2010年02月15日
穂積、6位で涙「強くなりたい」
目指したのは速さではなく強さ。だが世界の壁は高かった。スピードスケート女子3000メートルで14日(日本時間15日)穂積雅子選手(23)が6位に入賞した。強烈な負けん気が持ち味の女子長距離のエース。表彰台を狙ったが「すごく悔しい。強くなりたい」と瞳をうるませた。
400メートルトラックを7周半滑りゴールすると、両手をひざにおいた。呼吸を整え、1周してから観客席に手を振った。「4年間五輪のためにやってきた。自分のベストの滑りができた」。だが、後で滑った選手に抜かれ、メダルの可能性がなくなると悔しさが込み上げた。
小学生のころから長距離の運動が得意だった。冬はスケート、夏は水泳。陸上自衛官の父英光さん(52)と始めたマラソンにも夢中になった。
中学時代は自転車も加わり、北海道のジュニアトライアスロン大会で2連覇。スケートにしぼり強豪の駒大苫小牧高に進学。女子スピードスケート部監督の中野明彦さん(51)が驚いたのは、その旺盛な食欲だった。
インターハイ決勝の朝。ホテルのバイキングで中野さんの隣に座った穂積選手の手には、大きな皿が2皿。
「一つは僕に持ってきてくれたのかと思ったけど、両方ぺろっと食べちゃった。これからレースをする人が食べる量じゃなかった」。中野さんは笑う。
同じ3000メートルに出場した石沢志穂選手(23)とは高校の同級生で寮も一緒だった。仲がいい二人だが、レースになるとライバルに変わった。
「大会の控室で、一番端に穂積がいて、もう一方の端に石沢がいた。お互いに話もしない。『絶対に負けたくない』っていうのが伝わってきた」と中野さん。
競い合うように成長した二人は、ともに五輪切符をつかんだ。
穂積選手は昨シーズンの遠征中に読んだ小説の言葉に共感した。正月の風物詩、箱根駅伝をテーマにした「風が強く吹いている」(三浦しをん著)。こうあった。
「長距離選手への最大の褒め言葉は『速い』じゃなくて『強い』だ」
同走し優勝したチェコのサブリコバ選手はジュニア時代からライバル。「背中が遠かった。彼女よりも倍トレーニングして強くなりたい」。雪辱を誓った。
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