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2017年01月23日
【クローズZERO U】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【クローズZERO U】
【出演者】
GPS(GENJI PERFECT SEIHA)
滝谷源治:小栗旬
伊崎瞬:高岡蒼甫
牧瀬隆史:高橋努
田村忠太:鈴之助
芹沢軍団
芹沢多摩雄:山田孝之
辰川時生:桐谷健太
戸梶勇次:遠藤要
三上学(双子の兄):伊崎右典
三上豪(双子の弟):伊崎央登
筒本将治(2年):上地雄輔
三代目武装戦線
阪東秀人:渡辺大
千田ナオキ:武田航平
山崎タツヤ:鈴木信二
鈴蘭高校その他
川西昇(2年前のトップ):阿部進之介
2年
林田恵(リンダマン):深水元基
鷲尾郷太:波岡一喜
亜久津太:沖原一生
1年
桐島ヒロミ:大東俊介
本城俊明:橋爪遼
杉原誠:小柳友
鳳仙学園
美藤真喜雄(2年前のトップ):山口祥行
鳴海大我:金子ノブアキ
的場闘志:阿部亮平
熊切力哉:大口兼悟
芝山隼人:蕨野友也
漆原凌(2年):綾野剛
美藤竜也(1年):三浦春馬
その他
片桐拳:やべきょうすけ
逢沢ルカ:黒木メイサ
牛山(クラブのマスター):松重豊
黒岩義信(警察):塩見三省
滝谷英雄(劉生会組長・源治の父):岸谷五朗
矢崎丈治(矢崎組組長・拳の親分):遠藤憲一
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【感想】
1作目以上だと思います!
良くまとまっていて、鈴蘭愛が伝わる!
前回も書きましたが、
やっぱり25期生の時代を映画化して欲しい・・・
今回出た、1年の美藤竜也は後の四天王!
坊屋春道や九能龍信との戦い友情を
実写化して欲しい。
お願いします三池監督!
待ってます!
って程々にして、
漫画好きでも納得の作品。
1作目とあわせて是非見てください。
【あらすじ】(ネタバレあり)
源治は鈴蘭のプール横に座りタバコを吸っていた。
そこに現れたリンダマン。
タバコを捨てた源治は、リンダマンに襲い掛かった。
屋上では、伊崎や牧瀬がそれを見ていた。
教室の窓からは、多摩雄たちも行方を見守る。
しかし・・・
あっさりと返り討ちにあう源治。
源治が負けたのを見て、
三上兄弟は言う。
「ま〜た、負〜けた〜。」
その勝負は、鈴蘭の賭けの対象となっていた。
何度も源治に賭け続けていた多摩雄。
源治が負けたのを見て、戸梶は多摩雄に言う。
「悪いな芹沢。ツケでもいいんだぞ。」
そんなやり取りの中、筒本は言った。
「何やってるんですかね〜。」
「リンダマン倒しても、
鈴蘭制覇には関係ないのに。」
それに対して時生は答えた。
「リンダマン倒さねえと、
テッペン獲った気にねれねえんだろ。」
「体は限界来てても、心は折れてねえ。」
「あいつの中で、
リンダマンとの戦いは続いてるんだよ。」
横から戸梶が口を挟んだ。
「滝谷が負けてくれれば、
また俺たちにチャンスはやってくる。」
「阪東の横槍がなければ、
完全に俺たちが勝ってた。」
「なあ芹沢・・・」
芹沢は何も答えなかった・・・
百舌ヶ浜少年院から釈放になった独りの男。
その足で向かったのは墓地であった。
ある墓の前で呟いた。
「死んで詫びるしかねえってか・・・」
「生きてる価値もねえってか・・・」
その時・・・
「川西昇。」
「待ってたぜ。」
「2年前お前がナイフで刺し殺した
美藤真喜雄さんの後輩。」
「鳳仙の的場だ。」
同時に川西を取り囲む鳳仙学園の集団。
「けじめ付けようぜ。」
その言葉を合図に、鳳仙の集団が川西に襲い掛かる。
川西は慌てて背を向けて走って逃げた。
逃げた先は、多摩雄たち鈴蘭メンバーが戯れる場所。
逃げて来た川西を見て、時生は呟いた。
「川西さん・・・」
そして、川西に近寄る多摩雄たち。
追ってきた鳳仙の集団。
鈴蘭のテリトリーと分かり足を止めた。
的場は言う。
「芹沢〜。」
「お前、川西かばうつもりか?」
時生が返す。
「鈴蘭と鳳仙は休戦協定を結んだはずだろ。」
的場は言う。
「俺等はこいつが出てくるのを、
ずっと待ってたんだ。」
「そいつは退学になった只の人殺しだ。」
「鈴蘭じゃねえ。」
「義理立てる必要ねえだろ。」
それに対して多摩雄は答えた。
「義理はねえが、場所が悪りい。」
「ここでの事は、俺等が決める。」
そのタイミングで、源治や伊崎たちが現れる。
源治は、多摩雄と的場の間に立ち聞いた。
「お前等、何やってんだ?」
時生が源治に言う。
「お前には関係ねえ。」
源治は多摩雄に向かって言う。
「カッコつけんな。貧乏人。」
そのやり取りを聞いた、鳳仙の1人が言った。
「こんな奴に、貧乏人呼ばわりか?」
「鈴蘭の頭も舐められたもんだな・・・」
その言葉を聞いた源治は、その男を殴った。
直ぐに源治を止めた時生。
しかし既に遅かった・・・
それを見た的場は笑みを浮かべながら言う。
「君も鈴蘭?」
名前を名乗った源治と同時に、忠太が付け加えた。
「鈴蘭の頭だよ。覚えとけ!」
それを聞いて真顔に戻った的場は、芹沢に言う。
「こいつのおかげで、休戦協定は破られた。」
「これで、鳳仙と鈴蘭はまた戦争になる。」
そう言い残すと、一旦退いた鳳仙集団。
鳳仙集団が帰ると、多摩雄は源治に言う。
「お前、何やったか分かってるのか?」
「新参者に、鈴蘭の看板は重てえな・・・」
川西のことも、休戦協定のことも分からない源治。
源治は何も言わずに、只タバコを吸っていた。
〜〜2年前〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
鈴蘭と鳳仙は闘っていた。
鈴蘭の頭であった川西。
鳳仙の頭であった美藤。
鳳仙に押される鈴蘭。
美藤の強さに、川西は刃物を出した.
「鈴蘭はな〜。」
「負けねえんだよ。」
そう言って美藤の腹にナイフを刺す。
それが致命傷となり美藤は亡くなった。
もちろん川西は少年院送りとなった。
その後、さらに両校の争いは加速した。
更に死人が出てもおかしくない戦い。
そこで両校は、休戦協定を結ぶことにしたのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いつものクラブで、休戦協定の話を聞いた源治。
『どんなことがあっても破っちゃならねえ。』
『どんな奴もそれだけはきちんと守ってきた。』
自分の浅はかな行動に黙り込んでいた。
次の日。
鳳仙では頭の鳴海が皆を集めて話していた。
「休戦協定は破られた。」
「芹沢って言う重しが取れて、
中はおそらくガタガタだ。」
「鈴蘭叩くぞ。」
その中には、鈴蘭から転校してきた鷲尾もいた。
鳴海は1年の竜也を呼んだ。
美藤の弟である竜也。
鳴海は竜也に向かって言った。
「鈴蘭を獲る。」
「お前も来い。」
それに対して竜也は返す。
「俺は遠慮しておきますよ。」
「兄貴は幸せもんだ。」
「こんな風に慕われて。」
「鳴海さんには感謝してますよ。」
「美藤真喜雄の弟ってだけで、
1年の俺を幹部扱いにしてくれたんですから。」
そう言うと、そのままその場を去った・・・
鈴蘭では、時生に呼ばれた源治が、
多摩雄、時生、源治の3人で話をしていた。
時生が話を始めた。
「GPSと芹沢軍団。」
「手を組んでくれねえか?」
「きっと鳳仙は攻めてくる。」
「俺たちが手を組まねえと、
今の鈴蘭じゃ潰されちまう。」
「もうどっちが上とか下とか、
そういう問題じゃねえんだよ。」
その話に源治は答えた。
「俺達はお前達に勝ったんだ。」
「俺がリンダマン倒したら鈴蘭は1つだろ。」
それを聞いた多摩雄は源治に言った。
「俺はお前を頭だと思ったとこは一度もねえぞ。」
それを聞いて源治は、
「あんなハゲ集団。GPSだけで十分だよ。」
そう言って、その場を去ろうとする。
そんな源治に時生は言う。
「鳳仙舐めんなよ。」
「あいつら半端じゃねえぞ。」
足を止めた源治は返した。
「時生。」
「あんま無茶すんなよ。」
「頭にでけえ穴あけて脳みそ弄ったんだろ?」
その言葉には同感する多摩雄だった・・・
纏まりのある鳳仙と纏まらない鈴蘭・・・
難を逃れた川西は矢崎組に、拳を尋ねていた。
組長に渡世の掟を破った話を聞いた川西。
川西は組長に聞いた。
「その組長を俺が殺ったら、
あんたの組に入れてくれるんすか?」
「俺が殺ったら、幹部にして下さい。」
組長は言った。
「ガキが粋がって笑わすんじゃねえぞ。」
「お前、拳の墓参りに言って来い。」
「話はその後だ。」
川西は拳の墓のあるはずの住所へ向かった。
そこには墓はなく、小さな工場があった。
中をのぞくと、そこで拳が働いていた。
川西に気がついた拳。
拳は川西と昔話を始めた。
しばらく笑い話を続けた2人だったが、
川西が拳に突っ込んだ。
「拳さん。何があったんだよ?」
拳は答えた。
「俺はヤクザに向かなかった。」
「ってことなのかな〜?」
それを聞いた川西は過去を話す。
「俺は後悔してねえ。」
「美藤のことだよ。」
「鈴蘭の負けが見えてた・・・」
拳は答えた。
「だからって言って、
刃物振り回していいってことにはならねえぞ。」
川西は言い返す。
「鈴蘭背負った俺の責任だったんだよ。」
「やるしかなかったんだよ。」
それに対して拳は言う。
「俺は後悔してる。」
「あの時、
お前から刃物取り上げられなかったことがな〜。」
川西は背を向けて呟いた。
「もう引き返せねえよ。」
「負け犬にだって意地はあるんだ。」
そう言うとそのまま、その場を後にした。
拳はただ、川西の背中を見ていた・・・
源治たちは鳳仙に対抗すべく、
GPSを拡大させようと仲間集めに翻弄していた。
増えない仲間に、源治は伊崎に聞く。
「勝った奴がテッペンなんじゃねえのかよ?」
伊崎は答えた。
「鴉が簡単に群れねえって、
お前も分かってんだろ。」
しかし対鳳仙戦は近づき、
GPSの決起集会が開かれることになった。
三上兄弟は潔くGPS参加を決めた。
三上兄弟は時生、
「時生君。」
「頭割れたら、セメダイン!」
そう言ってセメダインを渡して芹沢軍団を去った。
とうとう鳳仙学園は動き出した。
鈴蘭が別々になったところを襲い始めた。
筒本は凌が率いる軍団に・・・
戸梶は隼人が率いる軍団に・・・
牧瀬、三上兄弟、忠太は、
鷲尾率いる軍団に・・・
多勢に無勢の戦い。
それでも闘う鈴蘭の猛者たち。
筒本が重症となり、戸梶も深手を負った
牧瀬たちは、両方引けを取らずに闘ったが、
追い詰められた鷲尾は刃物を取り出した。
そこに現れた鳴海。
鷲尾を殴って言った。
「男は素手だろ!」
「2度と俺の前で刃物を振り回すんじゃねえ。」
そして牧瀬に向かって言う。
「さすが鈴蘭だな。」
「折れねえ・・・」
「体調いいときにタイマンでケリつけよう。」
牧瀬は言った。
「俺は今が絶好調だよ。」
そう言って鳴海に襲い掛かるが、
ボロボロの牧瀬は一発で鳴海に仕留められた。
何とか立ち上がろうとする牧瀬。
それに追い討ちをかける凌。
牧瀬は倒れた・・・
鳴海は牧瀬に聞いた。
「強ええのか?滝谷源治ってのは?」
「会ってみてえな〜」
「芹沢倒した男に・・・」
次の日、事情を知り怒る源治。
今にも動き出しそうな源治に伊崎は言った。
「鳳仙の宣戦布告だ。」
「お前までやられてたら、鈴蘭は終わってた。」
源治は返した。
「あんなハゲどもにやられねえよ。」
伊崎は続けた。
「俺が言ってんのは、
お前が鈴蘭背負ってるってことだ。」
「もっと自覚持て。」
源治は返す。
「だったら何だよ。」
「お前にくれてやるよ。」
伊崎は怒った。
「ふざけんな!」
「俺はお前に賭けたんだ。」
「がっかりさせんな。」
「何とか鈴蘭まとめねえと、鳳仙に潰されっぞ。」
「ちょっと預けろ。」
「俺がいいって言うまで動くな。」
そう源治に伝えた伊崎は
その足で多摩雄のもとへ向かった。
そして多摩雄に向かって話す。
「芹沢つら貸せ。」
「俺が勝ったらGPSに入れ。」
多摩雄は聞いた。
「滝谷のためか?」
伊崎は答えた。
「何なら別の理由でも構わねえ。」
「鈴蘭に入ってからずっと、
景色が綺麗に見えたことがねえ。」
「何かぼやけてやがると思ったら、
そこにはいつもお前が立ってた。」
そう言うと多摩雄に殴りかかった伊崎。
伊崎も強いが、それ以上の多摩雄。
お互いボロボロになりながらも、
最後は多摩雄のドロップキックに敗れた伊崎。
川西は矢崎組に戻っていた。
墓参りが終わったと言う川西に、組長は聞いた。
「考え変わんねえか?」
「お前にはこの家業は無理だ。」
川西は聞き返す。
「俺はヤクザにはなれねえってか?」
組長は答えた。
「逆だよ・・・」
「ヤクザに生きれねえ奴が、カタギなんだよ。」
「どんな馬鹿でも、カタギにはなれんだよ。」
それを聞き、諦めて組を後にした川西。
川西に目をつけたのは矢崎組の若い衆。
「親父は、ああは言ってるが、
ここのところ劉生会が幅利かせて
シノギがきつくてよ〜。」
「親父体壊して、そう長くはねえんだよ。」
「劉生会の頭獲りゃ〜、
幹部の芽もあるってことだよ。」
そう言って、裏で川西に手を回したのだ・・・
どうして良いか分からず、1人クラブで飲む源治。
飲みすぎる源治を止めたルカ。
その時マスターに呼ばれた源治。
店の下に行くと、源治の親父が居た。
「ガキが酒に頼って、女に弱音か?」
「鈴蘭獲るって、
偉そうな事ぬかした割には、
ずいぶんみっともねえな・・・」
「お前、どんなパンチもってるんだ?」
「パンチみしてみろよ。」
「撃って来い。怖いか?」
そう言って挑発をする親父。
怒った源治は父親に殴りかかった。
しかし、一発でカウンターを喰らって倒れる源治。
父親は倒れた源治に言った。
「酔ってる割には良いじゃねえか。」
「でも、それじゃダメだ。」
「てめえのパンチには怒りしかねえ。」
「愛がねえ。愛が・・・」
「担ぐ人間が居て、初めて神輿の上に立てんだよ。」
「てめえの事しか頭にねえ奴に、人は束ねらんねえ。」
そう言って帰る親父。
残された源治は、身も心もボロボロだった。
慰めるルカにも、そっけなく対応して店を後にした。
店を出てタバコに火をつけようとした源治。
しかし、ライターが付かない・・・
通りすがりの男が火を差し伸べる。
火を差し出したのは鳴海だった。
真っ直ぐに源治の目を見た鳴海。
何も言わずにそのまま、2人は別方向へ歩き出した。
先に店を出ていた源治の親父。
親父は飲み屋街の路地で、
何者かに撃たれ病院へと運ばれていた。
源治は、その話を聞き病院へ足を運んだ。
意識の無い親父に源治は言った。
「何寝てんだよ。」
「まだ一発も入れてねえんだよ。」
組長を銃撃したのは川西だった。
完全に殺しきれなかった川西に、
組の若い衆から連絡が入る。
「相手はまだ生きてるぞ。」
「回復して喋られたら、全部終わりだ。」
「病院行ってとどめさして来い。」
そのころ田舎でラジオを聞いていた拳。
ラジオで流れる銃撃のニュース。
何かに気がつき直ぐに、町へと向かうのだった。
鳳仙では、鳴海と竜也が話していた。
鳴海は聞いた
「なんで兄貴の敵討ちに興味ねえ?」
竜也は答えた
「兄貴は死んでない。」
「俺の中でまだ生きてる。」
鳴海は言う。
「そうか・・・」
「鈴蘭叩くことが、
俺と真喜雄さんの悲願だった。」
「ならそいつを、
俺とお前で果たそうじゃねえか。」
竜也は言い返した。
「鈴蘭は俺の代で獲る。」
「それまで、
俺は俺のやり方で鳳仙を強くしていきますよ。」
「兄貴がいたころよりも強く。」
「そして俺は兄貴を越える・・・」
それを聞いた鳴海は言った。
「さすがだな〜。」
「でも、今の鳳仙も強ええぞ。」
「芹沢多摩雄はすげえ男だ。」
「その芹沢倒した滝谷源治にも会ってきたが、
奴も只者じゃねえ。」
「それでも俺たちは勝つ。」
「王者に君臨して鳳仙をお前に渡してやるよ。」
そのころ源治はリンダマンと闘っていた。
返り討ちにしたリンダマンは源治に言う。
「お前の敵は俺じゃない。」
「全部倒してゼロになれ!」
倒れた源治は多摩雄に運ばれて
牧瀬たちの前で目を覚ました。
「死んだかと思ったよ。」
そう言う牧瀬に対して源治は呟いた。
「本当に死んでればよかったよ・・・」
結束が固まる鳳仙と、煮え切らない鈴蘭。
そんな時に鷲尾が独断で抗争に火をつける。
鷲尾が鈴蘭の体育館に火をつけたのだった。
牧瀬は源治に言う。
「行くぞ、源治〜。」
それに対しても、一切反応しない無言の源治。
それを見て時生は言う。
「どうした〜。」
「悔しくねえのかよ。」
源治は呟く。
「もともとオンボロだもん。」
「対した事ねえ・・・」
それを聞いた時生は言った。
「俺が肩付ける。」
源治は止めるように返した。
「そんな頭のお前が行ってどうする?」
源治の態度に時生は怒り、
源治の顔を殴った。
それでも源治は同じ言葉をくり返す。
「そんな頭のお前が行ってどうする?」
時生は何度も源治を殴った。
それでも時生の頭を気にして手を出さない源治。
「殴れよ〜。おい源治。」
時生は何度も同じ言葉を繰り返し殴った。
その言葉に、源治は返した。
「分かったよ。」
「殴って寄るよ。」
「死んでも恨むなよ。」
そう言って拳を振りかぶる源治。
その拳を止める多摩雄。
「どいつもこいつも、うるせえんだよ。」
源治はそう呟き、その場を後にした。
1人になった源治に、多摩雄は声をかけた。
「お前、何のために鈴蘭に来た?」
「お前が来て、
1つになりかけていた鈴蘭を
あっさり二分してバラバラにした。」
「力だけで鈴蘭が1つになるとでも思ったか?」
「半端な気持ちで背負ってんじゃねえぞ。」
源治は一言だけ多摩雄に返した。
「鴉の生き様、見せてやんぞ。」
次の日、源治は動いた。
鳳仙学園に向かったのは、
源治、牧瀬、忠太、三上兄弟の5人。
それを待ち受けた、鳴海は言った。
「鳴海大我だ。」
「始めて会った気がしねえな・・・」
源治は聞いた。
「うちに火をつけたのはお前等か?」
鳴海は返す。
「さあな・・・」
源治は続けた。
「それを答えと獲っていいんだな・・・」
「ぶっ潰す。」
鳴海は聞く。
「おもしれえ。」
「場所は?」
源治は答えた。
「ここしかねえだろ。」
「次は、お前等の城が潰れる番だ。」
そう言うと、
源治は鳴海の口にタバコを咥えさせ、
そのタバコに火をつけて続けた。
「借りは返しとく。」
鈴蘭に戻った源治。
鈴蘭中が、明日の鳳仙との戦争の話で
持ちきりになっていた。
そんな時に突然、校内放送が流れた。
それは源治の声だった。
「あ・・あ・・その〜・・・」
「滝谷です・・・」
「こういうのあまり得意じゃないんで
うまく伝わっか分かんねえけど・・・」
「俺は、自分はずっと強い男だと思ってた。」
「大嫌いな親父越えたくて・・・」
「自分がどう思われてるのか試したくて・・・」
「この鈴蘭に来た。」
「まあ、このざまだ・・・」
「その親父は今、打たれて病院のベットで寝てる。」
「そんなクズみてえな親父から教えられた気がする。」
「人は、立ち止まれない。」
「自分の信じた道を進むしかないんだ。」
「人に頭下げたことねえから、
どう言ったら伝わるのか分かんねえけど・・・」
「明日は鳳仙を潰しに行く。」
「みんなの力がいる。」
「力を貸して欲しい。」
「無理して来いとは言わねえ。」
「ただ、力を貸して欲しい。」
「以上・・・」
川西は病院に居た。
源治の親父のトドメを刺すつもりだった。
そして病室に入ると拳銃を向けた。
その時・・・
「やめろ〜」
川西を止めに駆けつけた拳だった。
間一髪で止めた拳。
まだ撃とうとする川西に言った。
「どうやら間に合った見てえだな。」
「ニュース知ってな〜。ピンと来たよ。」
「お前の仕業だってな。」
「2度と馬鹿な真似はさせねえぞ。」
川西は怒鳴った。
「どけ!」
「こいつ殺ってな〜。」
「派手に死んでやるんだよ。」
拳は言い返した。
「命の重さ分からねえのか?」
「俺たちは確かに強い人間じゃねえ。」
「だけどな〜」
「生きる意味や価値はあるんだよ。」
「人生はな〜。勝ち負けだけじゃねえぞ。」
「お前には、お前にしかヤレねぇ事がある。」
「お前は確かに、
人がやっちゃならねえことをやった。」
「だからよ。俺は簡単には言わねえ。」
「一からやり直せなんてな〜。」
「だけどよ〜
もがき苦しんで、歯食いしばって、
ドロにすがるだって生きろ。」
「そん中でよ。生きる意味や価値は一緒だ。」
「もう逃げるなよ。」
「お前1人でできねえなら、
俺が手伝ってやるからよ。」
その時、組の若い衆が駆けつけた。
川西に拳銃を突きつけ取り押さえた。
それに対して拳は頭を下げて言う。
「勘弁してください。」
「こいつは関係ないです。」
「こいつには教えなきゃいけない事があるんです。」
「伝えなきゃいけない事があるんです。」
聞く耳を持たない組の若い衆。
その時、意識を戻した源治の親父。
「うるせえよ。」
「片桐・・・」
「病人の前では静かにしろよ。」
「てめえには、2度も命を助けられた・・・」
「今回だけは目つぶってやる・・・」
「跳べよ。」
「鴉・・・」
拳は泣きながら深く頭を下げた・・・
戦争当日。
集まった人数は40名だけだった・・・
そこに伊崎に声をかけられた1年の集団が来る。
束ねるのは、桐島、本城、杉原の3人トリオ。
しかし集まっている人数を見て愕然とし言う。
「結局、滝谷源治には誰もつかねえってことか。」
「芹沢がまとめればもう少し集まったろうに。」
「出席はとったぞ。」
「顔出しただけでも十分だろ。」
「悪りいが、無駄死にはごめんだ。」
そう言って、そのまま立ち去った1年集団。
それを見ていた源治が口を開いた。
「解散!」
「解散しよう。」
「勝てねえ戦争やってもしょうがないだろ。」
「GPSはここで解散だ。」
源治を止める忠太。
それでも耳を貸さずに言った。
「俺達はやるまえに負けたんだよ。」
「違げーか・・・」
「俺が負けたんだ・・・」
そう言うと、その場を後にしようとする源治。
追いかけ止める忠太。
そんな忠太を源治は殴り倒して言った。
「死にたきゃ勝手に死ね。」
源治が去った後。牧瀬は呟いた。
「GPSも終わったな・・・」
その言葉に伊崎は言い返す。
「違げえだろ。」
「お前の知ってる滝谷源治ってのはどんな男だ。」
「俺達に無駄な血流させたくねえんだろ。」
その話を聞いた芹沢軍団も話していた。
源治が1人で乗り込む気だと・・・
時生は源治を助けようと話す。
「源治は鈴蘭背負って動いてんだぞ。」
それに対して戸梶は反論した。
「勝手に背負ってるだけだろ。」
その時、三上兄弟が芹沢軍団に現れた。
そして笑いながら時生に言った。
「ついにセメダイン使うときがきましたね。」
「時生くん!」
そのやり取りを聞いていた多摩雄は笑みを浮かべた。
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皆の想定通りに、源治は1人で鳳仙へ向かっていた。
鳳仙は鈴蘭を待ち構えていた。
1人校庭に入った源治。
鳴海は1人の源治を見て言う。
「何の冗談だ?」
続けて的場が言った。
「白旗振って来い。」
源治は返す。
「笑わせんじゃねえよ。」
「てめえらなんかな・・・」
「俺1人で十分だよ。」
と同時に1人で立ち向かった源治。
数十人・数百人いる軍団が源治に襲い掛かる。
その様子を見ていた竜也が鳴海に言った。
「あいつが1人出来たんだったら、
タイマンはって決着付けるべきだろ?」
鳴海は返した。
「青いな・・・」
「お前には、あいつの本当の力が見えてねぇ。」
その言葉と同時に、鳳仙の校庭に入って来たGPS。
「ほら・・・」
しかし鳴海も予想外な展開が起こった。
芹沢軍団も同時に現れたのだった。
鳳仙のハゲ軍団を前に多摩雄は言った。
「うちの大将に
ずいぶんな事してくれるじゃねえか。」
その言葉を聞き、時生や戸梶、牧瀬は笑った。
逆に真顔に戻ったのは鳴海だった。
そして決意したように竜也に言う。
「しっかり見とけよ。」
「1年坊主。」
続けて鳴海は源治に向かって言った。
「滝谷源治。」
「屋上まで上がって来い。」
「そこでタイマンだ。」
その言葉を聞いて、源治は吠えた。
「ウォー。」
その声が合図となり、
鈴蘭の集団が鳳仙集団に襲い掛かった。
両校共に引けを獲らずに校庭で殴りあう。
その中で、多摩雄が声をあげた。
「おい!滝谷を屋上に連れて行くぞ!」
その声を合図に校内になだれ込む鈴蘭。
しかし、鳳仙の幹部たちも異常な強さを見せた。
特に鳴海は凄かった。
上に上がろうとする鈴蘭の集団を倒し続けた。
その中、とある教室に入り込んだ牧瀬。
追いかけてくる大量の鳳仙軍団。
その中で握り飯を食べていたのは鳴海。
ハゲ集団に向かって言う。
「お前等よ。こいつ俺の客だからよ。」
「他でやれ。他で。」
その言葉を聞いて教室を後にする集団。
2人になった教室で、
鳴海は笑みを浮かべて牧瀬に聞いた。
「体調はどうだよ?」
牧瀬は答えた。
「だから、絶好調だって言ってんだよ。」
そう言って殴り合いを始める2人。
牧瀬も強いが、鳴海の強さは半端なかった。
何度も立ち上がる牧瀬。
そんな牧瀬に敬意を評する鳴海。
しかし鳴海の圧倒的な強さに倒れた牧瀬だった。
屋上を目指す滝谷は集団に囲まれていた。
助けに入ったのは戸梶だった。
「滝谷。」
「お前は上にあがれ。」
「ここは俺が仕切る。」
そして伊崎に向かって言った。
「絶対滝谷屋上まで行かせろよ。」
そう言うと笑みを浮かべる戸梶。
そして以前に自分を襲った隼人と戦う。
「その顔忘れてねえぞ。」
「俺は金髪が嫌いなんだよ。」
時生も闘っていた。
集団に襲われて、倒れた時生は頭を打った。
ポケットに入っていたセメダインを取り出して、
握り締めた時生・・・
「そんなわけねだろ!」
「簡単には割れねえぞ!」
と叫ぶと、吹っ切れたように集団を倒し続けた。
上階まで進んだ、源治と多摩雄と伊崎。
待ち受けるのは的場。
伊崎は源治に
「お前に託してよかったわ。」
「行って来い。」
そう言って、源治と多摩雄を送り出した。
そして的場との戦いが始まる。
残すは屋上までの階段。
源治と多摩雄の2人が上っていると、
階段の途中で待っていたのは凌。
凌は二人に言った。
「待ちくたびれましたよ」
多摩雄は聞いた。
「お前か?筒本やったのは?」
凌は多摩雄の話を聞き流して言った。
「僕、あなたに憧れてるんです。」
「だから、鈴蘭の芹沢倒した男と呼ばれたい。」
多摩雄は源治に行った。
「滝谷。お前は行けよ。」
「こいつ俺にやらせろ。」
それを聞いた源治は、
「お前。はずれクジひいたぞ。」
と凌に言って、屋上への階段を上り始めた。
屋上にたどり着いた源治。
そこで待っていた鳴海。
鳴海は源治に言った。
「よく来たな。」
「鈴蘭打倒は美藤真喜雄と俺の悲願だ。」
「てめえ叩きのめして、その夢果たす。」
こうして2人のタイマンが始まった。
両校ボロボロになりながらも、
鈴蘭軍団が勝利の雄叫びを上げ始めていた。
多摩雄と闘う凌は強かった。
圧倒的に攻撃を続ける凌。
一方的な戦いに凌は呟く。
「鳴海さんも、買いかぶりすぎだよ・・・」
しかし倒れても何度も立ち上がる多摩雄。
殴られながらも凌に向かって行く次第に追い詰める。
そして、ついに殴りかかる凌の拳を握った。
そして多摩雄は凌に言う。
「喧嘩にも限度があるでしょうが・・・」
「やっべ・・・楽しい・・・」
その時点で凌はビビッていた。
最後は多摩雄の空中回し蹴りで・・・
屋上で戦う源治と鳴海。
ほぼ互角の戦いの中で、ボロボロになっていく2人。
その時、鷲尾が屋上に現れた。
「滝谷〜。」
「テッペンを獲るのは俺だ。」
そう言うと刃物を取り出し、源治に襲い掛かる。
鳴海が止めようとするが、
その前に鷲尾を蹴り飛ばしたのは竜也だった。
倒れた鷲尾に歩み寄る鳴海。
「まだ分からねぇのか?」
「よく見てろ!」
そう言って再び源治と向き合った。
「ケリ付けようぜ!」
そう言って再び殴り合いが再開する。
凌を倒して屋上に上がってきた多摩雄と、
竜也、鷲尾が勝負の行方を見守った。
壮絶な戦い・・・
最後の立っていたのは源治だった。
鳴海の勝利した源治は
笑みを浮かべて多摩雄に歩み寄った。
倒れそうな源治を抱えて多摩雄は言う。
「世話がやけるな、うちの大将は。」
源治は返した。
「うるせえ。」
「肩借りんぞ。」
倒れたまま起き上がれない鳴海。
そんな鳴海に竜也は言った。
「兄貴の夢を担いでくれてありがとう。」
「今度は俺があんたの夢を担ぐ番だ。」
そして心に決めた。
『待ってろ。鈴蘭・・・』
鳳仙に勝利した鈴蘭の面々の顔は痣だらけで、
傷の無いものは、いなかった。
しかし、皆には清清しい笑顔があった。
それから数ヶ月・・・
卒業の季節がやって来た。
屋上にある落書き。
頂上と書かれた直ぐ下には、
赤文字でGPSと書かれ、
その直ぐ下に大きく滝谷源治の名前が書かれていた。
その下に源治の卒業証書が貼り付けられ、
直ぐ斜め下に多摩雄の卒業証書が張られていた。
学校を後にした鈴蘭を代表する面々。
時生は言った。
「アッという間だったな。」
「色々あったけどアッという間だ。」
多摩雄は行った。
「また、新しい奴等の時代がやってくる。」
そんな話をしながら、皆が向かった先には
多くの人だかりが・・・
その中心には向かい合う、源治とリンダマン。
多摩雄は源治に向かって言う。
「源治。」
「お前に賭けてんだからな。」
「負けんなよ。」
多摩雄を見て笑みを浮かべた源治。
そして何も言わずに、リンダマンと向き合った。
リンダマンは源治に言った。
「今日で最後か・・・」
源治は答えた。
「卒業祝いには持って来いだ。」
リンダマンは返した。
「花を持たせるつもりはねえぞ。」
源治はタバコを捨てて言った。
「いらねえ〜よ!」
と同時にリンダマンを殴った源治。
リンダマンは始めて膝をついた。
立ち上がったリンダマンは呟いた。
「これだから鈴蘭は面白い・・・」
それを聞いて源治は微笑んだ。
〜拳のナレーション〜
『いいじゃねえかよ。鴉で・・・』
『カゴに入れられてよ・・・』
『跳ぶことも忘れちまう、
かわいそうな鳥に比べりゃ。』
『ずっーと、いいじゃねえか。』
『俺は鴉で十分だぜ。』
(終わり)
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【クローズZERO U】
【出演者】
GPS(GENJI PERFECT SEIHA)
滝谷源治:小栗旬
伊崎瞬:高岡蒼甫
牧瀬隆史:高橋努
田村忠太:鈴之助
芹沢軍団
芹沢多摩雄:山田孝之
辰川時生:桐谷健太
戸梶勇次:遠藤要
三上学(双子の兄):伊崎右典
三上豪(双子の弟):伊崎央登
筒本将治(2年):上地雄輔
三代目武装戦線
阪東秀人:渡辺大
千田ナオキ:武田航平
山崎タツヤ:鈴木信二
鈴蘭高校その他
川西昇(2年前のトップ):阿部進之介
2年
林田恵(リンダマン):深水元基
鷲尾郷太:波岡一喜
亜久津太:沖原一生
1年
桐島ヒロミ:大東俊介
本城俊明:橋爪遼
杉原誠:小柳友
鳳仙学園
美藤真喜雄(2年前のトップ):山口祥行
鳴海大我:金子ノブアキ
的場闘志:阿部亮平
熊切力哉:大口兼悟
芝山隼人:蕨野友也
漆原凌(2年):綾野剛
美藤竜也(1年):三浦春馬
その他
片桐拳:やべきょうすけ
逢沢ルカ:黒木メイサ
牛山(クラブのマスター):松重豊
黒岩義信(警察):塩見三省
滝谷英雄(劉生会組長・源治の父):岸谷五朗
矢崎丈治(矢崎組組長・拳の親分):遠藤憲一
〜〜〜Sponsords Link〜〜〜
【感想】
1作目以上だと思います!
