2021年08月29日
salt shake
彼女に続いて、事務所に入る。
と、入口に近い応接セットに、あの政治屋が陣取っている。
その脇に、細身の黒いスーツにサングラスの男が立っている。
男は、ワタシが入っても、ピクリともしない。
その様子に間合いを計ろうとするが、空気に隙がない。
彼女が、秘書に頷いて、政治屋の正面に腰をおろす。
座るやいなや、有無を言わさぬ口調で言う。
「アポイントもなしに、何の用でしょう?心当たりはないですが」
「明日の質問…、どうしてもやるのかね」
「あなたには関係ないことです、私は信じることをやるまでです」
「少し、力を抜いたらどうだね…」
言外に意味を含ませるように、政治屋が応える。
脇に立つ男が、一瞬の動きで、足元の紙袋を応接テーブルに載せる。
「もう少し、いい事務所に移ったらどうかな」
彼女がテーブルには目もくれず、政治屋を睨みつけるようにして言う。
「お帰りください、あなたがたに用はありません」
「そんなことを、言っていいのかな」
「私は、これからも、言いたいことを言いたい相手に言います」
政治屋が諦めたように、立ち上がりながら言う。
「後で泣きついても知らんぞ」
「あなたにだけは頼みませんから、ご心配なく」
彼女の最後の言葉に、政治屋が鼻を鳴らして扉に向かう。
脇の男が扉を押さえる。
相変わらず、動作に隙がない。
サングラスの目元を睨みつけるワタシ。
視線は見えないが、見返されているのを感じる。
互いに動けず、仁王立ちしている。
「おい、帰るぞ」
扉の外で、政治屋の声。
促されるように男が、無駄のない動きで出て行こうとする。
「忘れ物よ」
彼女が、紙袋を指して言う。
男が、素早い動作で紙袋を掴むと、ワタシを一瞥して出て行く。
扉が閉まると彼女が言う。
「もう、朝からやんなっちゃうわね、塩まいといて」
彼女の思わぬトーンに振り返る。
彼女が、苦笑してソファから立ち上がると、奥の部屋に向かう。
女性秘書が、ホントに塩を持って戻ってくる。
扉の外に、二、三度まいて、笑顔を取り戻す。
あらためて挨拶を交して、彼女が奥の部屋に秘書たちと入っていく。
しばらくして、女性秘書が出てくる。
車を手配したことをワタシに伝えて、申し訳なさそうに言う。
「私たちは行けないので、車の受け取りをお願いします」
言いながら、近隣の案内図を広げてレンタカーオフィスの場所を教えてくれる。
このまま帰りに寄れそう、思いながら、二人で広げた地図を覗き込む。
「それじゃ、また夕方に」
そう言って席を立つ。
ピンヒールを響かせて、彼女の事務所をあとにする。
と、入口に近い応接セットに、あの政治屋が陣取っている。
その脇に、細身の黒いスーツにサングラスの男が立っている。
男は、ワタシが入っても、ピクリともしない。
その様子に間合いを計ろうとするが、空気に隙がない。
彼女が、秘書に頷いて、政治屋の正面に腰をおろす。
座るやいなや、有無を言わさぬ口調で言う。
「アポイントもなしに、何の用でしょう?心当たりはないですが」
「明日の質問…、どうしてもやるのかね」
「あなたには関係ないことです、私は信じることをやるまでです」
「少し、力を抜いたらどうだね…」
言外に意味を含ませるように、政治屋が応える。
脇に立つ男が、一瞬の動きで、足元の紙袋を応接テーブルに載せる。
「もう少し、いい事務所に移ったらどうかな」
彼女がテーブルには目もくれず、政治屋を睨みつけるようにして言う。
「お帰りください、あなたがたに用はありません」
「そんなことを、言っていいのかな」
「私は、これからも、言いたいことを言いたい相手に言います」
政治屋が諦めたように、立ち上がりながら言う。
「後で泣きついても知らんぞ」
「あなたにだけは頼みませんから、ご心配なく」
彼女の最後の言葉に、政治屋が鼻を鳴らして扉に向かう。
脇の男が扉を押さえる。
相変わらず、動作に隙がない。
サングラスの目元を睨みつけるワタシ。
視線は見えないが、見返されているのを感じる。
互いに動けず、仁王立ちしている。
「おい、帰るぞ」
扉の外で、政治屋の声。
促されるように男が、無駄のない動きで出て行こうとする。
「忘れ物よ」
彼女が、紙袋を指して言う。
男が、素早い動作で紙袋を掴むと、ワタシを一瞥して出て行く。
扉が閉まると彼女が言う。
「もう、朝からやんなっちゃうわね、塩まいといて」
彼女の思わぬトーンに振り返る。
彼女が、苦笑してソファから立ち上がると、奥の部屋に向かう。
女性秘書が、ホントに塩を持って戻ってくる。
扉の外に、二、三度まいて、笑顔を取り戻す。
あらためて挨拶を交して、彼女が奥の部屋に秘書たちと入っていく。
しばらくして、女性秘書が出てくる。
車を手配したことをワタシに伝えて、申し訳なさそうに言う。
「私たちは行けないので、車の受け取りをお願いします」
言いながら、近隣の案内図を広げてレンタカーオフィスの場所を教えてくれる。
このまま帰りに寄れそう、思いながら、二人で広げた地図を覗き込む。
「それじゃ、また夕方に」
そう言って席を立つ。
ピンヒールを響かせて、彼女の事務所をあとにする。
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