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2020年05月23日
消費貸借と要物契約、諾成契約
建物所有者AとBの間で、Aの海外赴任中に限り無償でその所有建物をBが借り受ける旨の合意をしたが、その引渡し前に、Aが第三者Cと賃貸借契約を締結して当該建物を引き渡した場合、BはAに対して、使用貸借契約に基づく債務の不履行による損害賠償請求をすることができない。
[平成30年司法試験 短答 民法第24問 肢ウ]
[平成30年司法試験 短答 民法第24問 肢ウ]
上記の肢は、旧民法を適用するか改正民法を適当するかで正誤が真逆になる。
使用貸借契約について、旧法では要物契約であったが、新法では諾成契約となったからである。
改正法施行日は令和2年4月1日である。
使用貸借契約の契約締結日が、令和2年4月1日以降であれば、BはAに対して、使用貸借契約に基づく債務の不履行による損害賠償請求をすることができる。
契約締結日が令和2年4月1日以降であれば、新法の諾成契約の適用があるからである。
たとえAがBに当該所有建物を引き渡していなくとも、建物所有者AとBとの間で、無償でその所有建物をBが借り受ける旨の合意をしている以上、新法の適用によりAB間に使用貸借の諾成契約が成立している。
したがって、
建物所有者AとBの間で、Aの海外赴任中に限り無償でその所有建物をBが借り受ける旨の合意をしたが、その引渡し前に、Aが第三者Cと賃貸借契約を締結して当該建物を引き渡した場合、当該合意日が令和2年4月1日以降であれば、BはAに対して、使用貸借契約に基づく債務の不履行による損害賠償請求をすることができる。
これに対して、この使用貸借契約の契約締結日が、令和2年3月31日以前であれば、BはAに対して、使用貸借契約に基づく債務の不履行による損害賠償請求をすることができない。
契約締結日が令和2年3月31日以前であれば、旧法の要物契約の適用があるからである。
旧法の要物契約であれば、AがBに当該建物を引渡すまでは使用貸借契約は成立していない。
したがって、
建物所有者AとBの間で、Aの海外赴任中に限り無償でその所有建物をBが借り受ける旨の合意をしたが、その引渡し前に、Aが第三者Cと賃貸借契約を締結して当該建物を引き渡した場合、当該合意日が令和2年3月31日以前であれば、BはAに対して、使用貸借契約に基づく債務の不履行による損害賠償請求をすることができない。
改正民法第593条[使用貸借]
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。