2021年08月18日
stiletto heels with slit
ギリギリで思い切り屈む。
男の拳が、頭の上で空をきる。
そのまま男が前にのめりこむ。
透かさず、男の身体を横に躱して高く跳ぶ。
空中で、大きく腰を捻る。
左の飛び回し蹴り。
深いスリットのおかげで、男の後頭部にきれいに極まる。
男に背を向けるように着地する。
着地したピンヒールでターンする。
男に向き直る。
男が、ゆっくり歩道に倒れこむ。
しばらくは、動けないはず。
男を跨いで後部ドアに詰めよる。
政治屋が、顔を振りながらウィンドゥを上げる。
ドアを試すが、ロックされている。
スモークを貼ったウィンドゥを睨みつける。
「あなた…」
声に振りかえる。
彼女が目を丸くして、ようやく言葉を続ける。
「…あなた、強いのね…」
倒れている男を跨いで、彼女に近づく。
「大丈夫ですか?」
「ええ、なんともないわ」
「警察呼びますか」
一応訊いてみる。
彼女が笑って歩きだす。
「無駄よ、すぐに揉消すわ、寧ろ悪用されるかも」
慌てて、スーツケースを掴むと、彼女を追って横に並んで歩く。
歩きながら思わず訊いている。
「よくあるんですか?」
「今日みたいに強引なのは、はじめてね、いよいよ本気ってことかしら」
笑顔のまま話す彼女の顔を、訝しげに覗き見る。
ワタシの様子に気づいて、彼女が言葉を続ける。
「今は、あなたがいるから」
「…」
「いい人がいるって奨められてよかったわ」
「奨められた?誰に奨められたんですか」
思わず訊いている。
彼女は、それにはこたえず、ウィンクすると不意に手を上げる。
並んで歩く二人の脇に、タクシーが滑りこむ。
後部席のドアが開く。
彼女が運転手に向かって、タクシーの後部を指差す。
運転手が降りてくる。
トランクを開けて、スーツケースに手を伸ばす。
片手で制して断ると、自分でトランクに入れる。
運転手が、ゴム製のネットでスーツケースを覆う。
上から押さえて、がたつかないことを確認すると、トランクを閉める。
彼女に続いて、後部席に乗りこむ。
彼女が運転手に行き先を告げる。
タクシーが、発進する。
後方に小さくなる黒い外車と政治屋。
男の拳が、頭の上で空をきる。
そのまま男が前にのめりこむ。
透かさず、男の身体を横に躱して高く跳ぶ。
空中で、大きく腰を捻る。
左の飛び回し蹴り。
深いスリットのおかげで、男の後頭部にきれいに極まる。
男に背を向けるように着地する。
着地したピンヒールでターンする。
男に向き直る。
男が、ゆっくり歩道に倒れこむ。
しばらくは、動けないはず。
男を跨いで後部ドアに詰めよる。
政治屋が、顔を振りながらウィンドゥを上げる。
ドアを試すが、ロックされている。
スモークを貼ったウィンドゥを睨みつける。
「あなた…」
声に振りかえる。
彼女が目を丸くして、ようやく言葉を続ける。
「…あなた、強いのね…」
倒れている男を跨いで、彼女に近づく。
「大丈夫ですか?」
「ええ、なんともないわ」
「警察呼びますか」
一応訊いてみる。
彼女が笑って歩きだす。
「無駄よ、すぐに揉消すわ、寧ろ悪用されるかも」
慌てて、スーツケースを掴むと、彼女を追って横に並んで歩く。
歩きながら思わず訊いている。
「よくあるんですか?」
「今日みたいに強引なのは、はじめてね、いよいよ本気ってことかしら」
笑顔のまま話す彼女の顔を、訝しげに覗き見る。
ワタシの様子に気づいて、彼女が言葉を続ける。
「今は、あなたがいるから」
「…」
「いい人がいるって奨められてよかったわ」
「奨められた?誰に奨められたんですか」
思わず訊いている。
彼女は、それにはこたえず、ウィンクすると不意に手を上げる。
並んで歩く二人の脇に、タクシーが滑りこむ。
後部席のドアが開く。
彼女が運転手に向かって、タクシーの後部を指差す。
運転手が降りてくる。
トランクを開けて、スーツケースに手を伸ばす。
片手で制して断ると、自分でトランクに入れる。
運転手が、ゴム製のネットでスーツケースを覆う。
上から押さえて、がたつかないことを確認すると、トランクを閉める。
彼女に続いて、後部席に乗りこむ。
彼女が運転手に行き先を告げる。
タクシーが、発進する。
後方に小さくなる黒い外車と政治屋。
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