2009年02月01日
『翔儀天使アユミ〜成淫連鎖』 飛天龍華編 part2
『翔儀天使アユミ〜成淫連鎖』 飛天龍華編
いなづまこと様作
「それでは部長、お先に上がらせていただきます!」
「ああ、ではまた明日な」
一人黙々と道場の隅で竹刀を振り続ける龍華の横を、また一人下級生が挨拶をして通り抜けていった。普通に考えれば上級生を残して先に帰るなど運動部では許されざる行為だ。たちまち鉄拳制裁が飛んできても言い逃れなど出来はしない。
だが、外は既に日も暮れようとしていた。『普通』ならとっくに全員が下校しなければいけない時間なのだ。
実は龍華はいつも一人最後まで残って竹刀の素振りをする傾向があった。他の誰かが諭しても聞き届けはせず、毎回夜8時くらいまでは黙々と振り続ける。
龍華も他の部員の後掃除などの邪魔をしてはいけないと思い、時間が来るとさりげなく隅に移動して他の人間の邪魔にならないようにしている。
そのため、下級生達は龍華のいないところを掃除して家路へとつくのである。
そんなこんなで、あっという間に広い道場の中は龍華ただ一人になってしまった。夕焼けが道場内を真っ赤に染める中、『ふん、ふん!』
という龍華の気迫の篭った声だけが妙に大きく鳴り響いていた。
龍華の家は地元に古くから伝わる旧家である。先祖はこの一帯を納めた武家の一族であるとも伝えられ、いきおい家長は武術、剣術を嗜むきらいがあった。
龍華は長女ではあるが嫡子ではない。上に兄が三人もいる。が、そんな兄や父、祖父を見ているうち自然と本人も自然と剣を手にするようになっていた。
(まだまだ、自分は、未熟だ!)
誰もいない道場の中、龍華の目には自分をはるかに上回る技量を持つ兄や父の姿が浮かんでくる。兄や父に追いつきたい。その一心が龍華に放課後もただ一人居残らせ、竹刀を振らせるという行為に走らせているのだ。
断っておくが龍華の剣技が低いわけではない。彼女自身県大会で優勝するほどの凄腕なのだ。その上が異常すぎるだけである。
その頑ななまでの龍華のストイックさは他人からすれば異常に見えるかもしれないが、龍華はそういった奇異の目には全く関心を払わなかった。
また、切れそうに鋭利な美貌から異性のみならず同性からも憧れの対象になっていたが、そういったものにも応えることは無かった。
現在の龍華には自分が強くなること。これ一つしか関心がなかった。もったいない話である。
そんな龍華が素振りを繰り返している中、誰も入ってこないはずの道場の扉がガラガラと開かれた音がした。誰かが忘れ物でもしたのだろうか、と龍華は素振りをしながら思った。
「もう! 放課後だぞ! 持っていくものを! とっとと! 持って! 帰るんだ!」
ところが、入ってきた人物は更衣室のほうへ行くでなく龍華のほうへと寄って来た。
「せーんぱい、お疲れ様です〜〜〜」
龍華の耳に聞き覚えのある声が響く。
道場に上がりこんできたのは、中等部にいる龍華の後輩であり自分と同じ翔儀天使としての力を持つ兵頭歩美だった。小さい体だが頑張り屋で何事にもくじけない歩美を、龍華は可愛い妹分のような存在と思い特に可愛がっていた。
「ん……?!ああ、歩美か。どうしたんだこんな時間に…。もう日も暮れてきているぞ」
「いえ、道場から先輩の声が聞こえてきたんで、ああ先輩ったら今日も頑張っているんだな〜〜と思って、つい入ってきちゃいました」
「…まったく……」
明るくコロコロと笑う歩美に龍華は苦笑した。本来なら素振りの邪魔をされたことに憤っているところなのだが、歩美の悪意の無い無邪気な笑顔につい頬が緩んでしまう。
だが、やるべきことを止めておくわけにもいかない。
「ほら、もう帰れ。私は日々の修練を終えてから帰らなければならないからな。歩美の親御殿も心配するであろう」
そう言って龍華は歩美から目を切り、再び竹刀を上段に構えた。と、その時
「先輩!」
「うわっ?!」
いきなり歩美が後ろから飛び掛ってきた。首に腕を巻かれ、不意を突かれた龍華は危うく倒れそうになる。
「こ、こら歩美!ふざけるのはよせ!!降りろ!」
さすがに龍華の声には怒気が混じっている。何を思ってのことかは知らないが、修練の邪魔をされてはたまったものではない。
が、歩美は手を緩めることなくがっしりと張り付いたままだ。
「ねぇ……せんぱぁい……」
耳元に聞こえる歩美の声は、龍華が聞いたことが無いほど艶っぽく響いてくる。そういうことにあまり関心の無い龍華でもクラッときてしまいそうな、そんな魔力をこめたような声だ。
「あ、歩美……、おまえ、冗談は……」
歩美を力任せに振り落とすことも頭に浮かばず、龍華は全身を変に強張らせおたおたと対応に苦慮していた。
「うふふ……」
その時、歩美の緩く開いた口元からひょろひょろと肉色の触手が這い出てきた。それは先を細めながらぬるぬると蠢き、先端から妖しげな粘液を滴らせつつ、龍華の耳目掛けてゆっくりと伸びていった。
そしてそれが、今まさに侵入しようとした瞬間、
「っ?!」
背後からただならぬ気配を感じ取り、龍華は自分を掴んでいる歩美の腕をガツッと掴むと背負い投げの要領で前へとぶん投げた。
「きゃあっ!」