良くまとまっていて、鈴蘭愛が伝わる!
前回も書きましたが、
やっぱり25期生の時代を映画化して欲しい・・・
今回出た、1年の美藤竜也は後の四天王!
坊屋春道や九能龍信との戦い友情を
実写化して欲しい。
お願いします三池監督!
待ってます!
って程々にして、
漫画好きでも納得の作品。
1作目とあわせて是非見てください。
【あらすじ】(ネタバレあり)
源治は鈴蘭のプール横に座りタバコを吸っていた。
そこに現れたリンダマン。
タバコを捨てた源治は、リンダマンに襲い掛かった。
屋上では、伊崎や牧瀬がそれを見ていた。
教室の窓からは、多摩雄たちも行方を見守る。
しかし・・・
あっさりと返り討ちにあう源治。
源治が負けたのを見て、
三上兄弟は言う。
「ま〜た、負〜けた〜。」
その勝負は、鈴蘭の賭けの対象となっていた。
何度も源治に賭け続けていた多摩雄。
源治が負けたのを見て、戸梶は多摩雄に言う。
「悪いな芹沢。ツケでもいいんだぞ。」
そんなやり取りの中、筒本は言った。
「何やってるんですかね〜。」
「リンダマン倒しても、
鈴蘭制覇には関係ないのに。」
それに対して時生は答えた。
「リンダマン倒さねえと、
テッペン獲った気にねれねえんだろ。」
「体は限界来てても、心は折れてねえ。」
「あいつの中で、
リンダマンとの戦いは続いてるんだよ。」
横から戸梶が口を挟んだ。
「滝谷が負けてくれれば、
また俺たちにチャンスはやってくる。」
「阪東の横槍がなければ、
完全に俺たちが勝ってた。」
「なあ芹沢・・・」
芹沢は何も答えなかった・・・
百舌ヶ浜少年院から釈放になった独りの男。
その足で向かったのは墓地であった。
ある墓の前で呟いた。
「死んで詫びるしかねえってか・・・」
「生きてる価値もねえってか・・・」
その時・・・
「川西昇。」
「待ってたぜ。」
「2年前お前がナイフで刺し殺した
美藤真喜雄さんの後輩。」
「鳳仙の的場だ。」
同時に川西を取り囲む鳳仙学園の集団。
「けじめ付けようぜ。」
その言葉を合図に、鳳仙の集団が川西に襲い掛かる。
川西は慌てて背を向けて走って逃げた。
逃げた先は、多摩雄たち鈴蘭メンバーが戯れる場所。
逃げて来た川西を見て、時生は呟いた。
「川西さん・・・」
そして、川西に近寄る多摩雄たち。
追ってきた鳳仙の集団。
鈴蘭のテリトリーと分かり足を止めた。
的場は言う。
「芹沢〜。」
「お前、川西かばうつもりか?」
時生が返す。
「鈴蘭と鳳仙は休戦協定を結んだはずだろ。」
的場は言う。
「俺等はこいつが出てくるのを、
ずっと待ってたんだ。」
「そいつは退学になった只の人殺しだ。」
「鈴蘭じゃねえ。」
「義理立てる必要ねえだろ。」
それに対して多摩雄は答えた。
「義理はねえが、場所が悪りい。」
「ここでの事は、俺等が決める。」
そのタイミングで、源治や伊崎たちが現れる。
源治は、多摩雄と的場の間に立ち聞いた。
「お前等、何やってんだ?」
時生が源治に言う。
「お前には関係ねえ。」
源治は多摩雄に向かって言う。
「カッコつけんな。貧乏人。」
そのやり取りを聞いた、鳳仙の1人が言った。
「こんな奴に、貧乏人呼ばわりか?」
「鈴蘭の頭も舐められたもんだな・・・」
その言葉を聞いた源治は、その男を殴った。
直ぐに源治を止めた時生。
しかし既に遅かった・・・
それを見た的場は笑みを浮かべながら言う。
「君も鈴蘭?」
名前を名乗った源治と同時に、忠太が付け加えた。
「鈴蘭の頭だよ。覚えとけ!」
それを聞いて真顔に戻った的場は、芹沢に言う。
「こいつのおかげで、休戦協定は破られた。」
「これで、鳳仙と鈴蘭はまた戦争になる。」
そう言い残すと、一旦退いた鳳仙集団。
鳳仙集団が帰ると、多摩雄は源治に言う。
「お前、何やったか分かってるのか?」
「新参者に、鈴蘭の看板は重てえな・・・」
川西のことも、休戦協定のことも分からない源治。
源治は何も言わずに、只タバコを吸っていた。
〜〜2年前〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
鈴蘭と鳳仙は闘っていた。
鈴蘭の頭であった川西。
鳳仙の頭であった美藤。
鳳仙に押される鈴蘭。
美藤の強さに、川西は刃物を出した.
「鈴蘭はな〜。」
「負けねえんだよ。」
そう言って美藤の腹にナイフを刺す。
それが致命傷となり美藤は亡くなった。
もちろん川西は少年院送りとなった。
その後、さらに両校の争いは加速した。
更に死人が出てもおかしくない戦い。
そこで両校は、休戦協定を結ぶことにしたのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いつものクラブで、休戦協定の話を聞いた源治。
『どんなことがあっても破っちゃならねえ。』
『どんな奴もそれだけはきちんと守ってきた。』
自分の浅はかな行動に黙り込んでいた。
次の日。
鳳仙では頭の鳴海が皆を集めて話していた。
「休戦協定は破られた。」
「芹沢って言う重しが取れて、
中はおそらくガタガタだ。」
「鈴蘭叩くぞ。」
その中には、鈴蘭から転校してきた鷲尾もいた。
鳴海は1年の竜也を呼んだ。
美藤の弟である竜也。
鳴海は竜也に向かって言った。
「鈴蘭を獲る。」
「お前も来い。」
それに対して竜也は返す。
「俺は遠慮しておきますよ。」
「兄貴は幸せもんだ。」
「こんな風に慕われて。」
「鳴海さんには感謝してますよ。」
「美藤真喜雄の弟ってだけで、
1年の俺を幹部扱いにしてくれたんですから。」
そう言うと、そのままその場を去った・・・
鈴蘭では、時生に呼ばれた源治が、
多摩雄、時生、源治の3人で話をしていた。
時生が話を始めた。
「GPSと芹沢軍団。」
「手を組んでくれねえか?」
「きっと鳳仙は攻めてくる。」
「俺たちが手を組まねえと、
今の鈴蘭じゃ潰されちまう。」
「もうどっちが上とか下とか、
そういう問題じゃねえんだよ。」
その話に源治は答えた。
「俺達はお前達に勝ったんだ。」
「俺がリンダマン倒したら鈴蘭は1つだろ。」
それを聞いた多摩雄は源治に言った。
「俺はお前を頭だと思ったとこは一度もねえぞ。」
それを聞いて源治は、
「あんなハゲ集団。GPSだけで十分だよ。」
そう言って、その場を去ろうとする。
そんな源治に時生は言う。
「鳳仙舐めんなよ。」
「あいつら半端じゃねえぞ。」
足を止めた源治は返した。
「時生。」
「あんま無茶すんなよ。」
「頭にでけえ穴あけて脳みそ弄ったんだろ?」
その言葉には同感する多摩雄だった・・・
纏まりのある鳳仙と纏まらない鈴蘭・・・
難を逃れた川西は矢崎組に、拳を尋ねていた。
組長に渡世の掟を破った話を聞いた川西。
川西は組長に聞いた。
「その組長を俺が殺ったら、
あんたの組に入れてくれるんすか?」
「俺が殺ったら、幹部にして下さい。」
組長は言った。
「ガキが粋がって笑わすんじゃねえぞ。」
「お前、拳の墓参りに言って来い。」
「話はその後だ。」
川西は拳の墓のあるはずの住所へ向かった。
そこには墓はなく、小さな工場があった。
中をのぞくと、そこで拳が働いていた。
川西に気がついた拳。
拳は川西と昔話を始めた。
しばらく笑い話を続けた2人だったが、
川西が拳に突っ込んだ。
「拳さん。何があったんだよ?」
拳は答えた。
「俺はヤクザに向かなかった。」
「ってことなのかな〜?」
それを聞いた川西は過去を話す。
「俺は後悔してねえ。」
「美藤のことだよ。」
「鈴蘭の負けが見えてた・・・」
拳は答えた。
「だからって言って、
刃物振り回していいってことにはならねえぞ。」
川西は言い返す。
「鈴蘭背負った俺の責任だったんだよ。」
「やるしかなかったんだよ。」
それに対して拳は言う。
「俺は後悔してる。」
「あの時、
お前から刃物取り上げられなかったことがな〜。」
川西は背を向けて呟いた。
「もう引き返せねえよ。」
「負け犬にだって意地はあるんだ。」
そう言うとそのまま、その場を後にした。
拳はただ、川西の背中を見ていた・・・
源治たちは鳳仙に対抗すべく、
GPSを拡大させようと仲間集めに翻弄していた。
増えない仲間に、源治は伊崎に聞く。
「勝った奴がテッペンなんじゃねえのかよ?」
伊崎は答えた。
「鴉が簡単に群れねえって、
お前も分かってんだろ。」
しかし対鳳仙戦は近づき、
GPSの決起集会が開かれることになった。
三上兄弟は潔くGPS参加を決めた。
三上兄弟は時生、
「時生君。」
「頭割れたら、セメダイン!」
そう言ってセメダインを渡して芹沢軍団を去った。
とうとう鳳仙学園は動き出した。
鈴蘭が別々になったところを襲い始めた。
筒本は凌が率いる軍団に・・・
戸梶は隼人が率いる軍団に・・・
牧瀬、三上兄弟、忠太は、
鷲尾率いる軍団に・・・
多勢に無勢の戦い。
それでも闘う鈴蘭の猛者たち。
筒本が重症となり、戸梶も深手を負った
牧瀬たちは、両方引けを取らずに闘ったが、
追い詰められた鷲尾は刃物を取り出した。
そこに現れた鳴海。
鷲尾を殴って言った。
「男は素手だろ!」
「2度と俺の前で刃物を振り回すんじゃねえ。」
そして牧瀬に向かって言う。
「さすが鈴蘭だな。」
「折れねえ・・・」
「体調いいときにタイマンでケリつけよう。」
牧瀬は言った。
「俺は今が絶好調だよ。」
そう言って鳴海に襲い掛かるが、
ボロボロの牧瀬は一発で鳴海に仕留められた。
何とか立ち上がろうとする牧瀬。
それに追い討ちをかける凌。
牧瀬は倒れた・・・
鳴海は牧瀬に聞いた。
「強ええのか?滝谷源治ってのは?」
「会ってみてえな〜」
「芹沢倒した男に・・・」
次の日、事情を知り怒る源治。
今にも動き出しそうな源治に伊崎は言った。
「鳳仙の宣戦布告だ。」
「お前までやられてたら、鈴蘭は終わってた。」
源治は返した。
「あんなハゲどもにやられねえよ。」
伊崎は続けた。
「俺が言ってんのは、
お前が鈴蘭背負ってるってことだ。」
「もっと自覚持て。」
源治は返す。
「だったら何だよ。」
「お前にくれてやるよ。」
伊崎は怒った。
「ふざけんな!」
「俺はお前に賭けたんだ。」
「がっかりさせんな。」
「何とか鈴蘭まとめねえと、鳳仙に潰されっぞ。」
「ちょっと預けろ。」
「俺がいいって言うまで動くな。」
そう源治に伝えた伊崎は
その足で多摩雄のもとへ向かった。
そして多摩雄に向かって話す。
「芹沢つら貸せ。」
「俺が勝ったらGPSに入れ。」
多摩雄は聞いた。
「滝谷のためか?」
伊崎は答えた。
「何なら別の理由でも構わねえ。」
「鈴蘭に入ってからずっと、
景色が綺麗に見えたことがねえ。」
「何かぼやけてやがると思ったら、
そこにはいつもお前が立ってた。」
そう言うと多摩雄に殴りかかった伊崎。
伊崎も強いが、それ以上の多摩雄。
お互いボロボロになりながらも、
最後は多摩雄のドロップキックに敗れた伊崎。
川西は矢崎組に戻っていた。
墓参りが終わったと言う川西に、組長は聞いた。
「考え変わんねえか?」
「お前にはこの家業は無理だ。」
川西は聞き返す。
「俺はヤクザにはなれねえってか?」
組長は答えた。
「逆だよ・・・」
「ヤクザに生きれねえ奴が、カタギなんだよ。」
「どんな馬鹿でも、カタギにはなれんだよ。」
それを聞き、諦めて組を後にした川西。
川西に目をつけたのは矢崎組の若い衆。
「親父は、ああは言ってるが、
ここのところ劉生会が幅利かせて
シノギがきつくてよ〜。」
「親父体壊して、そう長くはねえんだよ。」
「劉生会の頭獲りゃ〜、
幹部の芽もあるってことだよ。」
そう言って、裏で川西に手を回したのだ・・・
どうして良いか分からず、1人クラブで飲む源治。
飲みすぎる源治を止めたルカ。
その時マスターに呼ばれた源治。
店の下に行くと、源治の親父が居た。
「ガキが酒に頼って、女に弱音か?」
「鈴蘭獲るって、
偉そうな事ぬかした割には、
ずいぶんみっともねえな・・・」
「お前、どんなパンチもってるんだ?」
「パンチみしてみろよ。」
「撃って来い。怖いか?」
そう言って挑発をする親父。
怒った源治は父親に殴りかかった。
しかし、一発でカウンターを喰らって倒れる源治。
父親は倒れた源治に言った。
「酔ってる割には良いじゃねえか。」
「でも、それじゃダメだ。」
「てめえのパンチには怒りしかねえ。」
「愛がねえ。愛が・・・」
「担ぐ人間が居て、初めて神輿の上に立てんだよ。」
「てめえの事しか頭にねえ奴に、人は束ねらんねえ。」
そう言って帰る親父。
残された源治は、身も心もボロボロだった。
慰めるルカにも、そっけなく対応して店を後にした。
店を出てタバコに火をつけようとした源治。
しかし、ライターが付かない・・・
通りすがりの男が火を差し伸べる。
火を差し出したのは鳴海だった。
真っ直ぐに源治の目を見た鳴海。
何も言わずにそのまま、2人は別方向へ歩き出した。
先に店を出ていた源治の親父。
親父は飲み屋街の路地で、
何者かに撃たれ病院へと運ばれていた。
源治は、その話を聞き病院へ足を運んだ。
意識の無い親父に源治は言った。
「何寝てんだよ。」
「まだ一発も入れてねえんだよ。」
組長を銃撃したのは川西だった。
完全に殺しきれなかった川西に、
組の若い衆から連絡が入る。
「相手はまだ生きてるぞ。」
「回復して喋られたら、全部終わりだ。」
「病院行ってとどめさして来い。」
そのころ田舎でラジオを聞いていた拳。
ラジオで流れる銃撃のニュース。
何かに気がつき直ぐに、町へと向かうのだった。
鳳仙では、鳴海と竜也が話していた。
鳴海は聞いた
「なんで兄貴の敵討ちに興味ねえ?」
竜也は答えた
「兄貴は死んでない。」
「俺の中でまだ生きてる。」
鳴海は言う。
「そうか・・・」
「鈴蘭叩くことが、
俺と真喜雄さんの悲願だった。」
「ならそいつを、
俺とお前で果たそうじゃねえか。」
竜也は言い返した。
「鈴蘭は俺の代で獲る。」
「それまで、
俺は俺のやり方で鳳仙を強くしていきますよ。」
「兄貴がいたころよりも強く。」
「そして俺は兄貴を越える・・・」
それを聞いた鳴海は言った。
「さすがだな〜。」
「でも、今の鳳仙も強ええぞ。」
「芹沢多摩雄はすげえ男だ。」
「その芹沢倒した滝谷源治にも会ってきたが、
奴も只者じゃねえ。」
「それでも俺たちは勝つ。」
「王者に君臨して鳳仙をお前に渡してやるよ。」
そのころ源治はリンダマンと闘っていた。
返り討ちにしたリンダマンは源治に言う。
「お前の敵は俺じゃない。」
「全部倒してゼロになれ!」
倒れた源治は多摩雄に運ばれて
牧瀬たちの前で目を覚ました。
「死んだかと思ったよ。」
そう言う牧瀬に対して源治は呟いた。
「本当に死んでればよかったよ・・・」
結束が固まる鳳仙と、煮え切らない鈴蘭。
そんな時に鷲尾が独断で抗争に火をつける。
鷲尾が鈴蘭の体育館に火をつけたのだった。
牧瀬は源治に言う。
「行くぞ、源治〜。」
それに対しても、一切反応しない無言の源治。
それを見て時生は言う。
「どうした〜。」
「悔しくねえのかよ。」
源治は呟く。
「もともとオンボロだもん。」
「対した事ねえ・・・」
それを聞いた時生は言った。
「俺が肩付ける。」
源治は止めるように返した。
「そんな頭のお前が行ってどうする?」
源治の態度に時生は怒り、
源治の顔を殴った。
それでも源治は同じ言葉をくり返す。
「そんな頭のお前が行ってどうする?」
時生は何度も源治を殴った。
それでも時生の頭を気にして手を出さない源治。
「殴れよ〜。おい源治。」
時生は何度も同じ言葉を繰り返し殴った。
その言葉に、源治は返した。
「分かったよ。」
「殴って寄るよ。」
「死んでも恨むなよ。」
そう言って拳を振りかぶる源治。
その拳を止める多摩雄。
「どいつもこいつも、うるせえんだよ。」
源治はそう呟き、その場を後にした。
1人になった源治に、多摩雄は声をかけた。
「お前、何のために鈴蘭に来た?」
「お前が来て、
1つになりかけていた鈴蘭を
あっさり二分してバラバラにした。」
「力だけで鈴蘭が1つになるとでも思ったか?」
「半端な気持ちで背負ってんじゃねえぞ。」
源治は一言だけ多摩雄に返した。
「鴉の生き様、見せてやんぞ。」
次の日、源治は動いた。
鳳仙学園に向かったのは、
源治、牧瀬、忠太、三上兄弟の5人。
それを待ち受けた、鳴海は言った。
「鳴海大我だ。」
「始めて会った気がしねえな・・・」
源治は聞いた。
「うちに火をつけたのはお前等か?」
鳴海は返す。
「さあな・・・」
源治は続けた。
「それを答えと獲っていいんだな・・・」
「ぶっ潰す。」
鳴海は聞く。
「おもしれえ。」
「場所は?」
源治は答えた。
「ここしかねえだろ。」
「次は、お前等の城が潰れる番だ。」
そう言うと、
源治は鳴海の口にタバコを咥えさせ、
そのタバコに火をつけて続けた。
「借りは返しとく。」
鈴蘭に戻った源治。
鈴蘭中が、明日の鳳仙との戦争の話で
持ちきりになっていた。
そんな時に突然、校内放送が流れた。
それは源治の声だった。
「あ・・あ・・その〜・・・」
「滝谷です・・・」
「こういうのあまり得意じゃないんで
うまく伝わっか分かんねえけど・・・」
「俺は、自分はずっと強い男だと思ってた。」
「大嫌いな親父越えたくて・・・」
「自分がどう思われてるのか試したくて・・・」
「この鈴蘭に来た。」
「まあ、このざまだ・・・」
「その親父は今、打たれて病院のベットで寝てる。」
「そんなクズみてえな親父から教えられた気がする。」
「人は、立ち止まれない。」
「自分の信じた道を進むしかないんだ。」
「人に頭下げたことねえから、
どう言ったら伝わるのか分かんねえけど・・・」
「明日は鳳仙を潰しに行く。」
「みんなの力がいる。」
「力を貸して欲しい。」
「無理して来いとは言わねえ。」
「ただ、力を貸して欲しい。」
「以上・・・」
川西は病院に居た。
源治の親父のトドメを刺すつもりだった。
そして病室に入ると拳銃を向けた。
その時・・・
「やめろ〜」
川西を止めに駆けつけた拳だった。
間一髪で止めた拳。
まだ撃とうとする川西に言った。
「どうやら間に合った見てえだな。」
「ニュース知ってな〜。ピンと来たよ。」
「お前の仕業だってな。」
「2度と馬鹿な真似はさせねえぞ。」
川西は怒鳴った。
「どけ!」
「こいつ殺ってな〜。」
「派手に死んでやるんだよ。」
拳は言い返した。
「命の重さ分からねえのか?」
「俺たちは確かに強い人間じゃねえ。」
「だけどな〜」
「生きる意味や価値はあるんだよ。」
「人生はな〜。勝ち負けだけじゃねえぞ。」
「お前には、お前にしかヤレねぇ事がある。」
「お前は確かに、
人がやっちゃならねえことをやった。」
「だからよ。俺は簡単には言わねえ。」
「一からやり直せなんてな〜。」
「だけどよ〜
もがき苦しんで、歯食いしばって、
ドロにすがるだって生きろ。」
「そん中でよ。生きる意味や価値は一緒だ。」
「もう逃げるなよ。」
「お前1人でできねえなら、
俺が手伝ってやるからよ。」
その時、組の若い衆が駆けつけた。
川西に拳銃を突きつけ取り押さえた。
それに対して拳は頭を下げて言う。
「勘弁してください。」
「こいつは関係ないです。」
「こいつには教えなきゃいけない事があるんです。」
「伝えなきゃいけない事があるんです。」
聞く耳を持たない組の若い衆。
その時、意識を戻した源治の親父。
「うるせえよ。」
「片桐・・・」
「病人の前では静かにしろよ。」
「てめえには、2度も命を助けられた・・・」
「今回だけは目つぶってやる・・・」
「跳べよ。」
「鴉・・・」
拳は泣きながら深く頭を下げた・・・
戦争当日。
集まった人数は40名だけだった・・・
そこに伊崎に声をかけられた1年の集団が来る。
束ねるのは、桐島、本城、杉原の3人トリオ。
しかし集まっている人数を見て愕然とし言う。
「結局、滝谷源治には誰もつかねえってことか。」
「芹沢がまとめればもう少し集まったろうに。」
「出席はとったぞ。」
「顔出しただけでも十分だろ。」
「悪りいが、無駄死にはごめんだ。」
そう言って、そのまま立ち去った1年集団。
それを見ていた源治が口を開いた。
「解散!」
「解散しよう。」
「勝てねえ戦争やってもしょうがないだろ。」
「GPSはここで解散だ。」
源治を止める忠太。
それでも耳を貸さずに言った。
「俺達はやるまえに負けたんだよ。」
「違げーか・・・」
「俺が負けたんだ・・・」
そう言うと、その場を後にしようとする源治。
追いかけ止める忠太。
そんな忠太を源治は殴り倒して言った。
「死にたきゃ勝手に死ね。」
源治が去った後。牧瀬は呟いた。
「GPSも終わったな・・・」
その言葉に伊崎は言い返す。
「違げえだろ。」
「お前の知ってる滝谷源治ってのはどんな男だ。」
「俺達に無駄な血流させたくねえんだろ。」
その話を聞いた芹沢軍団も話していた。
源治が1人で乗り込む気だと・・・
時生は源治を助けようと話す。
「源治は鈴蘭背負って動いてんだぞ。」
それに対して戸梶は反論した。
「勝手に背負ってるだけだろ。」
その時、三上兄弟が芹沢軍団に現れた。
そして笑いながら時生に言った。
「ついにセメダイン使うときがきましたね。」
「時生くん!」
そのやり取りを聞いていた多摩雄は笑みを浮かべた。
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皆の想定通りに、源治は1人で鳳仙へ向かっていた。
鳳仙は鈴蘭を待ち構えていた。
1人校庭に入った源治。
鳴海は1人の源治を見て言う。
「何の冗談だ?」
続けて的場が言った。
「白旗振って来い。」
源治は返す。
「笑わせんじゃねえよ。」
「てめえらなんかな・・・」
「俺1人で十分だよ。」
と同時に1人で立ち向かった源治。
数十人・数百人いる軍団が源治に襲い掛かる。
その様子を見ていた竜也が鳴海に言った。
「あいつが1人出来たんだったら、
タイマンはって決着付けるべきだろ?」
鳴海は返した。
「青いな・・・」
「お前には、あいつの本当の力が見えてねぇ。」
その言葉と同時に、鳳仙の校庭に入って来たGPS。
「ほら・・・」
しかし鳴海も予想外な展開が起こった。
芹沢軍団も同時に現れたのだった。
鳳仙のハゲ軍団を前に多摩雄は言った。
「うちの大将に
ずいぶんな事してくれるじゃねえか。」
その言葉を聞き、時生や戸梶、牧瀬は笑った。
逆に真顔に戻ったのは鳴海だった。
そして決意したように竜也に言う。
「しっかり見とけよ。」
「1年坊主。」
続けて鳴海は源治に向かって言った。
「滝谷源治。」
「屋上まで上がって来い。」
「そこでタイマンだ。」
その言葉を聞いて、源治は吠えた。
「ウォー。」
その声が合図となり、
鈴蘭の集団が鳳仙集団に襲い掛かった。
両校共に引けを獲らずに校庭で殴りあう。
その中で、多摩雄が声をあげた。
「おい!滝谷を屋上に連れて行くぞ!」
その声を合図に校内になだれ込む鈴蘭。
しかし、鳳仙の幹部たちも異常な強さを見せた。
特に鳴海は凄かった。
上に上がろうとする鈴蘭の集団を倒し続けた。
その中、とある教室に入り込んだ牧瀬。
追いかけてくる大量の鳳仙軍団。
その中で握り飯を食べていたのは鳴海。
ハゲ集団に向かって言う。
「お前等よ。こいつ俺の客だからよ。」
「他でやれ。他で。」
その言葉を聞いて教室を後にする集団。
2人になった教室で、
鳴海は笑みを浮かべて牧瀬に聞いた。
「体調はどうだよ?」
牧瀬は答えた。
「だから、絶好調だって言ってんだよ。」
そう言って殴り合いを始める2人。
牧瀬も強いが、鳴海の強さは半端なかった。
何度も立ち上がる牧瀬。
そんな牧瀬に敬意を評する鳴海。
しかし鳴海の圧倒的な強さに倒れた牧瀬だった。
屋上を目指す滝谷は集団に囲まれていた。
助けに入ったのは戸梶だった。
「滝谷。」
「お前は上にあがれ。」
「ここは俺が仕切る。」
そして伊崎に向かって言った。
「絶対滝谷屋上まで行かせろよ。」
そう言うと笑みを浮かべる戸梶。
そして以前に自分を襲った隼人と戦う。
「その顔忘れてねえぞ。」
「俺は金髪が嫌いなんだよ。」
時生も闘っていた。
集団に襲われて、倒れた時生は頭を打った。
ポケットに入っていたセメダインを取り出して、
握り締めた時生・・・
「そんなわけねだろ!」
「簡単には割れねえぞ!」
と叫ぶと、吹っ切れたように集団を倒し続けた。
上階まで進んだ、源治と多摩雄と伊崎。
待ち受けるのは的場。
伊崎は源治に
「お前に託してよかったわ。」
「行って来い。」
そう言って、源治と多摩雄を送り出した。
そして的場との戦いが始まる。
残すは屋上までの階段。
源治と多摩雄の2人が上っていると、
階段の途中で待っていたのは凌。
凌は二人に言った。
「待ちくたびれましたよ」
多摩雄は聞いた。
「お前か?筒本やったのは?」
凌は多摩雄の話を聞き流して言った。
「僕、あなたに憧れてるんです。」
「だから、鈴蘭の芹沢倒した男と呼ばれたい。」
多摩雄は源治に行った。
「滝谷。お前は行けよ。」
「こいつ俺にやらせろ。」
それを聞いた源治は、
「お前。はずれクジひいたぞ。」
と凌に言って、屋上への階段を上り始めた。
屋上にたどり着いた源治。
そこで待っていた鳴海。
鳴海は源治に言った。
「よく来たな。」
「鈴蘭打倒は美藤真喜雄と俺の悲願だ。」
「てめえ叩きのめして、その夢果たす。」
こうして2人のタイマンが始まった。
両校ボロボロになりながらも、
鈴蘭軍団が勝利の雄叫びを上げ始めていた。
多摩雄と闘う凌は強かった。
圧倒的に攻撃を続ける凌。
一方的な戦いに凌は呟く。
「鳴海さんも、買いかぶりすぎだよ・・・」
しかし倒れても何度も立ち上がる多摩雄。
殴られながらも凌に向かって行く次第に追い詰める。
そして、ついに殴りかかる凌の拳を握った。
そして多摩雄は凌に言う。
「喧嘩にも限度があるでしょうが・・・」
「やっべ・・・楽しい・・・」
その時点で凌はビビッていた。
最後は多摩雄の空中回し蹴りで・・・
屋上で戦う源治と鳴海。
ほぼ互角の戦いの中で、ボロボロになっていく2人。
その時、鷲尾が屋上に現れた。
「滝谷〜。」
「テッペンを獲るのは俺だ。」
そう言うと刃物を取り出し、源治に襲い掛かる。
鳴海が止めようとするが、
その前に鷲尾を蹴り飛ばしたのは竜也だった。
倒れた鷲尾に歩み寄る鳴海。
「まだ分からねぇのか?」
「よく見てろ!」
そう言って再び源治と向き合った。
「ケリ付けようぜ!」
そう言って再び殴り合いが再開する。
凌を倒して屋上に上がってきた多摩雄と、
竜也、鷲尾が勝負の行方を見守った。
壮絶な戦い・・・
最後の立っていたのは源治だった。
鳴海の勝利した源治は
笑みを浮かべて多摩雄に歩み寄った。
倒れそうな源治を抱えて多摩雄は言う。
「世話がやけるな、うちの大将は。」
源治は返した。
「うるせえ。」
「肩借りんぞ。」
倒れたまま起き上がれない鳴海。
そんな鳴海に竜也は言った。
「兄貴の夢を担いでくれてありがとう。」
「今度は俺があんたの夢を担ぐ番だ。」
そして心に決めた。
『待ってろ。鈴蘭・・・』
鳳仙に勝利した鈴蘭の面々の顔は痣だらけで、
傷の無いものは、いなかった。
しかし、皆には清清しい笑顔があった。
それから数ヶ月・・・
卒業の季節がやって来た。
屋上にある落書き。
頂上と書かれた直ぐ下には、
赤文字でGPSと書かれ、
その直ぐ下に大きく滝谷源治の名前が書かれていた。
その下に源治の卒業証書が貼り付けられ、
直ぐ斜め下に多摩雄の卒業証書が張られていた。
学校を後にした鈴蘭を代表する面々。
時生は言った。
「アッという間だったな。」
「色々あったけどアッという間だ。」
多摩雄は行った。
「また、新しい奴等の時代がやってくる。」
そんな話をしながら、皆が向かった先には
多くの人だかりが・・・
その中心には向かい合う、源治とリンダマン。
多摩雄は源治に向かって言う。
「源治。」
「お前に賭けてんだからな。」
「負けんなよ。」
多摩雄を見て笑みを浮かべた源治。
そして何も言わずに、リンダマンと向き合った。
リンダマンは源治に言った。
「今日で最後か・・・」
源治は答えた。
「卒業祝いには持って来いだ。」
リンダマンは返した。
「花を持たせるつもりはねえぞ。」
源治はタバコを捨てて言った。
「いらねえ〜よ!」
と同時にリンダマンを殴った源治。
リンダマンは始めて膝をついた。
立ち上がったリンダマンは呟いた。
「これだから鈴蘭は面白い・・・」
それを聞いて源治は微笑んだ。
〜拳のナレーション〜
『いいじゃねえかよ。鴉で・・・』
『カゴに入れられてよ・・・』
『跳ぶことも忘れちまう、
かわいそうな鳥に比べりゃ。』
『ずっーと、いいじゃねえか。』
『俺は鴉で十分だぜ。』
(終わり)
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2017年01月22日
【クローズZERO】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【クローズZERO】
【出演者】
GPS(GENJI PERFECT SEIHA)
滝谷源治:小栗旬
伊崎瞬:高岡蒼甫
牧瀬隆史:高橋努
田村忠太:鈴之助
芹沢軍団
芹沢多摩雄:山田孝之
辰川時生:桐谷健太
戸梶勇次:遠藤要
三上学(双子の兄):伊崎右典
三上豪(双子の弟):伊崎央登
筒本将治(2年):上地雄輔
三代目武装戦線
阪東秀人:渡辺大
千田ナオキ:武田航平
山崎タツヤ:鈴木信二
鈴蘭高校その他
2年
林田恵(リンダマン):深水元基
鷲尾郷太:波岡一喜
亜久津太:沖原一生
1年
桐島ヒロミ:大東俊介
本城俊明:橋爪遼
杉原誠:小柳友
その他
片桐拳:やべきょうすけ
逢沢ルカ:黒木メイサ
牛山(クラブのマスター):松重豊
黒岩義信(警察):塩見三省
滝谷英雄(劉生会組長・源治の父):岸谷五朗
矢崎丈治(矢崎組組長・拳の親分):遠藤憲一
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【感想】
これって男は皆好きですよね〜
原作が好きすぎて、何回も読んでるんです。
なかなか、実写化は難しいと思ってたんですが、
これは良い!!!
人選も良かったと思います。
小栗くんって上手いですよね〜
でも一番のはまり役は山田くんですね!
脇を固める役者さんも上手い。
でもね・・・
やっぱり25期生の時代を映画化して欲しい・・・
坊屋春道はもちろんですが、
自分はやっぱり武装は難です!
九能龍信、村田十三、武田好誠なんて最高。
個人的には、村田さんが大好きなんです!
って程々にして、
漫画好きでも納得の作品。
是非見てください。
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
拳に拳銃を向けて矢崎が言う。
「悪く思うなよ。」
「下の者に示しがつかねえんだよ。」
「拳。往生せよ。」
拳銃が放たれる間際、拳は叫んだ。
「源治〜。」
「跳べ〜。」
BANG!BANG!BANG!
