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略して鬼トラ
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2018年08月10日

[要件事実] 過失(不特定概念)と主要事実 の 論点

[要件事実] 過失(不特定概念)と主要事実 の 論点

過失(不特定概念)と主要事実の論点については、是非とも理解が必要です。択一だけの司法書士試験においては(しかもたったの5問、かつ、理解というよりほとんどが条文の暗記だけ)、この論点に関する理解が及んでない合格者が多いようだ、これが私の実感です。そのため、今回この論点を取り上げさせていただきました。

(なお、学説には、@主要事実適用説、A主要事実・間接事実適用説、B主要事実・準主要事実適用説、C個別判断説等がありますが(民事訴訟法・上田徹一郎著・法学書院・参照)、私の記載は極めて単純化したオーソドックスな説明に終始しております。あらかじめご承知おきください。
学者・実務家の諸先生方が精緻な議論を展開しておられます。
より正確な理解のためには、是非、諸先生方のご著書をどれか一つお読みになられてください。(例えば、弁論主義は主要事実にのみ適用されるとの説に反対する学説もあります。ただし、有限な勉強時間からすれば、試験対策上、いろいろな議論に深入りする時間的余裕もありません。典型的な基本書を通読すれば、それで十分でしょう。)





1 過失を主要事実とする考えでは、訴訟が空転する

過失を主要事実とする考えでは、訴訟が空転する。

過失という、言わば不特定概念・規範的要件(具体的事実に対する裁判所の法的評価・規範的評価)そのものを主要事実とするのでは、訴訟当事者は、何を攻撃防御の目標にして訴訟活動を行ってよいのか、分からなくなってしまう。また、裁判所も訴訟運営の方向性、判決に至るまでの判断対象に窮する。


当該交通事故(物損事故)の損害賠償請求訴訟において、「脇見運転」を争点とすればよいのか、「スピード違反」を争点とすればよいのか、はたまた「適切な車間距離を保って走行していないこと(車間距離不保持運転)」を争点とすればよいのか、訴訟当事者、裁判所としては、まったく訴訟の主題自体が見定まらないことになってしまう。


2 これは弁論主義を考えれば明らかである

これは弁論主義を考えれば明らかになります。

弁論主義は、主要事実に適用される。

まず、このことを確認しておきます。



次に、弁論主義の第1、第2、第3テーゼを確認しておきます。

[第1テーゼ:主張原則] 裁判所は、当事者の主張しない事実を判決の基礎(裁判の資料)としてはならない。




[第2テーゼ:自白原則] 裁判所は、当事者の争いのない事実(自白事実)は、そのまま判決の基礎(裁判の資料)としなければならない。




[第3テーゼ:証拠原則]  裁判所は、争いのあるを事実を証拠によって認定するには、当事者の申出た証拠によらなければならない。これにより職権証拠調べの禁止が導かれます。




以上の三つです。





このうち第1テーゼが、典型的によく引き合いに出され問題とされます。

[第1テーゼ:主張原則] 裁判所は、当事者の主張しない事実を判決の基礎としてはならない。


この主張原則からは、仮に過失といった抽象的な規範的要件・不特定概念を弁論主義の適用のある主要事実と捉えてしまうと、次のような不都合が惹起されます。

すなわち、例えば交通事故(物損事故)において、

原告が被告の一時停止義務違反(道交法第43条)を主張立証し、これに呼応して被告も同義務違反がないことを反証していたとします。

そうしていたところ、過失とい抽象的な規範的要件・不特定概念を弁論主義の適用のある主要事実と捉えてしまうと、裁判所が被告の前方不注視をいきなり認定して、原告の被告に対する、不法行為に基づく損害賠償請求権を認容する判決を言い渡すことが可能となってしまうのです。



具体的事実である一時停止を行わなかったこと、あるいは前方注視を行わなかったことは、弁論主義の適用のある主要事実ではなく、被告の過失という主要事実を立証する間接事実の一つとして位置づけられてしまうからです。

