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2018年10月20日

花子の部屋


私の名前は花子。

・・・と、言うのは仮の名前。

本当の名前は沙織というの。

でも、もう随分とその名前は名乗っていないわ。

もう、三年になるのかな・・・。

こんな私にも、三年前までは【家族】と呼べる存在がいた。

学生の頃からずっと好きだった主人に、2人の元気な息子と娘。

幸せだった。

ずっと、

ずっとずっとあの幸せが続くと思っていた。

でも・・・終わりは突然やってきた。

・・・ほんの、間違いだったのよ。

その一つの過ちを、主人は許してくれなかった。

でも、悪いのは私・・・。

壊れてしまったものは、元通りには戻らない・・・。

私は離縁され、生まれ故郷であるこの町に独り還って来た。

家はあったの。

もう居ない母名義のままの家。

そこで一週間くらい、何もやる気が起きずに寂しさで泣きながら過ごしたわ。

そんなある日、久々に外に出た時に、

大昔の知り合いと会った。

「あれ、アンタ・・・?もしかしてあの時の?」

「・・あ、アナタは・・・。」

昔、ひょんな事で知り合ったヤクザの方だった。

私は名前を知らなかったんだけど、 神谷 丼丸 とそこで聞いた。

丼丸さんは、いろいろと私を助けてくれた。

「アンタの旦那には、いろいろとお世話んなったからのぅ〜。」

丼丸さんはまず、ものすごくやすい家賃で店をやる部屋を貸してくれた。

そして私は、そこで店を出す事にした。

【スナック・花子】を・・・。

固定のお客さんが集まるまで、

丼丸さんはいろんな知り合いを紹介してつれてきてくれた。

もちろん、気をつかって【本職】では無い人を。

おかげでお店はすごく繁盛した。

それもそうだ。 立地条件がけっこういい場所を、本当に安い値段で貸してくれたのだから。

「おしぼりだけ、ウチの業者でとってくれたらエエからのう。」

という条件はあったが、そんなのは知れている事だ。

「わ〜らはって〜ゆるしへ〜」

今日もお店はそこそこ賑わっている。

お客さんが歌うこの店を、

話は笑顔で眺めている。

12時を回った。

「それじゃぁ、ママ、今日は帰るね。」

「ありがと〜。 また気軽に寄ってね〜。」

最後のお客さんが帰り、私は店のシャッターを半分下ろして売り上げの計算をしている時だった。

 チラっ

「・・ん?」

今、シャッターの下からだれか覗いたような・・・?

気になるので私はソっとシャッターの方に向かった。

・・・気配を感じる・・・。

もし・・強盗だったら・・?

変な勘ぐりが頭を過ぎった。

でも、ここまで来て見ないわけにはいかない。

私はそっとシャッターの下から外を覗いた。

そこには・・・

「・・・こんばんは。 久しぶりね。沙織ちゃん。」

「・・・ぁ、お義母さん?」

・・・主人の・・・元主人のお義母さんがそこに立っていた。

 シャッターを完全に閉めた店の中、

「・・これ口に合いますかどうか・・・。」

と、私はコーヒーを出した。

「あぁ。 ありがとうね。」

お義母さん・・・。

もう80前になるのかな・・・。

 今はもう小学五年生になる息子と娘がまだ生まれて間もない頃、

私と子供たちはお義母さんと一緒に暮らしていた。

本当にやさしい方で、私に対して本当の娘のように接してくれたお義母さん・・・。

・・・主人と別れてからは、一切連絡をとらなかったんだけど・・・。


 お義母さんはコーヒーをすすり、

「・・・沙織ちゃんが、ここでお店をしてるって、最近知ってね・・・。」

ときりだす。


「ぁ、そ、そうだったんですか・・。 わざわざスイマセン・・・。 それと、今まで挨拶も出来ずに・・・。」


「いいのよ。気にしないで。」

お義母さんはやさしくそう言った。


「沙織ちゃんが裕史と別れても、孫たちの母親という事には変わりないわ。 

裕史からいろいろと聞いたけど・・・。 沙織ちゃんの事だもの。 なにか理由があったんだと私は思っているよ。」

・・・お義母さん・・・。

私は何も言えずに、ただただ話を聞いていた。

お義母さんは最後に、

「女だもの。 いろいろと、あるわよ。 沙織ちゃん、前を向いて、これから頑張ってね。 

終わった時は、もう戻らないわ。 でもこれから起こる事は、 努力次第で創っていける。
沙織ちゃん!前向いてね!」

お義母さんはそういうと店を出て帰って行った。

「送ります」と言ったんだけど、「大丈夫。 明日も仕事あるんだから、

沙織ちゃんは自分の事を気遣いなさい。」と逆に気を使われてしまった。

 お義母さんの後姿を眺めながら、私は幸せだったあの頃をまた思い出してしまい泣いた。

前を向いてと、今言われたばかりなのにね・・・。

次の日、お店を開ける時に一通の手紙がポストに入っていた。

【八木 鍋衣・鎌司】

息子と・・・娘からだ!

私は急いでその手紙を破り、中を見た。

中には二枚の手紙が入っていた。

2人の子供がそれぞれ一枚づつ書いてある。

まずは、息子のかーくんの手紙を読む。

【お母さん 元気にしていますか?

ウチは三人とも元気です。

最近お父さんは仕事が忙しいみたいで、帰りが遅いです。

大分疲れているようで心配です。

 僕はというと、今ではプロの将棋指しを目指して、頑張っています。

奨励会というところに入り、今は2級で指しています。

アマチュアの六段クラスでも、この奨励会というところでは6級くらいの力みたいです。

このまま順当に行き、四段になれば、晴れてプロ棋士の仲間入りです。

早く有名になって、テレビに出て、

お母さんに僕の元気な姿を見せてあげたく思います。

お母さんも体に気をつけて。

それでは。】

・・・かーくん・・・。

昔から、少し大人しい子だったかーくん。

小学五年生にして、しっかりした子に成長しているのがこの手紙で伺えた。

次に、お姉ちゃんの手紙を読む。

【 おかん

げんきにしてるかうちはげんきや

きのうもがっこうで   わるいやつらさんにんおった やっつけた

おかんがんばらなあかんで

うちも@:。、jといえばそうやけど

でもがんばる

またそのうち】

・・・娘・・・立派な五年生なんだね・・・。

途中、解読不能な字もあったけど、お母さんは嬉しいよ・・・。

 私は手紙を胸ポケットに仕舞い、店の準備をした。

しばらくすると、おしぼり業者の人がやってきて古いのと交換して「アザーッス」って言って帰ってった。

 とりあえず、準備の時に手がよごれたので、そのおしぼりを一つ開けて手を拭こうとした。

そこで、とんでもないものがおしぼりに付いている事に気づいた。

白くてネバネバしたソレは・・・

ニオイをかいでみて確信した。

男が出す、精液だった。

 後日聞いた話だが、

おしぼり業者がもってくるおしぼりは、ここの店以外でも使われている。

そこが居酒屋だったり、スナックだったり、

ピンサロだったり・・・。

もちろん綺麗にクリーニングしてるという事なのだが・・・。

皆さんも、どこかに飲みに行ったとき、

ビニールに綺麗に治められたおしぼりが出てきたら、それは業者系のおしぼりですから、

念の為に何も付いていないか確認する事をオススメします。

・・・もし、私が今広げたおしぼりみたいなので、知らずに顔でも拭いてしまったら・・・。
posted by 都市伝説のまとめ at 09:00 | その他
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