2016年07月05日
百八十八話 お題:長辺(長方形の長い方の辺) 縛り:芋名月(陰暦八月十五夜の月)、繰り上げる( 期日や時間などを予定より早める)、散発(物事が間をおいて起こること)
父から聞いた話である。
父は野菜作りが趣味なのだが、以前から猪による被害が散発していたため、ある時重い腰を上げて猪対策をすることにしたそうだ。
「最初は十月くらいにやろうかなと思ってたんだが、九月の中頃に暇ができたから、予定を繰り上げることにしたんだ。確かちょうど芋名月の日だったかな」
父は畑の周りに猪除けのトタンを手際よく立てていった。父の畑は長方形の形をしており、その長辺にあたるところにトタンを立てている時にそれは起きたという。
「バキンバキンっていう何かが割れるような音がすぐ側でしたんだ。なんだと思って音のした方を見たら」
父のすぐ側で、毛むくじゃらの何かがトタンを齧っていた。何かは父の視線に気づいたらしく、父に巨大な口以外何もついていない顔を向けると、老人のような声で、
「もっと」
と言った。父はほとんど無意識のうちにその場から逃げ出し、気づいた時には家の中にいたという。
「猪の対策ならできるんだが、あれはなぁ……とは言ってもいつまでも畑を放っておくわけにもいかないし、うーん……」
そう言うと父は両手で頭を抱え、何も言わなくなってしまった。
父は野菜作りが趣味なのだが、以前から猪による被害が散発していたため、ある時重い腰を上げて猪対策をすることにしたそうだ。
「最初は十月くらいにやろうかなと思ってたんだが、九月の中頃に暇ができたから、予定を繰り上げることにしたんだ。確かちょうど芋名月の日だったかな」
父は畑の周りに猪除けのトタンを手際よく立てていった。父の畑は長方形の形をしており、その長辺にあたるところにトタンを立てている時にそれは起きたという。
「バキンバキンっていう何かが割れるような音がすぐ側でしたんだ。なんだと思って音のした方を見たら」
父のすぐ側で、毛むくじゃらの何かがトタンを齧っていた。何かは父の視線に気づいたらしく、父に巨大な口以外何もついていない顔を向けると、老人のような声で、
「もっと」
と言った。父はほとんど無意識のうちにその場から逃げ出し、気づいた時には家の中にいたという。
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そう言うと父は両手で頭を抱え、何も言わなくなってしまった。
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