撃たれたと同時に海に落とされる拳。
拳は海に沈みながら思った。
『源治。クソったれ。』
『お前に出会わなきゃ・・・』
『俺の人生は・・・』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
鴉の学校鈴蘭高校
屋上にある壁の一番上には
『鈴蘭の頂点』とカラースプレーで書かれていた。
下には多数の猛者どもの名前が書かれているが、
その一番上に『芹沢多摩雄』の名前があった。
それを見上げた源治。
源治は多摩雄の名前を白いスプレーで塗りつぶし、
その上に『滝谷源治』の名前を書いた。
その日は入学式であった。
鈴蘭高校の歴史でテッペンを獲った者はいない。
新入社員はテッペンを獲ること夢見ており、
1年最強を名乗るために1年内での乱闘が始まる。
上級生には、今後の鈴蘭を大きく左右するもの。
と同時に、賭けの対象となり注目が集まっていた。
そんな日に校庭にヤクザが来た。
その先頭を歩くのは舎弟頭の拳。
拳は校内に向かって声を上げる。
「うちの若い者を病院送りにした
芹沢多摩雄ってのはどいつだ?」
「出て来い!オラ!」
それを聞いて、舎弟どもが拳に声をかけた。
「兄貴。ジュース買って来てもらえます?」
拳は言い返す。
「何で俺がパシリみたいなことを
しなきゃいけねえんだよ。」
舎弟は続けた。
「お願いしますよ。」
「兄貴が出る幕じゃないです。」
拳は言う。
「そう?」
「後は頼んだぞ!」
そう言うと、持っていたバットを舎弟に渡す。
バットを持ち校内に近づく舎弟たち。
「早く出て来いや馬鹿ガキ。」
そのころ多摩雄は病院に居た。
病院から出てきた時生は、多摩雄に言った。
「俺、何ともねえってよ〜。」
そしてバイクのエンジンをかけて言う。
「早く乗れよ!」
多摩雄は時生に言い返した。
「お前歩いて行け。」
そして時生のバイクを奪い跨る。
時生は多摩雄に言い返す。
「お前バイク乗れねえだろ?」
多摩雄は無視してバイクを発進させた。
バイクを運転できない多摩雄は、
目の前の車にぶつかりそうになり急ブレーキ。
身だけ乗り出し、自分の頭で車のガラスを割る。
それでも全く動じない多摩雄。
独り言のように呟いた。
「何で本当のこと言わねえんだよ・・・」
そして何事も無かったようにバイクを発進させた。
バイクで病院を出た多摩雄。
出て直ぐに、またもや車と衝突しそうになる。
多摩雄は車に向かって叫ぶ。
「危ねえなコノヤロウ。」
運転席から顔を出したのは、警察の黒岩であった。
「芹沢君。君免許持ってたっけ?」
その顔をみて直ぐに逃走を開始する多摩雄。
なんとか逃げ切り鈴蘭高校へと向かった。
しかし、バイクをコントロールできずに、
グランドのフェンスに突っ込んで停まった。
グラウンドでは、乗り込んできたヤクザの舎弟達を
1人で倒した伸した源治が立っていた。
それを見た多摩雄は源治に言った。
「こいつら俺の客だろ?」
そして続けて源治の顔を見て言う。
「見ねえ顔だな。」
源治は答えた。
「今日から鈴蘭だ。」
その会話の途中で、多摩雄を追って警察が来た。
パトカーから降りた黒岩が叫んだ。
「芹沢〜。」
その言葉を聞き、源治は気づき多摩雄に言う。
「お前が、芹沢多摩雄?」
多摩雄は、
「そう。そう。」
と軽く答えると、そのまま連行されていった。
クラブで酒を飲んでいた源治。
そんな源治に声をかける逢沢ルカ。
「3年生になって転校したんじゃ、
友達居なくて退屈でしょ?滝谷君!」
「何で、鈴蘭高校なんかに転校したの?」
答えない源治の変わりにマスターが答えた。
「不良偏差値トップの通称カラスの学校。」
「そこで派閥争いを制して頂点に立つためだよな!」
ルカは続けて源治に言った。
「何かヤクザみたい。」
「やめたら?」
源治の親父はヤクザの組長で鈴蘭OB。
家に帰った源治に親父は言う。
「粋がっているだけで、
テッペン獲れるほど鈴蘭甘くねえぞ。」
源治は言い返す。
「鈴蘭獲れなかったあんたに言われたくねえな〜。」
「俺はあんたとは違う。」
「絶対鈴蘭獲ってやるよ。」
「そしたら約束通り、あんたの組貰うからな。」
翌日
屋上の壁の『滝谷源治』の文字は、
黒スプレーで塗りつぶされていた。
その屋上で麻雀をしていた芹沢軍団幹部たち。
多摩雄は壁を指差して時生に聞いた。
「あれ誰やったんだ?」
時生は何も知らないように言う。
「さあ・・・」
その時、多摩雄は声を上げた。
「国士無双・・・」
「お前等、驚くなよ・・・」
そう言って杯を倒そうとした瞬間。
源治が麻雀卓を蹴り上げた。
呆然とする多摩雄。
即座に椅子を持ち上げて、
源治に襲い掛かろうとする戸梶。
戸梶を止めた時生。
「落ち着け。悪りい。」
「俺の中学のダチ。」
そんな事も関係ない様子で源治は言う。
「久しぶりだな時生。」
そして自分の名前が消された壁を指差して聞く。
「消したのお前か?」
時生は答えた。
「おう。」
自分で話しかけた会話も流して、
そのまま多摩雄に声をかける源治。
「お前3年で一番強えんだろ?」
「やろうぜ・・・」
多摩雄も怒っていた。
「てめえ。よくも人の国士無双を・・・」
そう言って源治に向かって行く多摩雄。
全力で多摩雄を抑える時生。
そのタイミングで、
別派閥を仕切る三上兄弟が屋上に現れた。
好都合とばかりに時生は言った。
「悪いけどお前に構っている暇はねえんだ。」
「どうしても多摩雄とやりてえんなら、
2年の多摩雄の弟子リンダマンを倒してからにしろ。」
「そいつに勝ったらここに来い。」
時生の話を承諾して立ち去る源治。
その話を聞いた三上兄弟は多摩雄に言う。
「3年のトップ決めようぜ。」
「で?いつからリンダマンが
てめえの弟子になったんだ?」
「ビビッて闘ったこともねえくせによ。」
そう言うと多摩雄に殴りかかった。
しかし多摩雄の相手ではなかった。
一瞬で三上兄弟を倒す。
一方、時生の言った通りにリンダマンを探す源治。
そんな源治に声をかけてきた拳。
「やっと見つけたぞ。」
「ヤクザ者に手を出したらどうなるのか、
分からせてやるよ芹沢。」
源治は違うと答えるも、
聞く耳持たずに襲い掛かる拳。
見た目とは違い一瞬で源治に倒される拳。
そして人違いだと拳に伝えた。
拳も元鈴蘭生であり、強い源治に興味を持った。
「お前みたいに強いだけでは、
群雄割拠の鈴蘭を
1つにまとめる事はできねえのよ。」
そう言って、人徳や統率力が必要と教えた。
それを聞いた源治は聞く。
「あんた、それ持ってるのか?」
「俺鈴蘭入ったばかりで
右も左も知らなきゃ、上も下もねえんだ。」
「だから・・・」
「俺に協力してくんねえか?」
「俺、人付き合いも苦手だし。」
「だから、俺に力貸してくれよ。」
頼られた拳は上機嫌で、
テッペンを獲るアドバイスを始めた。
その頃屋上では、時生と多摩雄が話していた。
源治との過去の思い出を話したあとに言う。
「もう源治とは関係ねえ。」
「やり合う覚悟はできてる。」
「俺とお前も、いつかは変わっちまうのかな?」
それを聞いた多摩雄は答えた。
「俺と見る景色は、いつまでも変わんねえよ。」
「この鈴蘭じゃ俺とお前の上には誰も立てねえ。」
「かかってくる奴は、片っ端から叩き潰す。」
「お前はのんびりしてりゃあいい。」
そう言って立ち去る多摩雄。
1人に屋上で、多摩雄の言葉に喜んで微笑む時生。
と同時に、頭に激痛が走り倒れこんだ・・・
次の日から、
源治は拳に言われた行動を始めた。
まずは自分のクラスで叫んだ。
「このクラスで一番強い奴はどいつだ?」
名乗りを上げた忠太。
あっさりと忠太を倒す源治。
倒れている忠太に源治は言った。
「今日からこのクラスは俺のもんだ。」
「俺についてくれば、いい夢見させてやるぞ。」
源治に付いて行くことを決めた忠太。
忠太は拳に鈴蘭の情勢を伝えた。
最大派閥の芹沢軍団。
芹沢多摩雄、辰川時生、戸梶勇次、筒本将治。
対を張っていたが、多摩雄に敗北した三上兄弟。
単独勢力の牧瀬隆史。切れ者の伊崎瞬。
2年のリンダマン、阪東秀人、鷲尾郷太。
1年を制した3人トリオの桐島、本正、杉原。
全てが別格の力を持っていることを伝えた。
話を聞いた拳は、牧瀬を取り込もうと考えた。
一匹狼の牧瀬を取り込むには・・・
拳は力ではなく、女を紹介することを考えた。
源治は相沢ルカの伝手で合コンを開いた。
女性経験がない牧瀬の行動はヤバかった。
グダグダな合コン。
拳の仕込みで、隣の席に居た忠太が絡む。
それに対して、女の子を守ろうとする牧瀬。
しかし牧瀬より先に忠太を攻撃したルカ。
結果グダグダなまま、合コンは終了した。
計画は失敗したように見えたが、
馬鹿で純粋な牧瀬はあっさり意気投合した。
合コンの別れ際。
牧瀬は源治に言った。
「滝谷。C組はてめえに預ける。」
「一緒にテッペン獲ろうじゃねえか。」
次に取り込もうと考えたのは切れ者の伊崎。
そんなとき、伊崎が源治を呼び出してきた。
以前から牧瀬が勧誘を続けており、
それに承諾すると言うことでの呼び出し。
伊崎に源治は聞いた。
「俺たちに、つくって本当か?」
それに伊崎は答えた。
「ああ。だが少しルールは変える。」
「芹沢とやりあうのはお前じゃない。」
「俺のほうだ。」
「戦争にきれいごとはいらねえんだよ。」
その言葉と同時に、
1人の源治に伊崎の仲間たちが襲い掛かった。
多勢に無勢で、やられる源治。
倒れたままで源治は伊崎に言った。
「牧瀬が頭下げて頼むから、
どんな奴かと思ったら・・・」
そう言うとフラフラで立ち上がる源治。
「終わってねえよ。バ〜カ。」
次から次へと襲い掛かる伊崎の仲間を、
次々に倒していく源治。
しかし人数の多さに、力尽きた源治。
伊崎の胸ぐらを掴んだままで気を失った。
源治を牧瀬の下に運んだ伊崎。
牧瀬は怒り伊崎に襲い掛かろうとするが、
それを制して伊崎は牧瀬に聞いた。
「あまえ、何でこいつを担ぐ気になった?」
牧瀬は答えた。
「理由なんかねえし・・・」
それを聞いた伊崎は言う。
「そこの大将に伝えろ。」
「明日からダーツ教えてやるって。」
源治は拳に伊崎が加わったことを伝えた。
話を聞いて喜ぶ拳。
源治と話をしながら歩いていると、
ルカがストリートギャングに絡まれていた。
怪我が癒えない源治にカッコつけて、
源治とルカを逃がした拳。
しかし拳の腕っ節では逃がすのが精一杯。
結果ボコボコにされた・・・
通報で駆けつけた警察の黒岩。
黒岩は拳に言った。
「鈴蘭出身で、
チンピラやってるのはお前ぐらいだぞ。」
「ヤクザやっても半端かよ。」
「カラスの学校で何学んだんだよ。」
「中退の半端者じゃしゃあないか・・・」
拳には返す言葉が無かった・・・
そして拳は空を見上げて泣いた・・・
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源治一派は伊崎、牧瀬が加わったことで、
芹沢軍団にも勝る勢力となりつつあった。
仲間もどんどん増えていった。
その様子を見ていた、多摩雄は時生に言った。
「あいつら、見逃すわけにはいかねえぞ。」
時生は返す。
「俺が見逃してくれって言ったかよ?」
「鈴蘭のテッペン登ってから、
見る景色っていうのはよ・・・」
「さぞかし、壮大なんだろうな〜。」
「獲るぞテッペン。」
その話を横で聞いていた戸梶。
芹沢軍団一の切れ者が動き出した。
標的になったのは伊崎。
1人で歩く伊崎の前にたった戸梶が言う。
「確か戦争に綺麗ごとはいらねえ。」
「だったよな・・・」
そう言うと集団で襲いかかった。
それを知った源治は怒った。
しかし、やられた伊崎が源治を止めて言う。
「行くな・・・」
「まだ数が足んねえ。」
源治は振りほどいて歩き出した。
源治を止めて牧瀬も言った。
「伊崎の言うとおりだ。」
「今やっても負けは見えてる。」
源治は言い返す。
「そういう問題じゃねえだろ。」
牧瀬はその言葉に被せて言った。
「そういう問題なんだよ。」
「お前が負けたら、それで終わりなんだよ。」
「この戦争はそう言うところまで来てるんだよ。」
源治はその場で、天を見上げて呟いた。
「辛れえんだな〜。こういうのって。」
「てめえがやられたほうが、
よっぽどマシだな〜。」
手を出せずにイラつく源治。
そんな源治と牧瀬の前に、
たまたま多摩雄と時生が現れた。
源治は怒り時生に向かって行った。
それを止めて多摩雄は言う。
「お前の相手は俺だろ?」
源治は言った。
「伊崎やったのはてめえ等か?」
多摩雄は何も知らない様子だったが、
直ぐに気がついた多摩雄は、
源治に背を向けて歩き出す。
事情を知っていた、時生は多摩雄を止めた。
が・・・
そのまま痙攣を起こして倒れこむ時生。
病院へと運ばれた時生。
多摩雄は全て知っていた。
時生は脳に爆弾を抱えていた。
手術の成功率は30%
そう医者に言われている姿を、
病室の外から聞いていた多摩雄。
その時、時生が先生へ返した言葉。
「だったら手術はしねえ。」
「医者が手術して30%って言うなら、
俺は手術しねえで100%生きてやる。」
「俺は死なねえよ。」
そんな時生が倒れたことが、
多摩雄と源治を急がせた。
源治は無茶苦茶に暴れて、
倒した奴等をどんどん仲間にして行った。
力付くで勢力拡大を進める源治に牧瀬は
「そんな奴等集めても戦力にならねえよ。」
「いい加減にしろ!」
「お前、何のために暴れてるんだよ。」
「悪りいけど、今のお前には付いていけねえ。」
そう言って源治から離れていった。
悩んだ源治は拳に相談へと言った。
「一遍にいろんなことが
起きすぎて、もう分かんねえよ。」
「俺には、人を束ねる力はねえ。」
拳は一生懸命励ました。
「お前ならできるよ。」
「お前は俺にとって夢なんだよ。」
「一度言ったことはよ、最後までやろうぜ。」
源治は呟く。
「親父を越えるために鈴蘭に入ったんだよ。」
そして源治は自分の親がヤクザだと拳に伝えた。
敵対している組の親分だと知った拳。
しかも昔から慕っていた鈴蘭の先輩でもあった。
数日後、拳は組長に呼ばれていた。
「最近鈴蘭のガキとつるんでいるだって?」
「しかもそのガキ、
うちの連中とやり合ったらしいじゃねえか?」
そう言うと拳銃を拳に渡して言う。
「これでそのガキやって来い。」
拳は言う。
「その高校生・・・
実は劉生会の組長の倅なんです。」
「劉生会はうちと敵対している組織だし、
その倅のタマをとったってなったら・・・」
組長は知ってたと言うばかりに被せた。
「抗争になっちまう・・・」
抗争目的で、拳に吹っかけていたのだった。
一方源治は、拳と話したことで頭を冷やしていた。
源治は牧瀬の下へ向かい、そして牧瀬に言う。
「俺とタイマンはってくんねえ?」
「もし俺が勝ったら・・・」
「もう一回着いて来てくんねえかな?」
その言葉を聞いて牧瀬は笑った。
牧瀬と仲直りしできたことを拳に報告した源治。
「なんかグチャグチャしてたけどさ。」
「仲間って言葉の意味が、
俺にも少しわかってきた気がするよ。」
言葉を発することなく聞く拳。
そこに多摩雄が現れた。
「1つ言いてえことがあって来たんだ。」
「時生は俺のダチだ。」
「それをお前に言いにきた。」
そう言って立ち去る多摩雄。
2人のやり取りを聞いていた拳は話し出した。
「うらやましいな〜。」
「命一杯、真っ直ぐ生きるお前たちには、
何の混じりっけもねえ。」
「嬉しくて泣けてくるよ。」
「俺も鈴蘭でお前みたいな生き方できたら、
ちっとはマシな道歩けたかな〜?」
「おかげで目覚めたわ!」
そう言って拳に近づくと、
源治の腹に命一杯のパンチをした。
そして続けて話す拳。
「俺のパンチじゃ、お前には効かねえはな。」
「拳の重さは俺にも分かる。」
「受けてきた数が違うからな〜。」
「源治!」
「テッペン獲れよ!」
そう言って、その場を後にした拳。
拳はその足で、源治の親父の下へ向かった。
拳は、劉生会組長に言った。
「俺は滝谷さんに憧れてました。」
「あなたは俺を劉生会には入れてくれなかった。」
「だから敵対する矢崎組に入ったんです。」
「なんも分かっちゃ無かった・・・」
「うちの組長が源治のタマを狙ってます。」
源治の親父は拳に聞いた。
「なぜ俺に話した。」
拳は答えた。
「逃げっぱなしの人生です。」
「最後くらいは、
自分の気持ちに正直にけじめつけたいんです。」
そして手紙を出して頭を下げた。
「これを源治に渡してください。」
そして話を続けた拳。
「鈴蘭を制覇したら、
跡目を継がせるって言ったそうですね?」
「あいつがテッペン獲ったらどうするんですか?」
「あいつをこの世界に入れるんですか?」
源治の親父は答えた。
「鈴蘭を制覇できるような人間になったら、
きっとあいつは自分から跡目を降りる・・・」
その言葉に拳は安心した様子だった・・・
戸梶は影で動き続けていた。
多摩雄に黙って、源治潰しの策を練っていた。
その計画で利用したのは武装戦線。
武装戦線のトップ争いに協力するため、
源治一派を潰して欲しいと話を持ちかける。
火種となったルカだった。
ルカから連絡が入った源治。
「助けて、髑髏の革ジャン来た奴に捕まってる。」
「坂東って言ってる・・・」
それを聞いた源治は直ぐに向かった。
それを見て牧瀬は伊崎に聞いた。
「どうするんだよ?武装と戦争か?」
伊崎は答える。
「あいつが右向きゃ。
俺たちも右向くしかねえだろ。」
そう言って源治の後を追う。
埠頭にある倉庫に乗り込んだ源治たち。
武装相手の戦いが始まった・・・
戦いの途中で気づく源治。
「髑髏がねえ・・・」
倒した武装の革ジャンに髑髏マークが無かった。
根拠がない争いをしたと気がついたとき、
武装戦線の阪東が話し始めた。
「もういい。やめろ。」
源治は聞いた。
「やったの、お前等じゃねえのかよ?」
坂東は答えた。
「俺とお前が戦争して一番得するのは誰だ?」
「お前のおかげで、うちの連中はやる気満々だ。」
「それなりに詫びいれてもらわねえと、
納得できねえ。」
そう言って牧瀬を指差して続けた。
「お前の耳貰おうか?」
「どっちか片一方でいい。」
牧瀬は言い返した。
「くれてやろうじゃねえかよ。」
それを止めた源治。
「俺ので勘弁してくんねえかな?」
「両方ともくれてやるよ。」
そう言うとナイフを耳に当てた源治。
本気の源治に男気を見て、坂東は止めた。
「そんな汚い耳いらねえよ。」
「女さらって、クラブSの地下室に連れてこい。」
「それが奴等から最初に持ちかけられた計画だ。」
「いけよ!」
「女助けてから、ケリつけようぜ。」
クラブSでは、戸梶の元に多摩雄が入っていた。
「時生の手術、明日の5時に決まった。」
そう伝えた時、源治たちも入ってきて言う。
「女だせ。」
理解が出来ていない多摩雄。
多摩雄に気がつかれないように、
追い返そうとする戸梶。
その行動で気がついた多摩雄は、
ルカを返して、戸梶を殴った。
「何やったか分かってるのか?」
「こんなことするぐらいならな、
真っ向から突っ込んで
潰されたほうがマシだ。」
仲間割れする多摩雄たちを見ていた源治。
源治は多摩雄に言う。
「解決するには1つしかねえだろ?」
多摩雄も答えた。
「決着付けるときが来たみてえだな・・・」
源治は言った。
「明日5時。」
「場所は俺たちの鈴蘭。」
家に帰った源治は、親父から拳の手紙を貰った。
『お前なら俺の見れなかった
景色が必ず見れるはず。
跳べ
鴉のように高く羽ばたけ。』
手紙を読んだ源治に親父は言った。
「あいつは、
お前のために渡世の掟を破ったんだ。」
「お前を殺せと言う、親の命令に背いたんだ。」
それが何を意味しているか悟った源治。
直ぐに家を出ようとするが、親父は止めた。
「お前が行ってどうなる?」
「あいつも極道の端くれだ。」
「てめえのケツはてめえで拭くよ。」
「あいつの託した思いを踏んでやれ。」
翌日。天気は大雨。
傘を差し向かう戦いに望む源治。
その後に続けて歩く、
牧瀬・伊崎・忠太そして仲間たち。
同時期・・・
手術室に向かう時生。
手術室に運ばれる時生は言った。
「止めてください。」
「自分で歩いていいですか?」
そう言うと、歩いて手術室へと入っていった・・・
待ち構える、多摩雄・筒本・三上兄弟。
多摩雄は時生を思い言った。
「あいつと一緒に闘うんだ・・・」
自分の行動でギクシャクしていた戸梶。
そんな戸梶に多摩雄は言った。
「勝って時生に自慢してやろうぜ。」
そして、
GPS30人と芹沢軍団70人の戦いが始まった・・・
圧倒的な人数の差に押される源治たち。
そこに突如として現れた武装戦線。
武装の坂東は言う。
「狙うは芹沢の首だ。」
これで人数は互角となった・・・
牧瀬・忠太VS三上兄弟
伊崎VS戸梶
坂東VS筒元
互角の戦いが続くが、
紙一重で倒し続けるGPS。
そして・・・
雨がやむ頃、最終の戦いが始まった。
源治と多摩雄の戦い。
互角で殴りあう二人。
そのころ拳も闘っていた。
親分に拳銃を返して言う。
「俺には出来ません。」
親分は返した。
「ただじゃすまねえぞ。」
そう言うと子分に車を出すように伝えた。
そして埠頭につれてこられた拳。
親父は自分のジャケットを脱いで拳に渡す。
「欲しがってたなこれ?」
「やるよ。持っていけ。」
「ヤクザになったの後悔してるか?」
拳は答えた。
「してません。」
そして親分は言った。
「悪く思うなよ。」
「下の者に示しが付かない。」
そう言うと拳を座らせて、
背後から拳銃を向けた。
拳は泣いていた・・・
そして、引き金が引かれる瞬間に拳は叫んだ。
「源治〜!」
「跳べ〜!」
お互い互角で、フラフラで殴りあった源治と多摩雄。
最後に立ち上がったのは源治だった・・・
撃たれて、海へ落とされた拳。
海に沈みながら拳は思っていた。
『源治。』
『クソったれ。』
『お前と出会わなければ・・・』
『俺の人生は・・・』
『もっとクソったれだった。』
『ありがとよ。』
仲間に担ぎおこされた多摩雄。
多摩雄は呟くように言う。
「時生は・・・」
「そうか・・・」
「時生は勝ちやがった・・・」
海に沈むはずの拳は・・・
途中で意識が戻り、急いで海から這い上がった。
そして親分に着せてもらったジャケットを脱ぎ、
背中を確認すると防弾ジョッキとなっていた。
車で去っていく、親分に頭を下げた拳。
「ありがとうございました。」
「源治〜。」
「俺生きてるぞ〜!」
それから数日後・・・
多摩雄と、退院した時生が見守る中で、
源治はリンダマンを呼び出していた。
「悪りいな・・・」
「お前を倒さないと、
鈴蘭のテッペン獲れねえんだ。」
リンダマンは言った。
「鈴蘭にテッペンはない。」
「あんたが芹沢を倒したように、
新しい奴が次から次へと出てくる。」
「それが鈴蘭だ。」
「その相手をしているうちに、
卒業ってことになる。」
「制覇は夢となって消える。」
源治は答えた。
「それはどうかな〜?」
リンダマンは言う。
「容赦しねえぞ。」
そして、拳を交わすのであった・・・
(終わり)
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【クローズZERO】
【出演者】
GPS(GENJI PERFECT SEIHA)
滝谷源治:小栗旬
伊崎瞬:高岡蒼甫
牧瀬隆史:高橋努
田村忠太:鈴之助
芹沢軍団
芹沢多摩雄:山田孝之
辰川時生:桐谷健太
戸梶勇次:遠藤要
三上学(双子の兄):伊崎右典
三上豪(双子の弟):伊崎央登
筒本将治(2年):上地雄輔
三代目武装戦線
阪東秀人:渡辺大
千田ナオキ:武田航平
山崎タツヤ:鈴木信二
鈴蘭高校その他
2年
林田恵(リンダマン):深水元基
鷲尾郷太:波岡一喜
亜久津太:沖原一生
1年
桐島ヒロミ:大東俊介
本城俊明:橋爪遼
杉原誠:小柳友
その他
片桐拳:やべきょうすけ
逢沢ルカ:黒木メイサ
牛山(クラブのマスター):松重豊
黒岩義信(警察):塩見三省
滝谷英雄(劉生会組長・源治の父):岸谷五朗
矢崎丈治(矢崎組組長・拳の親分):遠藤憲一
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【感想】
これって男は皆好きですよね〜
原作が好きすぎて、何回も読んでるんです。
なかなか、実写化は難しいと思ってたんですが、
これは良い!!!
人選も良かったと思います。
小栗くんって上手いですよね〜
でも一番のはまり役は山田くんですね!
脇を固める役者さんも上手い。
でもね・・・
やっぱり25期生の時代を映画化して欲しい・・・
坊屋春道はもちろんですが、
自分はやっぱり武装は難です!
九能龍信、村田十三、武田好誠なんて最高。
個人的には、村田さんが大好きなんです!
って程々にして、
漫画好きでも納得の作品。
是非見てください。
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
拳に拳銃を向けて矢崎が言う。
「悪く思うなよ。」
「下の者に示しがつかねえんだよ。」
「拳。往生せよ。」
拳銃が放たれる間際、拳は叫んだ。
「源治〜。」
「跳べ〜。」
BANG!BANG!BANG!
