2017年03月26日
4-3. 欧州経済指標DB
2017年3月26日、全文更新
欧州指標ではEURJPYで取引を行っています。
【4-3-1. EURの特徴】
EURは、USDに次ぐ取引規模となります。USD・EURに次ぐ規模の通貨はJPY、その次がGBPです。
英国がEUを抜けるにも関わらず、多少の成長率やインフレ率の改善でEUR高の動きが生じることは、正直意外です。英国EU離脱で英国が支払うコストを単純化すると関税分に過ぎないのに、域内2位の経済規模だった英国を失う欧州の方が、経済規模縮小という点でも政治的理想の毀損という点でもダメージは大きい、としか考えられません。
がしかし、実際の通貨の動きを見ていると、GBPがEURより売られているように見受けられます。やはり、単純に数値化できないことを捉えることは、我々アマチュアがプロフェショナルに勝てない、ということなのでしょう。
英EU離脱問題を除いても、最近の欧州は、ギリシャ債務問題・主要国選挙・独貿易黒字への懸念・地域格差拡大・一部地域での高い失業率と、多くの政治課題を抱えています。一方、いろいろ批判の多かったECBの政策が、経済指標の好転に伴って再評価され、報道解説記事では既に緩和策から緊縮策への転換時期・方法についてが多くなってきました。
もともと欧州は、どの中銀でも政策目標中核となる物価・雇用について、金融政策をECBに一元化しているため解決が困難です。近年、新たに加わる国が相対的に貧しい一方、経済活動・移動の自由を理念に掲げた上、各国財政政策にも債務への強い縛りがある以上、国ごとの有効な経済政策を打つことが難しいのは当然です。課題だけを並べて見ると、日米よりも中国との類似点の方が多く見受けられるぐらいです。
こうした課題解決の難易度を考慮すれば、ECBは結果を高く評価されて然るべき、と思われます。
欧州が財政負担の大きな強国の圧力に抗してECBの独立性を担保し、中国が政権主流派が財政・金融も一元化しそうな現状況は、権限の分散と集中のどちらが物価・雇用に有効な施策を行いやすいかの実験にも見えます。不謹慎かもしれませんが。
ともあれ、以前にも書きましたが、EUR取引は経済指標分析だけで行うのが特に難しい通貨です。
【4-3-2. 現状チャート】
下図に、EURJPYの週足チャートと、EURJPY・EURUSD・USDJPYの各週値幅を示します。
週足チャートにおいて、123.3円付近の水平な太い青線は、先週引いた月足・週足のレジスタンス1です。また、右上がりの細い青線は、先週引いた上昇チャネル下線(レジスタンス2)です。先週はレジスタンス2を下抜けました。
赤線は、(少し苦しいものの)現在チャートでの3本平行線です。二つの線間はともに3円となっています。上の2本の平行線を新たなチャネルと見なすと、次週は118〜121円の動きと予想されます。
3通貨ペアを見ると、先週はEURUSDで僅かながらUSDが売られています。USDJPYでもUSDが売られており、EURJPYではJPYが買われています。つまり先週は、全般的にJPYが買われた訳です。
【4-3-3. 現状テクニカル】
直近の移動平均線(SMA)とRSI(14日)を示します。
SMA(1日)は単に週足終値を、SMA(5日)は先週5日間の終値の平均値を表しています。RSI(14日)は、過去14本の日足における陽線率を表しています。
SMAは、先週1日線・5日線が21日線を下抜けし、下降トレンドへの転換を示唆しています。
RSI(14日)は、先週下げに転じたものの、50%を下回ったばかりで、まだまだ下げ余地を残しています。
【4-3-4. 現状ファンダメンタル】
直近の両国10年債金利と株価の動きを示します。それぞれの動きはご自身でご確認ください。
以下、日独の金利差の前週との差を「Δ金利差」と表記します。また、日独の主要株価指標の比の前週との差を「Δ株価比差」と表記します。
通常時の金利と株価の動きは、方向が反対になりがちなことが知られています。通常時には、為替が金利>株価の影響を受けることも知られています。何が原因で何が結果かはよくわかりませんが、これらの関係が成り立たないときは通常時でないことならわかります。
