仕事内容は「引継ぎ」「夕食介助」「口腔ケア」「トイレ誘導」「就寝介助」「21時以降2時間おきの巡回(パット交換、体位変換など) と入居者対応」「朝食作り」「起床介助」「朝食介助」「口腔ケア」「バイタルチェック」「申し送り」「掃除」ざっとこんな感じ。日勤の昼と夕食は外注だったが夜勤時の朝食は職員が作る必要があった。
◆就寝介助
特に大変だった作業の一つで入居者の質と介護度次第で天国にも地獄にもなる。当時は介護度が高い入居者がほとんどでトイレ介助時か臥床時、パジャマに更衣させオムツを装着する。それを済ませたら扱いにくい暴力入居者達に取り掛かるのだが、機嫌が悪い時は何をやっても無駄なので他の雑用をこなしながらチャンスを伺う。
一番厄介な暴力婆さんの就寝介助ができるようになったのは入社後3ヶ月目あたりで、それまでは隣ユニットか遅番の職員に任せていた。早く一人前にならなくてはと焦る気持ちでいっぱいだったあの当時を思い出す。
・帰宅願望
夕食後によく現れる症状、これはかなり厄介だった。昼間は普通に過ごしていたのに夕方になると様子が一変し「いつ帰れる?」「外に出してくれ」「帰るからタクシー呼んでくれ」とかなりしつこい。毎日そういった症状が現れるわけではなく週に1〜3回程度の頻度で発生、「明日の朝、家の人が迎えに来ますから今晩は泊まって下さい」という文句が通用する人はほとんどいなかった。
就寝介助時も付きまとわれ「帰りたい、外に出させろ」を連発。「今、仕事中なので待って下さい」と言っても無駄、この人達は相手の状況など目に入らず自分最優先で基本的に「待て」ができない。余りにも鬱陶しいのでユニット全体の電気を消して台所に隠れたこともあったし、「お帰り下さい」と外に出しどういった行動に出るのか観察したこともあった。
帰宅願望モードに入ると一晩中寝ない入居者も居た。朝になったら夜勤者が連れて帰ってくれると思い込むようで、俺のことをマークし始める。逃げられては困ると臥床せず居室前の椅子に座りこちらの様子を伺い、俺がトイレや巡回に動くと後を付いてくる。仮眠用の畳ベッドで横になっていると居室から自分の掛布団を持ってきて俺に掛けてくれる憎めない一面もあった。夜勤明けの帰宅時もこの婆さんは付いてくるので「今からスーパーで○○を買ってくるからここで待ってて下さい、その後一緒に帰りましょう」と騙して帰宅するのが恒例だった。
◆21時以降(巡回)
2時間おきの巡回以外は待機となる一番楽な時間帯であり、自分の好きな事や仮眠を取ったりできるが「深夜徘徊」「高熱などの体調不良」「看取り入居者の急変時」は気が休まらない状態となるので疲れ果てる。巡回時の作業は主にパッド交換だが抵抗される場合がある。
・パッド交換
声掛けしてパッド交換時、拒否する婆さんの例。「○○さん、すいません、手が滑って○○さんのズボンにコップの水をこぼしてしまいました。濡れてしまったのでパンツを替えさせて下さい」などと声を掛けると拒否なくパット交換させてくれることを発見した。入居者の性格を見極め、どんな声掛けが最適なのかを考えるのも重要だと勉強させられた。
他の施設であれば注意を受けるかもしれんが、オムツの中に大パッドに中パッドを重ねたものを仕込んでおき任意の時間になったらオムツを開けて汚染パッドを引き抜く。通常なら体位変換しながらパッド交換しなくてはならないが、引き抜きなら凶暴な入居者を覚醒させてしまうことがあまりなく楽だった。最初に教えてもらったのがこの方法なのでこれが当たり前だと思っていた。
ほとんどは婆さんだが、暴力爺さんのチン巻き(一物にパッドを巻く作業)だけは気持ちが悪く萎えた。あとはたまに起こる大量の下痢便処理。背中までクソまみれになっている状態を初めて見た時はどうしてよいのか分からず固まってしまったのを思い出す。
・質の悪い入居者
眠れない夜は独語が続く車椅子の婆さんがいた。おそらく人を呼ぶためだと思われるが、手を叩く音や壁を叩く音が耳障りでたまらなかった。静かにするよう促しても聞いてもらえず眠るまで我慢するしかない。しかもベッド上で激しく暴れて落下することが多発したのでベッド下に布団を敷く対応を取っていた。柵をする職員も出てきて「身体拘束」にあたるのかどうか議論になったこともあった。
プライドが高く昔の自慢話ばかりする爺さんにも手を焼いた。入所したての頃はよく呼び止められ、昔の武勇伝かなにか知らんが何度も同じ話を聞かされてうんざり。夜中は2時くらいまで起きていて、施設中に響き渡るくらい大音量でテレビを見ている。音量を下げるように言っても聞く耳を持たないのでトイレに行った隙にB-CASカードを抜いてやった。
夜中、真っ裸になって出てきて「風呂に入らせろ」としつこかった。末期癌で歩行困難になっていくが自分の足でトイレに行くことにこだわり続け手助けしようとすると怒り出す、ポータブルトイレ、オムツは拒否していた。巡回時、「不法侵入」だと騒ぎだし長々と説教をされたこともあったな。本当に厄介な人だった。
他にも財布の中身や箪笥の服を取られたとか夜中に何度も訴えてくる婆さんも面倒な存在だった。
質の悪い入居者の話はこれぐらいにしよう。長くなってしまったので起床介助などの話は次回に書こうと思う。
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