年金2000万円問題、巷で大きな波紋
年金2000万円問題で、老後(労働収入がない)を安心して暮らしていくためには2000万円位の金融資産が必要になるとの金融審議会の答申が話題になりました。
この話題は、巷で大きな波紋を呼びました。夫婦共働きで二人合わせて年金が十分に期待できる世帯や資産家の方々には関係ないお話しかもしれませんでしたが、巷の多くの世帯は不安に感じられたのではないかと察します。いろんな前提の説明がなく「2000万円なければ老後は安心できなくなる」との思いが衝撃を誘いました。
老後を安心に迎えるには
ついては、一般的な「夫がサラリーマンで妻が専ら専業主婦」の世帯を想定して老後を安心して迎える為の留意点等をご紹介して皆様のご参考になれば幸いと考えます。
老後(無職)を支える生活基盤の第一は何といっても公的年金です。(前回で公的年金の把握がまず第一と申し上げました。「あなたの老後大丈夫?大切な公的年金いくら位になるかご存知?」)
現役時代の財産形成の話はとりあえず別にして、次に大事なのは、退職金の位置づけをどう考えるかが老後生活に大きく影響するものと考えます。
老後の安心に退職金は重要な位置づけ
定年退職金は、永年の功労の賜物であり老後生活を支える貴重なお金です。サラリーマンが人生において遺産相続でもない限りこれほどまとまったお金を手に入れることは滅多にないことです。
それだけに右から左に抜けるようなことがあってはなりません。ましてや住宅ローンや他の負債を退職金で穴埋めするなどは、余程のことがない限り避けなければならないと思います。できれば極力年金化(退職金の一部を企業年金に回す)を図るべきだと思います。
ところで、退職金が定年時にどれくらいもらえるかについては、実際見当がつかない方が大半だと思います。労働組合員であれば、会社と組合との協定書があるはずなのでおよその見当はつくかも知れませんが、大半の方はあまり規定など目にする機会がなくよくわからないのが実情ではないかと思います。
このため、現在の退職金の世間相場を厚労省の調査でご紹介します。
退職金の相場は、大企業と中小企業との間ではかなり格差があります。
平成30年の厚労省の就業条件総合調査結果では、大卒勤務年数35年以上の定年退職者の平均は、2173万円となっています。そして、1000名以上の大企業では、2435万円、300名以上1000人未満企業では1957万円と約5百万円の差があります。高卒者の場合はそれぞれ約2百万円下回るというのが定年退職金の相場となっています。
従って、一般的には定年退職の場合、退職金は1800万円位(大卒+高卒)と見ておけばいいのではないでしょうか?(実際にわかる方は別として)
今仮に、この1800万円の退職金を住宅ローンの返済や車の購入などに回さずに済むとして老後30年に亘り生活費に充てるとすれば、年60万円、月額にすると「5万円」の生活費の足しになります。
公的年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)が、夫婦二人合わせて288万円(夫78+132=210万円、妻78万 合計288万円)だとすると月額は「24万円」となります。
※夫の年金の算定基礎は、勤務年数40年でその期間の平均標準報酬を50万円(給料+賞与)とみて別表(あなたの老後大丈夫?大切な公的年金いくら位になるかご存知?)に当てはめて算出すると「老齢厚生年金」は132万円、それに「老齢基礎年金」を加入期間40年として満額78万円を足すと総額210万円になります。妻も国民年金の加入期間を40年として満額の78万円となります。二人合わせて288万円が65歳以降の公的年金受給額と見込めます。
老後の生活費を仮に総務省の平成29年家計調査報告による「26万円※」とすると公的年金「24万円」では足りなくなります。
従って退職金1800万円を丸々残しても月にすれば3万円(24+5−26)しか余裕がないことになります。これでは、家の補修や万一の際の出費があった際は足りなくなります!
※総務省の平成29年家計調査報告
⦿夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦で仕事をしていない世帯の毎月の生活費
・食費:6万4,444円
・住居:1万3,656円(住宅ローンは完済していると思われる)
・光熱・水道:1万9,267円
・家具・家事用品:9,405円
・被服及び履物:6,497円
・保健医療:1万5,512円
・交通・通信:2万7,576円
・教育:15円
・教養娯楽:2万5,077円
・交際費:2万7,388円
・その他:2万6,640円
・税金・社会保険料:2万8,240円
合計で26万円。
老後の安心のために退職金の活用を!
このように、1800万円の退職金を丸々老後の生活費に充当するとしても余裕のない生活が想定されます。従って、以上のような状況が想定されるならば、是非、住宅ローンは定年前までに極力完済される努力をおすすめします。金利が安いからと先送りせず繰り上げ返済を重ね定年までの完済が望ましいと思います。
また、退職金は最大限、年金化(企業年金)して老後に備えることが望ましいでしょう!
なお、下記の関連記事もご覧いただければ幸いです。
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