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ペン牛といいます。子供の頃から怖い話が好きで、ブログを始めたいけどネタがない、と悩んでいたところ辞書からランダムに選んだ言葉を使って怖い話を書けないかと思いつき、やってみたら案外できることが判明、気がついたらブログを開設していた。こんなですが、どうぞよろしくお願いします。なお当ブログはリンクフリーです。リンクしてもらえるとすごく喜びます。にほんブログ村アクセスランキング、人気ブログランキング、アルファポリスに参加中です。 


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2016年07月16日

百九十九話 お題:湯水(たくさんあるものを粗末にする例え) 縛り:一般化(広く行き渡ること)、位牌(死者の戒名・法名などを記した木の札)、復啓(返信の冒頭に用いる語)、メディア(情報を伝える手段)、情味(人間らしい温かみ)

 友人の女性の話である。

彼女とはよく手紙をやり取りするのだが、先日来た手紙に父親の葬儀のことで悩んでいると書いてあったので、たまには電話で話してみようかと電話をかけたところ、
「電話をくれてありがとう。ちょうど誰かに話を聞いてほしいと思ってたところ」
 と彼女は言った。父親の葬儀のことについて聞いてみると、問題は葬儀自体ではなく、葬儀を取り仕切る彼女の母親にあるということだった。
「お母さんがお父さんのお葬式をとにかく豪華なものにしたいって言っててね。なんとかそれをやめさせたいんだけど」
 私はそれを聞いて意外に思った。彼女は手紙を書く時必ず拝啓や復啓、敬具といった頭語と結語を使う礼儀正しい人物で、亡くなった父親のために豪華な葬儀をあげることにはむしろ賛成しそうだったからだ。そのことを彼女に伝えると、
「ただ豪華なお葬式をあげるだけなら私も賛成したけど、お母さんはね、豪華なお葬式をあげることでお父さんへの恨みを晴らそうとしてるんだよ」
 一体それはどういうことだろう、と私が聞くと、
「お母さん、ずっとお父さんから暴力を振るわれてて。でもお父さんが生きてる間は怒ったりとか悲しんだりとか一切しなかったんだ。私、お母さんのことすごく打たれ強い人だと思ってたんだけど、本当は逆で、ひたすら自分の中に悪いものを、それこそおかしくなるまで溜め込んじゃう人だったんだよ。お父さんが亡くなってすぐに、お母さん、あの男の遺したものなんて全部いらないって言ってお父さんの遺品を片っ端から売り飛ばして、売れないものは全部捨てた。その上貯金はもちろん、私や私の兄妹を連帯保証人にしてすごい額の借金をして、そうやって作ったお金を全部お父さんのお葬式に使おうとしてる。お葬式、戒名、仏壇、位牌、お金をかけられるものには全てありったけのお金をかけて、お葬式が済んだら今住んでる家と土地を売り払ってお墓を建て直すんだって……お母さんにとっては、ずっと暮らしてきた家も、私達も、憎いお父さんが遺した、捨ててしまいたいものなんだよ」
 親戚や母親の知人に頼んで母親を止めてもらうことはできないのか、と私が聞くと、
「頼んではみたんだけどね。でも、頼んだ人皆からお母さんがお父さんのために豪華なお葬式をあげようとしてるのにそれを止めようだなんて情味がないにも程がある、って言われちゃって」
 確かに葬儀は安くてもいいという考えはまだまだ一般化しておらず、格安での葬儀を一部メディアが取り上げるくらいだ。とはいえこのまま行けば彼女の家族はそろって破滅である。こうなったらもう母親と縁を切るしかないだろう、と彼女に言ったところ
「うん、そうだよね。それが一番いいってわかってるんだけど……それでも私、お母さんを見捨てたくないんだ。お母さんが辛かった時、私何もしなかった。何もしなかったから、お母さんはおかしくなっちゃったんだよ。だからこそ、今側にいたい。何もできることがなくても、拒絶されるだけだとしても、それでもお母さんの側にいたいの」
 私はそこまで言うのならもう止めることはできない、と言って電話を切った。そして彼女からの手紙はぱったりと止まった。

posted by ペン牛 at 11:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 怖い話
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