撃たれたと同時に海に落とされる拳。
拳は海に沈みながら思った。
『源治。クソったれ。』
『お前に出会わなきゃ・・・』
『俺の人生は・・・』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
鴉の学校鈴蘭高校
屋上にある壁の一番上には
『鈴蘭の頂点』とカラースプレーで書かれていた。
下には多数の猛者どもの名前が書かれているが、
その一番上に『芹沢多摩雄』の名前があった。
それを見上げた源治。
源治は多摩雄の名前を白いスプレーで塗りつぶし、
その上に『滝谷源治』の名前を書いた。
その日は入学式であった。
鈴蘭高校の歴史でテッペンを獲った者はいない。
新入社員はテッペンを獲ること夢見ており、
1年最強を名乗るために1年内での乱闘が始まる。
上級生には、今後の鈴蘭を大きく左右するもの。
と同時に、賭けの対象となり注目が集まっていた。
そんな日に校庭にヤクザが来た。
その先頭を歩くのは舎弟頭の拳。
拳は校内に向かって声を上げる。
「うちの若い者を病院送りにした
芹沢多摩雄ってのはどいつだ?」
「出て来い!オラ!」
それを聞いて、舎弟どもが拳に声をかけた。
「兄貴。ジュース買って来てもらえます?」
拳は言い返す。
「何で俺がパシリみたいなことを
しなきゃいけねえんだよ。」
舎弟は続けた。
「お願いしますよ。」
「兄貴が出る幕じゃないです。」
拳は言う。
「そう?」
「後は頼んだぞ!」
そう言うと、持っていたバットを舎弟に渡す。
バットを持ち校内に近づく舎弟たち。
「早く出て来いや馬鹿ガキ。」
そのころ多摩雄は病院に居た。
病院から出てきた時生は、多摩雄に言った。
「俺、何ともねえってよ〜。」
そしてバイクのエンジンをかけて言う。
「早く乗れよ!」
多摩雄は時生に言い返した。
「お前歩いて行け。」
そして時生のバイクを奪い跨る。
時生は多摩雄に言い返す。
「お前バイク乗れねえだろ?」
多摩雄は無視してバイクを発進させた。
バイクを運転できない多摩雄は、
目の前の車にぶつかりそうになり急ブレーキ。
身だけ乗り出し、自分の頭で車のガラスを割る。
それでも全く動じない多摩雄。
独り言のように呟いた。
「何で本当のこと言わねえんだよ・・・」
そして何事も無かったようにバイクを発進させた。
バイクで病院を出た多摩雄。
出て直ぐに、またもや車と衝突しそうになる。
多摩雄は車に向かって叫ぶ。
「危ねえなコノヤロウ。」
運転席から顔を出したのは、警察の黒岩であった。
「芹沢君。君免許持ってたっけ?」
その顔をみて直ぐに逃走を開始する多摩雄。
なんとか逃げ切り鈴蘭高校へと向かった。
しかし、バイクをコントロールできずに、
グランドのフェンスに突っ込んで停まった。
グラウンドでは、乗り込んできたヤクザの舎弟達を
1人で倒した伸した源治が立っていた。
それを見た多摩雄は源治に言った。
「こいつら俺の客だろ?」
そして続けて源治の顔を見て言う。
「見ねえ顔だな。」
源治は答えた。
「今日から鈴蘭だ。」
その会話の途中で、多摩雄を追って警察が来た。
パトカーから降りた黒岩が叫んだ。
「芹沢〜。」
その言葉を聞き、源治は気づき多摩雄に言う。
「お前が、芹沢多摩雄?」
多摩雄は、
「そう。そう。」
と軽く答えると、そのまま連行されていった。
クラブで酒を飲んでいた源治。
そんな源治に声をかける逢沢ルカ。
「3年生になって転校したんじゃ、
友達居なくて退屈でしょ?滝谷君!」
「何で、鈴蘭高校なんかに転校したの?」
答えない源治の変わりにマスターが答えた。
「不良偏差値トップの通称カラスの学校。」
「そこで派閥争いを制して頂点に立つためだよな!」
ルカは続けて源治に言った。
「何かヤクザみたい。」
「やめたら?」
源治の親父はヤクザの組長で鈴蘭OB。
家に帰った源治に親父は言う。
「粋がっているだけで、
テッペン獲れるほど鈴蘭甘くねえぞ。」
源治は言い返す。
「鈴蘭獲れなかったあんたに言われたくねえな〜。」
「俺はあんたとは違う。」
「絶対鈴蘭獲ってやるよ。」
「そしたら約束通り、あんたの組貰うからな。」
翌日
屋上の壁の『滝谷源治』の文字は、
黒スプレーで塗りつぶされていた。
その屋上で麻雀をしていた芹沢軍団幹部たち。
多摩雄は壁を指差して時生に聞いた。
「あれ誰やったんだ?」
時生は何も知らないように言う。
「さあ・・・」
その時、多摩雄は声を上げた。
「国士無双・・・」
「お前等、驚くなよ・・・」
そう言って杯を倒そうとした瞬間。
源治が麻雀卓を蹴り上げた。
呆然とする多摩雄。
即座に椅子を持ち上げて、
源治に襲い掛かろうとする戸梶。
戸梶を止めた時生。
「落ち着け。悪りい。」
「俺の中学のダチ。」
そんな事も関係ない様子で源治は言う。
「久しぶりだな時生。」
そして自分の名前が消された壁を指差して聞く。
「消したのお前か?」
時生は答えた。
「おう。」
自分で話しかけた会話も流して、
そのまま多摩雄に声をかける源治。
「お前3年で一番強えんだろ?」
「やろうぜ・・・」
多摩雄も怒っていた。
「てめえ。よくも人の国士無双を・・・」
そう言って源治に向かって行く多摩雄。
全力で多摩雄を抑える時生。
そのタイミングで、
別派閥を仕切る三上兄弟が屋上に現れた。
好都合とばかりに時生は言った。
「悪いけどお前に構っている暇はねえんだ。」
「どうしても多摩雄とやりてえんなら、
2年の多摩雄の弟子リンダマンを倒してからにしろ。」
「そいつに勝ったらここに来い。」
時生の話を承諾して立ち去る源治。
その話を聞いた三上兄弟は多摩雄に言う。
「3年のトップ決めようぜ。」
「で?いつからリンダマンが
てめえの弟子になったんだ?」
「ビビッて闘ったこともねえくせによ。」
そう言うと多摩雄に殴りかかった。
しかし多摩雄の相手ではなかった。
一瞬で三上兄弟を倒す。
一方、時生の言った通りにリンダマンを探す源治。
そんな源治に声をかけてきた拳。
「やっと見つけたぞ。」
「ヤクザ者に手を出したらどうなるのか、
分からせてやるよ芹沢。」
源治は違うと答えるも、
聞く耳持たずに襲い掛かる拳。
見た目とは違い一瞬で源治に倒される拳。
そして人違いだと拳に伝えた。
拳も元鈴蘭生であり、強い源治に興味を持った。
「お前みたいに強いだけでは、
群雄割拠の鈴蘭を
1つにまとめる事はできねえのよ。」
そう言って、人徳や統率力が必要と教えた。
それを聞いた源治は聞く。
「あんた、それ持ってるのか?」
「俺鈴蘭入ったばかりで
右も左も知らなきゃ、上も下もねえんだ。」
「だから・・・」
「俺に協力してくんねえか?」
「俺、人付き合いも苦手だし。」
「だから、俺に力貸してくれよ。」
頼られた拳は上機嫌で、
テッペンを獲るアドバイスを始めた。
その頃屋上では、時生と多摩雄が話していた。
源治との過去の思い出を話したあとに言う。
「もう源治とは関係ねえ。」
「やり合う覚悟はできてる。」
「俺とお前も、いつかは変わっちまうのかな?」
それを聞いた多摩雄は答えた。
「俺と見る景色は、いつまでも変わんねえよ。」
「この鈴蘭じゃ俺とお前の上には誰も立てねえ。」
「かかってくる奴は、片っ端から叩き潰す。」
「お前はのんびりしてりゃあいい。」
そう言って立ち去る多摩雄。
1人に屋上で、多摩雄の言葉に喜んで微笑む時生。
と同時に、頭に激痛が走り倒れこんだ・・・
次の日から、
源治は拳に言われた行動を始めた。
まずは自分のクラスで叫んだ。
「このクラスで一番強い奴はどいつだ?」
名乗りを上げた忠太。
あっさりと忠太を倒す源治。
倒れている忠太に源治は言った。
「今日からこのクラスは俺のもんだ。」
「俺についてくれば、いい夢見させてやるぞ。」
源治に付いて行くことを決めた忠太。
忠太は拳に鈴蘭の情勢を伝えた。
最大派閥の芹沢軍団。
芹沢多摩雄、辰川時生、戸梶勇次、筒本将治。
対を張っていたが、多摩雄に敗北した三上兄弟。
単独勢力の牧瀬隆史。切れ者の伊崎瞬。
2年のリンダマン、阪東秀人、鷲尾郷太。
1年を制した3人トリオの桐島、本正、杉原。
全てが別格の力を持っていることを伝えた。
話を聞いた拳は、牧瀬を取り込もうと考えた。
一匹狼の牧瀬を取り込むには・・・
拳は力ではなく、女を紹介することを考えた。
源治は相沢ルカの伝手で合コンを開いた。
女性経験がない牧瀬の行動はヤバかった。
グダグダな合コン。
拳の仕込みで、隣の席に居た忠太が絡む。
それに対して、女の子を守ろうとする牧瀬。
しかし牧瀬より先に忠太を攻撃したルカ。
結果グダグダなまま、合コンは終了した。
計画は失敗したように見えたが、
馬鹿で純粋な牧瀬はあっさり意気投合した。
合コンの別れ際。
牧瀬は源治に言った。
「滝谷。C組はてめえに預ける。」
「一緒にテッペン獲ろうじゃねえか。」
次に取り込もうと考えたのは切れ者の伊崎。
そんなとき、伊崎が源治を呼び出してきた。
以前から牧瀬が勧誘を続けており、
それに承諾すると言うことでの呼び出し。
伊崎に源治は聞いた。
「俺たちに、つくって本当か?」
それに伊崎は答えた。
「ああ。だが少しルールは変える。」
「芹沢とやりあうのはお前じゃない。」
「俺のほうだ。」
「戦争にきれいごとはいらねえんだよ。」
その言葉と同時に、
1人の源治に伊崎の仲間たちが襲い掛かった。
多勢に無勢で、やられる源治。
倒れたままで源治は伊崎に言った。
「牧瀬が頭下げて頼むから、
どんな奴かと思ったら・・・」
そう言うとフラフラで立ち上がる源治。
「終わってねえよ。バ〜カ。」
次から次へと襲い掛かる伊崎の仲間を、
次々に倒していく源治。
しかし人数の多さに、力尽きた源治。
伊崎の胸ぐらを掴んだままで気を失った。
源治を牧瀬の下に運んだ伊崎。
牧瀬は怒り伊崎に襲い掛かろうとするが、
それを制して伊崎は牧瀬に聞いた。
「あまえ、何でこいつを担ぐ気になった?」
牧瀬は答えた。
「理由なんかねえし・・・」
それを聞いた伊崎は言う。
「そこの大将に伝えろ。」
「明日からダーツ教えてやるって。」
源治は拳に伊崎が加わったことを伝えた。
話を聞いて喜ぶ拳。
源治と話をしながら歩いていると、
ルカがストリートギャングに絡まれていた。
怪我が癒えない源治にカッコつけて、
源治とルカを逃がした拳。
しかし拳の腕っ節では逃がすのが精一杯。
結果ボコボコにされた・・・
通報で駆けつけた警察の黒岩。
黒岩は拳に言った。
「鈴蘭出身で、
チンピラやってるのはお前ぐらいだぞ。」
「ヤクザやっても半端かよ。」
「カラスの学校で何学んだんだよ。」
「中退の半端者じゃしゃあないか・・・」
拳には返す言葉が無かった・・・
そして拳は空を見上げて泣いた・・・
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源治一派は伊崎、牧瀬が加わったことで、
芹沢軍団にも勝る勢力となりつつあった。
仲間もどんどん増えていった。
その様子を見ていた、多摩雄は時生に言った。
「あいつら、見逃すわけにはいかねえぞ。」
時生は返す。
「俺が見逃してくれって言ったかよ?」
「鈴蘭のテッペン登ってから、
見る景色っていうのはよ・・・」
「さぞかし、壮大なんだろうな〜。」
「獲るぞテッペン。」
その話を横で聞いていた戸梶。
芹沢軍団一の切れ者が動き出した。
標的になったのは伊崎。
1人で歩く伊崎の前にたった戸梶が言う。
「確か戦争に綺麗ごとはいらねえ。」
「だったよな・・・」
そう言うと集団で襲いかかった。
それを知った源治は怒った。
しかし、やられた伊崎が源治を止めて言う。
「行くな・・・」
「まだ数が足んねえ。」
源治は振りほどいて歩き出した。
源治を止めて牧瀬も言った。
「伊崎の言うとおりだ。」
「今やっても負けは見えてる。」
源治は言い返す。
「そういう問題じゃねえだろ。」
牧瀬はその言葉に被せて言った。
「そういう問題なんだよ。」
「お前が負けたら、それで終わりなんだよ。」
「この戦争はそう言うところまで来てるんだよ。」
源治はその場で、天を見上げて呟いた。
「辛れえんだな〜。こういうのって。」
「てめえがやられたほうが、
よっぽどマシだな〜。」
手を出せずにイラつく源治。
そんな源治と牧瀬の前に、
たまたま多摩雄と時生が現れた。
源治は怒り時生に向かって行った。
それを止めて多摩雄は言う。
「お前の相手は俺だろ?」
源治は言った。
「伊崎やったのはてめえ等か?」
多摩雄は何も知らない様子だったが、
直ぐに気がついた多摩雄は、
源治に背を向けて歩き出す。
事情を知っていた、時生は多摩雄を止めた。
が・・・
そのまま痙攣を起こして倒れこむ時生。
病院へと運ばれた時生。
多摩雄は全て知っていた。
時生は脳に爆弾を抱えていた。
手術の成功率は30%
そう医者に言われている姿を、
病室の外から聞いていた多摩雄。
その時、時生が先生へ返した言葉。
「だったら手術はしねえ。」
「医者が手術して30%って言うなら、
俺は手術しねえで100%生きてやる。」
「俺は死なねえよ。」
そんな時生が倒れたことが、
多摩雄と源治を急がせた。
源治は無茶苦茶に暴れて、
倒した奴等をどんどん仲間にして行った。
力付くで勢力拡大を進める源治に牧瀬は
「そんな奴等集めても戦力にならねえよ。」
「いい加減にしろ!」
「お前、何のために暴れてるんだよ。」
「悪りいけど、今のお前には付いていけねえ。」
そう言って源治から離れていった。
悩んだ源治は拳に相談へと言った。
「一遍にいろんなことが
起きすぎて、もう分かんねえよ。」
「俺には、人を束ねる力はねえ。」
拳は一生懸命励ました。
「お前ならできるよ。」
「お前は俺にとって夢なんだよ。」
「一度言ったことはよ、最後までやろうぜ。」
源治は呟く。
「親父を越えるために鈴蘭に入ったんだよ。」
そして源治は自分の親がヤクザだと拳に伝えた。
敵対している組の親分だと知った拳。
しかも昔から慕っていた鈴蘭の先輩でもあった。
数日後、拳は組長に呼ばれていた。
「最近鈴蘭のガキとつるんでいるだって?」
「しかもそのガキ、
うちの連中とやり合ったらしいじゃねえか?」
そう言うと拳銃を拳に渡して言う。
「これでそのガキやって来い。」
拳は言う。
「その高校生・・・
実は劉生会の組長の倅なんです。」
「劉生会はうちと敵対している組織だし、
その倅のタマをとったってなったら・・・」
組長は知ってたと言うばかりに被せた。
「抗争になっちまう・・・」
抗争目的で、拳に吹っかけていたのだった。
一方源治は、拳と話したことで頭を冷やしていた。
源治は牧瀬の下へ向かい、そして牧瀬に言う。
「俺とタイマンはってくんねえ?」
「もし俺が勝ったら・・・」
「もう一回着いて来てくんねえかな?」
その言葉を聞いて牧瀬は笑った。
牧瀬と仲直りしできたことを拳に報告した源治。
「なんかグチャグチャしてたけどさ。」
「仲間って言葉の意味が、
俺にも少しわかってきた気がするよ。」
言葉を発することなく聞く拳。
そこに多摩雄が現れた。
「1つ言いてえことがあって来たんだ。」
「時生は俺のダチだ。」
「それをお前に言いにきた。」
そう言って立ち去る多摩雄。
2人のやり取りを聞いていた拳は話し出した。
「うらやましいな〜。」
「命一杯、真っ直ぐ生きるお前たちには、
何の混じりっけもねえ。」
「嬉しくて泣けてくるよ。」
「俺も鈴蘭でお前みたいな生き方できたら、
ちっとはマシな道歩けたかな〜?」
「おかげで目覚めたわ!」
そう言って拳に近づくと、
源治の腹に命一杯のパンチをした。
そして続けて話す拳。
「俺のパンチじゃ、お前には効かねえはな。」
「拳の重さは俺にも分かる。」
「受けてきた数が違うからな〜。」
「源治!」
「テッペン獲れよ!」
そう言って、その場を後にした拳。
拳はその足で、源治の親父の下へ向かった。
拳は、劉生会組長に言った。
「俺は滝谷さんに憧れてました。」
「あなたは俺を劉生会には入れてくれなかった。」
「だから敵対する矢崎組に入ったんです。」
「なんも分かっちゃ無かった・・・」
「うちの組長が源治のタマを狙ってます。」
源治の親父は拳に聞いた。
「なぜ俺に話した。」
拳は答えた。
「逃げっぱなしの人生です。」
「最後くらいは、
自分の気持ちに正直にけじめつけたいんです。」
そして手紙を出して頭を下げた。
「これを源治に渡してください。」
そして話を続けた拳。
「鈴蘭を制覇したら、
跡目を継がせるって言ったそうですね?」
「あいつがテッペン獲ったらどうするんですか?」
「あいつをこの世界に入れるんですか?」
源治の親父は答えた。
「鈴蘭を制覇できるような人間になったら、
きっとあいつは自分から跡目を降りる・・・」
その言葉に拳は安心した様子だった・・・
戸梶は影で動き続けていた。
多摩雄に黙って、源治潰しの策を練っていた。
その計画で利用したのは武装戦線。
武装戦線のトップ争いに協力するため、
源治一派を潰して欲しいと話を持ちかける。
火種となったルカだった。
ルカから連絡が入った源治。
「助けて、髑髏の革ジャン来た奴に捕まってる。」
「坂東って言ってる・・・」
それを聞いた源治は直ぐに向かった。
それを見て牧瀬は伊崎に聞いた。
「どうするんだよ?武装と戦争か?」
伊崎は答える。
「あいつが右向きゃ。
俺たちも右向くしかねえだろ。」
そう言って源治の後を追う。
埠頭にある倉庫に乗り込んだ源治たち。
武装相手の戦いが始まった・・・
戦いの途中で気づく源治。
「髑髏がねえ・・・」
倒した武装の革ジャンに髑髏マークが無かった。
根拠がない争いをしたと気がついたとき、
武装戦線の阪東が話し始めた。
「もういい。やめろ。」
源治は聞いた。
「やったの、お前等じゃねえのかよ?」
坂東は答えた。
「俺とお前が戦争して一番得するのは誰だ?」
「お前のおかげで、うちの連中はやる気満々だ。」
「それなりに詫びいれてもらわねえと、
納得できねえ。」
そう言って牧瀬を指差して続けた。
「お前の耳貰おうか?」
「どっちか片一方でいい。」
牧瀬は言い返した。
「くれてやろうじゃねえかよ。」
それを止めた源治。
「俺ので勘弁してくんねえかな?」
「両方ともくれてやるよ。」
そう言うとナイフを耳に当てた源治。
本気の源治に男気を見て、坂東は止めた。
「そんな汚い耳いらねえよ。」
「女さらって、クラブSの地下室に連れてこい。」
「それが奴等から最初に持ちかけられた計画だ。」
「いけよ!」
「女助けてから、ケリつけようぜ。」
クラブSでは、戸梶の元に多摩雄が入っていた。
「時生の手術、明日の5時に決まった。」
そう伝えた時、源治たちも入ってきて言う。
「女だせ。」
理解が出来ていない多摩雄。
多摩雄に気がつかれないように、
追い返そうとする戸梶。
その行動で気がついた多摩雄は、
ルカを返して、戸梶を殴った。
「何やったか分かってるのか?」
「こんなことするぐらいならな、
真っ向から突っ込んで
潰されたほうがマシだ。」
仲間割れする多摩雄たちを見ていた源治。
源治は多摩雄に言う。
「解決するには1つしかねえだろ?」
多摩雄も答えた。
「決着付けるときが来たみてえだな・・・」
源治は言った。
「明日5時。」
「場所は俺たちの鈴蘭。」
家に帰った源治は、親父から拳の手紙を貰った。
『お前なら俺の見れなかった
景色が必ず見れるはず。
跳べ
鴉のように高く羽ばたけ。』
手紙を読んだ源治に親父は言った。
「あいつは、
お前のために渡世の掟を破ったんだ。」
「お前を殺せと言う、親の命令に背いたんだ。」
それが何を意味しているか悟った源治。
直ぐに家を出ようとするが、親父は止めた。
「お前が行ってどうなる?」
「あいつも極道の端くれだ。」
「てめえのケツはてめえで拭くよ。」
「あいつの託した思いを踏んでやれ。」
翌日。天気は大雨。
傘を差し向かう戦いに望む源治。
その後に続けて歩く、
牧瀬・伊崎・忠太そして仲間たち。
同時期・・・
手術室に向かう時生。
手術室に運ばれる時生は言った。
「止めてください。」
「自分で歩いていいですか?」
そう言うと、歩いて手術室へと入っていった・・・
待ち構える、多摩雄・筒本・三上兄弟。
多摩雄は時生を思い言った。
「あいつと一緒に闘うんだ・・・」
自分の行動でギクシャクしていた戸梶。
そんな戸梶に多摩雄は言った。
「勝って時生に自慢してやろうぜ。」
そして、
GPS30人と芹沢軍団70人の戦いが始まった・・・
圧倒的な人数の差に押される源治たち。
そこに突如として現れた武装戦線。
武装の坂東は言う。
「狙うは芹沢の首だ。」
これで人数は互角となった・・・
牧瀬・忠太VS三上兄弟
伊崎VS戸梶
坂東VS筒元
互角の戦いが続くが、
紙一重で倒し続けるGPS。
そして・・・
雨がやむ頃、最終の戦いが始まった。
源治と多摩雄の戦い。
互角で殴りあう二人。
そのころ拳も闘っていた。
親分に拳銃を返して言う。
「俺には出来ません。」
親分は返した。
「ただじゃすまねえぞ。」
そう言うと子分に車を出すように伝えた。
そして埠頭につれてこられた拳。
親父は自分のジャケットを脱いで拳に渡す。
「欲しがってたなこれ?」
「やるよ。持っていけ。」
「ヤクザになったの後悔してるか?」
拳は答えた。
「してません。」
そして親分は言った。
「悪く思うなよ。」
「下の者に示しが付かない。」
そう言うと拳を座らせて、
背後から拳銃を向けた。
拳は泣いていた・・・
そして、引き金が引かれる瞬間に拳は叫んだ。
「源治〜!」
「跳べ〜!」
お互い互角で、フラフラで殴りあった源治と多摩雄。
最後に立ち上がったのは源治だった・・・
撃たれて、海へ落とされた拳。
海に沈みながら拳は思っていた。
『源治。』
『クソったれ。』
『お前と出会わなければ・・・』
『俺の人生は・・・』
『もっとクソったれだった。』
『ありがとよ。』
仲間に担ぎおこされた多摩雄。
多摩雄は呟くように言う。
「時生は・・・」
「そうか・・・」
「時生は勝ちやがった・・・」
海に沈むはずの拳は・・・
途中で意識が戻り、急いで海から這い上がった。
そして親分に着せてもらったジャケットを脱ぎ、
背中を確認すると防弾ジョッキとなっていた。
車で去っていく、親分に頭を下げた拳。
「ありがとうございました。」
「源治〜。」
「俺生きてるぞ〜!」
それから数日後・・・
多摩雄と、退院した時生が見守る中で、
源治はリンダマンを呼び出していた。
「悪りいな・・・」
「お前を倒さないと、
鈴蘭のテッペン獲れねえんだ。」
リンダマンは言った。
「鈴蘭にテッペンはない。」
「あんたが芹沢を倒したように、
新しい奴が次から次へと出てくる。」
「それが鈴蘭だ。」
「その相手をしているうちに、
卒業ってことになる。」
「制覇は夢となって消える。」
源治は答えた。
「それはどうかな〜?」
リンダマンは言う。
「容赦しねえぞ。」
そして、拳を交わすのであった・・・
(終わり)
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2016年05月21日
【海街diary】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【海街diary】
【出演者】
香田幸(長女):綾瀬はるか
香田佳乃(次女):長澤まさみ
香田千佳(三女):夏帆
浅野すず(異母妹):広瀬すず
佐々木都(3姉妹の母):大竹しのぶ
菊池史代(叔母さん):樹木希林
二ノ宮さち子(海猫食堂店主):風吹ジュン
福田仙一(山猫亭店主):リリー・フランキー
椎名和也(幸の彼氏):堤真一
藤井朋章(佳乃の彼氏):坂口健太郎
坂下美海(佳乃の上司):加瀬亮
浜田三蔵(千佳の彼氏):池田貴史
尾崎風太(すずの同級生):前田旺志郎
井上泰之(湘南オクトパス監督):鈴木亮平
緒方将志(湘南オクトパス選手):関ファイト
金子美帆(湘南オクトパス選手):三上紗弥
高野日出子(看護師長):キムラ緑子
浅野陽子(すずの義母):中村優子
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【感想】
さすがアカデミー賞優秀作品。
さすが是枝監督。
世界観が良かったです。
何かジワジワ来る映画ですよね〜
泣けるわけでも無いんですが、
心温まる日常を描いている映画なんです。
だから共感もできる話ですし、
何度か見て更に見えてくるものもあるんだと思います。
私の場合、一度映画を見てから、
記事にするために2回目を見ます。
そして、文章を見直して記事にする。
つまり短期間に3回見ているようなものです。
この映画は見れば見るだけ変わる。
深い映画だと思いました。
それにしても、すずちゃんは可愛い・・・
【あらすじ】(ネタバレあり)
銀行員の香田佳乃は彼氏である藤井の家に居た。
携帯がなり、直ぐに身支度をした佳乃は、
藤井に数万円を渡して家を出ようとする。
それを見て藤井は言った。
「バイト代でたらすぐアレするからさ・・・」
佳乃は藤井にキスしてから返した。
「いつでもいいよ。」
朝帰りした佳乃。
姉の幸と妹の千佳と3人で住む家に帰った。
その日は山形にある温泉地に葬式に行く予定だった。
山形に住んでいた疎遠の父の葬儀。
父は母と離婚して、山形で再婚した。
しかしその家庭も上手くいかずに離婚し、
今の土地で再々婚したのであった。
その父が亡くなったと連絡が入り、
仕事のある姉の代わりに、佳乃と千佳が
2人で行くことになったのだった。
家を出て15年になり、それきり会ってない父。
父は再婚相手との間に娘がいて、
連れ子同士で3度目の結婚をしていた。
山形の向かう電車の中で、佳乃は言った。
「何か気が重い。」
「父親って言っても15年もあってないし。」
千佳は答えた。
「私よく覚えてないからな〜。」
そうして山形の駅に着いた2人。
妹にあたる浅野すずが向かえにきていた。
今夜泊まる温泉旅館まで案内してくれた、すず。
とてもしっかりしており、旅館に着くと、
「後で母がご挨拶に伺うと思いますから。」
と言って、2人に頭を下げて帰って行った。
翌日の葬式。
泣き続ける父の再婚相手の陽子。
その時、来られないはずの幸が葬儀場に来た。
到着すると直ぐに、すずに挨拶をした幸。
「始めまして、香田幸です。」
そして再婚相手の陽子にも挨拶をした。
「父が大変お世話になりました。」
挨拶も程々に、喪主の挨拶の話になった。
泣き続ける陽子は、
喪主の挨拶をすずにさせようと話を持ち出す。
それを聞いた幸は口を挟んだ。
「それはいけません。」
「これは大人の仕事です。」
「もしアレでしたら私がやりましょうか?」
それには納得せず渋々と、
自分が挨拶をすると陽子は言った。
葬儀が終わるり火葬場へ行くと、
煙突から上がる煙を見て姉妹3人で話をした。
千佳は言う。
「父さんって結構幸せだったんだね。」
「沢山お別れに来てくれて。」
それを聞いた佳乃も続けた。
「優しい人だったって皆言ってた。」
総括するように口を開いた幸。
「優しくて、ダメな人だったのよ。」
「友達の保証人になって借金背負って。」
「女の人に同情して、
直ぐどうにかなっちゃうなんて・・・」
その時、すずが話しかけてきた。
「渡したいものがあって。」
「これお父さんの机の中に入っていて。」
それは3姉妹の写真であった。
その写真を見て思い出話をする3人。
3人を見て、唯一の身寄りを亡くしたすずは俯いた。
それに気付いた幸は、すずに声をかけた。
「時間ある?」
「この町で一番好きな場所ってどこ?」
すずはその町で一番好きな場所へと、
3姉妹を連れて行った。
道中話をする佳乃と千佳。
「大丈夫かなあの子?」
「ここでやっていけるのかな?と思って。」
「あの子と陽子さんは何の関係も無いんだもんね。」
連れて行ってもらった先は、
山道を抜けた高台にある見晴らしのいい場所。
「お父さんと良く一緒に着たんです。」
そう言ったすずに、幸は言う。
「すずちゃん。あなたが、
お父さんのことお世話してくれたんだよね。」
静かに頷いたすず。
「お父さんきっと喜んだと思う。」
「本当にありがとう。」
佳乃も千佳も続けてお礼を言った。
そのまますずの見送りで駅に行った3人。
帰りの電車を待つ間、幸はすずに聞いた。
「この町好き?」
スズは答えた。
「好きって言うか・・・
こっちに来てあまり経ってないんで。」
「でもお父さんが、何でこの町に
住みたいって思ったのか分かります。」
そうしていると、電車がホームに入ってきた。
電車に乗り込んだ3姉妹。
見送るすずに、幸は言った。
「すずちゃん。鎌倉に来ない?」
「一緒に暮らさない?4人で・・・」
そう言って、佳乃と千佳の顔を見た幸。
佳乃と千佳も一瞬驚いたが、
直ぐにすずを見て微笑んだ。
「すぐアレしなくていいから考えてみて。」
すずは俯いて考えているようだったが、
直ぐに顔を上げて答えた。
「行きます。」
それから数日後。すずは鎌倉に引っ越してきた。
「今日からお世話になります。」
千佳が部屋を案内して、
幸と佳乃は昼食の準備をしようとした。
すずは気を使い幸に言った。
「私手伝います。」
幸は返した。
「すずはいいから、荷物の整理しないさい。」
「もう妹なんだから、ちゃんは付けないわよ。」
笑顔で頭を下げたすず。
準備を終えると、千佳に呼ばれたすず。
祖父と祖母の写真を見せて仏壇に手を合わした。
そして昼食。
引越しの手伝いをしてくれた、
千佳のバイト先の店長浜田も一緒に蕎麦を食べた。
千佳と浜田は、地元にある少年サッカーチーム
「湘南オクトパス」のサポーター。
サッカーをしていたと言うすずに、
湘南オクトパスの入団テストを進めた。
翌日すずは転校先の中学校へ行った。
直ぐにできた友達もサッカーチーム所属で、
入団テストを受けることを決めた。
一方で家に遊びに来た叔母の史代に説教される幸。
「犬や猫じゃないのよ。」
「お母さんに相談したの?」
「子供育てるって大変よ。」
「あの子は妹は妹だけど、
あんた達の家庭を壊した人の
娘さんなんだからね〜。」
幸は答えた。
「関係ないでしょ。」
「あの子はまだ、産まれても無かったんだから。」
史代は嘆くように言った。
「これでまた嫁に行くのが遅れるわ。」
数日後。
すずは入団テストに見事合格していた。
そしてクラブチームのメンバーと、
サポーターの千佳と近くの定職屋「海猫食堂」にいた。
その定職屋は幼い頃からあり、
3姉妹もお世話になっていた。
「これ入団祝い。」
そう言って、おまけでおかずを出して店主の二ノ宮。
それを見ていた知人の福田に二ノ宮は言った。
「幸っちゃんとこの・・・」
「どことなく似ているわよね〜」
幸は病院勤務していた。
医者であるの椎名と付き合っていて、
葬儀に行くように言ったのも椎名であった。
「やっぱり行って良かった。葬式。」
「でなきゃ妹にも会えなかった。」
「ありがとう。」
そう素直にお礼を言った幸。
佳乃は藤井と会っていた。
素直な妹と、すずの話をする佳乃に、
一般的な指摘をする藤井。
「大変じゃない?」
「いわゆる腹違いっていう奴でしょ?」
そして、遺産も貰わずに引き取ったことを指摘した。
佳乃は何も言わずに笑っていたが、
顔は若干引きつっていた・・・
そんな幸と佳乃は、仕事から帰ってくると、
直ぐに喧嘩を始める。
心配するすずを裏目に、
幸から逃げて風呂に入る佳乃。
しかし風呂場にはカマドウマがいて、
それを見た佳乃は慌てて叫んだ。
「お姉ちゃ〜ん。」
ある日家にいたすずは、
千佳に自家製梅酒を見せてもらった。
「こっちが去年ので、これが一昨年の。」
「それで、これがおばあちゃんが漬けた10年物。」
いままで体験したこと無い、新鮮な生活をするすず。
朝は姉妹四人で慌しい朝食。
朝から喧嘩する幸と佳乃。
すずも慣れてきて、そんな日常を笑って見ていた。
朝は中学に行くすずと、出勤するは佳乃は、
駅に向かって猛ダッシュ。
「佳乃さん間に合います?」
そんなすずに対して佳乃は言う。
「すずさ〜。そろそろ、さん止めない。」
「よっちゃんでいいよ。」
そう言うとすずをからかって、
彼氏を作るように進めだす佳乃。
「世界が変わって見えるよ〜」
そんな会話をしていた佳乃だったが、
その日の勤務中に藤井が銀行に来た。
明らかに悪そうな男に連れられて来て、
こわばった顔で通帳の解約をした藤井。
佳乃は休憩中に、携帯に残された留守電を聞いた。
『もう少し、まともな人見つけてください。』
そのころ病院では幸が、
待受け室で診察を待つ二ノ宮を見かけた。
体調が悪いという二ノ宮を心配するが、
話を変えて、すずの話をする二ノ宮。
「すっかり店の人気者よ。」
その夜の佳乃は荒れて酔っ払っていた。
酔っ払ってコタツで寝る佳乃と、
一緒に寝ている千佳を尻目に勉強をしていたすず。
家に帰って来た幸はすずに聞いた。
「勉強できなかったんじゃない?」
「どうせまた振られたんでしょ?」
「懲りないのよ。何回降られても。」
そう言うとすずに代わり2人の面倒を見る幸。
続けてスズに言った。
「すず。困ったことがあったら何でも言ってね。」
すずは答えた。
「はい。」
「ありがとうございます。」
数日後。
チームにも馴染んだすず。
試合にも出て同級生たちにも活気が出た。
一方で幸は、末期患者を受け入れる、
ターミナル病棟への異動の相談を上司にされていた。
悩んだ幸は椎名の家に行き相談をした。
その話が、どれだけ過酷なことが分かる椎名は言う。
「亡くなるって言う患者さんに向き合うのはきついよ。」
「よく考えて決めたほうがいいよ。」
そう言うと、話を変えて言った。
「明日なんだけど・・・」
「向こうのお母さんから連絡があって、
彼女不安定になっているらしいんだよ。」
「ちょっと様子見てくるよ・・・」
椎名には奥さんがいた。
単身で鎌倉で働いており、幸とは不倫関係であった。
素直に受け入れた幸ではあったが、
落ち込みながら家に帰った。
すると・・・
すずが梅酒を飲んで倒れていた。
酔っ払ったすずは言う。
「陽子さんなんて大嫌い。」
「お父さんのバ〜カ。」
普段は冷静で、自分のことを話さないすずの変貌に、
介抱していた佳乃は言った。
「あの子やっぱり煮詰まってたのね。」
すずの姿を見た幸は佳乃に言った。
「乱れ方があんたそっくり。」
その後布団にすずを寝せると、
3人はすずの顔を眺めていた。
「こんな所に、ほくろがある。」
「まつげ長いね〜。」
「耳の形お姉ちゃんと似てる。」
そんな話をしていると、すずは目を覚ました。
保護者としてすずを怒る幸。
すずは言った。
「だって・・・」
「自分家で作った梅酒飲んでみたかったんだもん。」
それを聞いた幸は答えた。
「分かった。」
「来年実がなったら、
すず用にアルコール抜きのやつ作ってあげる。」
そう言うと、庭にある梅ノ木を4人で眺めた。
「早く取りたいな〜。」
そう言うすずに、毛虫も付くと話す千佳。
そんな2人のやり取りを聞き、幸は言う。
「生きているものは皆、手間がかかる。」
幸の言葉を指摘した佳乃。
「それおばあちゃんの口癖。」
数日後の休日。
すずは同級生の家のシラス漁の手伝いをした。
帰りにお土産でシラスを貰って帰るすず。
その日の昼食は、生シラス丼であった。
佳乃は仕事に生きると言い出して、
融資課課長補佐となったことを自慢するが、
振られて逃げていると指摘する幸。
ご飯前に喧嘩を始める2人を尻目に、
すずと千佳は
「いただきま〜す。」
そう言って生シラス丼を口にした。
喧嘩を中断して、すずが一口食べるのを見た3人。
「どう?」
「生シラスなんて他では食べれないからね〜。」
「初めて?」
すずは答えた。
「はい。」
昼食を食べ終わると、4人は障子の張替えをした。
張替えが終わると、
海沿いを歩いて4人揃って海猫食堂へと行った。
「みんな揃ってなんて初めてじゃない?」
そう言って温かく出迎えてくれた二ノ宮。
幼い頃の3人の話を始める二ノ宮。
店でお漏らしした千佳の話や、
テーブルに貝殻を並べた吉野の話等。
4人は温かい時間を過ごした。
しばらくして、新学期となった。
すずと尾崎が付き合っているという噂が立つ。
そのころ佳乃は課長補佐として、
融資の外回りの手伝いをしていた。
課長の坂下はとても優しく、
親身になって顧客に接する人。
融資先への外回りで、坂下と佳乃が向った先は、
海猫食堂の二ノ宮のところだった。
家を出て行った弟が、母の遺産を半分渡すか、
渡せないなら店を売れといってきたという相談。
二ノ宮に変わり、話をする福田。
「何とかここだけは残せんかね。」
「おばちゃんにしたら、
この店はたった一つの宝物やけん。」
それに対しても真摯な対応をする坂下。
「面倒臭いことをするのが私たちの仕事ですから。」
海猫食堂の帰り道。
昔勤めていた都市銀行を辞めた理由を、
坂下に聞いた佳乃。
坂下は答えた。
「なんか・・」
「自分の居場所はここじゃないって、
突然気付いたって言うか・・・」
「そんな事ってない?」
数日後。
すずは福田の店である「山猫亭」で、
シラストーストを食べていた。
「この店って古いんですか?」
「シラストーストって、
その頃からあるんですか?」
そう聞くすずに対して、
20年前にお客が食べたいと言って
商品化されたと教えてくれた。
その帰り道にすずは尾崎に言った。
「うちのお父さんさ〜、
よくあの店行ってたのかもしれない。」
「お父さんと2人だった頃、よく作ってくれたの。」
尾崎は言う。
「お姉ちゃんたちに聞いてみたら?」
すずは答えた。
「お姉ちゃんたちには話しづらいんだよね。」
「お父さんのこと・・・」
そして散った桜の花びらを手にとったすず。
「お父さんの病気が分かったときね。」
「もう今年の桜は見られないかもって言われたの。」
「でもお父さん凄い頑張って、
病院でお花見もしたんだよ。」
尾崎は言った。
「浅野。時間ある?」
尾崎は自転車の後ろにすずを乗せて走った。
それは桜並木の道。
満開の桜がトンネルのように見えた。
すずは風を受けながら、
桜を見上げて手を延ばした・・・
時が経ち梅の実が成った頃。
4人で庭に成る梅の実を収穫した。
とても大量に取れた梅の実を、
幸が近所に渡す分を分けていた。
すずに説明するように梅の木の話をした3人。
「おばあちゃんが生きていた頃は、
もっと取れていたんだよ。」
「梅の木も、もう年だからね〜。」
「お母さんが生まれた年に、
おじいちゃんが植えたんだから、もう55か〜。」
その時、史代から電話が入った。
おばあちゃんの法要に母が来るという連絡だった。
母と会うことに対して懸念を示す幸。
それに気を使ってすずは聞いた。
「私出ていいのかな?」
幸は答えた。
「すずのせいじゃない。」
「私たちに合わせる顔がないだけだよ。」
それでもすずが一番気後れしていた。
法要当日。
数年ぶりに再開した母。
佳乃と千佳は喜んでいた。
しかし幸は違っていた。
「今日は、わざわざどうも。」
他人事のように挨拶すると、母にすずを紹介した。
母はすずに聞いた。
「3人とうまくいってる?」
「幸、性格きついでしょ?」
「私の分もしっかりしちゃったの。」
法要が終わり家に帰って来た4姉妹。
もちろん母と史代も一緒に家に来た。
休むまもなく母は口を開いた。
「おばさんも居るし丁度いいわ。」
「この家なんだけどね、
思い切って処分したらどうかと思って。」
「庭の手入れも大変だろうし・・・」
それを聞いて幸は怒り出した。
「勝手なこと言わないでよ。」
「お母さんにこの家のこと、
どうこうする権利なんてないでしょ?」
「庭の手入れなんか、
お母さん一度もしたこと無いじゃない。」
「管理って・・・」
「この家捨てて出て行ったのに何で分かるの?」
それに対して母も怒り出して言う。
「どうしてあんたはいつもそんな言い方するのよ。」
「悪かったって思ってるわよ。」
「でも元はといえば、
お父さんが女の人作ったのが原因じゃない。」
それに対して言い返す幸。
「お母さんはいつだった人のせいじゃない。」
「私たちが居るから別れられない。」
「おばあちゃんが言ったから、
あんたたちは連れて行けない。」
「いい年して子供みたいなこと言わないでよ。」
史代が止めに入って口喧嘩は終わった。
母と史代が帰った後も、空気は重かった。
その中で口を開いたのは佳乃だった。
「いつまでも皆でここで暮らすわけじゃないでしょ?」
「それが幸せ?」
よれに対して幸は返した。
「私には責任があるもん。」
「ここを守る。」
佳乃は言い返す。
「誰も頼んでないよそんなこと。」
「何、ムキになってるの?」
