利確の機会を逃して、せっかくの含益が含損になってしまうことがあります。
本指標は反応程度が平均的で、大きく反応する指標ではありません。
次に、直近3年間の反応平均値の推移を下図に示します。
過去3年間は少しずつ反応が大きくなっていたものの、2018年発表分は反応が小さくなっています。この現象には説明がつきます。
本指標は、そもそも1・2日後に発表される米国雇用統計の先行指標という位置づけです。けれども、FRBは既に雇用者数や失業率に満足しており、最近の関心事は平均所得に移ってきています。実際、雇用統計の稿を参照頂ければ、その直近の反応は徐々に小さくなっていることがわかります。
現状、雇用者数や失業率によってFRBが利上げ方針を転換するとはあまり考えられません。よって、雇用統計や、その先行指標である本指標への関心が以前よりも薄まっているのでしょう。
直近の雇用統計への反応が毎年小さくなっているのに、本指標ではそうなっていません。それは、本指標の市場予想が「やる気あるのか」と言いたくなるぐらい凸凹がないことに起因します。2016年後半からは以前に比べて発表結果と市場予想が大きく乖離することが多くなっていました。その結果、本指標への2016年・2017年の反応は大きくなっていた、と解釈できます。
【3. 定型分析】
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。本指標発表値は前月分の集計データです。
グラフ横軸は集計月基準となっています。データは集計月基準で整理しておかないと、他の同時期集計の指標と対比するのが不便になるからです。
また、市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
グラフは、市場予想の上下動が小さく、発表結果の上下動はかなり大きく見えます。特に2016年後半からその傾向が顕著です。
こうした指標では、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、という予想解説が多くなります。
こういうことは確認しておきましょう。
確認は、データを確認できる2015年2月以降前回までの36回で行いました。その結果、この期間に前月と翌月の予想と結果の大小関係が入れ替わったことが11回(入れ替わり率31%)しかありません。
つまり、本指標は「前月の反動」を起こすというより、「市場予想が指標トレンドを追いかける後追い型」である点に着目した方が良さそうです。その期待的中率が69%です。
ーーー$€¥ーーー
次に、事後差異に対する直後1分足の反応分布を下図に示します。
分布は右上がりで、指標結果が市場予想と比べて良ければ良いほど(悪ければ悪いほど)、直後1分足は素直に大きく反応しています。
注意すべき点は、事後差異が小さくマイナスのときだけ、必ずしも陰線で反応していません。
そして、直後1分足と直後11分足の相関分布を下図に示します。
直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが1.05で1を僅かに上回っています。平均的には反応を伸ばすものの、その伸び幅はあまり期待できず、上下動にうまく乗ることが必要なようです。
(3.1 指標間一致性分析)
週次失業保険申請件数は毎週木曜に発表されています。この指標内容のひとつに、4週平均失業保険受給申請というのがあります。4週平均失業保険受給申請数は、原理的にADP民間雇用者数と原理的に逆相関の関係があっても不思議ではありません。
このことを確認しておきます。
例えば、2017年10月集計分のADP民間雇用者数は、11月1日に発表されました。直前直近の4週平均失業保険受給申請数は、10月26日発表分となります。10月26日発表分の4週平均失業保険受給申請数は、9月25日〜10月20日までの集計分ということになります。
ADPの10月集計分とは誤差が生じますが、ここでは気にしないことにしましょう。
一方、その前月9月集計分のADP民間雇用者数は、10月4日に発表されました。直前直近の4週平均失業保険受給申請数は、9月28日発表分となります。9月28日発表分の4週平均失業保険受給申請数は、8月28日〜9月22日までの集計分ということになります。
さて、10月分ADPの発表結果は23.5万人、9月分ADPのそれは13.5万人でした。10月は9月よりも民間雇用者数が10万人増えました。
そして、10月26日発表の4週平均失業保険受給申請数は24.2万人、9月28日発表のそれは27.8万人でした。10月分を多く含む失業保険受給申請数は、9月分を多く含むそれよりも3.6万人減りました。
民間雇用者数と失業保険受給申請数とは逆相関になっています(定量逆相関でなく符号逆相関)。
同じことを、2015年1月集計分から2018年1月集計分について行うと、ほとんどの月で符号逆相関が成立しています。計37回のうち33回で成立しているのです(不一致率89%)。
つまり、少なくとも2015年以降に関しては、ADP民間雇用者数の実態差異(発表結果ー前回結果)と、その発表の直前直近の4週平均失業保険受給申請数の実態差異と、符号逆相関が成立しています。その期待的中率は89%にも達します。
ここで、この特徴はADPだから役立つことが多いのです。なぜなら、ADPの市場予想は、前述のように「やる気あるのか」というぐらい毎月の発表結果に対して一定です。
例えば、前月の市場予想と発表結果がほぼ一致しているのに、4週平均失業保険受給申請数の実態差異がプラスなら、当月発表結果は市場予想を下回る可能性が高い、ということになります。同様に、前月が市場予想よりも発表結果が大きいのに、当月の4週平均失業保険受給申請数の実態差異がマイナスなら、ADPの市場予想はほぼ一定のままなので、当月も発表結果が市場予想を上回る可能性が高い、ということになります。
応用可能な月は、かなり多い訳です。
(3.2 指標一致性分析)
指標一致性分析は、各差異と反応方向の一致率を調べています。
各差異の分布に特徴的な偏りはありません。ばらつきの範囲内です。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率は、それぞれ75%・81%です。発表結果の良し悪しには素直に反応する指標です。
事前差異や指標発表前のローソク足方向が、指標発表後のローソク足方向を示唆している兆しは見当たりません。
(3.3 反応一致性分析)
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
直前1分足の陰線率が83%、直後1分足の陽線率が78%と、異常な偏りが見受けられます。
