2016年07月03日
百八十六話 お題:狂奔(ある目的のために夢中になって奔走すること) 縛り:シャットアウト(閉め出すこと)、一世一代(一生に一度の晴れがましいこと)
幼馴染の話である。
彼は子供の頃からとにかく特別な人間になりたがっていた。彼はそのための努力も惜しまなかったが、どうにも間違った方向にばかり努力するせいで成果は一向に表れなかった。私も含め彼の周囲の人間は、お前は努力はできるのだからもっと身近な目標に向かって努力すればきっと達成できると言い続けたのだが、彼はそういった忠告の類を一切シャットアウトし、誰も真似しないような意味不明かつ危険な挑戦を繰り返した。やがて彼は綱渡りに目覚め、世界記録を樹立すべく練習に明け暮れ、いよいよ世界記録に挑戦するという時に急激な体調の悪化により入院することになった。検査の結果彼が感染したのは新種のウィルスで、彼が感染者第一号ということだった。私は彼のお見舞いに行った際、
「一世一代の大舞台の直前にこんなことになるなんて、残念だな」
と言ったのだが、それに対し彼は、
「とんでもない。新種のウィルスの感染者第一号なんて紛れもなく特別じゃないか。まさかこんな簡単に夢が叶うなんてなぁ。俺は幸せ者だよ」
痩せこけてどす黒くなった顔に笑顔を浮かべてそう言った。
彼は子供の頃からとにかく特別な人間になりたがっていた。彼はそのための努力も惜しまなかったが、どうにも間違った方向にばかり努力するせいで成果は一向に表れなかった。私も含め彼の周囲の人間は、お前は努力はできるのだからもっと身近な目標に向かって努力すればきっと達成できると言い続けたのだが、彼はそういった忠告の類を一切シャットアウトし、誰も真似しないような意味不明かつ危険な挑戦を繰り返した。やがて彼は綱渡りに目覚め、世界記録を樹立すべく練習に明け暮れ、いよいよ世界記録に挑戦するという時に急激な体調の悪化により入院することになった。検査の結果彼が感染したのは新種のウィルスで、彼が感染者第一号ということだった。私は彼のお見舞いに行った際、
「一世一代の大舞台の直前にこんなことになるなんて、残念だな」
と言ったのだが、それに対し彼は、
「とんでもない。新種のウィルスの感染者第一号なんて紛れもなく特別じゃないか。まさかこんな簡単に夢が叶うなんてなぁ。俺は幸せ者だよ」
痩せこけてどす黒くなった顔に笑顔を浮かべてそう言った。
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