「お母さんに、
ちゃんとやってるところ見せたいだけでしょ?」
「もうほとんど意地じゃん。」
「すず引き取って、何かあてつけみたいでさ。」
「お姉ちゃんはそれで満足かもしれないけど、
かえってかわいそうじゃん。」
「今日みたいな目にあわせたら・・・」
千佳が間に入って姉妹喧嘩は収まった。
その日の夕食は幸とすずが行い、
買出しに佳乃と千佳が出かけた。
買い物をする佳乃は千佳に話した。
「後悔してなきゃいいけど。」
「ここに来たことをさ〜。」
「背負うんだよなあいつ。」
「幸姉に似て・・・」
一方料理をする幸とすず。
幸は母に最後に教えてもらった料理を作った。
するとすずが口を開いた。
「ごめんなさい。」
「うちのお母さんのこと。」
「奥さんの居る人を好きになるなんて、
お母さん良くないよね。」
そんなすずに幸は言った。
「ごめんね。」
「私たちはすずを傷つけちゃったんだね。」
「でもね。誰のせいでもないんだよ。」
次の日。
夜勤出勤のため家に居た幸。
そこに母がやって来た。
「昨日あんなことになったから、
渡しそびれちゃった。」
そう言うと4人へのお土産を渡した。
墓参りをして帰ると言い、直ぐに家を出た母。
「ちょっと待って、私も行くわ。」
そう言うと幸も一緒に墓参りに行った。
あの後に史代に怒られたと話した母。
それ以上、昨日の話は無かった。
墓参りを追え駅に向かう幸と母。
母は幸に聞いた。
「まだ梅酒作っているんだって?」
「毎年仕込むの手伝わされて大変だったけど、
アレが終わると、
あ〜夏が来るな〜って感じだった。」
それを聞いた幸は言った。
「少し持っていく?」
「駅で待ってて。直ぐに獲ってくるから。」
そう言って家に梅酒を取りに戻り、
梅酒をビンに移した。
駅で待つ母に梅酒を渡して言う。
「こっちが今年ので、
こっちがおばあちゃんの。」
母は祖母の梅酒を見て聞いた。
「まだあったの?」
幸は答えた。
「これで最後。」
母は懐かしむように梅酒を見て言う。
「懐かしい。いい色。」
幸は母に言う。
「たまには遊びに来たら?」
母も答えた。
「うん。今度家にも遊びに来て頂戴。」
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数日後に家に居たすずと千佳。
すずは千佳に本当のことを話した。
「千佳ちゃん。私嘘をついてた。」
「シラス丼・・・」
「本当は仙台にいた頃、
よくお父さんが作ってくれてたの。」
千佳は答えた。
「そっか。」
「じゃああれ、お父さんの味なんだ。」
「私、お父さんのことあまり覚えてないんだよね。」
「すずのほうがいっぱい思い出あると思うよ。」
「いつか聞かせてね。」
「お父さんのこと・・・」
千佳の対応に笑顔になったすず。
「釣が好きだった。」
そう言って、初めてお父さんの話をした。
佳乃は海猫食堂のアドバイスに赴いていた。
今後について指南する課長と佳乃。
話の途中で謝りだした二ノ宮。
「この店、今月でいっぱいで閉めるの。」
「体の調子が良くなくて。」
治療に専念するのかを聞いた坂下。
二ノ宮は答えた。
「治療はもうしないの。」
「市民病院に新しく、
ターミナルケアの病棟ができるでしょ?」
「そこ予約しているの。」
その帰り道、坂下に話した佳乃。
「すっごく腹立つな。神様ってやつに。」
それに対して坂下は答えた。
「さてと・・・」
「新しいプレゼン考えよう。」
「遺言作るのオススメしようかと思って。」
「あの弟さんじゃ、
葬式の費用も出してくれそうにないし・・・」
「神様が考えてくれないなら、
こっちで考えるしかないでしょ。」
幸は異動の話を悩んでいた。
そんな時、病院で亡くなった人に対して、
丁寧なケアをする同僚を見て、
こんな接し方があるのかと感心した。
その話を椎名にしたサチ。
幸の気持ち受け止めた後に聞き返した。
「俺アメリカ行くことになったんだ。」
「一緒に来てくれない?」
「女房とは別れる。」
「ずっと考えてたんだ。」
その夜。
幸は大量の梨を買って家に帰った。
それを見て直ぐに失恋と気付いた佳乃。
幸は彼氏についてのことを佳乃と千佳に話した。
それを聞いた佳乃は幸に皮肉を言った。
「お父さんと一緒じゃん。」
「弱くてダメな人じゃん。」
その言葉で喧嘩を始める2人。
話を聞いていたすずは、
幸が部屋に帰ったのを見て吉野に言った。
「幸ねえ、傷つけたかもしれない。」
「奥さんが居る人好きになるなんて良くないって、
ひどいこと言っちゃった。」
「3人で話したい幸ねえのこと。」
佳乃は言った。
「面倒臭いな〜。」
「千佳梅酒。ロックで。」
3人で話した後、佳乃は幸の部屋へ行った。
「お姉ちゃんさ〜。この家なら大丈夫だよ。」
「私と千佳で、すずの面倒くらい見られるし。」
「もう昔とは違うんだから。」
「そんなんだと、
嫁に行く前にお母さんになっちゃうよ。」
幸は佳乃の優しさを感じながら答えた。
「そういうことはさ〜。」
「シラフの時に言いなさいよ。」
佳乃は照れながら返した。
「こんなの酒飲まないで言えるはず無いじゃない。」
鎌倉の花火大会の日。
幸は自分の浴衣を、すずに着ていくように進めた。
千佳はそれを見て言う。
「風太に見せてあげなよ。」
茶化すように佳乃は言う。
「かっこいいの?」
茶化されてすずは照れて言う。
「ユニホームでいいよ。」
「今度にする。」
結局浴衣を着て花火大会に出かけたすず。
すずを見送った後、幸は椎名に会った。
「ごめん。私一緒に行けないや。」
「ターミナルケアをね・・・」
「ちゃんとやってみようかと思って。」
「私たちに合わせる顔無いって
言ってたんだって、お父さん・・・」
「だからその分、
すずが1人で抱え込んじゃって。」
「そばにいて上げられたら何か出来たかもなって。」
「お父さんにも、すずにも・・・」
「あの子。いろんなことがあって、
子供自体を奪われちゃったのよ。」
椎名は答えた。
「それは幸ちゃんも同じだろ。」
「幸ちゃんも奪われちゃったんじゃない?」
「周りの大人に・・・」
「ゆっくり取り戻してください。」
「俺はそうしてあげられなかった。」
そう言って笑顔で手を振り帰って行った椎名。
花火大会の前に、海猫食堂でご飯を食べたすず。
食べ終わり店を出ようとした時、
すずに二ノ宮は話し掛けた。
「これ持っていって。」
「いろいろお世話になりましたって・・・」
そう言い、佳乃の好きなアジの南蛮漬けを渡した。
そして続けて言った。
「おばちゃん。」
「あなたのお父さんとお母さんが羨ましいわ。」
「あなたみたいな宝物、この世に残せたんだ物。」
すずは答えた。
「宝物なんかじゃないですよ。私。」
二ノ宮は言う。
「ダメよ。そんな事言ったらバチが当たるわよ。」
そう言うと、皆を送り出した二ノ宮。
友人の親に船を出してもらい、
船の上から花火を見たすず。
その頃、佳乃は銀行の屋上で同僚と花火を見ていた。
千佳はバイト先で浜田と花火の音を聞いていた。
花火大会の帰り道。
すずは尾崎に聞いた。
「私ここにいていいのかな?」
「仙台にいるときも、
山形に居るときもずっと思ってた。」
「私が居るだけで、傷ついている人がいる。」
「それが時々苦しくなるんだよね。」
尾崎は励まそうと自分の話をした。
3人兄弟の末っ子で、女の子が欲しかった両親。
おかげで写真が少ないと話した。
それを聞いて笑顔を取り戻したすず。
別れ際で尾崎は言った。
「あさの・・・」
「その浴衣結構似合ってるよ。」
家に帰ったすず。
玄関で3人の姉が出迎えてくれた。
お姉ちゃんたちは浴衣を着ていた。
「花火やろうと思って・・・」
そして庭で4人で花火をした。
すずの顔は完全に笑顔になっていた。
夏になり、すずは姉妹として馴染んでいた。
風呂上りに裸で扇風機を浴びるすず。
「こら!人が着たらどうするの?」
そう言って幸は笑いながら怒る。
着替えたすずは、幸が作ってくれた、
アルコール抜きの梅酒を割っていた。
「お姉ちゃん。甘め酸っぱめ?」
「濃いめ?薄め?」
酸っぱめの梅酒を飲む幸。
それを飲ませてもらい酸っぱいと言ったすずに、
「子供だな。」
と言った幸。
すかさず言い返すすず。
「幸ねえに比べればね。」
梅酒を飲み終わると、
家にある柱を2人で見た。
3姉妹の成長が記された柱。
すずも幸に測ってもらい身長を柱に記した。
そして2人で散歩した。
幸はすずを、思い出の場所へ連れて行った。
そこの景色を見てすずは言う。
「本当だ。あの場所に似てるね。」
それは山形で見せた、思い出の景色に似ていた。
幸は思い出話をすずにした。
「小さい頃にお父さんとよく来たんだ。」
「お父さんがいなく成ったら、1人で・・・」
そう言うと幸は急に大声で叫んだ。
「お父さんの馬鹿〜。」
それを聞いて、すずも真似した。
「お母さんの馬鹿〜。」
初めて本音を大声言った、すず。
今までの辛さが込みあがって来て、
更なる本音を呟いた。
「もっと一緒に痛かったのに・・・」
それを聞いて幸はすずを抱きしめた。
「お母さんのこと、話していいんだよ。」
「すずは、ここに居ていいんだよ。」
「ずっと・・・」
すずは泣きながら答えた。
「ここにいたい。ずっと・・・」
それから少しして、二ノ宮は亡くなった。
葬儀に参列した4人。
4人をみて福田は言う。
「いい葬式や。」
「いい人生やったね。」
「あんたがそばにいてくれて、
おばあちゃん安心して逝けたんやない。」
幸は答えた。
「写真の二ノ宮さん。いい顔してましたね。」
佳乃は聞いた。
「あれ福田さんが撮ったんでしょ?」
福田は答える。
「あれ最後のデートのときの・・・」
千佳は聞いた。
「あの桜そこの山道ですよね?」
福田は思い出したように話した。
「入院しとった時もよう言いよったね。」
「あの時の桜は本当綺麗かった〜って。」
「もう直ぐ死ぬって分かっとても、綺麗なものを、
ちゃんと綺麗って思えるのが嬉しいって・・・」
頭を下げて帰ろうとする4人。
福田はすずに言った。
「すずちゃん。」
「お父さんの話聞きたくなったら、こそっとおいで。」
海辺を歩き家への帰り道。
すずが口を開いた。
「お父さんも同じこと言ってた。」
「亡くなる前に桜のこと。」
「まだ綺麗なものを、
綺麗って思えるのは嬉しいって。」
佳乃は言った。
「いい人生だったんだね。」
幸は皆に聞いた。
「最後に何を思い出せるかな。」
佳乃は答えた。
「私は㊚か酒だよね〜。」
それを聞いて幸は言う。
「何だろ?縁側かな家の・・・」
「すずは?」
その質問にすずは答えた。
「いっぱいあるよ。」
「いっぱい出来た。」
その答えに佳乃は返す。
「まだ子供のくせに!」
すかさず、すずは言い返した。
「お姉ちゃんたちに比べらたらね。」
佳乃は笑いながら言った。
「50年も経てば、
みんな同じおばあちゃんになるんだからね。」
そのやりとりを見て幸は言った。
「お父さん・・・」
「本当にダメだったけど、
優しい人だったのかもね。」
「だって、こんな妹を残してくれたんだから。」
それを聞いた佳乃と千佳は頷いた。
(終わり)
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【海街diary】
【出演者】
香田幸(長女):綾瀬はるか
香田佳乃(次女):長澤まさみ
香田千佳(三女):夏帆
浅野すず(異母妹):広瀬すず
佐々木都(3姉妹の母):大竹しのぶ
菊池史代(叔母さん):樹木希林
二ノ宮さち子(海猫食堂店主):風吹ジュン
福田仙一(山猫亭店主):リリー・フランキー
椎名和也(幸の彼氏):堤真一
藤井朋章(佳乃の彼氏):坂口健太郎
坂下美海(佳乃の上司):加瀬亮
浜田三蔵(千佳の彼氏):池田貴史
尾崎風太(すずの同級生):前田旺志郎
井上泰之(湘南オクトパス監督):鈴木亮平
緒方将志(湘南オクトパス選手):関ファイト
金子美帆(湘南オクトパス選手):三上紗弥
高野日出子(看護師長):キムラ緑子
浅野陽子(すずの義母):中村優子
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【感想】
さすがアカデミー賞優秀作品。
さすが是枝監督。
世界観が良かったです。
何かジワジワ来る映画ですよね〜
泣けるわけでも無いんですが、
心温まる日常を描いている映画なんです。
だから共感もできる話ですし、
何度か見て更に見えてくるものもあるんだと思います。
私の場合、一度映画を見てから、
記事にするために2回目を見ます。
そして、文章を見直して記事にする。
つまり短期間に3回見ているようなものです。
この映画は見れば見るだけ変わる。
深い映画だと思いました。
それにしても、すずちゃんは可愛い・・・
【あらすじ】(ネタバレあり)
銀行員の香田佳乃は彼氏である藤井の家に居た。
携帯がなり、直ぐに身支度をした佳乃は、
藤井に数万円を渡して家を出ようとする。
それを見て藤井は言った。
「バイト代でたらすぐアレするからさ・・・」
佳乃は藤井にキスしてから返した。
「いつでもいいよ。」
朝帰りした佳乃。
姉の幸と妹の千佳と3人で住む家に帰った。
その日は山形にある温泉地に葬式に行く予定だった。
山形に住んでいた疎遠の父の葬儀。
父は母と離婚して、山形で再婚した。
しかしその家庭も上手くいかずに離婚し、
今の土地で再々婚したのであった。
その父が亡くなったと連絡が入り、
仕事のある姉の代わりに、佳乃と千佳が
2人で行くことになったのだった。
家を出て15年になり、それきり会ってない父。
父は再婚相手との間に娘がいて、
連れ子同士で3度目の結婚をしていた。
山形の向かう電車の中で、佳乃は言った。
「何か気が重い。」
「父親って言っても15年もあってないし。」
千佳は答えた。
「私よく覚えてないからな〜。」
そうして山形の駅に着いた2人。
妹にあたる浅野すずが向かえにきていた。
今夜泊まる温泉旅館まで案内してくれた、すず。
とてもしっかりしており、旅館に着くと、
「後で母がご挨拶に伺うと思いますから。」
と言って、2人に頭を下げて帰って行った。
翌日の葬式。
泣き続ける父の再婚相手の陽子。
その時、来られないはずの幸が葬儀場に来た。
到着すると直ぐに、すずに挨拶をした幸。
「始めまして、香田幸です。」
そして再婚相手の陽子にも挨拶をした。
「父が大変お世話になりました。」
挨拶も程々に、喪主の挨拶の話になった。
泣き続ける陽子は、
喪主の挨拶をすずにさせようと話を持ち出す。
それを聞いた幸は口を挟んだ。
「それはいけません。」
「これは大人の仕事です。」
「もしアレでしたら私がやりましょうか?」
それには納得せず渋々と、
自分が挨拶をすると陽子は言った。
葬儀が終わるり火葬場へ行くと、
煙突から上がる煙を見て姉妹3人で話をした。
千佳は言う。
「父さんって結構幸せだったんだね。」
「沢山お別れに来てくれて。」
それを聞いた佳乃も続けた。
「優しい人だったって皆言ってた。」
総括するように口を開いた幸。
「優しくて、ダメな人だったのよ。」
「友達の保証人になって借金背負って。」
「女の人に同情して、
直ぐどうにかなっちゃうなんて・・・」
その時、すずが話しかけてきた。
「渡したいものがあって。」
「これお父さんの机の中に入っていて。」
それは3姉妹の写真であった。
その写真を見て思い出話をする3人。
3人を見て、唯一の身寄りを亡くしたすずは俯いた。
それに気付いた幸は、すずに声をかけた。
「時間ある?」
「この町で一番好きな場所ってどこ?」
すずはその町で一番好きな場所へと、
3姉妹を連れて行った。
道中話をする佳乃と千佳。
「大丈夫かなあの子?」
「ここでやっていけるのかな?と思って。」
「あの子と陽子さんは何の関係も無いんだもんね。」
連れて行ってもらった先は、
山道を抜けた高台にある見晴らしのいい場所。
「お父さんと良く一緒に着たんです。」
そう言ったすずに、幸は言う。
「すずちゃん。あなたが、
お父さんのことお世話してくれたんだよね。」
静かに頷いたすず。
「お父さんきっと喜んだと思う。」
「本当にありがとう。」
佳乃も千佳も続けてお礼を言った。
そのまますずの見送りで駅に行った3人。
帰りの電車を待つ間、幸はすずに聞いた。
「この町好き?」
スズは答えた。
「好きって言うか・・・
こっちに来てあまり経ってないんで。」
「でもお父さんが、何でこの町に
住みたいって思ったのか分かります。」
そうしていると、電車がホームに入ってきた。
電車に乗り込んだ3姉妹。
見送るすずに、幸は言った。
「すずちゃん。鎌倉に来ない?」
「一緒に暮らさない?4人で・・・」
そう言って、佳乃と千佳の顔を見た幸。
佳乃と千佳も一瞬驚いたが、
直ぐにすずを見て微笑んだ。
「すぐアレしなくていいから考えてみて。」
すずは俯いて考えているようだったが、
直ぐに顔を上げて答えた。
「行きます。」
それから数日後。すずは鎌倉に引っ越してきた。
「今日からお世話になります。」
千佳が部屋を案内して、
幸と佳乃は昼食の準備をしようとした。
すずは気を使い幸に言った。
「私手伝います。」
幸は返した。
「すずはいいから、荷物の整理しないさい。」
「もう妹なんだから、ちゃんは付けないわよ。」
笑顔で頭を下げたすず。
準備を終えると、千佳に呼ばれたすず。
祖父と祖母の写真を見せて仏壇に手を合わした。
そして昼食。
引越しの手伝いをしてくれた、
千佳のバイト先の店長浜田も一緒に蕎麦を食べた。
千佳と浜田は、地元にある少年サッカーチーム
「湘南オクトパス」のサポーター。
サッカーをしていたと言うすずに、
湘南オクトパスの入団テストを進めた。
翌日すずは転校先の中学校へ行った。
直ぐにできた友達もサッカーチーム所属で、
入団テストを受けることを決めた。
一方で家に遊びに来た叔母の史代に説教される幸。
「犬や猫じゃないのよ。」
「お母さんに相談したの?」
「子供育てるって大変よ。」
「あの子は妹は妹だけど、
あんた達の家庭を壊した人の
娘さんなんだからね〜。」
幸は答えた。
「関係ないでしょ。」
「あの子はまだ、産まれても無かったんだから。」
史代は嘆くように言った。
「これでまた嫁に行くのが遅れるわ。」
数日後。
すずは入団テストに見事合格していた。
そしてクラブチームのメンバーと、
サポーターの千佳と近くの定職屋「海猫食堂」にいた。
その定職屋は幼い頃からあり、
3姉妹もお世話になっていた。
「これ入団祝い。」
そう言って、おまけでおかずを出して店主の二ノ宮。
それを見ていた知人の福田に二ノ宮は言った。
「幸っちゃんとこの・・・」
「どことなく似ているわよね〜」
幸は病院勤務していた。
医者であるの椎名と付き合っていて、
葬儀に行くように言ったのも椎名であった。
「やっぱり行って良かった。葬式。」
「でなきゃ妹にも会えなかった。」
「ありがとう。」
そう素直にお礼を言った幸。
佳乃は藤井と会っていた。
素直な妹と、すずの話をする佳乃に、
一般的な指摘をする藤井。
「大変じゃない?」
「いわゆる腹違いっていう奴でしょ?」
そして、遺産も貰わずに引き取ったことを指摘した。
佳乃は何も言わずに笑っていたが、
顔は若干引きつっていた・・・
そんな幸と佳乃は、仕事から帰ってくると、
直ぐに喧嘩を始める。
心配するすずを裏目に、
幸から逃げて風呂に入る佳乃。
しかし風呂場にはカマドウマがいて、
それを見た佳乃は慌てて叫んだ。
「お姉ちゃ〜ん。」
ある日家にいたすずは、
千佳に自家製梅酒を見せてもらった。
「こっちが去年ので、これが一昨年の。」
「それで、これがおばあちゃんが漬けた10年物。」
いままで体験したこと無い、新鮮な生活をするすず。
朝は姉妹四人で慌しい朝食。
朝から喧嘩する幸と佳乃。
すずも慣れてきて、そんな日常を笑って見ていた。
朝は中学に行くすずと、出勤するは佳乃は、
駅に向かって猛ダッシュ。
「佳乃さん間に合います?」
そんなすずに対して佳乃は言う。
「すずさ〜。そろそろ、さん止めない。」
「よっちゃんでいいよ。」
そう言うとすずをからかって、
彼氏を作るように進めだす佳乃。
「世界が変わって見えるよ〜」
そんな会話をしていた佳乃だったが、
その日の勤務中に藤井が銀行に来た。
明らかに悪そうな男に連れられて来て、
こわばった顔で通帳の解約をした藤井。
佳乃は休憩中に、携帯に残された留守電を聞いた。
『もう少し、まともな人見つけてください。』
そのころ病院では幸が、
待受け室で診察を待つ二ノ宮を見かけた。
体調が悪いという二ノ宮を心配するが、
話を変えて、すずの話をする二ノ宮。
「すっかり店の人気者よ。」
その夜の佳乃は荒れて酔っ払っていた。
酔っ払ってコタツで寝る佳乃と、
一緒に寝ている千佳を尻目に勉強をしていたすず。
家に帰って来た幸はすずに聞いた。
「勉強できなかったんじゃない?」
「どうせまた振られたんでしょ?」
「懲りないのよ。何回降られても。」
そう言うとすずに代わり2人の面倒を見る幸。
続けてスズに言った。
「すず。困ったことがあったら何でも言ってね。」
すずは答えた。
「はい。」
「ありがとうございます。」
数日後。
チームにも馴染んだすず。
試合にも出て同級生たちにも活気が出た。
一方で幸は、末期患者を受け入れる、
ターミナル病棟への異動の相談を上司にされていた。
悩んだ幸は椎名の家に行き相談をした。
その話が、どれだけ過酷なことが分かる椎名は言う。
「亡くなるって言う患者さんに向き合うのはきついよ。」
「よく考えて決めたほうがいいよ。」
そう言うと、話を変えて言った。
「明日なんだけど・・・」
「向こうのお母さんから連絡があって、
彼女不安定になっているらしいんだよ。」
「ちょっと様子見てくるよ・・・」
椎名には奥さんがいた。
単身で鎌倉で働いており、幸とは不倫関係であった。
素直に受け入れた幸ではあったが、
落ち込みながら家に帰った。
すると・・・
すずが梅酒を飲んで倒れていた。
酔っ払ったすずは言う。
「陽子さんなんて大嫌い。」
「お父さんのバ〜カ。」
普段は冷静で、自分のことを話さないすずの変貌に、
介抱していた佳乃は言った。
「あの子やっぱり煮詰まってたのね。」
すずの姿を見た幸は佳乃に言った。
「乱れ方があんたそっくり。」
その後布団にすずを寝せると、
3人はすずの顔を眺めていた。
「こんな所に、ほくろがある。」
「まつげ長いね〜。」
「耳の形お姉ちゃんと似てる。」
そんな話をしていると、すずは目を覚ました。
保護者としてすずを怒る幸。
すずは言った。
「だって・・・」
「自分家で作った梅酒飲んでみたかったんだもん。」
それを聞いた幸は答えた。
「分かった。」
「来年実がなったら、
すず用にアルコール抜きのやつ作ってあげる。」
そう言うと、庭にある梅ノ木を4人で眺めた。
「早く取りたいな〜。」
そう言うすずに、毛虫も付くと話す千佳。
そんな2人のやり取りを聞き、幸は言う。
「生きているものは皆、手間がかかる。」
幸の言葉を指摘した佳乃。
「それおばあちゃんの口癖。」
数日後の休日。
すずは同級生の家のシラス漁の手伝いをした。
帰りにお土産でシラスを貰って帰るすず。
その日の昼食は、生シラス丼であった。
佳乃は仕事に生きると言い出して、
融資課課長補佐となったことを自慢するが、
振られて逃げていると指摘する幸。
ご飯前に喧嘩を始める2人を尻目に、
すずと千佳は
「いただきま〜す。」
そう言って生シラス丼を口にした。
喧嘩を中断して、すずが一口食べるのを見た3人。
「どう?」
「生シラスなんて他では食べれないからね〜。」
「初めて?」
すずは答えた。
「はい。」
昼食を食べ終わると、4人は障子の張替えをした。
張替えが終わると、
海沿いを歩いて4人揃って海猫食堂へと行った。
「みんな揃ってなんて初めてじゃない?」
そう言って温かく出迎えてくれた二ノ宮。
幼い頃の3人の話を始める二ノ宮。
店でお漏らしした千佳の話や、
テーブルに貝殻を並べた吉野の話等。
4人は温かい時間を過ごした。
しばらくして、新学期となった。
すずと尾崎が付き合っているという噂が立つ。
そのころ佳乃は課長補佐として、
融資の外回りの手伝いをしていた。
課長の坂下はとても優しく、
親身になって顧客に接する人。
融資先への外回りで、坂下と佳乃が向った先は、
海猫食堂の二ノ宮のところだった。
家を出て行った弟が、母の遺産を半分渡すか、
渡せないなら店を売れといってきたという相談。
二ノ宮に変わり、話をする福田。
「何とかここだけは残せんかね。」
「おばちゃんにしたら、
この店はたった一つの宝物やけん。」
それに対しても真摯な対応をする坂下。
「面倒臭いことをするのが私たちの仕事ですから。」
海猫食堂の帰り道。
昔勤めていた都市銀行を辞めた理由を、
坂下に聞いた佳乃。
坂下は答えた。
「なんか・・」
「自分の居場所はここじゃないって、
突然気付いたって言うか・・・」
「そんな事ってない?」
数日後。
すずは福田の店である「山猫亭」で、
シラストーストを食べていた。
「この店って古いんですか?」
「シラストーストって、
その頃からあるんですか?」
そう聞くすずに対して、
20年前にお客が食べたいと言って
商品化されたと教えてくれた。
その帰り道にすずは尾崎に言った。
「うちのお父さんさ〜、
よくあの店行ってたのかもしれない。」
「お父さんと2人だった頃、よく作ってくれたの。」
尾崎は言う。
「お姉ちゃんたちに聞いてみたら?」
すずは答えた。
「お姉ちゃんたちには話しづらいんだよね。」
「お父さんのこと・・・」
そして散った桜の花びらを手にとったすず。
「お父さんの病気が分かったときね。」
「もう今年の桜は見られないかもって言われたの。」
「でもお父さん凄い頑張って、
病院でお花見もしたんだよ。」
尾崎は言った。
「浅野。時間ある?」
尾崎は自転車の後ろにすずを乗せて走った。
それは桜並木の道。
満開の桜がトンネルのように見えた。
すずは風を受けながら、
桜を見上げて手を延ばした・・・
時が経ち梅の実が成った頃。
4人で庭に成る梅の実を収穫した。
とても大量に取れた梅の実を、
幸が近所に渡す分を分けていた。
すずに説明するように梅の木の話をした3人。
「おばあちゃんが生きていた頃は、
もっと取れていたんだよ。」
「梅の木も、もう年だからね〜。」
「お母さんが生まれた年に、
おじいちゃんが植えたんだから、もう55か〜。」
その時、史代から電話が入った。
おばあちゃんの法要に母が来るという連絡だった。
母と会うことに対して懸念を示す幸。
それに気を使ってすずは聞いた。
「私出ていいのかな?」
幸は答えた。
「すずのせいじゃない。」
「私たちに合わせる顔がないだけだよ。」
それでもすずが一番気後れしていた。
法要当日。
数年ぶりに再開した母。
佳乃と千佳は喜んでいた。
しかし幸は違っていた。
「今日は、わざわざどうも。」
他人事のように挨拶すると、母にすずを紹介した。
母はすずに聞いた。
「3人とうまくいってる?」
「幸、性格きついでしょ?」
「私の分もしっかりしちゃったの。」
法要が終わり家に帰って来た4姉妹。
もちろん母と史代も一緒に家に来た。
休むまもなく母は口を開いた。
「おばさんも居るし丁度いいわ。」
「この家なんだけどね、
思い切って処分したらどうかと思って。」
「庭の手入れも大変だろうし・・・」
それを聞いて幸は怒り出した。
「勝手なこと言わないでよ。」
「お母さんにこの家のこと、
どうこうする権利なんてないでしょ?」
「庭の手入れなんか、
お母さん一度もしたこと無いじゃない。」
「管理って・・・」
「この家捨てて出て行ったのに何で分かるの?」
それに対して母も怒り出して言う。
「どうしてあんたはいつもそんな言い方するのよ。」
「悪かったって思ってるわよ。」
「でも元はといえば、
お父さんが女の人作ったのが原因じゃない。」
それに対して言い返す幸。
「お母さんはいつだった人のせいじゃない。」
「私たちが居るから別れられない。」
「おばあちゃんが言ったから、
あんたたちは連れて行けない。」
「いい年して子供みたいなこと言わないでよ。」
史代が止めに入って口喧嘩は終わった。
母と史代が帰った後も、空気は重かった。
その中で口を開いたのは佳乃だった。
「いつまでも皆でここで暮らすわけじゃないでしょ?」
「それが幸せ?」
よれに対して幸は返した。
「私には責任があるもん。」
「ここを守る。」
佳乃は言い返す。
「誰も頼んでないよそんなこと。」
「何、ムキになってるの?」
「お母さんに、
ちゃんとやってるところ見せたいだけでしょ?」
「もうほとんど意地じゃん。」
「すず引き取って、何かあてつけみたいでさ。」
「お姉ちゃんはそれで満足かもしれないけど、
かえってかわいそうじゃん。」
「今日みたいな目にあわせたら・・・」
千佳が間に入って姉妹喧嘩は収まった。
その日の夕食は幸とすずが行い、
買出しに佳乃と千佳が出かけた。
買い物をする佳乃は千佳に話した。
「後悔してなきゃいいけど。」
「ここに来たことをさ〜。」
「背負うんだよなあいつ。」
「幸姉に似て・・・」
一方料理をする幸とすず。
幸は母に最後に教えてもらった料理を作った。
するとすずが口を開いた。
「ごめんなさい。」
「うちのお母さんのこと。」
「奥さんの居る人を好きになるなんて、
お母さん良くないよね。」
そんなすずに幸は言った。
「ごめんね。」
「私たちはすずを傷つけちゃったんだね。」
「でもね。誰のせいでもないんだよ。」
次の日。
夜勤出勤のため家に居た幸。
そこに母がやって来た。
「昨日あんなことになったから、
渡しそびれちゃった。」
そう言うと4人へのお土産を渡した。
墓参りをして帰ると言い、直ぐに家を出た母。
「ちょっと待って、私も行くわ。」
そう言うと幸も一緒に墓参りに行った。
あの後に史代に怒られたと話した母。
それ以上、昨日の話は無かった。
墓参りを追え駅に向かう幸と母。
母は幸に聞いた。
「まだ梅酒作っているんだって?」
「毎年仕込むの手伝わされて大変だったけど、
アレが終わると、
あ〜夏が来るな〜って感じだった。」
それを聞いた幸は言った。
「少し持っていく?」
「駅で待ってて。直ぐに獲ってくるから。」
そう言って家に梅酒を取りに戻り、
梅酒をビンに移した。
駅で待つ母に梅酒を渡して言う。
「こっちが今年ので、
こっちがおばあちゃんの。」
母は祖母の梅酒を見て聞いた。
「まだあったの?」
幸は答えた。
「これで最後。」
母は懐かしむように梅酒を見て言う。
「懐かしい。いい色。」
幸は母に言う。
「たまには遊びに来たら?」
母も答えた。
「うん。今度家にも遊びに来て頂戴。」
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数日後に家に居たすずと千佳。
すずは千佳に本当のことを話した。
「千佳ちゃん。私嘘をついてた。」
「シラス丼・・・」
「本当は仙台にいた頃、
よくお父さんが作ってくれてたの。」
千佳は答えた。
「そっか。」
「じゃああれ、お父さんの味なんだ。」
「私、お父さんのことあまり覚えてないんだよね。」
「すずのほうがいっぱい思い出あると思うよ。」
「いつか聞かせてね。」
「お父さんのこと・・・」
千佳の対応に笑顔になったすず。
「釣が好きだった。」
そう言って、初めてお父さんの話をした。
佳乃は海猫食堂のアドバイスに赴いていた。
今後について指南する課長と佳乃。
話の途中で謝りだした二ノ宮。
「この店、今月でいっぱいで閉めるの。」
「体の調子が良くなくて。」
治療に専念するのかを聞いた坂下。
二ノ宮は答えた。
「治療はもうしないの。」
「市民病院に新しく、
ターミナルケアの病棟ができるでしょ?」
「そこ予約しているの。」
その帰り道、坂下に話した佳乃。
「すっごく腹立つな。神様ってやつに。」
それに対して坂下は答えた。
「さてと・・・」
「新しいプレゼン考えよう。」
「遺言作るのオススメしようかと思って。」
「あの弟さんじゃ、
葬式の費用も出してくれそうにないし・・・」
「神様が考えてくれないなら、
こっちで考えるしかないでしょ。」
幸は異動の話を悩んでいた。
そんな時、病院で亡くなった人に対して、
丁寧なケアをする同僚を見て、
こんな接し方があるのかと感心した。
その話を椎名にしたサチ。
幸の気持ち受け止めた後に聞き返した。
「俺アメリカ行くことになったんだ。」
「一緒に来てくれない?」
「女房とは別れる。」
「ずっと考えてたんだ。」
その夜。
幸は大量の梨を買って家に帰った。
それを見て直ぐに失恋と気付いた佳乃。
幸は彼氏についてのことを佳乃と千佳に話した。
それを聞いた佳乃は幸に皮肉を言った。
「お父さんと一緒じゃん。」
「弱くてダメな人じゃん。」
その言葉で喧嘩を始める2人。
話を聞いていたすずは、
幸が部屋に帰ったのを見て吉野に言った。
「幸ねえ、傷つけたかもしれない。」
「奥さんが居る人好きになるなんて良くないって、
ひどいこと言っちゃった。」
「3人で話したい幸ねえのこと。」
佳乃は言った。
「面倒臭いな〜。」
「千佳梅酒。ロックで。」
3人で話した後、佳乃は幸の部屋へ行った。
「お姉ちゃんさ〜。この家なら大丈夫だよ。」
「私と千佳で、すずの面倒くらい見られるし。」
「もう昔とは違うんだから。」
「そんなんだと、
嫁に行く前にお母さんになっちゃうよ。」
幸は佳乃の優しさを感じながら答えた。
「そういうことはさ〜。」
「シラフの時に言いなさいよ。」
佳乃は照れながら返した。
「こんなの酒飲まないで言えるはず無いじゃない。」
鎌倉の花火大会の日。
幸は自分の浴衣を、すずに着ていくように進めた。
千佳はそれを見て言う。
「風太に見せてあげなよ。」
茶化すように佳乃は言う。
「かっこいいの?」
茶化されてすずは照れて言う。
「ユニホームでいいよ。」
「今度にする。」
結局浴衣を着て花火大会に出かけたすず。
すずを見送った後、幸は椎名に会った。
「ごめん。私一緒に行けないや。」
「ターミナルケアをね・・・」
「ちゃんとやってみようかと思って。」
「私たちに合わせる顔無いって
言ってたんだって、お父さん・・・」
「だからその分、
すずが1人で抱え込んじゃって。」
「そばにいて上げられたら何か出来たかもなって。」
「お父さんにも、すずにも・・・」
「あの子。いろんなことがあって、
子供自体を奪われちゃったのよ。」
椎名は答えた。
「それは幸ちゃんも同じだろ。」
「幸ちゃんも奪われちゃったんじゃない?」
「周りの大人に・・・」
「ゆっくり取り戻してください。」
「俺はそうしてあげられなかった。」
そう言って笑顔で手を振り帰って行った椎名。
花火大会の前に、海猫食堂でご飯を食べたすず。
食べ終わり店を出ようとした時、
すずに二ノ宮は話し掛けた。
「これ持っていって。」
「いろいろお世話になりましたって・・・」
そう言い、佳乃の好きなアジの南蛮漬けを渡した。
そして続けて言った。
「おばちゃん。」
「あなたのお父さんとお母さんが羨ましいわ。」
「あなたみたいな宝物、この世に残せたんだ物。」
すずは答えた。
「宝物なんかじゃないですよ。私。」
二ノ宮は言う。
「ダメよ。そんな事言ったらバチが当たるわよ。」
そう言うと、皆を送り出した二ノ宮。
友人の親に船を出してもらい、
船の上から花火を見たすず。
その頃、佳乃は銀行の屋上で同僚と花火を見ていた。
千佳はバイト先で浜田と花火の音を聞いていた。
花火大会の帰り道。
すずは尾崎に聞いた。
「私ここにいていいのかな?」
「仙台にいるときも、
山形に居るときもずっと思ってた。」
「私が居るだけで、傷ついている人がいる。」
「それが時々苦しくなるんだよね。」
尾崎は励まそうと自分の話をした。
3人兄弟の末っ子で、女の子が欲しかった両親。
おかげで写真が少ないと話した。
それを聞いて笑顔を取り戻したすず。
別れ際で尾崎は言った。
「あさの・・・」
「その浴衣結構似合ってるよ。」
家に帰ったすず。
玄関で3人の姉が出迎えてくれた。
お姉ちゃんたちは浴衣を着ていた。
「花火やろうと思って・・・」
そして庭で4人で花火をした。
すずの顔は完全に笑顔になっていた。
夏になり、すずは姉妹として馴染んでいた。
風呂上りに裸で扇風機を浴びるすず。
「こら!人が着たらどうするの?」
そう言って幸は笑いながら怒る。
着替えたすずは、幸が作ってくれた、
アルコール抜きの梅酒を割っていた。
「お姉ちゃん。甘め酸っぱめ?」
「濃いめ?薄め?」
酸っぱめの梅酒を飲む幸。
それを飲ませてもらい酸っぱいと言ったすずに、
「子供だな。」
と言った幸。
すかさず言い返すすず。
「幸ねえに比べればね。」
梅酒を飲み終わると、
家にある柱を2人で見た。
3姉妹の成長が記された柱。
すずも幸に測ってもらい身長を柱に記した。
そして2人で散歩した。
幸はすずを、思い出の場所へ連れて行った。
そこの景色を見てすずは言う。
「本当だ。あの場所に似てるね。」
それは山形で見せた、思い出の景色に似ていた。
幸は思い出話をすずにした。
「小さい頃にお父さんとよく来たんだ。」
「お父さんがいなく成ったら、1人で・・・」
そう言うと幸は急に大声で叫んだ。
「お父さんの馬鹿〜。」
それを聞いて、すずも真似した。
「お母さんの馬鹿〜。」
初めて本音を大声言った、すず。
今までの辛さが込みあがって来て、
更なる本音を呟いた。
「もっと一緒に痛かったのに・・・」
それを聞いて幸はすずを抱きしめた。
「お母さんのこと、話していいんだよ。」
「すずは、ここに居ていいんだよ。」
「ずっと・・・」
すずは泣きながら答えた。
「ここにいたい。ずっと・・・」
それから少しして、二ノ宮は亡くなった。
葬儀に参列した4人。
4人をみて福田は言う。
「いい葬式や。」
「いい人生やったね。」
「あんたがそばにいてくれて、
おばあちゃん安心して逝けたんやない。」
幸は答えた。
「写真の二ノ宮さん。いい顔してましたね。」
佳乃は聞いた。
「あれ福田さんが撮ったんでしょ?」
福田は答える。
「あれ最後のデートのときの・・・」
千佳は聞いた。
「あの桜そこの山道ですよね?」
福田は思い出したように話した。
「入院しとった時もよう言いよったね。」
「あの時の桜は本当綺麗かった〜って。」
「もう直ぐ死ぬって分かっとても、綺麗なものを、
ちゃんと綺麗って思えるのが嬉しいって・・・」
頭を下げて帰ろうとする4人。
福田はすずに言った。
「すずちゃん。」
「お父さんの話聞きたくなったら、こそっとおいで。」
海辺を歩き家への帰り道。
すずが口を開いた。
「お父さんも同じこと言ってた。」
「亡くなる前に桜のこと。」
「まだ綺麗なものを、
綺麗って思えるのは嬉しいって。」
佳乃は言った。
「いい人生だったんだね。」
幸は皆に聞いた。
「最後に何を思い出せるかな。」
佳乃は答えた。
「私は㊚か酒だよね〜。」
それを聞いて幸は言う。
「何だろ?縁側かな家の・・・」
「すずは?」
その質問にすずは答えた。
「いっぱいあるよ。」
「いっぱい出来た。」
その答えに佳乃は返す。
「まだ子供のくせに!」
すかさず、すずは言い返した。
「お姉ちゃんたちに比べらたらね。」
佳乃は笑いながら言った。
「50年も経てば、
みんな同じおばあちゃんになるんだからね。」
そのやりとりを見て幸は言った。
「お父さん・・・」
「本当にダメだったけど、
優しい人だったのかもね。」
「だって、こんな妹を残してくれたんだから。」
それを聞いた佳乃と千佳は頷いた。
(終わり)
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2016年01月27日
【万能鑑定士Q −モナ・リザの瞳−】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【万能鑑定士Q −モナ・リザの瞳−】
【出演者】
凛田莉子:綾瀬はるか
小笠原悠斗:松坂桃李
流泉寺美沙:初音映莉子
リシャール・ブレ:ピエール・ドゥラドンシヤン
朝比奈尚幸(ルーブル美術館の代理人):村上弘明
桜(リサイクルショップの店員):榮倉奈々
萩野甲陽:橋本じゅん
山田聡:村杉蝉之介
喜屋武友禅:児嶋一哉
江来香織:角替和枝
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【感想】
楽しいけど、浅い・・・
なんか物足りなく感じてしまいました。
サスペンス系の映画って、
どうしても謎が解けたら飽きちゃう!