いなづまこと様作
「それでは部長、お先に上がらせていただきます!」
「ああ、ではまた明日な」
一人黙々と道場の隅で竹刀を振り続ける龍華の横を、また一人下級生が挨拶をして通り抜けていった。普通に考えれば上級生を残して先に帰るなど運動部では許されざる行為だ。たちまち鉄拳制裁が飛んできても言い逃れなど出来はしない。
だが、外は既に日も暮れようとしていた。『普通』ならとっくに全員が下校しなければいけない時間なのだ。
実は龍華はいつも一人最後まで残って竹刀の素振りをする傾向があった。他の誰かが諭しても聞き届けはせず、毎回夜8時くらいまでは黙々と振り続ける。
龍華も他の部員の後掃除などの邪魔をしてはいけないと思い、時間が来るとさりげなく隅に移動して他の人間の邪魔にならないようにしている。
そのため、下級生達は龍華のいないところを掃除して家路へとつくのである。
そんなこんなで、あっという間に広い道場の中は龍華ただ一人になってしまった。夕焼けが道場内を真っ赤に染める中、『ふん、ふん!』
という龍華の気迫の篭った声だけが妙に大きく鳴り響いていた。
龍華の家は地元に古くから伝わる旧家である。先祖はこの一帯を納めた武家の一族であるとも伝えられ、いきおい家長は武術、剣術を嗜むきらいがあった。
龍華は長女ではあるが嫡子ではない。上に兄が三人もいる。が、そんな兄や父、祖父を見ているうち自然と本人も自然と剣を手にするようになっていた。
(まだまだ、自分は、未熟だ!)
誰もいない道場の中、龍華の目には自分をはるかに上回る技量を持つ兄や父の姿が浮かんでくる。兄や父に追いつきたい。その一心が龍華に放課後もただ一人居残らせ、竹刀を振らせるという行為に走らせているのだ。
断っておくが龍華の剣技が低いわけではない。彼女自身県大会で優勝するほどの凄腕なのだ。その上が異常すぎるだけである。
その頑ななまでの龍華のストイックさは他人からすれば異常に見えるかもしれないが、龍華はそういった奇異の目には全く関心を払わなかった。
また、切れそうに鋭利な美貌から異性のみならず同性からも憧れの対象になっていたが、そういったものにも応えることは無かった。
現在の龍華には自分が強くなること。これ一つしか関心がなかった。もったいない話である。
そんな龍華が素振りを繰り返している中、誰も入ってこないはずの道場の扉がガラガラと開かれた音がした。誰かが忘れ物でもしたのだろうか、と龍華は素振りをしながら思った。
「もう! 放課後だぞ! 持っていくものを! とっとと! 持って! 帰るんだ!」
ところが、入ってきた人物は更衣室のほうへ行くでなく龍華のほうへと寄って来た。
「せーんぱい、お疲れ様です〜〜〜」
龍華の耳に聞き覚えのある声が響く。
道場に上がりこんできたのは、中等部にいる龍華の後輩であり自分と同じ翔儀天使としての力を持つ兵頭歩美だった。小さい体だが頑張り屋で何事にもくじけない歩美を、龍華は可愛い妹分のような存在と思い特に可愛がっていた。
「ん……?!ああ、歩美か。どうしたんだこんな時間に…。もう日も暮れてきているぞ」
「いえ、道場から先輩の声が聞こえてきたんで、ああ先輩ったら今日も頑張っているんだな〜〜と思って、つい入ってきちゃいました」
「…まったく……」
明るくコロコロと笑う歩美に龍華は苦笑した。本来なら素振りの邪魔をされたことに憤っているところなのだが、歩美の悪意の無い無邪気な笑顔につい頬が緩んでしまう。
だが、やるべきことを止めておくわけにもいかない。
「ほら、もう帰れ。私は日々の修練を終えてから帰らなければならないからな。歩美の親御殿も心配するであろう」
そう言って龍華は歩美から目を切り、再び竹刀を上段に構えた。と、その時
「先輩!」
「うわっ?!」
いきなり歩美が後ろから飛び掛ってきた。首に腕を巻かれ、不意を突かれた龍華は危うく倒れそうになる。
「こ、こら歩美!ふざけるのはよせ!!降りろ!」
さすがに龍華の声には怒気が混じっている。何を思ってのことかは知らないが、修練の邪魔をされてはたまったものではない。
が、歩美は手を緩めることなくがっしりと張り付いたままだ。
「ねぇ……せんぱぁい……」
耳元に聞こえる歩美の声は、龍華が聞いたことが無いほど艶っぽく響いてくる。そういうことにあまり関心の無い龍華でもクラッときてしまいそうな、そんな魔力をこめたような声だ。
「あ、歩美……、おまえ、冗談は……」
歩美を力任せに振り落とすことも頭に浮かばず、龍華は全身を変に強張らせおたおたと対応に苦慮していた。
「うふふ……」
その時、歩美の緩く開いた口元からひょろひょろと肉色の触手が這い出てきた。それは先を細めながらぬるぬると蠢き、先端から妖しげな粘液を滴らせつつ、龍華の耳目掛けてゆっくりと伸びていった。
そしてそれが、今まさに侵入しようとした瞬間、
「っ?!」
背後からただならぬ気配を感じ取り、龍華は自分を掴んでいる歩美の腕をガツッと掴むと背負い投げの要領で前へとぶん投げた。
「きゃあっ!」
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