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ペン牛といいます。子供の頃から怖い話が好きで、ブログを始めたいけどネタがない、と悩んでいたところ辞書からランダムに選んだ言葉を使って怖い話を書けないかと思いつき、やってみたら案外できることが判明、気がついたらブログを開設していた。こんなですが、どうぞよろしくお願いします。なお当ブログはリンクフリーです。リンクしてもらえるとすごく喜びます。にほんブログ村アクセスランキング、人気ブログランキング、アルファポリスに参加中です。 


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2016年04月25日

百十七話 お題:軍手(太い白の木綿糸で編んだ作業用の手袋) 縛り:経済産業省(経済・産業・通商などの事務を扱う中央官庁)、腰張り(壁・ふすま・障子などの下部に貼る紙や布)、援護(味方の行動や拠点を敵の攻撃から守ること)、万両(ヤブコウジ科の常緑小低木)

 知り合いから聞いた話である。

彼は経済産業省に入省したほどのエリートなのだが、激務に耐えられず退職した。彼が再就職もせずぶらぶらしていると、大学時代の友人からサバイバルゲームの誘いがあった。
「学生の頃は散々やってたけど、働き始めてからはやる暇なんて全くなかったからさ。久しぶりに行ってみるかって思って、装備一式引っ張り出して参加したんだよ」
 参加してみると学生の頃と比べて体力も落ち、勘も鈍っていたため苦戦したそうだが、それでも味方の援護のおかげもあって敵チームの中で一番強い参加者を倒すなど活躍することができた。
「本当に楽しかったんだけど、俺が倒した敵チームで一番強い人がなんか変でさ。普通サバイバルゲームやるんだったら専用のグローブを用意するのに、その人だけ軍手してて。しかもゲームが終わったあと挨拶しても返事もしないし。その時は強いぶん変わってるのかなとしか思わなかったんだけど」
 サバイバルゲームが終わったあとはフィールドの近くの旅館で一泊することになっていた。旅館に到着すると彼はチームの人達と温泉に入り、食事をし、酒を飲みながらサバイバルゲームの感想を語り合って大変楽しい時間をすごしたそうなのだが、
「酒飲みながら、あの軍手してた人強いけど態度悪かったんですよねぇ、まぁ強いって言っても俺勝っちゃいましたけど、みたいなことを言ったんだよ。そしたら」
 ブズリという鈍い音がした。音のした方を見ると、部屋の入り口の襖の、万両の木の絵が描かれた腰張りを貫いて、軍手をはめた指が十本飛び出していた。
「すぐに指は引っ込んだけど、仲居さんが来てくれるまで怖くて誰も襖開けられなかったな。事情は説明したんだけど、犯人らしいやつを見たって人は誰もいなくてさ」
 以来、彼はどんな些細な勝負事であっても、負けた人を馬鹿にするようなことは言わなくなったという。
 
posted by ペン牛 at 11:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 怖い話
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