しょうがないですよね〜
そんな私でも、楽しんで見れたので、
出来が良かったってことでしょうか?
情報は豊富で分かりやすかったし、
強いて言うのであれば、
ハラハラ感が欲しかったな〜
それがあれば更に評価は上がったのでは?
そんな感じに思えた映画です。
【あらすじ】(ネタバレあり)
レストランを貸切にして、
豪勢なパーティーを開催すると言う。
それを聞いて怪しいと思ったオーナーは、
貸切にした企業を調べようと凛田莉子に依頼した。
チラシを見るなり怪しい部分を指摘した凛田。
一方、角川書店の記者小笠原悠斗は、
自分の記事を編集長にダメ出しされて、
グルメ担当を強制的に任せられた。
グルメパーティーに参加した悠斗。
同じパーティーに潜入鑑定に来ていた凛田。
トルコ料理を作ろうとしていたシェフを見て、
凛田はすぐに指摘した。
調理の音が別の何かの音をマスキングしている。
クルミを割る音は、ガスバーナーの音を消し、
揚げ物の音は、ガラスの割る音を消す。
凛田は直ぐにオーナーに聞いた。
「ここ2階はなんですか?」
オーナーは答えた。
「ギャラリーですけど、今日は休館日で。」
それを聞いて凛田は言う。
「大変です。警察に電話してください。」
直ぐに2階に走った凛田。
2階のギャラリーにつくも一足違く、
すでに強盗に襲われていた。
しかし不幸中の幸い。
一番貴重な品をは盗まれずにいた。
それが悠斗と凛田の出会いであった。
翌日、凛田の元に訪れた悠斗。
そこに朝比奈が鑑定に依頼に訪れた。
ルーブル美術館のアジア圏の代理人である朝比奈。
来月日本に来るモナリザの鑑定を依頼した。
そのためにはルーブル美術館の、
学芸員になる必要があった。
こうしてルーブル美術館で行われる、
学芸員試験に参加することになった凛田。
会社に戻った悠斗は一部始終を記事にしたいと、
編集長に進言し、許可を得た。
悠斗は凛田とパリのルーブル美術館に向かった。
ルーブル美術館に着くと、直ぐに試験が始まる。
それは本物のモナリザを当てる試験。
通された部屋には複数のモナリザが飾られていた。
その中から、本物のモナリザを当てられれば合格。
試験管に、本物はどれか聞かれた凛田。
凛田は片言のフランス語で答えた。
「あの部屋にあるものは全部偽物。」
「通路にあったのが本物。」
それは見事に正解であった。
こうして学芸員の資格を得た凛田。
通路にあった本物のモナリザの後ろには、
『H29』の文字が書かれていた。
日本人で学芸員となったのは、
凛田ともう1人の女性、流泉寺美沙。
試験に合格した2人は、
日本で学芸員としての講義が始まることになる。
講義は12枚の絵から本物を直感で当てるもの。
それは2人で協力し、
1人が偽者と思う2枚の絵を直感で選び、
もう1人がその2枚のうちの1枚を排除する。
それを繰り返して最後に本物の絵を当てるもの。
講義はルーブル美術館の職員が立ち会い行う。
しかしフランス語の出来ない凛田。
足手まといの凛田に対して怒る美沙。
「学芸員がフランス語も出来ないなんて
「明日からは通訳しないから、何とかして。」
凛田は幼い頃から絵が大好きだった。
しかし勉強はまったく出来なかったのだ。
しかも一般常識が一切無かった。
そんな凛田がある日たたどり着いた記憶法。
物事を匂いとセットで記憶するというもの。
凛田は、その日1日でフランス語を暗記した。
翌日の講義。
完璧にフランス語を使いこなしていた凛田。
講義はスムーズに進んでいった。
ダ・ヴィンチの書いたモナリザには噂がある。
モナリザの瞳にはLとVの文字が見えると言う。
それを見た鑑定士はその後、
認識能力に障害をきざすと言われた。
それは、ダ・ヴィンチが解剖学にも長けていて、
何らかの細工をモナリザにしたとされていた。
講義を続けた凛田と美沙。
しかし、一度も成功することがなかった。
講義の後も一人練習を続けた凛田。
それを見た美沙も一緒に練習を始めた。
その練習で始めて1枚の本物を当てた二人。
喜ぶ2人だったが、突然凛田を頭痛が襲った。
それからも講義は続きいろんな絵で行われた。
本物の絵を当てる度に強くなる凛田の頭痛。
頭痛が増す中で、講義は最終日を迎えた。
2人はルーブル美術館の職員に連れられ、
大きな美術館に移動した。
最後の講義は本物のモナリザを当てるもの。
手法は今までとまったく同じ。
2人で排除を続けていく。
講義は順調に進み、残るは2枚。
凛田と美沙が選んだ最後の1枚。
モナリザは本物であった。
しかし同時に倒れこんだ凛田。
職員たちが駆け寄るが、
凛田は急に立ち上がりモナリザの前へ歩いた。
凛田が見たモナリザの瞳の中には、
LとVの文字が見えていた。
講義も終わり、通常の仕事に戻った凛田。
しかし凛田は鑑定が出来なくなっていた。
人間国宝の作る壷とレプリカの見分けすらできない。
凛田は店を閉めていなくなった・・・
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取材を続けていた悠斗は、行方を追った。
美沙のもとに話を聞きに行った悠斗。
凛田が学芸員の資格を失ったとことを知る。
悠斗はモナリザの瞳の噂の真相を探るため、
医学的にありえるかを、医師に相談しに行く。
基本的には、あり得ないという見解であったが、
凛田の前後の行動次第とも言った。
悠人はその帰り道。
困り果てた悠斗が見たのは、
モナリザ来日に伴い駅に貼られたポスター。
悠斗は並んだポスターの違和感に気付いた。
急いで家に帰った悠斗は、
凛田が受けた講義を、
12枚のカードに置き換え実践した。
何度も繰返し、何かに気が付いた悠斗。
その時、一本の電話が入る。
凛田の居場所が分かったという内容だった。
悠斗は直ぐに、凛田のいる場所へ向かった。
そして凛田を見つけると、
「これを見て欲しいんです。」
そう言うと、講義と同様の直観テストを始めた。
12枚の写真を講義と同じように、
悠斗と凛田は排除していった。
そして、いとも簡単に成功した2人。
疑問に思った凛田に、種証をした悠人。
それはとても簡単なものだった。
悠斗は最初から正解を分かっていたのだ。
片方の人間が正解を分かっている以上、
外れることはない訓練。
正解があると思い講義を続けた凛田は、
間違ったことを繰り返し行ったことで、
正しい鑑定能力を狂わしたのだった。
つまり瞳の中の文字が原因ではなく、
講義自体が全て仕組まれていたのである。
凛田が見たモナリザも、おそらく全て偽者。
真相を伝えた悠斗は凛田に言う。
「あの書類を渡されたときから、
嘘は始まっていたんです。」
「凛田さんは、
大きな事件に巻き込まれているんです。」
それを聞いた凛田は我にかえり、
「急がないと大変なことになる。」
そう言うと直ぐに美術館へ向かった。
そのころ美沙は、
まもなくモナリザ展が開催される美術館にいた。
慎重に保管されている名画モナリザ。
しかし関係者である美沙には、
モナリザを持ち出すことは容易かった。
美沙の仲間は時間通りに美術館に電話して、
警備員の目をそらした。
その隙に防犯カメラを細工した美沙。
後は予め入手したパスワードで絵を持ち出した。
そして裏口に待機した仲間に渡す。
美術館に到着した凜田は美沙へ言う。
「モナリザを返してください。」
凜田に気付かれた美沙は否定むせずに言った。
「最初から脅威を感じていた。」
「この計画にはあなたが邪魔だったの。」
「だから能力を失わせて、
学芸員から外れてもらうことにした。」
「あなたも世界中の人々も、
ルーブルに騙されていたの。」
「私たちはモナリザを盗み出したんじゃない。」
「返したの。」
「今この美術館の収蔵庫にあるものこそ、
本物のモナリザ。」
「103年前、
モナリザは一度盗みだされたことがある。」
「そして、無事ルーブルに戻ったとされている。」
「でもそれは嘘。」
「私たちはその嘘を正した。」
〜1911年のモナリザ盗難事件〜〜〜〜〜
ガラス職人のペルッチャが盗んだモナリザ。
しかし依頼人の詐欺師マルケスは、
そのモナリザを受け取りに現れなかった。
マルケスは本物がなくなったことで、
贋作を販売することが目的だったのだ。
業を煮やしたペルッチャは、
画商に本物のモナリザを売ろうとして捕まった。
そしてルーブルにモナリザは戻った。
Z〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
美沙はこの話が嘘だと凛田に伝えた。
ペルッチャが売ろうとしたものも偽者。
本物のモナリザは、
ペルッチャの隠した場所に今でも眠っている。
現代になり末裔に引き継がれたのだと。
それがルーブル職員のリシャール・ブレ。
本物のモナリザの裏には1503と書かれ、
バロア朝の紋章が刻印されている。
1910年にイタリア新聞にも載った事実と。
確かに現在本物とされるモナリザの裏には、
『M29』と書かれている。
しかし、その話に凛田は反論した。
それ自体がマルケスの仕組んだ嘘であり、
嘘の記事を書くことで贋作を作りやすくした。
ルーブルは反論をしないことで、
本物と偽者の区別がつくようにしたのだと。
更に、美沙もリシャール・ブレに騙されていると・・・
その時凛田に悠斗から電話が入った。
搬送業者を装って持ち出されたモナリザ。
悠斗は運ばれたモナリザを1人で追っていた。
そしてリシャール・ブレに捕まった。
電話越しに聞こえるリシャール・ブレの声。
「これから絵を燃やす。」
「偽りの歴史を正すために。」
凛田は電話から居場所の推測をした。
後ろで聞こえていた音と音楽。
高速エレベータの中と推測を立てた凛田。
美術館から20分以内で、40階以上のビル。
しかし東京の真ん中。
件数が多すぎて、探すには時間がかかる。
その時、凛田が目にしたのは、
美沙のジャケットに付いていたボタン。
ジャケットのボタンが1つだけ違ったのだ。
ボタンから再度推理をした凛田。
そのボタンは美沙が泊まっていたホテルで外れ、
付け替えてもらった代用品であると。
その柄のボタンを提供しているホテル。
直ぐに特定できたホテルに向かう凛田と警察。
その頃リシャール・ブレは、
悠斗とモナリザの置かれた部屋に火を放った。
ホテルに到着した凛田は、
手がかりを探すべくゴミ庫をあさった。
ある1つのゴミ袋の中から出てきたレシート。
その全てが『勝鬨』の店のものであることに気付く。
勝鬨にある高層ビルと範囲が絞られ、
居場所が特定出来た凛田。
急いで向かうが、
ビルの最上階からは煙が上がっていた。
最上階の煙の出る部屋を開けると、
モナリザは既に燃えており、
手足を縛られた状態で必死に阻止しようとした、
悠斗のみが助かったのであった。
凛田に着いて来た美沙。
美沙は燃えたモナリザを見て凛田に言った。
「最後の試験で鑑定したモナリザを覚えている。」
「あのとき私だけに分かるように仕掛けた印。」
そう言うと、燃えたモナリザの額縁から、
小さなピンを取り出した。
「この絵はあの試験に使っていた偽者。」
「瞳の中に、
あなたを騙すために付けたLとVもある。」
その証言を聞いた凛田は言った。
「つまり彼は本物のモナリザを持っている。」
「美沙さんの贋作を憎む気持ちに付け込んで、
彼はあなたを騙し続けていた。」
「この絵を燃やしたのも、
本物を持ち去るための時間稼ぎ。」
それを聞いていた警察は、
簡単に日本から持ち出すことは出来ないと言う。
しかしそれに対して凛田は言い返した。
「ある!」
「ルーブルでも使われた方法です。」
そう言い、警察を連れて直ぐに横浜港に向かった。
その頃本物のモナリザを盗んだリシャール・ブレ。
日本から持ち運ぶためにX線検査を受けていた。
そしてフランス政府に対して、
身代金を要求する手はずを進めていた。
モナリザのX線検査を終えて、
横浜港から出航しようとしたリシャール・ブレ。
そこを警察が囲い込んだ。
無条件で逮捕されるリシャール・ブレ。
連行されるリシャール・ブレに美沙は言った。
「この4年間は、
偽者だったかもしれないけど、
そこに私にとっての真実があったと、
今でも思ってる。」
「あなたには分からないでしょうね。」
モナリザを持ち出した手口は、
無数にあるモナリザの看板を、
フランスに持ち帰ると見せかけ、
本物を看板に埋め込んだもの。
本物のモナリザを探すには大変な労力がかかる。
凛田は美沙に言った。
「私には人の心を鑑定することはできません。」
「でもあなたの芸術を愛する気持ちだけは、
真実だと確信しています。」
そして、全看板を没収する警察に対して言う。
「私たちに選ばせてください。」
「私と彼女で鑑定します。」
それを聞いた美沙は言った。
「私にそんな資格は無。」
しかし、凛田は遮るように言った。
「本物をルーブルに返しましょう。」
「それがあなたの本当の願いなんでしょう?」
警察たちによって港に並べられた、
無数のモナリザの看板。
2人が指を差したモナリザは同じものだった。
慎重に解体する警察。
絵の裏には『H29』の刻印が・・・
悠斗は遠くから、2人を写真におさめていた。
共犯として連行される美沙に凛田は言った。
「どこかでまた、鑑定しましょうね。」
その言葉に美沙は泣き崩れていた。
美沙を暖かく抱きしめる凛田であった。
数日後。
モナリザ展は無事開催された。
凛田と悠斗はモナリザ展に足を運んだ。
そこで悠斗は凛田に聞いた。
「再度学芸員として迎え入れたいって、
言われたんじゃないんですか?」
凛田は答えた。
「いいんです。」
「私はやっぱりあの店が似合ってます。」
悠斗は続けて凛田に聞いた。
「大事なこと・・・」
「ずっと気になってたんですが、
Qってどういう意味ですか?」
「色々考えたんですよ。」
「Qってクイーンでしょ?」
凛田は前を向いたまま言った。
「教えません。」
そんな話をしながらモナリザの前に立った2人。
モナリザを見た凛田は呟いた。
「穏やかな目をしてる。」
それを聞いた悠斗は凛田に言う。
「モナリザはこんな事件に巻き込まれて、
どんな目で僕らを見ているんでしょうね?」
そして続けて凛田に聞く。
「聞きたいんですけど・・・」
「これ本物?」
凛田は微笑みながら答えた。
「さあね〜。」
(終わり)
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凛田莉子:綾瀬はるか
小笠原悠斗:松坂桃李
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リシャール・ブレ:ピエール・ドゥラドンシヤン
朝比奈尚幸(ルーブル美術館の代理人):村上弘明
桜(リサイクルショップの店員):榮倉奈々
萩野甲陽:橋本じゅん
山田聡:村杉蝉之介
喜屋武友禅:児嶋一哉
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【感想】
楽しいけど、浅い・・・
なんか物足りなく感じてしまいました。
サスペンス系の映画って、
どうしても謎が解けたら飽きちゃう!
しょうがないですよね〜
そんな私でも、楽しんで見れたので、
出来が良かったってことでしょうか?
情報は豊富で分かりやすかったし、
強いて言うのであれば、
ハラハラ感が欲しかったな〜
それがあれば更に評価は上がったのでは?
そんな感じに思えた映画です。
【あらすじ】(ネタバレあり)
レストランを貸切にして、
豪勢なパーティーを開催すると言う。
それを聞いて怪しいと思ったオーナーは、
貸切にした企業を調べようと凛田莉子に依頼した。
チラシを見るなり怪しい部分を指摘した凛田。
一方、角川書店の記者小笠原悠斗は、
自分の記事を編集長にダメ出しされて、
グルメ担当を強制的に任せられた。
グルメパーティーに参加した悠斗。
同じパーティーに潜入鑑定に来ていた凛田。
トルコ料理を作ろうとしていたシェフを見て、
凛田はすぐに指摘した。
調理の音が別の何かの音をマスキングしている。
クルミを割る音は、ガスバーナーの音を消し、
揚げ物の音は、ガラスの割る音を消す。
凛田は直ぐにオーナーに聞いた。
「ここ2階はなんですか?」
オーナーは答えた。
「ギャラリーですけど、今日は休館日で。」
それを聞いて凛田は言う。
「大変です。警察に電話してください。」
直ぐに2階に走った凛田。
2階のギャラリーにつくも一足違く、
すでに強盗に襲われていた。
しかし不幸中の幸い。
一番貴重な品をは盗まれずにいた。
それが悠斗と凛田の出会いであった。
翌日、凛田の元に訪れた悠斗。
そこに朝比奈が鑑定に依頼に訪れた。
ルーブル美術館のアジア圏の代理人である朝比奈。
来月日本に来るモナリザの鑑定を依頼した。
そのためにはルーブル美術館の、
学芸員になる必要があった。
こうしてルーブル美術館で行われる、
学芸員試験に参加することになった凛田。
会社に戻った悠斗は一部始終を記事にしたいと、
編集長に進言し、許可を得た。
悠斗は凛田とパリのルーブル美術館に向かった。
ルーブル美術館に着くと、直ぐに試験が始まる。
それは本物のモナリザを当てる試験。
通された部屋には複数のモナリザが飾られていた。
その中から、本物のモナリザを当てられれば合格。
試験管に、本物はどれか聞かれた凛田。
凛田は片言のフランス語で答えた。
「あの部屋にあるものは全部偽物。」
「通路にあったのが本物。」
それは見事に正解であった。
こうして学芸員の資格を得た凛田。
通路にあった本物のモナリザの後ろには、
『H29』の文字が書かれていた。
日本人で学芸員となったのは、
凛田ともう1人の女性、流泉寺美沙。
試験に合格した2人は、
日本で学芸員としての講義が始まることになる。
講義は12枚の絵から本物を直感で当てるもの。
それは2人で協力し、
1人が偽者と思う2枚の絵を直感で選び、
もう1人がその2枚のうちの1枚を排除する。
それを繰り返して最後に本物の絵を当てるもの。
講義はルーブル美術館の職員が立ち会い行う。
しかしフランス語の出来ない凛田。
足手まといの凛田に対して怒る美沙。
「学芸員がフランス語も出来ないなんて
「明日からは通訳しないから、何とかして。」
凛田は幼い頃から絵が大好きだった。
しかし勉強はまったく出来なかったのだ。
しかも一般常識が一切無かった。
そんな凛田がある日たたどり着いた記憶法。
物事を匂いとセットで記憶するというもの。
凛田は、その日1日でフランス語を暗記した。
翌日の講義。
完璧にフランス語を使いこなしていた凛田。
講義はスムーズに進んでいった。
ダ・ヴィンチの書いたモナリザには噂がある。
モナリザの瞳にはLとVの文字が見えると言う。
それを見た鑑定士はその後、
認識能力に障害をきざすと言われた。
それは、ダ・ヴィンチが解剖学にも長けていて、
何らかの細工をモナリザにしたとされていた。
講義を続けた凛田と美沙。
しかし、一度も成功することがなかった。
講義の後も一人練習を続けた凛田。
それを見た美沙も一緒に練習を始めた。
その練習で始めて1枚の本物を当てた二人。
喜ぶ2人だったが、突然凛田を頭痛が襲った。
それからも講義は続きいろんな絵で行われた。
本物の絵を当てる度に強くなる凛田の頭痛。
頭痛が増す中で、講義は最終日を迎えた。
2人はルーブル美術館の職員に連れられ、
大きな美術館に移動した。
最後の講義は本物のモナリザを当てるもの。
手法は今までとまったく同じ。
2人で排除を続けていく。
講義は順調に進み、残るは2枚。
凛田と美沙が選んだ最後の1枚。
モナリザは本物であった。
しかし同時に倒れこんだ凛田。
職員たちが駆け寄るが、
凛田は急に立ち上がりモナリザの前へ歩いた。
凛田が見たモナリザの瞳の中には、
LとVの文字が見えていた。
講義も終わり、通常の仕事に戻った凛田。
しかし凛田は鑑定が出来なくなっていた。
人間国宝の作る壷とレプリカの見分けすらできない。
凛田は店を閉めていなくなった・・・
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取材を続けていた悠斗は、行方を追った。
美沙のもとに話を聞きに行った悠斗。
凛田が学芸員の資格を失ったとことを知る。
悠斗はモナリザの瞳の噂の真相を探るため、
医学的にありえるかを、医師に相談しに行く。
基本的には、あり得ないという見解であったが、
凛田の前後の行動次第とも言った。
悠人はその帰り道。
困り果てた悠斗が見たのは、
モナリザ来日に伴い駅に貼られたポスター。
悠斗は並んだポスターの違和感に気付いた。
急いで家に帰った悠斗は、
凛田が受けた講義を、
12枚のカードに置き換え実践した。
何度も繰返し、何かに気が付いた悠斗。
その時、一本の電話が入る。
凛田の居場所が分かったという内容だった。
悠斗は直ぐに、凛田のいる場所へ向かった。
そして凛田を見つけると、
「これを見て欲しいんです。」
そう言うと、講義と同様の直観テストを始めた。
12枚の写真を講義と同じように、
悠斗と凛田は排除していった。
そして、いとも簡単に成功した2人。
疑問に思った凛田に、種証をした悠人。
それはとても簡単なものだった。
悠斗は最初から正解を分かっていたのだ。
片方の人間が正解を分かっている以上、
外れることはない訓練。
正解があると思い講義を続けた凛田は、
間違ったことを繰り返し行ったことで、
正しい鑑定能力を狂わしたのだった。
つまり瞳の中の文字が原因ではなく、
講義自体が全て仕組まれていたのである。
凛田が見たモナリザも、おそらく全て偽者。
真相を伝えた悠斗は凛田に言う。
「あの書類を渡されたときから、
嘘は始まっていたんです。」
「凛田さんは、
大きな事件に巻き込まれているんです。」
それを聞いた凛田は我にかえり、
「急がないと大変なことになる。」
そう言うと直ぐに美術館へ向かった。
そのころ美沙は、
まもなくモナリザ展が開催される美術館にいた。
慎重に保管されている名画モナリザ。
しかし関係者である美沙には、
モナリザを持ち出すことは容易かった。
美沙の仲間は時間通りに美術館に電話して、
警備員の目をそらした。
その隙に防犯カメラを細工した美沙。
後は予め入手したパスワードで絵を持ち出した。
そして裏口に待機した仲間に渡す。
美術館に到着した凜田は美沙へ言う。
「モナリザを返してください。」
凜田に気付かれた美沙は否定むせずに言った。
「最初から脅威を感じていた。」
「この計画にはあなたが邪魔だったの。」
「だから能力を失わせて、
学芸員から外れてもらうことにした。」
「あなたも世界中の人々も、
ルーブルに騙されていたの。」
「私たちはモナリザを盗み出したんじゃない。」
「返したの。」
「今この美術館の収蔵庫にあるものこそ、
本物のモナリザ。」
「103年前、
モナリザは一度盗みだされたことがある。」
「そして、無事ルーブルに戻ったとされている。」
「でもそれは嘘。」
「私たちはその嘘を正した。」
〜1911年のモナリザ盗難事件〜〜〜〜〜
ガラス職人のペルッチャが盗んだモナリザ。
しかし依頼人の詐欺師マルケスは、
そのモナリザを受け取りに現れなかった。
マルケスは本物がなくなったことで、
贋作を販売することが目的だったのだ。
業を煮やしたペルッチャは、
画商に本物のモナリザを売ろうとして捕まった。
そしてルーブルにモナリザは戻った。
Z〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
美沙はこの話が嘘だと凛田に伝えた。
ペルッチャが売ろうとしたものも偽者。
本物のモナリザは、
ペルッチャの隠した場所に今でも眠っている。
現代になり末裔に引き継がれたのだと。
それがルーブル職員のリシャール・ブレ。
本物のモナリザの裏には1503と書かれ、
バロア朝の紋章が刻印されている。
1910年にイタリア新聞にも載った事実と。
確かに現在本物とされるモナリザの裏には、
『M29』と書かれている。
しかし、その話に凛田は反論した。
それ自体がマルケスの仕組んだ嘘であり、
嘘の記事を書くことで贋作を作りやすくした。
ルーブルは反論をしないことで、
本物と偽者の区別がつくようにしたのだと。
更に、美沙もリシャール・ブレに騙されていると・・・
その時凛田に悠斗から電話が入った。
搬送業者を装って持ち出されたモナリザ。
悠斗は運ばれたモナリザを1人で追っていた。
そしてリシャール・ブレに捕まった。
電話越しに聞こえるリシャール・ブレの声。
「これから絵を燃やす。」
「偽りの歴史を正すために。」
凛田は電話から居場所の推測をした。
後ろで聞こえていた音と音楽。
高速エレベータの中と推測を立てた凛田。
美術館から20分以内で、40階以上のビル。
しかし東京の真ん中。
件数が多すぎて、探すには時間がかかる。
その時、凛田が目にしたのは、
美沙のジャケットに付いていたボタン。
ジャケットのボタンが1つだけ違ったのだ。
ボタンから再度推理をした凛田。
そのボタンは美沙が泊まっていたホテルで外れ、
付け替えてもらった代用品であると。
その柄のボタンを提供しているホテル。
直ぐに特定できたホテルに向かう凛田と警察。
その頃リシャール・ブレは、
悠斗とモナリザの置かれた部屋に火を放った。
ホテルに到着した凛田は、
手がかりを探すべくゴミ庫をあさった。
ある1つのゴミ袋の中から出てきたレシート。
その全てが『勝鬨』の店のものであることに気付く。
勝鬨にある高層ビルと範囲が絞られ、
居場所が特定出来た凛田。
急いで向かうが、
ビルの最上階からは煙が上がっていた。
最上階の煙の出る部屋を開けると、
モナリザは既に燃えており、
手足を縛られた状態で必死に阻止しようとした、
悠斗のみが助かったのであった。
凛田に着いて来た美沙。
美沙は燃えたモナリザを見て凛田に言った。
「最後の試験で鑑定したモナリザを覚えている。」
「あのとき私だけに分かるように仕掛けた印。」
そう言うと、燃えたモナリザの額縁から、
小さなピンを取り出した。
「この絵はあの試験に使っていた偽者。」
「瞳の中に、
あなたを騙すために付けたLとVもある。」
その証言を聞いた凛田は言った。
「つまり彼は本物のモナリザを持っている。」
「美沙さんの贋作を憎む気持ちに付け込んで、
彼はあなたを騙し続けていた。」
「この絵を燃やしたのも、
本物を持ち去るための時間稼ぎ。」
それを聞いていた警察は、
簡単に日本から持ち出すことは出来ないと言う。
しかしそれに対して凛田は言い返した。
「ある!」
「ルーブルでも使われた方法です。」
そう言い、警察を連れて直ぐに横浜港に向かった。
その頃本物のモナリザを盗んだリシャール・ブレ。
日本から持ち運ぶためにX線検査を受けていた。
そしてフランス政府に対して、
身代金を要求する手はずを進めていた。
モナリザのX線検査を終えて、
横浜港から出航しようとしたリシャール・ブレ。
そこを警察が囲い込んだ。
無条件で逮捕されるリシャール・ブレ。
連行されるリシャール・ブレに美沙は言った。
「この4年間は、
偽者だったかもしれないけど、
そこに私にとっての真実があったと、
今でも思ってる。」
「あなたには分からないでしょうね。」
モナリザを持ち出した手口は、
無数にあるモナリザの看板を、
フランスに持ち帰ると見せかけ、
本物を看板に埋め込んだもの。
本物のモナリザを探すには大変な労力がかかる。
凛田は美沙に言った。
「私には人の心を鑑定することはできません。」
「でもあなたの芸術を愛する気持ちだけは、
真実だと確信しています。」
そして、全看板を没収する警察に対して言う。
「私たちに選ばせてください。」
「私と彼女で鑑定します。」
それを聞いた美沙は言った。
「私にそんな資格は無。」
しかし、凛田は遮るように言った。
「本物をルーブルに返しましょう。」
「それがあなたの本当の願いなんでしょう?」
警察たちによって港に並べられた、
無数のモナリザの看板。
2人が指を差したモナリザは同じものだった。
慎重に解体する警察。
絵の裏には『H29』の刻印が・・・
悠斗は遠くから、2人を写真におさめていた。
共犯として連行される美沙に凛田は言った。
「どこかでまた、鑑定しましょうね。」
その言葉に美沙は泣き崩れていた。
美沙を暖かく抱きしめる凛田であった。
数日後。
モナリザ展は無事開催された。
凛田と悠斗はモナリザ展に足を運んだ。
そこで悠斗は凛田に聞いた。
「再度学芸員として迎え入れたいって、
言われたんじゃないんですか?」
凛田は答えた。
「いいんです。」
「私はやっぱりあの店が似合ってます。」
悠斗は続けて凛田に聞いた。
「大事なこと・・・」
「ずっと気になってたんですが、
Qってどういう意味ですか?」
「色々考えたんですよ。」
「Qってクイーンでしょ?」
凛田は前を向いたまま言った。
「教えません。」
そんな話をしながらモナリザの前に立った2人。
モナリザを見た凛田は呟いた。
「穏やかな目をしてる。」
それを聞いた悠斗は凛田に言う。
「モナリザはこんな事件に巻き込まれて、
どんな目で僕らを見ているんでしょうね?」
そして続けて凛田に聞く。
「聞きたいんですけど・・・」
「これ本物?」
凛田は微笑みながら答えた。
「さあね〜。」
(終わり)
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2016年01月23日
【おっぱいバレー】出演者・感想・完全ネタバレ (セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【おっぱいバレー】
【出演者】
寺嶋美香子:綾瀬はるか
堀内健次(先生):青木崇高
平田育夫(バレー部):木村遼希
楠木靖男(バレー部):高橋賢人
杉浦健吾(バレー部):本庄正季
江口拓(バレー部):恵隆一郎
岩崎耕平(バレー部):吉原拓弥
城良樹(バレー部):橘義尋
城和樹(良樹の父):仲村トオル
竜王中コーチ:田口浩正
原田幸次郎(美香子の恩師):小林勝也
原田の妻(幸次郎の妻):市毛良枝
戸畑第三中学校の教頭:光石研
ナカイ先輩:石田卓也
寺嶋美香子(中学時代):大後寿々花
寺嶋美香子の元カレ:福士誠治
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【感想】
少しだけ何かが足りない・・・
性に対する探究心?
