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2021年09月26日

stiletto heels

彼女がワタシの瞳をとらえる。

無意識にアイコンタクトする。
カウントなしに呼吸が合う。
SUVの少し高い後部席に、二人で議員を持ち上げる。

彼女がSUVの後部席に乗り込んで、シートベルトで議員の身体を固定する。
ワタシはその様子を見ながら、乗ってきた車の後部ドアを、身体を凭せかけるようにして閉める。

彼女がSUVの後部ドアを閉める。
ワタシに向きなおって言う。
「あなたも乗って」
「…」

応える気力もないワタシ。
促されるままに、少し高い助手席に苦労して乗り込む。
彼女が、対照的にキビキビと運転席に乗り込む。

初めて気づいたように訊くワタシ。
「…どこに?」

SUVは、既に駐車場を出ている。
朦朧とする中であらためて訊く。
「…ここ…彼女の…マンション…どこに…行くの?」
「彼女もあなたも、手当てが必要よ」
「…病院に…行くの?」
「彼女を連れて行くと騒ぎになるわ、それに、もっといいところがあるわ」
彼女がウィンクして微笑む。

車は走り続ける。

「起きて、手伝って」
なぜか懐かしさを感じる声に、目が覚める。
いつのまにか、うとうとしていたらしい。

我に返って、軋む身体を助手席から引っ張り出す。
彼女が、後部ドアを開けて、議員の両腕を肩にかけて言う。
「彼女を、私の背中に載せて頂戴」

ワタシは、後部席に頭から突っ込んで、議員の腰を両腕で抱きかかえる。
そのまま車の外の彼女に、議員の身体を預ける。
彼女が、議員をおんぶして歩きはじめる。

後部ドアを閉めるワタシに言う。
「ゆっくりでいいから、ついてきて」
「…」
応える気力もないワタシ。
ズンズン進む彼女のピンヒールを、視線の先にとらえる。

促されるようにピンヒールを踏み出すワタシ。
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