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2012年05月26日

【本】『ザ・コストカッター (角川文庫)』

ザ・コストカッター (角川文庫)

ザ・コストカッター (角川文庫)




著者: 黒木亮
本 / 角川書店(角川グループパブリッシング) / 442ページ / 2012年03月24日発売
ISBN/EAN: 9784041001981

カラ売り屋VSコストカッター

ボクは黒木亮の本が好きだ。
学生時代に読んだ、トップレフト。
今思えば、ボクが今、金融系の企業に勤めているのも彼の本の影響だろう。

そんな黒木氏の新作文庫本。

主人公はカラ売り屋「パンゲア」の北川。
本書を読むまで、カラ売り屋というと、株価が下がることで利益を出す企業なので、あまりいいイメージがなかったが、その概念を覆された。

主人公の敵となるのが、企業再生請負人である蛭田。
老舗スポーツ会社再生のために、米系投資ファンドから送り込まれた社長だ。
この蛭田は大リストラを行い、短期的に株価を吊り上げる。
リストラ、コストカッターというと、日産のV字回復を成し遂げたカルロスゴーンの活躍以降、機関投資家などからもてはやされていると思う。
もちろん、日産のカルロスゴーンの場合、リストラを行い短期的なV字回復をさせただけでなく、その後の成長戦略にも力を入れている。

ただ、本書に出てくる蛭田という男は、短期的に株価を上げることだけに注力。

そんなリストラ屋の蛭田とカラ売り屋の北川の全面対立小説なのだ。

本書は、金融の知識がなくても、わかりやすい表現で説明されており、理解しながら読み進めることができる。

誰もが楽しめる金融エンタメ小説なのだ。

そして、本書はいろいろな問題点を読者に投げかける。
会社と株主、従業員、取引先、役員・・・の関係。
すなわち、ステークホルダーというものを真剣に考えさせられる社会派小説とも言えるだろう。





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