そんな時の青春時代?
作りたいものは分かるんですけど・・・
何かが足りないんですよね〜
感動なのか?コメディなのか?
どちらかを重点的に描いたほうが、
良かった気がするんです・・・
詰め込もうとしすぎたんですかね〜
笑いきれずに、感動しきれない感じでした。
バランスはいまいちでしたが、
綾瀬はるかさんは上手ですね〜
実際の天然がそのまま出てた気がします。
なんか弾き付けられる魅力があります。
すみません。
感想はこんなことしか書けませんでした・・・
【あらすじ】(ネタバレあり)
自転車を漕ぎながら手を上げ、
風を感じる戸畑三中の5人。
「ダメだこんなんじゃない。」
「時速80キロ以上じゃないと、
おっぱいの感触味わえないらしい。」
次に試したのは、改造した車イス。
ヘルメットをして坂道を下った。
猛スピードで坂を下りながら言う。
「コレがおっぱいの感触・・・」
本物ではないが始めて体験する感触。
幸せを感じると同時に、
ガードレールを突き破り崖へと落ちた・・・
数日後の朝礼中、
教頭の話を聞かずに雑談をする5人。
「時速60キロがAカップ。」
「時速80キロがBカップ。」
「そして時速100キロがCカップ。」
その朝礼で教頭は赴任して来た国語の先生、
寺嶋美香子を紹介した。
紹介を受け生徒に挨拶をする寺嶋。
国語教師の彼女は自分の好きな本を紹介した。
紹介したのは高村光太郎の詩集『道程』。
「私の大好きな『道程』です。」
「私はこの『道程』が大好きです。」
「『道程』の意味、
『道程』の素晴らしさに触れてください。」
男子生徒はザワザワと騒ぎ出した。
鼻血を出す男子生徒もでて、
更にザワつきは大きくなった。
朝礼が終わると教頭は寺嶋に、
「今後あまり刺激しないようにお願いしますよ。」
そういって、今後受け持つ部活を伝えた。
それは、男子バレー部であった。
「はい。頑張ります。」
何も知らずに快諾した寺嶋。
しかしバレー部は、おっぱいバカの5人。
何も知らず張り切る寺嶋に、
同僚の堀内は言った。
「あいつら練習したとこなんて、
見たこと無いですよ。」
「そもそも頑張るというやつに、
一番無縁な奴等なんですよ。」
それを聞いた寺嶋は返す。
「教師がそんな事言ってどうするんですか。」
「頑張るのを教えるのが私たちじゃないですか。」
翌日、部室に行った寺嶋。
クラッカーを鳴らして歓迎する5人。
「歓迎してくれるのは嬉しいけど、練習は?」
寺嶋に言われて準備運動をする5人。
寺嶋は言う。
「今日は女子と練習試合するから。」
「女子だし手加減してあげてね。」
それを聞いた5人は言った。
「無理です。無理です。」
「だって僕ら5人しかいませんから。」
と、そこに1年の城が声をかけてきた。
「バレー部に入りたいんですけど。」
「小学校からバレーやってたんですけど。」
タイミングよく6人が揃った。
寺嶋は予定通り練習試合を進めた。
しかし結果は・・・
女子相手に15対0の圧倒的な敗北。
唖然とする寺嶋。
落ち込む様子もない5人。
それを見た城は怒って言う。
「本当にバレー部なんですか?」
「Aクイックも出来ないんですか?」
真剣な城とは違い5人は、
「Aっていやらしいこと?」
呆れた城は言った。
「僕。辞めます。」
部室に戻った5人と寺嶋。
歓迎会の続きをしようとする5人。
その行動に更に呆れ寺嶋は言う。
「みんなバレーボールやりたくないの?」
すると5人は、
「バレーボールやったことないし・・・」
「僕たち入部以来、
バレーボールやらせてもらって無いんです。」
1つ上の先輩にナカイという怖い先輩がいて、
卒業するまで、ずっといびられていたと話した。
くだらないことを続けさせられたせいで、
周りからわ「バカ部」と呼ばれていた。
それからは体育館は使えなく、
コートも女子部に占領された。
こうして今があることを伝えると、
「バレーボールなんて忘れて、
みんなで楽しみましょうよ。」
と言って歓迎会の続きを始めようとする。
その話を聞いた寺嶋は言った。
「バカにされたまんまで悔しくないの?」
「試合で勝ってみたいとか、
そんな気持ち無いの?」
「なんで頑張りもしないで諦めてるのよ。」
「朝礼でも言ったでしょ。」
そう言って『道程』の一説を言う寺嶋。
「僕の前に道はない。」
「僕の後ろに道はできる。」
そして続けて寺嶋は言った。
「もしあなたたちが頑張るなら、
先生なんでもするから。」
5人はこの言葉に食いついた。
「何でも?ってことは・・・」
「分かりました。」
「先生は僕らが頑張るなら、
何でもしてくれるんですよね?」
「もし僕らが今度の大会で1勝したら・・・」
「先生のおっぱいを見せてください。」
「お願いしま〜す。」
寺嶋は焦って返す。
「そんな事できる訳無いじゃない。」
5人は寺嶋の反応を弄ぶように言う。
「ですよね・・・」
「先生ってそんなものですよね・・・」
「嘘つき・・・」
更に焦った寺嶋は言った。
「嘘なんてつかないわよ。」
「私は嘘はつかない。」
思惑通りの発言に、5人は喜んだ。
勝てないことを祈るも、
顧問として勝ちたい寺嶋。
その話を堀内にすると、堀内は言う。
「学校に知れたら大騒ぎになりますよ。」
「そもそも教師として間違ってますよ。」
寺嶋はそんなことは分かっていた。
「そんな約束無しで頑張らせなきゃダメだよね。」
「約束は無しって明日はっきり言います。」
翌日。
5人は強豪校へ視察に行った。
コートにはコーチの激が飛んでいた。
「お前ら命かけてやってるのか?」
「死ぬまで走って来い。」
そんな厳しい練習を見た5人は考えた。
「俺たちとは違うみたい。」
「とりあえず練習の邪魔をするって言うのは?」
早速バレーボールに穴を開けようと、
用具庫に忍び込んだ5人。
同時に体育館に入ってくる新体操部。
レオタードに目が行っている隙に、
直ぐに他校の先生に見つかった。
寺嶋のもとに電話が入り、
5人を引き取りに行った寺嶋。
部室に戻った5人に寺嶋は怒った。
しかし5人の反応は
「だって俺ら普通にやっても勝てないから・・・」
呆れた寺嶋は続けた。
「だからって相手の足ひっぱっていいの?」
「自分たちは努力もせず、
汗も流さず、死ぬ気で頑張りもせず、
私のおっぱいを見ようっていう根性な訳?」
「私に対して失礼じゃないの?」
「そんなに簡単に見れると思ったら大間違い。」
少し違う怒り方・・・
自分自身言ったことに疑問を持った寺嶋。
すると5人は素直に受け止め、
「寺嶋先生の言うとおりです。」
「僕ら卑怯でした。」
「せっかく先生が約束してくれたのに・・・」
「すみませんでした。」
「先生の言うとおり、
死ぬ気で頑張って、
今度の大会1勝して、
寺島先生のおっぱい見ます。」
「やるぞ!おっぱい見るぞ!」
何か違った感じで意欲がでた5人。
次の日から、
女子部の使うコートを占領して練習を始めた。
それを見た女子バレー部の顧問は、
「何を言ったか知りませんけど、
今更何をやらせたって無理なんですから。」
寺嶋は返した。
「無理なんてことは無いです。」
「彼らは本気で頑張り始めたんです。」
必死に練習を始めた5人。
寺嶋も監督としての勉強を始めた。
しかし5人では試合はできない。
そこで、寺嶋と育夫は城を再度誘いに行った。
家にいたのは城の父。
家の中には城の父が獲った、
バレーボールのトロフィーが並んでいた。
城の父は2人に聞いた。
「あいつ練習頑張ってますか?」
城がバレーボールをやっていると思っていた。
慌てた育夫は話を変えて聞いた。
「今日は城君のお父さんに、
バレーボールのことを、
色々教えてもらおうと思って。」
城の父親はアドバイスをしてから、
息子について話した。
「あいつバレーボール楽しんでますかね?」
「私が怪我でバレーボール諦めてから、
あいつきっと自分が続けることで、
私を喜ばせようとしてる。」
「そう思えるんですよ。」
家を出た育夫は4人にその話をした。
そして手分けをして城を探すことにした。
城を見つけた育夫は言った。
「また俺たちとバレーボールをやろう。」
しかし城は答える。
「俺バレーボールなんて興味ないですから。」
そう言って背を向けて歩き出す城。
城は公園に停められたバイクを見つけ、
仲間たちと悪ふざけでバイクを倒した。
そのバイクの持ち主はナカイ先輩。
城はナカイ先輩に捕まってしまう。
城を殴り続けるナカイ先輩の下へ行く5人。
「城は僕らの後輩です。」
「殴るなら僕等をお願いします。」
怒っている見境のないナカイ先輩は、
5人をボコボコにした。
気の済んだナカイ先輩が帰ると、
育夫は城に言った。
「城。一緒に・・・一緒に・・・
俺たちと一緒に・・・見よう!」
「おっぱいを・・・」
城は身を張って助けようとした5にんに感謝し、
バレーボール部への再入部を決めた。
「よろしくお願いします。」
寺嶋にそう言って頭を下げた城の目線は、
寺嶋の胸元を見ていた・・・
練習を続けた6人は、どんどん力を付けていく。
女子バレー部とのリベンジ戦でも勝ち、
明らかに数ヶ月前とは変わっていた。
そんな6人に、複雑な気持ちを抱く寺嶋。
頑張っている6人には勝ってほしいけど、
勝ったら自分が困る・・・
そしていよいよ、公式戦の当日。
ベンチで大戦校を待つ6人と寺嶋。
そこに審判が来て言う。
「棄権のため戸畑三中の不戦勝ととします。」
コートで飛び跳ねて喜ぶ6人。
控え室に戻ると、育夫は寺嶋に言った。
「先生。お願いします。」
同時に拍手を始めた5人。
それに対して寺嶋は返した。
「まだ勝ってないでしょう?」
6人は言い返した。
「勝ちは勝ちです。」
「戦わずして勝つと書いて不戦勝ですから。」
動揺した寺嶋は言った。
「それは、ずるいんじゃないかな〜。」
寺嶋の言葉に大ブーイングの6人。
更に慌てた寺嶋は続けた。
「私は不戦勝でいいのかってこと言いたいの。」
まったく動じない5人は聞き返す。
「どこがダメなんですか?」
しかし、城だけは違った。
「先生の言うとおり、
不戦勝で勝ったっていえるんですか?」
5人は城に反論した。
「勝ちは勝ちだって。」
「おっぱい見たくないのか?」
しかし城は頑なに言う。
「もっとすっきりした気持ちで見たいんです。」
「不戦勝とかじゃなくて、
先輩たちと一緒に戦って、
おっぱいを見たいんです。」
その城の言葉に賛同したのは育夫だった。
「そうだな。」
「ちゃんと勝たないと先生だって、
すっきりおっぱい見せれないよな。」
「ですよね?」
急にふられた寺嶋は答えた。
「そうよ!」
こうして一時的に難を逃れた寺嶋だった。
しかし、このあとに6人は気づく。
2回戦の相手は強豪校の竜王中。
それを知って頭を抱えた6人。
帰り道に寺嶋は落ち込む6人に言った。
「私は勝てる気するけどな。」
「一人ひとりの技術は向こうのほうが上だし、
チームの戦力としても向こうが上。」
「それは仕方ないよね。」
「練習してきた年月が違うんだから。」
「でもね、君たちは今成長しているの。」
「もの凄い勢いでね〜。」
「あると思うんだ〜そう言う力って。」
「2回戦まであと2週間。」
「今の君たちなら、
勝てるかもしれないって私は思う。」
「私のおっぱいを見るために頑張りなさい。」
その言葉を聞いた6人。
今までの落ち込みとは違い、
急激にテンションを上げるのだった。
数日後、寺嶋は元彼に会っていた。
お酒を飲んで昔を思い出していた寺嶋。
昔に働いていた中学校。
生徒たちと仲良くしており、
生徒たちと一緒にロックのコンサートに行った。
それが他の先生たちにバレて、
寺嶋が誘ったのかと問い詰められ。
違うと否定した寺嶋。
その事がきっかけで、生徒との間に溝が出来た。
寺嶋は急に学校に行きたくない、
そう元彼に言い出したのだった。
仕事に追われていた元彼は、
まともに話も聞くことも出来ず、
自然に2人は別れたのであった。
今回元彼は寺嶋と寄りを戻そうと誘っていた。
寺嶋も優しい言葉に流されて、
食事の後はそのままホテルに行った。
過去のような良い雰囲気の2人。
元彼が寺嶋の上着のボタンを外そうとした時、
寺嶋にはバレー部の6人の顔が浮かんだ。
「これは皆の夢なの!」
そう言って元彼を払いのけた寺嶋。
そのままホテルを後にした・・・
一方、真剣に練習を続ける6人のもとに、
ナカイ先輩が現れた。
なぜ真剣にやっているのかと事情を聞いた。
怯えて事情を説明した6人。
それを聞いたナカイ先輩は言う。
「おっぱいか〜。」
「いいセンコウだな〜。」
「お前ら。コレで負けたら男じゃねえぞ!」
そう言って喝を入れてくれたのだった。
しかしこの時、部室の外では、
女子バレー部がその話を聞いていた・・・
2か回戦までの練習に励む6人。
城の父親が所属していた実業団の力も借りて、
厳しい練習の毎日で過ごした。
大会前の最終合宿。
6人が寝ると寺嶋は同僚の堀内に、
自分の中学の話した。
中学時代は部活をやっていなかったと話し、
過去に1度だけやった万引きの話をする。
その万引きで警察に捕まり停学処分を受けた話。
停学は自宅謹慎ではなく、1週間の実習。
その時担当したのが原田先生。
原田先生は怒りもせず説教もしない。
忘れ物の本を読ませて感想文を書かせた。
寺嶋は、その本に落書きを続けた。
実習最後の日に読んだのが『道程』だった。
「僕の前に道は無い」
「僕の後ろに道は出来る。」
その時書いた感想文を、
勝手にコンクールに出した原田先生。
〜〜その時書いた感想文〜〜〜〜〜〜〜〜〜
人は前を向いて歩くとき、必ず顔を上げます。
万引きした私のように、
キョロキョロと店員さんの視線を気にし、
うつむいた顔では決してありません。
私も前を向いて歩きたい。
自分の道を作りたい。
私の道は必ず私の後ろにできるのだから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その感想文は市で賞を貰い、
長い間、市役所に掲載された。
掲載されている期間、
毎日のように市役所に通った寺嶋。
そんなある日、
掲載された感想文の前に佇む原田先生を見た。
寺嶋に気がついた原田先生は言った。
「お前、教師にでもなったらどうだ?」
「国語の教師。向いているかもしれんぞ。」
そんな思い出話をした寺嶋は、
続けて堀内に言った。
「自分が何になりたいかなんて、
考えたことなかったけど、
目の前に道が開けた気がしたんだよね。」
「だから一人前の教師になれたら、
原田先生のところに報告に行きたいなって・・・」
それを聞いて堀内は言った。
「行けばいいじゃないですか。」
しかしうつむいて寺嶋は答えた。
「いけないよ。」
「だって私はまだ・・・」
そんな寺嶋に堀内は言った。
「僕は寺嶋先生、良い先生だと思いますよ。」
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いよいよ大会間近となったある日。
バレー部の6人は、自分達の将来の話をした。
「良かったよなバレー部にいて。」
「受験とかもこの勢いでいけると思わない?」
「最後かもね?皆で何かできるの。」
「美香子のおかげかな?」
「最後に良い思い出、できそうじゃん。」
そして皆は個々を奮わせ言った。
「絶対勝って美香子のおっぱい見ようぜ。」
「美香子のおっぱい見ることが、恩返しだ。」
その頃、男子バレー部のやる気は、
ふしだらな動機によるものと噂が広まった。
その噂は先生たちにも広まって、
ついに校長室に呼ばれた寺嶋とバレー部6人。
教頭は寺嶋に聞いた。
「変な噂が広まってましてね。」
「地区大会で1勝したら胸を見せてくれると、
寺嶋先生が約束したから頑張っているんだと。」
「本当のことですか?」
寺嶋は動揺した。
「それは・・・」
その時、育夫は寺嶋の返事に被せて答えた。
「本当だけど、嘘です。」
「そんな約束するはず無いじゃないですか。」
「僕等がふざけて言っているだけです。」
この声は教頭には届かない。
「黙れ。今は寺嶋先生に聞いているんだ。」
そして寺嶋は答えた。
「私は・・・」
「私が約束しました。」
そう言うとバレー部に向かい言った。
「ごめんね。嘘はつきたくないの。」
それを聞いていた校長は言った。
「所詮、こいつらはこんなもんですよ・・・」
見下した言葉を聞いた寺嶋は反論した。
「彼らが頑張っていたのは本当です。」
しかし校長は反論を遮り、
「言い訳は結構。」
「これは大変な問題ですよ。」
教室に戻った寺嶋に女子バレー部は言う。
「私が友達に話しちゃったんです。」
「そしたらこんなに広まっちゃって。」
「でも、先生のした約束は、
間違っていると思います。」
寺嶋は責任をとり学校を辞めることになった・・・
寺嶋のいない中での大会当日。
その日、寺嶋は原田先生のお墓の前にいた。
寺嶋は原田先生の墓に向って言う。
「原田先生。」
「やっぱり私ダメでした。」
「また失敗しちゃいました。」
「こんな報告でごめんなさい。」
そんな寺嶋を見かけた、原田先生の妻が声をかけた。
担任ではなかったが、寺嶋のことを知っていた妻。
そして家に連れて行かれた寺嶋。
寺嶋は原田先生の妻に、
自分が先生になったことを伝えた。
すると原田先生の妻は言った。
「主人が聞いたらとっても喜ぶわ。」
「あなたが万引きをして停学になったときね、
毎朝あの本棚の前で、
『今日はどの本にしようかな』って悩んでたの。」
それを聞いた寺嶋は、
本棚にある『道程』を手にとり開いた。
そこには自分の書いた落書きが・・・
「コレって・・・」
「忘れ物じゃなかったんですか?」
そう言って他の本を開くと、
全ての本に自分の落書きがあった。
原田先生の妻は続けて話した。
「どうしたら力になれるんだろうって、
コレでいいのかな〜
ダメなのかな〜
間違っているのかな〜
って、毎日毎日。」
「主人はいつも生徒たちに、
道は目の前にあるんだってこと、
気付かせたいって言ってた。」
「じゃあ、今度はあなたが同じ事を、
あなたの生徒たちに、
気付かせてあげられたらいいわね。」
涙する寺嶋は、
「私の・・・生徒たち・・・」
そう言うと走り出した。
寺嶋のいないバレー部は圧倒的に押されていた。
一生懸命声を出して応援する堀内。
しかし1点も取れずに1セット目は負ける。
そこに現れた寺嶋。
6人を見て言った。
「こらっ!お前等!」
「誰が約束は無しだって言ったのよ!」
「私は言ってないぞ、そんな事。」
「私は戸畑三中をクビになったって、
あなたたちの先生なのよ。」
「私のおっぱいを見るために頑張りなさい。」
2セット目から6人の動きは変わった。
今までの劣勢は嘘のように点数を重ねた。
そして2セット目を奪取した戸畑三中。
喜んだ6人と同時に、
竜王中のコーチの声が響き渡る。
「バカヤロウ!」
「お前等全員メンバーチェンジや!」
「おい!1軍!」
今まで戦ってたのは2軍だったのである。
それでもめげない戸畑三中の6人。
「関係ないよ。」
「俺たちには美香子のおっぱいが、
賭かっているんだから。」
「絶対勝つ!」
「おっぱい!おっぱい!おっぱい!オー!」
そして第3セット目。
圧倒的な強さの竜王中の1軍。
それでも喰らいつく戸畑三中。
しかし結果は4対15。
試合終了の笛が鳴った・・・
体育館のベンチに座ったまま、
立ち上がることができない寺嶋。
歩み寄ったのは城の父。
寺嶋は変な約束をしたことを謝った。
「どうして謝るんですか?」
「知ってましたよ僕はそのこと。」
「目的なんて別にいいんですよ。」
「あいつら頑張ることの素晴らしさを、
身をもって知ったんだから。」
「早く行ってあげてくださいよ。」
「あいつら待ってますよ。」
背中を押され寺嶋は控え室へと向かった。
そこには泣き崩れるバレー部の6人。
寺嶋は6人に声をかけた。
「さあ、みんな立って。」
「みんな胸張って!」
「みんな本当に良く頑張ったよ。」
「みんなカッコ良かった。」
「最高だったよ。」
「ありがとう・・・ありがとうね。」
すると6人は立ち上がり寺嶋に抱きついた。
数日後。
正式に寺嶋は退職となった。
学校を去ろうとする寺嶋に堀内は声をかけた。
「これからどうするんですか?」
寺嶋は答えた。
「もちろん教師を続けるよ。」
「私にはコレしかないと思ったし、
いい教師になろうって決めた。」
寺嶋は最後にバレー部の部室へ足を運んだ。
誰もいない部室を眺めた。
寺嶋の顔は清清しかった。
そして下駄箱で靴を履こうとしたとき、
中には手紙が入っていた。
それはバレー部6人からの手紙だった。
駅のホームで、その手紙を読んだ寺嶋。
「あいつら・・・」
そう言って電車に乗りこんだ。
走る線路脇には男子バレー部が待っていた。
『ありがとう!おっぱい先生!』
と書いたダンボールを持って、
自分たちの胸にバレーボールを2個忍ばし、
電車を追って走るバレー部6人。
それを見て窓を開けた寺嶋は、
男子バレー部6人に手を振って言う。
「ありがとう。みんな!」
「元気でね〜。」
「いい男になれよ〜。」
「ありがとう!」
〜〜バレー部から寺嶋に書いた手紙〜〜〜〜
寺嶋先生へ
先生はどう思っているか分かりませんが、
僕たちはあの試合勝てなかったけど、
全然後悔していません。
だって負けたおかげで、
先生の胸に飛び込むこと出来ましたから。
負けた場合に備えて僕等、
エブーの胸に飛び込む練習をしていたので、
良い位置に飛び込めました。
最高の感触ありがとうございました。
男子バレー部一同より。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(終わり)
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【おっぱいバレー】
【出演者】
寺嶋美香子:綾瀬はるか
堀内健次(先生):青木崇高
平田育夫(バレー部):木村遼希
楠木靖男(バレー部):高橋賢人
杉浦健吾(バレー部):本庄正季
江口拓(バレー部):恵隆一郎
岩崎耕平(バレー部):吉原拓弥
城良樹(バレー部):橘義尋
城和樹(良樹の父):仲村トオル
竜王中コーチ:田口浩正
原田幸次郎(美香子の恩師):小林勝也
原田の妻(幸次郎の妻):市毛良枝
戸畑第三中学校の教頭:光石研
ナカイ先輩:石田卓也
寺嶋美香子(中学時代):大後寿々花
寺嶋美香子の元カレ:福士誠治
〜〜〜Sponsords Link〜〜〜
【感想】
少しだけ何かが足りない・・・
性に対する探究心?
そんな時の青春時代?
作りたいものは分かるんですけど・・・
何かが足りないんですよね〜
感動なのか?コメディなのか?