間接事実には、弁論主義の主張責任の適用がなく、したがって、証拠調べ等で現れれば、裁判所は当事者の主張なくして事実認定を行い、裁判の基礎とすることが可能となってしまうのです。




過失という不特定概念・規範的要件を主要事実と考えると、このような不都合が起きてしまいます。



これでは、被告に対する不意打ちも甚だしい。



そこで、過失という不特定概念・規範的要件ではなく、過失を構成するところの、一時停止を行わなかったこと、あるいは前方注視を行わなかったことに該当する具体的事実を主要事実として、かかる行為の不作為を義務違反として捉え、被告の過失を裁判所は認定するのです。(*注1)



このように具体的事実を主要事実とすれば、弁論主義の第1テーゼである主張責任が適用される結果、原告が被告の一時停止義務違反を主張立証し、これに呼応して被告も同義務違反がないことを反証していたところ、裁判所が被告の前方不注視をいきなり認定して、被告の不法行為責任を認める判決を言い渡すことは弁論主義違反となるのです。

裁判所は、当事者の主張しない事実(=前方不注視)を判決の基礎としてはならないのに[第1テーゼ:主張原則]、これに反して、前方不注視を判決の基礎としたからです。

(⇒訴訟において当事者が主張立証(本証)・反証していたのは、一時停止の有無だったはずです。)

以上から、裁判所は、過失という不特定概念・規範的要件ではなく、過失を構成するところの、具体的事実を主要事実と捉えるのです。(勿論、これは一つの見解、学説です。)


敷衍すれば、過失は裁判所の法的評価であって、当該過失を具体的に構成し、基礎づけているところの「脇見運転」、「酒酔い運転」、「スピード違反の運転(法定のスピードを超過する運転)」、「一時停止義務違反の運転(一時停止を行わない運転)」、「徐行義務違反の運転(徐行を行わない運転)」、「車間距離保持義務違反の運転(車間距離を適切に保持しない運転・車間距離不保持運転)」に該当する具体的事実そのものが、主張責任の及ぶ、すなわち、弁論主義の及ぶ主要事実となります。



まとめ 過失を基礎づける具体的事実を主要事実と捉える

過失と主要事実の論点においては、「弁論主義や被告に対する不意打ち防止等の観点から、過失を基礎づける具体的事実を主要事実と捉える。」、このような考え方があることを理解します。(勿論、これは一つの見解、学説ですが・・・。)






(*注1)過失を構成するところの、一時停止を行わなかったこと、あるいは前方注視を行わなかったことに該当する具体的事実が、評価根拠事実であり、主要事実である、とも言える。


余談:訴状に単に「被告に過失がある」とだけ記載し、過失を構成する具体的事実を記載しないで起案した特別研修受講生がいたとすれば、注意喚起が必要でしょう。また、弁論主義や被告に対する不意打ち防止等の観点から、過失を基礎づける具体的事実を主要事実と捉えること(これは一つの説明の仕方(見解・学説)ではあり、他の説明の仕方も勿論あるが)(*注2)、このことを特別研修受講生に対して、説明しない、あるいはできないチューターがいたとしたら、司法試験型の民事訴訟法の勉強による基礎固めが是非とも必要なのではないでしょうか。直截にいいますが、司法書士試験における択一の民事訴訟法の勉強だけでは極めて不十分であると思われます。
これは、司法書士試験に欠陥があると言っているのではありません。司法書士試験の民事訴訟法の択一問題は秀逸です。ただ、合格後に民事訴訟法のさらなる高みを目指して、勉強をする必要があるのではないでしょうか、こういった問題意識の私なりの発露に他なりません。ご理解賜りたく存じます。


(*注2)他の見解・学説によるのであれば、その見解・学説の説明を是非とも行わなければ、過失・不特定概念に関する特別研修受講生の理解が十分になされないまま特別研修が終わってしまうことになるのではないか、こういった一抹の不安が生じます。

























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