直前10-1分足と直前1分足は、直後1分足と逆方向に動くことが多いようです。それぞれの方向一致率は31%・33%(不一致率69%・67%)。但し、過去の直前1分足の陰線率の高さと直後1分足の陽線率の高さを踏まえると、アテにできるのは直前10-1分足と直後1分足の方向不一致です。
また、直後1分足と直後11分足の方向一致率は78%と高く、反転リスクは小さそうです。
(3.4 反応性分析)
反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です。そして、その79%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは91%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは64%です。64%という数字は、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったり(14%)、直後11分足が直後1分足と反転したり(21%)する確率と比べ、他の起こり得る事象より約3倍高い確率です。
追撃は徹底した方が良いでしょう。
V.分析結論
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しておきます。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
まず、直前10-1分足の過去平均跳幅が5pips、同値幅は2pipsしかありません。
陰線率は53%、事前差異との方向一致率は50%です。予め方向を示唆する兆候は、過去のデータから窺えません。
その跳幅が10pips以上だったことは過去3回(頻度8%)あります。
この3回の直後1分足跳幅平均は18pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均15pipsとほぼ同じです。また、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。
つまり、直前10-1分足が大きく跳ねても、そのとき直後1分足の反応程度や反応方向を示唆しているとは言えません。
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
直前1分足の過去平均跳幅は5pips、同値幅は4pipsです。
過去の陰線率は83%と偏りがあり、事前差異との方向一致率は64%です。事前差異がマイナスのとき、ショートをオーダーし、利確・損切の目安を2・3pipsとしたら良いでしょう。
過去の直前1分足が陽線側に伸びたときは大きく、損切は確実に行いましょう。
直前1分足の跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度14%)あります。
この5回の直後1分足跳幅平均は13pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均15pipsとほぼ同じです。また、この5回の直前1分足と直後1分足の方向は4回(80%)一致しています。更に、直前1分足が陽線で、且つ、10pips以上跳ねたことは3回で、この3回は直前1分足と直後1分足の方向一致率が100%です。
まだ事例数こそ少ないものの、直前1分足が10pips以上跳ねたときは、直前1分足と直後1分足の方向が一致する可能性が高いと見込めます。特に、直前1分足が陽線側に大きく伸びたときは、直後1分足も陽線で反応しています。
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
直後1分足は過去平均跳幅が15pips、同値幅が11pipsです。
過去の陽線率は78%で、直前10-1分足との方向一致率は31%(不一致率69%)、直前1分足との方向一致率は33%(不一致率67%)です。最優先すべき例外は、前述の通り、直前1分足が10pips以上跳ねたら、直後1分足は同方向になりがちです。
よって、直前10-1分足が陰線だったときに指標発表直前にロングをオーダーし、発表直後の跳ねで利確・損切です。但し、直前1分足が10pips以上の陰線となったときは、ショートをオーダーします。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です。そして、その79%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは91%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは64%です。64%という数字は、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったり(14%)、直後11分足が直後1分足と反転したり(21%)する確率と比べ、他の起こり得る事象より約3倍高い確率です。
追撃は徹底した方が良いでしょう。
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
直後11分足の過去平均跳幅と値幅の差は7pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率35%)です。
直後11分足値幅が30pips以上だったことは8回あります(頻度22%)。この8回のうち、直後1分足値幅が20pips未満だったことが1回しかありません。
つまり、直後1分足値幅が20pipsを超えたことを確認次第、その方向に追撃開始すべきです。がしかし、これは直後11分足が終値を付けるまでポジションを保持した方が良い、という話ではありません。指標発表から10分以内に10pips以上の利確の機会があるだろう、という話です。
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以上の分析結果に基づき、本指標は、
- 本指標実態差異は、直前直近の4週平均失業保険受給申請数の実態差異と期待的中率89%の符号逆相関が成立
- 反応程度は、過去平均の直後1分足跳幅が15pipsと意外に小さいので注意が必要
- 反応方向は、指標発表前と逆方向に指標発表は反応しがちで、指標発表から数分間は反応を伸ばしがち
という特徴があります。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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