下図は、上から「方向とボラティリティ」「Δ金利差」「Δ株価比差」を表しています。
まず、ボラティリティと方向についてです。先週は、今年に入って跳幅・値幅ともに最大の下げとなっていました。
Δ金利差は、今年に入って11週のうち10週がEURJPYと同方向、Δ株価比差は11週のうち8週がEURJPYと逆方向です。全体の傾向は、為替・金利・株価の動きは自然です。
先週は、Δ金利差が僅かにマイナス、Δ株価比差が大きくプラスです。よって、先週の動きは株価と為替の動き主体の週でした。独DAXも先週は下げているものの、相対的に日経よりも下げ率が小さかったのでしょう。
【4-3-5. 今週以降の注目点】
チャートがJPY買いを示唆し、テクニカルが下降トレンド入りを示唆し、ファンダメンタルが株価主体の動きとなっています。
ただ、最近の経済解説記事などを読む限りでは、米欧は成長でもCPIでも日本よりも良い指標結果となっています。そして、2月27日から3月13日週にかけてのチャートは、そうした認識に沿った動きとなっていました。
要は、先週大きな陰線が出現し、その頭と前週高値を結ぶ線が、ちょうど1月30日週〜2月20日週の下降トレンドの頭を押さえる線と平行に見えるため、3本平行線が各線間隔3円で引けてしまった訳です。
がしかし、JPY買いとなる要素は、先々週のFOMC利上げによる戻しと、高値水準にある株価への漠然とした不安感ぐらいでしょう。実態が米欧の方が良いのに日本が買われるのはおかしな話です。これがリスク回避による円買いの動きです。
一方、ECBは最近の好調な経済指標に基づく政策転換について議論を始めた、と報道されています。BOJは黒田総裁の任期が残り1年となって、円安の裏付けに不安が増えました。蘭選挙は懸念されていた右派でなく、EU残留を唱える与党が勝利しました。これらは、EUR高・JPY安を志向する新事実です。
このように、先週のEURJPYは説明しずらい動きとなりました。リスク回避です。
リスクは、株が暴落するのではないか、トランプ政権は政策遂行力がないのではないか、仏大統領選で大盤狂わせがあるのではないか、テーマが無くなると中国不安が再燃するのではないか、といった不安感でしょう。ならば、これら不安感が解消されるか飽きられない限り、この動きが続く可能性があります。
市場の直接的雰囲気がつかめずに、データとチャートだけからしか様子がわからない我々アマチュアには、難しい時期です。
【4-3-6. 指標分析一覧】
【A. 政策決定指標】
A1. 金融政策
(1) ECB政策金利(2017年1月発表結果記載済)
A3. 景気指標
関連指標同士の関係も整合性があり、発表直後の反応は比較的素直です。反応は小さいものの、実態指標分析の裏付けとなるし、練習にはもってこいかも知れません。但し、指標発表前後の指標の影響は、日米豪に比べて短時間しかない、という感触があります。
(1) 独国Ifo景況指数(2017年3月27日発表結果検証済)
(2) 独国ZEW景況感調査・欧州ZEW景況指数(2017年2月14日発表結果検証済)
(3) 独国PMI速報値(2017年3月24日発表結果検証済)
(4) 欧州PMI速報値(2017年3月24日発表結果検証済)
A4. 物価指標
ECB政策転換の時期を探るため、暫く注視しておきたい指標です。
(1) 消費者物価指数(HICP)速報値(2017年2月発表結果記載済)
(2) 消費者物価指数(HICP)改定値
【B. 経済情勢指標】
B1. 経済成長
欧州GDPは、発表結果と反応方向とがあまり関係ありません。むしろ、そのときどきのトレンドや、タイミング毎の動きに偏りがあります。「タイミング毎の動きの偏り」は、以下の分析をご覧ください。
(1) 独国四半期GDP(季調済)速報値(2017年2月14日発表結果検証済)
(2) 欧州四半期GDP(季調済)速報値
B3. 実態指標
地域間格差が大きく、何を見て因果関係を掴めばよいかがわかりません。
以上
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