10年位前の話である。
夫婦二人暮らしでご主人は、要介護3であった。
ご主人は、昔から奥さんに対して、暴力を振るっていた。
離婚しようとすると、離婚をするならお前を殺すと言われていて、その当時警察に相談するも、民事不介入と言われてしまっていた。
奥さんは、病院や買い物以外、外にでることは許されない。
そんな状況で、ケアマネさんから、ご主人を施設入所させる手はずは済んでいるが、健康診断を終わらせて、施設入所までを手伝ってほしい。
サービス内容は、お任せします。との依頼。
訪問して、週2回顔を拭いたり、足浴したりしました。1ヶ月しない位に健康診断を受けに行く話を本人に話をする。
「高齢になれば、何かしらの病気はあるので、一度健康診断を受けに行きましょう。」と私が言うと受け入れてくれました。
無事に健康診断を受けられたので、今度は施設入所をどうさせるか?
ケアマネさんが、シナリオを作ってくれる。
奥さんが朝病院に出かける。
奥さんが交通事故にあって、入院しないといけない。退院するまで、施設を用意したからそこに行ってもらう。というシナリオ。
当日、朝奥さんが病院へ行くといって家を出る。
1時間後にケアマネさんと私で訪問して、奥さんが交通事故にあったと伝え、施設に行くことを伝えると本人は仕方がないと了承される。
ケアマネさんが、タクシーをつかまえに行ってくれる。その間に荷物の準備をして、本人をお連れして、タクシーに乗る。
行き先は、ケアマネさんがタクシーの運転手に伝えてくれている。
そして、タクシーに乗り施設まで行く。
タクシーでの道中私と利用者さん二人で後部座席にいる。
どんどんと都会から離れて行くが向かう先は、東京都である。
だんだんとビルが消え畑が多くなると、利用者さん「何処に行くんだ。」
私「大丈夫です。東京ですから。」
自分でも何が大丈夫か分からないがそういうと一応納得される。
何度かそんなやり取りをしながら施設に着いて、入所することが出来た。
私は、安堵して帰る時に、ふとここはどこだ?
一番近い駅はどこなのかも分からなかった。
今みたいにスマホがなかったし、施設に無事に送り届けることで頭が一杯であった。
道を通った方に近くの駅までの行き方を聞いて帰った。
後日談として、ケアマネさんから、奥さんは何十年か振りに束縛されずに自由になれたと喜んでいた。
ご主人は、奥さんには酷く当たっていたが、トラブルもなく落ち着いて施設になじんでいる。
との報告を受けた。
これも福祉の役割だと思ったのを思い出す。
この対応で良かったのか?正解はない。
この当時、このご夫婦にとって一番良い選択は何かを考えて導き出した答えであった。