2016年03月01日
六十二話 お題:眼中(見える範囲) 縛り:弓手(左の手)、開票(投票箱を開いて投票の結果を調べること)、フリークライミング(安全確保の目的以外にはハーケン・ロープなどの道具を使わないロッククライミングのこと)
職場の同僚から聞いた話である。
彼女は趣味でフリークライミングをしているのだが、ある日家に奇妙な手紙が届いたという。
「なんか当議会で貴方様がフリークライミングで今後どちらの手を使用可能かについて投票を行い、開票を行ったところ今後は弓手しか使用できないことに決まりましたのでご了承下さいとか書いてあってさ。弓手って確か左手だから登る時に右手を使うなってことでしょう。内容ぶっ飛んでるし私がフリークライミングしてることも知られてるから怖くなっちゃって」
とはいえ手紙以外に特に嫌がらせのようなものはなく、彼女は試しにフリークライミングに行って右手を使ってみることにしたそうだ。
「議会だかなんだか知らないけど、人の手勝手に使用不能にするなって思いながら行ったら」
いつも行くフリークライミングの施設に、双眼鏡でじっと彼女のことを監視するスーツ姿の男がいたのだという。
「あぁ、こいつ私が登る時に右手使うかどうか見てるんだって思って。スタッフさんに言って声かけてもらったら、そいつスタッフさんのことを殴りまくってまた私のことを監視しだしたの」
すぐに警察が呼ばれ、その男は逮捕されたという。彼女もその施設にはもう行くことができず、仕方なく別の施設に行くと、そこにも双眼鏡で彼女のことを監視するスーツ姿の男がいた。逮捕された男とは別人だった。
「それ以来フリークライミングには行ってない。本当は行きたいんだけどね……」
彼女はひどく寂しそうにそう言った。
彼女は趣味でフリークライミングをしているのだが、ある日家に奇妙な手紙が届いたという。
「なんか当議会で貴方様がフリークライミングで今後どちらの手を使用可能かについて投票を行い、開票を行ったところ今後は弓手しか使用できないことに決まりましたのでご了承下さいとか書いてあってさ。弓手って確か左手だから登る時に右手を使うなってことでしょう。内容ぶっ飛んでるし私がフリークライミングしてることも知られてるから怖くなっちゃって」
とはいえ手紙以外に特に嫌がらせのようなものはなく、彼女は試しにフリークライミングに行って右手を使ってみることにしたそうだ。
「議会だかなんだか知らないけど、人の手勝手に使用不能にするなって思いながら行ったら」
いつも行くフリークライミングの施設に、双眼鏡でじっと彼女のことを監視するスーツ姿の男がいたのだという。
「あぁ、こいつ私が登る時に右手使うかどうか見てるんだって思って。スタッフさんに言って声かけてもらったら、そいつスタッフさんのことを殴りまくってまた私のことを監視しだしたの」
すぐに警察が呼ばれ、その男は逮捕されたという。彼女もその施設にはもう行くことができず、仕方なく別の施設に行くと、そこにも双眼鏡で彼女のことを監視するスーツ姿の男がいた。逮捕された男とは別人だった。
「それ以来フリークライミングには行ってない。本当は行きたいんだけどね……」
彼女はひどく寂しそうにそう言った。
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