IT技術を活用してオフィスから離れた場所で働く「テレワーク」が、京都の事業所に普及しつつある。子育て中の女性や障害者の在宅勤務のほか、外回りの社員が出先で事務をこなす「モバイルワーク」と呼ばれる取り組みもある。家庭で過ごす時間の増加や効率的な働き方につながることから、大手だけでなく、中小企業にもじわじわと広がっている。
■作業環境整え、通勤負担軽減
京都市内の法律事務所に所属する古家野晶子弁護士は、長男を出産したのを機に、約2年前から在宅勤務を利用している。書類作成や判例調査、関係者との電話連絡などを大阪府枚方市の自宅でこなす場合がある。
在宅での仕事を支えるのは、スマートフォンを事務所の内線電話に設定できるサービスやテレビ会議システムなどのIT技術だ。仕事と生活の両立を支援する京都市の補助金を活用して導入した。古家野弁護士は「通勤の負担が減り、子どもと過ごす時間が確保できる」と笑顔で話す。
テレワークは、障害や病気で毎日の出社が難しい労働者にも恩恵をもたらしている。
堀場製作所社員でソフトウエアエンジニアの西本明弘さん(55)=京都市山科区=は、約17年前に視野が徐々に狭くなる目の疾患と診断され、今ではかすかにしか目が見えない。通勤の不安が増したため、約2年前から在宅勤務制度を利用し、週3日は家でソフトウエアの管理業務などに当たっている。
同社が在宅勤務を本格導入したのは2006年と早く、育児中の社員を中心に延べ約90人が活用した。視覚障害者の西本さんが利用するにあたっては、パソコンが操作しやすいよう、大型の画面やキーボードを貸与するなどして支援した。西本さんは「職場と変わらない作業環境で働ける」と感謝する。
■中小企業にも広がり
活用例は中小企業にも広がりつつある。
建設業関連のソフトを開発する京都サンダー(上京区)は、10月末ごろに在宅勤務を導入予定だ。対象はベテランと子育て中の女性社員2人。週1日から始め、通勤負担の軽減や家族と過ごす時間の増加に結びつける。
新井恭子社長は「プロジェクトの進行などが管理できるクラウドサービスや、ウェブ会議ソフトなどを活用すれば、作業の進ちょく管理や情報共有はできる」と自信を見せる。
中小企業のモバイルワーク導入を支援しているのが、アイシーエルシステムズ(西京区)だ。職場のパソコンに保存した売り上げ伝票や見積書を、外出先からタブレット端末などで操作できるシステムを提案している。山田修司代表取締役は「会社に帰る移動時間を減らせ、営業先を効率的に回れる」と利点を挙げる。採用した大阪府豊中市の総合建築業の社員は「以前は急用で帰社しなくてはならず、取引先との打ち合わせを断る場合もあったが、今では出先で対応できる」と喜ぶ。
■生産性向上の利点も
テレワークへの注目は高まっているが、実際に始めるとなると二の足を踏む企業がまだ多いのも実情だ。
テレワークに詳しい社会保険労務士の武田かおりさんは「従業員が職場から離れた場所で働いていると、労務管理や人事評価ができないと考える管理職もいる」と指摘する。
だが、テレワーク導入には業務内容の分析や労働時間の把握が必要になるため、「仕事が『見える化』され、効率的な働き方や生産性向上につながる」と利点を説く。府内企業でつくるテレワークの研究会に外部有識者として協力し、実践を支援していく予定だ。
2017年09月26日 京都新聞
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