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ペン牛といいます。子供の頃から怖い話が好きで、ブログを始めたいけどネタがない、と悩んでいたところ辞書からランダムに選んだ言葉を使って怖い話を書けないかと思いつき、やってみたら案外できることが判明、気がついたらブログを開設していた。こんなですが、どうぞよろしくお願いします。なお当ブログはリンクフリーです。リンクしてもらえるとすごく喜びます。にほんブログ村アクセスランキング、人気ブログランキング、アルファポリスに参加中です。 


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2016年02月05日

三十七話 お題:帰り(帰ること) 縛り:配役(映画や演劇などで出演者に役を割り当てること)、飛び散る(飛んであちこちに散る)、ネクタイ(首またはシャツなどの襟元に巻いて前で結んで飾りにする細長い布)、十六夜(十六夜の月のこと)

 知人の舞台俳優から聞いた話である。


その日彼は新作の舞台の配役で自分が端役であることに腹を立て、監督と大喧嘩をしてしまった。ひどく憂鬱な気持ちで帰路につき、ふと空を見上げると綺麗な十六夜の月が浮かんでいたのを皮肉に思ったそうだ。彼はいつも乗る電車に乗り込み、座席に座ってぼんやりと今日あったことを思い返していた。すると突然、自分の目の前に座っていたサラリーマンが座席から転がり落ち、床でもがき始めた。
「俺も含めて何人も大丈夫ですかって声かけたんだけど、多分何も聞こえてなかったと思う。苦しくてたまらないから、とにかく近くの人にすがりつくって感じだったよ」
 彼の言葉通り、そのサラリーマンは自分の周りの人達の足にしがみついては振り払われる、ということを繰り返していたという。そして彼もサラリーマンにしがみつかれ、振り払おうとしたところ転倒してしまった。
「そのサラリーマン、這って俺の上に乗っかってきてさ、顔が目の前のところまで来て、しかもその顔があんまり辛そうだったからさ、とっさにネクタイほどいてワイシャツの首のボタン外したんだよね」
 直後、サラリーマンの口から大量の血が吹き出した。彼の顔が真っ赤に染まったのはもちろん、辺り一面に血しぶきが飛び散るほどだったという。
「結局電車が止まってその後は鉄道の人が対応してくれたけどさ。俺も人の血を浴びたから念のため病院行って、まぁ異常はなかったからよかったよ」
 彼はその時の体験を元に断末魔の演技に磨きをかけ、監督から重要な役をもらうことも多くなったそうだ。



posted by ペン牛 at 08:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 怖い話
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