どちらかを重点的に描いたほうが、
良かった気がするんです・・・
詰め込もうとしすぎたんですかね〜
笑いきれずに、感動しきれない感じでした。
バランスはいまいちでしたが、
綾瀬はるかさんは上手ですね〜
実際の天然がそのまま出てた気がします。
なんか弾き付けられる魅力があります。
すみません。
感想はこんなことしか書けませんでした・・・
【あらすじ】(ネタバレあり)
自転車を漕ぎながら手を上げ、
風を感じる戸畑三中の5人。
「ダメだこんなんじゃない。」
「時速80キロ以上じゃないと、
おっぱいの感触味わえないらしい。」
次に試したのは、改造した車イス。
ヘルメットをして坂道を下った。
猛スピードで坂を下りながら言う。
「コレがおっぱいの感触・・・」
本物ではないが始めて体験する感触。
幸せを感じると同時に、
ガードレールを突き破り崖へと落ちた・・・
数日後の朝礼中、
教頭の話を聞かずに雑談をする5人。
「時速60キロがAカップ。」
「時速80キロがBカップ。」
「そして時速100キロがCカップ。」
その朝礼で教頭は赴任して来た国語の先生、
寺嶋美香子を紹介した。
紹介を受け生徒に挨拶をする寺嶋。
国語教師の彼女は自分の好きな本を紹介した。
紹介したのは高村光太郎の詩集『道程』。
「私の大好きな『道程』です。」
「私はこの『道程』が大好きです。」
「『道程』の意味、
『道程』の素晴らしさに触れてください。」
男子生徒はザワザワと騒ぎ出した。
鼻血を出す男子生徒もでて、
更にザワつきは大きくなった。
朝礼が終わると教頭は寺嶋に、
「今後あまり刺激しないようにお願いしますよ。」
そういって、今後受け持つ部活を伝えた。
それは、男子バレー部であった。
「はい。頑張ります。」
何も知らずに快諾した寺嶋。
しかしバレー部は、おっぱいバカの5人。
何も知らず張り切る寺嶋に、
同僚の堀内は言った。
「あいつら練習したとこなんて、
見たこと無いですよ。」
「そもそも頑張るというやつに、
一番無縁な奴等なんですよ。」
それを聞いた寺嶋は返す。
「教師がそんな事言ってどうするんですか。」
「頑張るのを教えるのが私たちじゃないですか。」
翌日、部室に行った寺嶋。
クラッカーを鳴らして歓迎する5人。
「歓迎してくれるのは嬉しいけど、練習は?」
寺嶋に言われて準備運動をする5人。
寺嶋は言う。
「今日は女子と練習試合するから。」
「女子だし手加減してあげてね。」
それを聞いた5人は言った。
「無理です。無理です。」
「だって僕ら5人しかいませんから。」
と、そこに1年の城が声をかけてきた。
「バレー部に入りたいんですけど。」
「小学校からバレーやってたんですけど。」
タイミングよく6人が揃った。
寺嶋は予定通り練習試合を進めた。
しかし結果は・・・
女子相手に15対0の圧倒的な敗北。
唖然とする寺嶋。
落ち込む様子もない5人。
それを見た城は怒って言う。
「本当にバレー部なんですか?」
「Aクイックも出来ないんですか?」
真剣な城とは違い5人は、
「Aっていやらしいこと?」
呆れた城は言った。
「僕。辞めます。」
部室に戻った5人と寺嶋。
歓迎会の続きをしようとする5人。
その行動に更に呆れ寺嶋は言う。
「みんなバレーボールやりたくないの?」
すると5人は、
「バレーボールやったことないし・・・」
「僕たち入部以来、
バレーボールやらせてもらって無いんです。」
1つ上の先輩にナカイという怖い先輩がいて、
卒業するまで、ずっといびられていたと話した。
くだらないことを続けさせられたせいで、
周りからわ「バカ部」と呼ばれていた。
それからは体育館は使えなく、
コートも女子部に占領された。
こうして今があることを伝えると、
「バレーボールなんて忘れて、
みんなで楽しみましょうよ。」
と言って歓迎会の続きを始めようとする。
その話を聞いた寺嶋は言った。
「バカにされたまんまで悔しくないの?」
「試合で勝ってみたいとか、
そんな気持ち無いの?」
「なんで頑張りもしないで諦めてるのよ。」
「朝礼でも言ったでしょ。」
そう言って『道程』の一説を言う寺嶋。
「僕の前に道はない。」
「僕の後ろに道はできる。」
そして続けて寺嶋は言った。
「もしあなたたちが頑張るなら、
先生なんでもするから。」
5人はこの言葉に食いついた。
「何でも?ってことは・・・」
「分かりました。」
「先生は僕らが頑張るなら、
何でもしてくれるんですよね?」
「もし僕らが今度の大会で1勝したら・・・」
「先生のおっぱいを見せてください。」
「お願いしま〜す。」
寺嶋は焦って返す。
「そんな事できる訳無いじゃない。」
5人は寺嶋の反応を弄ぶように言う。
「ですよね・・・」
「先生ってそんなものですよね・・・」
「嘘つき・・・」
更に焦った寺嶋は言った。
「嘘なんてつかないわよ。」
「私は嘘はつかない。」
思惑通りの発言に、5人は喜んだ。
勝てないことを祈るも、
顧問として勝ちたい寺嶋。
その話を堀内にすると、堀内は言う。
「学校に知れたら大騒ぎになりますよ。」
「そもそも教師として間違ってますよ。」
寺嶋はそんなことは分かっていた。
「そんな約束無しで頑張らせなきゃダメだよね。」
「約束は無しって明日はっきり言います。」
翌日。
5人は強豪校へ視察に行った。
コートにはコーチの激が飛んでいた。
「お前ら命かけてやってるのか?」
「死ぬまで走って来い。」
そんな厳しい練習を見た5人は考えた。
「俺たちとは違うみたい。」
「とりあえず練習の邪魔をするって言うのは?」
早速バレーボールに穴を開けようと、
用具庫に忍び込んだ5人。
同時に体育館に入ってくる新体操部。
レオタードに目が行っている隙に、
直ぐに他校の先生に見つかった。
寺嶋のもとに電話が入り、
5人を引き取りに行った寺嶋。
部室に戻った5人に寺嶋は怒った。
しかし5人の反応は
「だって俺ら普通にやっても勝てないから・・・」
呆れた寺嶋は続けた。
「だからって相手の足ひっぱっていいの?」
「自分たちは努力もせず、
汗も流さず、死ぬ気で頑張りもせず、
私のおっぱいを見ようっていう根性な訳?」
「私に対して失礼じゃないの?」
「そんなに簡単に見れると思ったら大間違い。」
少し違う怒り方・・・
自分自身言ったことに疑問を持った寺嶋。
すると5人は素直に受け止め、
「寺嶋先生の言うとおりです。」
「僕ら卑怯でした。」
「せっかく先生が約束してくれたのに・・・」
「すみませんでした。」
「先生の言うとおり、
死ぬ気で頑張って、
今度の大会1勝して、
寺島先生のおっぱい見ます。」
「やるぞ!おっぱい見るぞ!」
何か違った感じで意欲がでた5人。
次の日から、
女子部の使うコートを占領して練習を始めた。
それを見た女子バレー部の顧問は、
「何を言ったか知りませんけど、
今更何をやらせたって無理なんですから。」
寺嶋は返した。
「無理なんてことは無いです。」
「彼らは本気で頑張り始めたんです。」
必死に練習を始めた5人。
寺嶋も監督としての勉強を始めた。
しかし5人では試合はできない。
そこで、寺嶋と育夫は城を再度誘いに行った。
家にいたのは城の父。
家の中には城の父が獲った、
バレーボールのトロフィーが並んでいた。
城の父は2人に聞いた。
「あいつ練習頑張ってますか?」
城がバレーボールをやっていると思っていた。
慌てた育夫は話を変えて聞いた。
「今日は城君のお父さんに、
バレーボールのことを、
色々教えてもらおうと思って。」
城の父親はアドバイスをしてから、
息子について話した。
「あいつバレーボール楽しんでますかね?」
「私が怪我でバレーボール諦めてから、
あいつきっと自分が続けることで、
私を喜ばせようとしてる。」
「そう思えるんですよ。」
家を出た育夫は4人にその話をした。
そして手分けをして城を探すことにした。
城を見つけた育夫は言った。
「また俺たちとバレーボールをやろう。」
しかし城は答える。
「俺バレーボールなんて興味ないですから。」
そう言って背を向けて歩き出す城。
城は公園に停められたバイクを見つけ、
仲間たちと悪ふざけでバイクを倒した。
そのバイクの持ち主はナカイ先輩。
城はナカイ先輩に捕まってしまう。
城を殴り続けるナカイ先輩の下へ行く5人。
「城は僕らの後輩です。」
「殴るなら僕等をお願いします。」
怒っている見境のないナカイ先輩は、
5人をボコボコにした。
気の済んだナカイ先輩が帰ると、
育夫は城に言った。
「城。一緒に・・・一緒に・・・
俺たちと一緒に・・・見よう!」
「おっぱいを・・・」
城は身を張って助けようとした5にんに感謝し、
バレーボール部への再入部を決めた。
「よろしくお願いします。」
寺嶋にそう言って頭を下げた城の目線は、
寺嶋の胸元を見ていた・・・
練習を続けた6人は、どんどん力を付けていく。
女子バレー部とのリベンジ戦でも勝ち、
明らかに数ヶ月前とは変わっていた。
そんな6人に、複雑な気持ちを抱く寺嶋。
頑張っている6人には勝ってほしいけど、
勝ったら自分が困る・・・
そしていよいよ、公式戦の当日。
ベンチで大戦校を待つ6人と寺嶋。
そこに審判が来て言う。
「棄権のため戸畑三中の不戦勝ととします。」
コートで飛び跳ねて喜ぶ6人。
控え室に戻ると、育夫は寺嶋に言った。
「先生。お願いします。」
同時に拍手を始めた5人。
それに対して寺嶋は返した。
「まだ勝ってないでしょう?」
6人は言い返した。
「勝ちは勝ちです。」
「戦わずして勝つと書いて不戦勝ですから。」
動揺した寺嶋は言った。
「それは、ずるいんじゃないかな〜。」
寺嶋の言葉に大ブーイングの6人。
更に慌てた寺嶋は続けた。
「私は不戦勝でいいのかってこと言いたいの。」
まったく動じない5人は聞き返す。
「どこがダメなんですか?」
しかし、城だけは違った。
「先生の言うとおり、
不戦勝で勝ったっていえるんですか?」
5人は城に反論した。
「勝ちは勝ちだって。」
「おっぱい見たくないのか?」
しかし城は頑なに言う。
「もっとすっきりした気持ちで見たいんです。」
「不戦勝とかじゃなくて、
先輩たちと一緒に戦って、
おっぱいを見たいんです。」
その城の言葉に賛同したのは育夫だった。
「そうだな。」
「ちゃんと勝たないと先生だって、
すっきりおっぱい見せれないよな。」
「ですよね?」
急にふられた寺嶋は答えた。
「そうよ!」
こうして一時的に難を逃れた寺嶋だった。
しかし、このあとに6人は気づく。
2回戦の相手は強豪校の竜王中。
それを知って頭を抱えた6人。
帰り道に寺嶋は落ち込む6人に言った。
「私は勝てる気するけどな。」
「一人ひとりの技術は向こうのほうが上だし、
チームの戦力としても向こうが上。」
「それは仕方ないよね。」
「練習してきた年月が違うんだから。」
「でもね、君たちは今成長しているの。」
「もの凄い勢いでね〜。」
「あると思うんだ〜そう言う力って。」
「2回戦まであと2週間。」
「今の君たちなら、
勝てるかもしれないって私は思う。」
「私のおっぱいを見るために頑張りなさい。」
その言葉を聞いた6人。
今までの落ち込みとは違い、
急激にテンションを上げるのだった。
数日後、寺嶋は元彼に会っていた。
お酒を飲んで昔を思い出していた寺嶋。
昔に働いていた中学校。
生徒たちと仲良くしており、
生徒たちと一緒にロックのコンサートに行った。
それが他の先生たちにバレて、
寺嶋が誘ったのかと問い詰められ。
違うと否定した寺嶋。
その事がきっかけで、生徒との間に溝が出来た。
寺嶋は急に学校に行きたくない、
そう元彼に言い出したのだった。
仕事に追われていた元彼は、
まともに話も聞くことも出来ず、
自然に2人は別れたのであった。
今回元彼は寺嶋と寄りを戻そうと誘っていた。
寺嶋も優しい言葉に流されて、
食事の後はそのままホテルに行った。
過去のような良い雰囲気の2人。
元彼が寺嶋の上着のボタンを外そうとした時、
寺嶋にはバレー部の6人の顔が浮かんだ。
「これは皆の夢なの!」
そう言って元彼を払いのけた寺嶋。
そのままホテルを後にした・・・
一方、真剣に練習を続ける6人のもとに、
ナカイ先輩が現れた。
なぜ真剣にやっているのかと事情を聞いた。
怯えて事情を説明した6人。
それを聞いたナカイ先輩は言う。
「おっぱいか〜。」
「いいセンコウだな〜。」
「お前ら。コレで負けたら男じゃねえぞ!」
そう言って喝を入れてくれたのだった。
しかしこの時、部室の外では、
女子バレー部がその話を聞いていた・・・
2か回戦までの練習に励む6人。
城の父親が所属していた実業団の力も借りて、
厳しい練習の毎日で過ごした。
大会前の最終合宿。
6人が寝ると寺嶋は同僚の堀内に、
自分の中学の話した。
中学時代は部活をやっていなかったと話し、
過去に1度だけやった万引きの話をする。
その万引きで警察に捕まり停学処分を受けた話。
停学は自宅謹慎ではなく、1週間の実習。
その時担当したのが原田先生。
原田先生は怒りもせず説教もしない。
忘れ物の本を読ませて感想文を書かせた。
寺嶋は、その本に落書きを続けた。
実習最後の日に読んだのが『道程』だった。
「僕の前に道は無い」
「僕の後ろに道は出来る。」
その時書いた感想文を、
勝手にコンクールに出した原田先生。
〜〜その時書いた感想文〜〜〜〜〜〜〜〜〜
人は前を向いて歩くとき、必ず顔を上げます。
万引きした私のように、
キョロキョロと店員さんの視線を気にし、
うつむいた顔では決してありません。
私も前を向いて歩きたい。
自分の道を作りたい。
私の道は必ず私の後ろにできるのだから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その感想文は市で賞を貰い、
長い間、市役所に掲載された。
掲載されている期間、
毎日のように市役所に通った寺嶋。
そんなある日、
掲載された感想文の前に佇む原田先生を見た。
寺嶋に気がついた原田先生は言った。
「お前、教師にでもなったらどうだ?」
「国語の教師。向いているかもしれんぞ。」
そんな思い出話をした寺嶋は、
続けて堀内に言った。
「自分が何になりたいかなんて、
考えたことなかったけど、
目の前に道が開けた気がしたんだよね。」
「だから一人前の教師になれたら、
原田先生のところに報告に行きたいなって・・・」
それを聞いて堀内は言った。
「行けばいいじゃないですか。」
しかしうつむいて寺嶋は答えた。
「いけないよ。」
「だって私はまだ・・・」
そんな寺嶋に堀内は言った。
「僕は寺嶋先生、良い先生だと思いますよ。」
〜〜〜Sponsords Link〜〜〜
いよいよ大会間近となったある日。
バレー部の6人は、自分達の将来の話をした。
「良かったよなバレー部にいて。」
「受験とかもこの勢いでいけると思わない?」
「最後かもね?皆で何かできるの。」
「美香子のおかげかな?」
「最後に良い思い出、できそうじゃん。」
そして皆は個々を奮わせ言った。
「絶対勝って美香子のおっぱい見ようぜ。」
「美香子のおっぱい見ることが、恩返しだ。」
その頃、男子バレー部のやる気は、
ふしだらな動機によるものと噂が広まった。
その噂は先生たちにも広まって、
ついに校長室に呼ばれた寺嶋とバレー部6人。
教頭は寺嶋に聞いた。
「変な噂が広まってましてね。」
「地区大会で1勝したら胸を見せてくれると、
寺嶋先生が約束したから頑張っているんだと。」
「本当のことですか?」
寺嶋は動揺した。
「それは・・・」
その時、育夫は寺嶋の返事に被せて答えた。
「本当だけど、嘘です。」
「そんな約束するはず無いじゃないですか。」
「僕等がふざけて言っているだけです。」
この声は教頭には届かない。
「黙れ。今は寺嶋先生に聞いているんだ。」
そして寺嶋は答えた。
「私は・・・」
「私が約束しました。」
そう言うとバレー部に向かい言った。
「ごめんね。嘘はつきたくないの。」
それを聞いていた校長は言った。
「所詮、こいつらはこんなもんですよ・・・」
見下した言葉を聞いた寺嶋は反論した。
「彼らが頑張っていたのは本当です。」
しかし校長は反論を遮り、
「言い訳は結構。」
「これは大変な問題ですよ。」
教室に戻った寺嶋に女子バレー部は言う。
「私が友達に話しちゃったんです。」
「そしたらこんなに広まっちゃって。」
「でも、先生のした約束は、
間違っていると思います。」
寺嶋は責任をとり学校を辞めることになった・・・
寺嶋のいない中での大会当日。
その日、寺嶋は原田先生のお墓の前にいた。
寺嶋は原田先生の墓に向って言う。
「原田先生。」
「やっぱり私ダメでした。」
「また失敗しちゃいました。」
「こんな報告でごめんなさい。」
そんな寺嶋を見かけた、原田先生の妻が声をかけた。
担任ではなかったが、寺嶋のことを知っていた妻。
そして家に連れて行かれた寺嶋。
寺嶋は原田先生の妻に、
自分が先生になったことを伝えた。
すると原田先生の妻は言った。
「主人が聞いたらとっても喜ぶわ。」
「あなたが万引きをして停学になったときね、
毎朝あの本棚の前で、
『今日はどの本にしようかな』って悩んでたの。」
それを聞いた寺嶋は、
本棚にある『道程』を手にとり開いた。
そこには自分の書いた落書きが・・・
「コレって・・・」
「忘れ物じゃなかったんですか?」
そう言って他の本を開くと、
全ての本に自分の落書きがあった。
原田先生の妻は続けて話した。
「どうしたら力になれるんだろうって、
コレでいいのかな〜
ダメなのかな〜
間違っているのかな〜
って、毎日毎日。」
「主人はいつも生徒たちに、
道は目の前にあるんだってこと、
気付かせたいって言ってた。」
「じゃあ、今度はあなたが同じ事を、
あなたの生徒たちに、
気付かせてあげられたらいいわね。」
涙する寺嶋は、
「私の・・・生徒たち・・・」
そう言うと走り出した。
寺嶋のいないバレー部は圧倒的に押されていた。
一生懸命声を出して応援する堀内。
しかし1点も取れずに1セット目は負ける。
そこに現れた寺嶋。
6人を見て言った。
「こらっ!お前等!」
「誰が約束は無しだって言ったのよ!」
「私は言ってないぞ、そんな事。」
「私は戸畑三中をクビになったって、
あなたたちの先生なのよ。」
「私のおっぱいを見るために頑張りなさい。」
2セット目から6人の動きは変わった。
今までの劣勢は嘘のように点数を重ねた。
そして2セット目を奪取した戸畑三中。
喜んだ6人と同時に、
竜王中のコーチの声が響き渡る。
「バカヤロウ!」
「お前等全員メンバーチェンジや!」
「おい!1軍!」
今まで戦ってたのは2軍だったのである。
それでもめげない戸畑三中の6人。
「関係ないよ。」
「俺たちには美香子のおっぱいが、
賭かっているんだから。」
「絶対勝つ!」
「おっぱい!おっぱい!おっぱい!オー!」
そして第3セット目。
圧倒的な強さの竜王中の1軍。
それでも喰らいつく戸畑三中。
しかし結果は4対15。
試合終了の笛が鳴った・・・
体育館のベンチに座ったまま、
立ち上がることができない寺嶋。
歩み寄ったのは城の父。
寺嶋は変な約束をしたことを謝った。
「どうして謝るんですか?」
「知ってましたよ僕はそのこと。」
「目的なんて別にいいんですよ。」
「あいつら頑張ることの素晴らしさを、
身をもって知ったんだから。」
「早く行ってあげてくださいよ。」
「あいつら待ってますよ。」
背中を押され寺嶋は控え室へと向かった。
そこには泣き崩れるバレー部の6人。
寺嶋は6人に声をかけた。
「さあ、みんな立って。」
「みんな胸張って!」
「みんな本当に良く頑張ったよ。」
「みんなカッコ良かった。」
「最高だったよ。」
「ありがとう・・・ありがとうね。」
すると6人は立ち上がり寺嶋に抱きついた。
数日後。
正式に寺嶋は退職となった。
学校を去ろうとする寺嶋に堀内は声をかけた。
「これからどうするんですか?」
寺嶋は答えた。
「もちろん教師を続けるよ。」
「私にはコレしかないと思ったし、
いい教師になろうって決めた。」
寺嶋は最後にバレー部の部室へ足を運んだ。
誰もいない部室を眺めた。
寺嶋の顔は清清しかった。
そして下駄箱で靴を履こうとしたとき、
中には手紙が入っていた。
それはバレー部6人からの手紙だった。
駅のホームで、その手紙を読んだ寺嶋。
「あいつら・・・」
そう言って電車に乗りこんだ。
走る線路脇には男子バレー部が待っていた。
『ありがとう!おっぱい先生!』
と書いたダンボールを持って、
自分たちの胸にバレーボールを2個忍ばし、
電車を追って走るバレー部6人。
それを見て窓を開けた寺嶋は、
男子バレー部6人に手を振って言う。
「ありがとう。みんな!」
「元気でね〜。」
「いい男になれよ〜。」
「ありがとう!」
〜〜バレー部から寺嶋に書いた手紙〜〜〜〜
寺嶋先生へ
先生はどう思っているか分かりませんが、
僕たちはあの試合勝てなかったけど、
全然後悔していません。
だって負けたおかげで、
先生の胸に飛び込むこと出来ましたから。
負けた場合に備えて僕等、
エブーの胸に飛び込む練習をしていたので、
良い位置に飛び込めました。
最高の感触ありがとうございました。
男子バレー部一同より。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(終わり)
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2016年01月16日
【風俗行ったら人生変わったwww】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【風俗行ったら人生変わったwww】
【出演者】
遼太郎:満島真之介
かよ:佐々木希
晋作(ネット住人):松坂桃李
中畑光男(かよの彼氏):中村倫也
住吉徹(金貸し):山中聡
河合(ネット住民):藤間宇宙
田中(ネット住民):駒木根隆介
滝田(ネット住民):穂のか
佐良田(ネット住民・作家):山田真歩
東出(ネット住民):上原実矩
新田(ネット住民):阿部進之介
風俗嬢:坂ノ上朝美
ピザ屋:谷村美月
ビデオ屋:金田哲
ヤッくん(ギャル男):滝藤賢一
ユッコ(ヤッくんの彼女):時田愛梨
毛糸おじさん(かよの地元のおじさん):諏訪太郎
コーチ(かよの地元のおじさん):菅原大吉
麦わらおじさん(かよの地元のおじさん):佐藤二朗
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【感想】
馬鹿げてるけど、面白い!!!
雰囲気としては『電車男』ですね〜
元気が出ます!!!
コメディ映画として、
アホ臭い作り方として、
とても徹底されていて、
それを中心としたストーリー展開もバッチリ!
以外性の高い映画だったと思います。
それにしても・・・
満島君って兄妹揃って演技うまいですよね〜
どんな生活したら、
あんな演技うまい兄妹が生まれるんでしょうね?
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
僕の名前は奥遼太郎。
29歳童貞。
ニート暦当然あり、
幼少期の吃音症の名残もあり、
パニックになると過呼吸にもなる。
現在どうにか実家を出て蒲田で1人暮らし。
薄給の契約社員。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
証明写真で何度も写真を撮った遼太郎。
帰りにギャルカップルにぶつかってしまう。
ギャルは遼太郎に言った。
「このメンズ、乳見てない?」
それを聞いたギャル男も言う。
「お前絶対童貞だろ!」
そしてギャル男は遼太郎の持つ証明写真を見て、
「こんな写真じゃさすがに受かるバイトねえんだよ。」
「お前、何が楽しくて生きているんだよ。」
そう言って遼太郎の首もとをつかみ、
連れて行こうとするギャル男。
遼太郎はパニックとなり過呼吸になった。
それを見て怖がり逃げるギャルカップル。
遼太郎はバックからビニール袋を出して口に当てた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大きく分けると人には2種類いるって思う。
ツイている奴と、いない奴。
少し前に流行った風に言うなら、
持っている奴と、いない奴。
もちろん絶対的に後者だ。
証明写真を撮るだけで緊張するような男。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その後免許の更新で警察署へ向かった遼太郎。
無事更新が終わり警察署を出ると大雨。
バックに入っていたはずの折りたたみ傘は、
ギャル男に絡まれた際に落としたようだ。
変わりに入っていたのはデリヘルのチラシ。
自分を変えたいと思った遼太郎は、
警察所の前からデリヘルに電話した。
ホテルでデリヘル嬢の到着を待っていると、
「始めまして。かよです。」
その整った顔に喜んだ遼太郎。
『キターーー!』
かよは部屋に入るなり言った。
「シャワー借りていいですか?」
「あっ!」
「ご一緒なさいますか?」
その言葉に動揺した遼太郎。
パニックを起こして、またもや過呼吸になる。
それを見たかよは、動じずに声をかけた。
「大丈夫ですか?」
かよの顔は遼太郎からは天使に見えていた。
ホテルを出て、かよは言った。
「今日はごめんなさい。」
「何も出来なくて。」
「なのにお金まで頂いちゃって。」
遼太郎は答えた。
「当然ですよ。呼んだのこっちですから。」
「こっちこそ・・・
こんな時間までつき合わせちゃって・・・」
「迷惑かけてすみません。」
かよは返した。
「今日はもう終わりでしたから。」
「良かったらこれ貰っていただけませんか?」
「もし次があったら、
今日の分までサービスしますから。」
かよは名刺を遼太郎の胸ポケットに入れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あの時点でもう惚れてた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日、遼太郎はかよの名刺先に電話した。
もちろん電話に出たのは受付の男性。
「もしかして今日もかよご使命ですか?」
「でもあいにく今日はダメなんですよ、かよ。」
「一日中予約で埋まってまして。」
「明日の20時以降なら空いてますよ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
彼女が風俗嬢であることを思い知った瞬間であった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それから何度もかよと会った遼太郎。
もちろん貯金もどんどん減っていった。
しかし遼太郎は毎回話すことも出来ずにいた。
そんな遼太郎にかよは言った。
「遼太郎さんって変わってますよね。」
「今日も何もしてこないですし。」
「そんなに話もしてないよ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
初めてのタメ語にグッと来た。
だから僕も思い切って使ってみた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
遼太郎の違和感のあるタメ語に笑うかよ。
以前の過呼吸になった時に怪我した額の傷に、
毎回絆創膏を張りなおしてくれるかよ。
その傷も、もう完治して張り直すことも無かった。
かよは何もしないり遼太郎に言う。
「こうして何もしないで普通にいるほうが、
逆に恥ずかしいですね。」
「服着ているのに裸みたい。」
「普通って言うのも、何か変か?」
それに対して遼太郎は答えた。
「俺。普通って難しいから。」
それを聞いて、かよは笑顔で言う。
「だね!」
自然な感じで近づく2人。
その瞬間時間終了のアラームが鳴った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一時間で二万弱。
かよさんにはお金を使わないと会えない。
そのことを自覚する瞬間だ。
そして金は、いずれ尽きる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お金を払おうとする遼太郎。
「もらえないよ。」
そう言うかよに、力ずくでお金を渡した。
そんな遼太郎に、かよは言う。
「よったら交換しない?連絡先。」
「だってこれ以上お金を使わせるの悪いから。」
「話をするの、
居酒屋でもファミレスでも出来るでしょ?」
「それに私、友達ほとんどいないんだ。」
遼太郎は答えた。
「僕なんか、ほとんどどころか1人もいないよ。」
かよは笑って言った。
「じゃあ、ほとんど一緒だね。」
「東京って1人にはきつい街だよね。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
綺麗だなって思ったけど、
かよさんの笑顔はなぜか泣いているように見えた。
29年間生きてきて、
女の子と話したことなんて、
ましてや触れたことなんて、
フォークダンス以来ほぼないこの俺が、
2人の妹たちには、
ばい菌扱いされているこの俺が、
最高2ヶ月誰とも口を聞かずに
過ごしたこともあるこの俺が、
女の子と2人で会うんだぜ!
二次元じゃないぜ!
かよさんと会うんだぜ!
それもタダなんだぜ!
消費者金融行かずにすんだぜ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ひょっとして神様っているのか〜い!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
だけど込み上げる嬉しさと同じくらい、
異様で泣きたくなるような得体の知れない不安が、
ヌタリと忍び寄ってくる予感があったんだ。
手に入れてさえないものを失うような。
その正体は何なのか、
この時はまだはっきりとは分からなかったけど
とにかくこの気持ちを誰かに言いたかった。
たとえ会ったことも無ければ顔も見たことも無い
光社会の誰かでも・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
遼太郎はチャットでネット住人仲間に、
今までの経緯を報告した。
遼太郎に恋が音連れたことに喜ぶ住人。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この3日後初めて外で待ち合わせをした。
でも日の光は僕には眩し過ぎた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
待ち合わせ場所で待つかよ。
その場所に行けずに、
木の影で隠れて見ていた遼太郎に気がつくかよ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして僕は初めて女の子とお酒を飲んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
話題も無い遼太郎の行動にかよは喜んだ。
「知ってる?」
「お絞りって絞ると結構絞れるんだよ。」
「知ってる?」
「大根っておろすと大根おろしって言うけど、
山芋はなんでとろろになるんでしょうか?」
このような意味のない会話を続ける遼太郎。
お酒の入って、更に勢い付いた遼太郎は聞いた。
「彼氏いるの?」
かよは答えた。
「いないよ。こんな仕事しててさ。」
そして2人は残ったお酒をボトルキープする。
ボトルに2人で名前を書いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
人生で初キープだった。
『遼太郎&かよ』
俺今ラッキー池田以上にラッキーだ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
別の日は一緒に買い物に行った。
帽子を一緒に選ぶ2人は、
まるで付き合っているかのようだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺がハット。
ハットに俺。
俺の人生にハットなんて
一生縁が無いものだと思ってた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それから数回会ったときに遼太郎は聞いた。
「かよさん。」
「僕、ひどく言葉が出ないときあるでしょ?」
「気になるでしょ?」
かよは答えた。
「私は遼太郎さんと話していると落ち着くよ。」
「言葉がゆっくりな分、
この人が言っていることは
本当なんだなって思えるっていうか・・・
実感できるっていうか・・・
とにかく信頼できる。」
遼太郎は言った。
「俺も、かよさんのこと信頼できる。」
「あの時思ったんだ。」
「東京にもこんな優しい子がいるんだなって。」
かよは素直に言う。
「ありがと。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
吃音のことを打ち明けられたことで、
苦手だった電話も平気になった。
どころか長電話の楽しさを初めて知った。
電話でしか話せないことも鳴るってことも・・・
それからついさっきまで会っていたのに、
声が聞きたくなるっていう気持ちも。
だけど肝心なことは、
『どうして風俗で働いているのか?』
とは聞けなかった。
いや、聞きたくなかったのかもしれない。
とにかく、恋だった・・・
紛れもなく僕はかよさんに恋をしていた。
かよさんの事を好きになればなるほど、
いとおしく思えば思うほど、
あの指で、あの唇で、
毎日いったい何人の男に、
どんなことをしているんだろう?
そんなドブみたいに汚い
最低な妄想が止まらなくなったんだ。
僕は海の厳しさを知らない淡水魚だった。
そしてこの日を境に、
かよさんからの連絡は途絶えた。
何があったんだよ?かよさん。
着信拒否をされてないことが、
せめてもの救いだった。
風俗嬢だったこと意外に、
僕はかよさんの事を何も知らなかった。
風俗嬢と客。
2人の間にそれ以上のものは無かった。
連絡しても、
彼女が答えてくれなければそれでおしまい。
そんな点線みたいな、
か細い関係だったことを今更自覚した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんな塞ぎこんだ遼太郎。
家から出ずに宅配ピザを注文した。
遼太郎は友達が来ているかのように、
奥の部屋で雑音を流し、騒がしくして対応した。
しかし店員はそんな気持ち悪い行動に言う。
「そんなの見栄にもなってないから。」
「どうせ張るなら意地張れよ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
失恋は地獄だって事初めて知った。
海水は思っていた以上にきつかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
落ち込んでいるとネット住人達が励ましてくれた。
「変わりたいって言ってたじゃない。」
そして電話することを薦めるも、
電話すること躊躇う遼太郎。
そんな遼太郎にネット住人の晋作は、
BSアンテナをずらしてみるように伝えた。
言われたとおりにアンテナをずらした後に、
部屋のテレビをつけると、BSチャンネルが映らない。
それを見て晋作は笑って言う。
「先輩の末来も同じって事ですよ。」
「ほんの数ミリの誤差かもしれないですけど、
見えない電波を飛ばしてるけど、
はるか宇宙の衛星においては、
何千キロ何万キロってずれてるって事です。」
「南米で飛んだ蝶の羽ばたきが、
北欧では嵐を起こすかもしれない。」
「つまり、届くか逃げるかです。」
その言葉で、遼太郎は再度かよに電話した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
だからとは思えないけど、
見えない電波はかよさんに繋がった。
奥遼太郎に誰より自分が驚いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
直ぐにかよの家に向かった遼太郎。
自転車に乗りながら叫んだ。
「奥手の奥じゃ無かったよ〜」
かよの家に着くと、かよは今までの話をした。
東北秋田から上京したかよ。本名サチコ。
昔から素直だったかよ。
田舎では遠まわしなセクハラと分からずに、
地元のおじさんたちに優しくした。
そんな純粋なかよ。
大学に行き先生を目指した。
しかし田舎から出てきたかよに、
声をかけたのはチャラチャラした先輩中畑。
新入生歓迎コンパに連れて行かれたかよ。
その日、かよは中畑に処女を奪われた。
一般的に考えればただのレイプ。
断れない性格のかよと、中畑の関係は続いた。
中畑は超ギャンブル狂。
借金を作ってかよの金まで持ち出した。
更に浮気をしまくるカス中のカス。
それでもかよは、
渡す金を作るためバイトを増やした。
しかし中畑の借金は増えていき、
ついに先生になる夢を諦め風俗で働き出した。
その話を聞いて遼太郎は聞いた。
「どうして別れなかったの?」
かよは答えた。
「悔しさと麻痺。」
「でも今はとっくに別れてる。ちゃんと。」
「私にちゃんと惚れさせたいって思ったから。」
「だから尽くした。」
「本当のカップルになりたかったの。」
その時、家の外から中畑の声が聞こえた。
「頼むよサチコ。開けてくれよ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
きっとこうやって開けてしまっていたんだろう。
かよさんは、優しいから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
何度もかよを呼ぶ中畑の声。
その声を聞いてかよは遼太郎に言う。
「開けるまで帰ってくれないの。」
「近所の目もあるし・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ということは、きっと・・・
それくらい童貞でもわかる。
そんなこと誰にも言えず、たった一人で・・・
この顔の意味がやっと分かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
遼太郎は最初に会った時の、
かよの言葉を思い出した。
『東京って1人にはきつい町だよね。』
そして震えるかよを抱きしめた後に、
「俺が追い払ってやる。」
そう言って玄関へ行く遼太郎。
玄関のドアを開けて、中畑に遼太郎は言った。
「ここは僕の家ですけど。」
「前の人は引っ越したんではないでしょうか?」
白々しい対応の遼太郎に中畑は言った。
「お前は誰なんだよ?」
そして無理やり部屋に入ろうとする中畑。
動揺した遼太郎は、
「かよさんの彼氏だ〜」
そう言って中畑に突進した。
その勢いに中畑は押され、
高層マンションの踊場から下に落とされそうになる。
本気の遼太郎にビビる中畑は謝った。
遼太郎は言った。
「お前、二度とかよさんに近づくな。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
以後、中畑が押しかけてくることは無くなった。
だけどかよさんには100万近くの借金だけが残った。
この紙切れ一枚をどうにかしなければ何も変わらない。
結局、話どころじゃなかった。
正直ちょっともらしちゃった。
かよさんとは一度だけ会った。
いつもの居酒屋で。
だけど・・・
どんな話をしたのかも覚えていない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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以前の生活に戻りかけていた遼太郎。
ある日家のチャイムが鳴り、ドアを開けた遼太郎。
「初めまして先輩。」
来るはずないネット住人の晋作が家に来た。
来るはずない人間。
最初は疑ったが確かに前日の夜に
『助けに行きます。』
の書き込みが晋作からあった。
晋作は借用書奪還の作戦を立ててきた。
一通り作戦を聞き終わると晋作は言った。
「あんな話し聞かされて、
むかつかない奴は人間じゃないでしょ。」
「という訳で行きましょう。」
チャット仲間とはいえ初対面。
断る遼太郎に晋作は言った。
「コミュニケーション障害って、
言ってませんでしたっけ?」
「長電話。楽しかったんでしょ?」
「持ってんじゃないですか。コミュニケーション。」
「何かを乗り越えた人は先輩でしょ?」
「むかついている人も同じ。」
「他に理由ありますか?」
そして協力をすることを決めたチャット仲間たち。
ネット仲間7人が集結した。
闇金のボス住吉はBSで映画を見ていた。
作戦@
屋上に忍び込んでアンテナを曲げた。
見ていた映画が映らなく、不思議がる住吉。
作戦A
換気口におならをする。
同時に強烈な臭さにベランダの窓を開けた。
作戦B
チャイムを鳴らして
晋作が引越ししたと引き出物を届ける。
そして晋作はスカンクを飼っている話をし、
時間稼ぎを続ける。
作戦C
その間に家に入りDVDの中身を全て抜き取る。
部屋に戻った住吉は見ていた映画(キョンシー)
の続きが気になり、レンタルビデオ屋に向かった。
作戦D
キョンシー貸し出し中。
店員に扮したチャット仲間たちが対応。
板橋店、渋谷店、新宿店と回るも貸し出し中。
どの店でも嘘のテレビを流していた。
それは大風が来るとのニュース。
作戦E
住吉のマンションに向けて強風を吹かす。
家に戻った住吉。
最後の締めくくりの予定が、
設置した送風装置が動かない。
動揺する遼太郎。
しかし晋作はいたって冷静に、
隣のビルを指差して言った。
「先輩自己ベストいくつです?」
「走り幅跳びの?」
隣のビルには他のネット住人と送風装置。
遼太郎は晋作の質問に答えた。
「こう見えて4m60は飛んでたけど。」
晋作は言う。
「性格には4m78cmと3mm。」
「飛べる距離です。」
「勇気さえ出せば・・・」
「見本見せますよ。」
呆気にとられながら答える遼太郎。
「そんなの見せられても無駄です。」
「僕と晋作君では比べる要素も・・・」
遮るように晋作は言った。
「ありますよ。」
「僕も昔相当迫害されてましたし・・・」
「一度本気で死のうとしたことがあります。」
「その時知ったんですよ。」
「青すぎる空は、悲しいほど怖いって事を。」
そう言った晋作は飛んだ。
ビルから、仲間のいる隣のビルへと・・・
着地した晋作は隣のビルにいる良太郎に言う。
「早く飛べ〜」
「男には、
風を吹かせなきゃいけないときがあるんだよ。」
自分を奮い立たせた遼太郎は・・・
飛んだ!風を掻き分けるように・・・
月に映った影はまるでマイケル・ジョーダン。
その頃家に戻った住吉。
家の中は荒らされていた。
スカンクの仕業と勘違いする住吉。
その瞬間家に強風が入り、
沢山の借用書は窓から家の外へ・・・
時間はぴったり。
そこは大学相撲部の早朝練習のコース。
落ちた沢山の借用書を踏みつけていった。
遼太郎とネット住人は喜んだ。
その姿を遠くから見ていたかよ。
その日かよに会った遼太郎は聞いた。
「かよさん知ってる?」
「かよさんも夢見るでしょ?」
「ほとんどの哺乳類の動物は夢を見るらしいんだ。」
「でもね。」
「俺はカヨさんと出会うまであまり眠れなくて。」
「ギュっと目をつむっても、
いつまでたっても眠りは来ない。」
「苦しい想像ばっかり浮かんでは消えて。」
「大人になればなるほど、
そういう夜ばっかりが増えて。」
「でもね・・・
俺はカヨさんと会ってから、
良く眠れるようになったんだ。」
「瞼を閉じるとかよさんが浮かんできて、
僕を楽しいたびに連れて行ってくれるから。」
そう言った遼太郎は泣いていた。
そして話を続ける。
「嘘。本当は余計苦しいときもあった。」
「楽しい旅の後だからこそ、
苦しさは何倍にもなって。」
「したくも無い想像ばっか・・・
気付けばしてて・・・」
かよは言う。
「ごめんね。私がバカだから・・・」
被せるように遼太郎は言う。
「そうだよ。カヨさんはバカだよ。」
「1人で抱えて。」
「分かりやすいバカ男に騙されて、
その事に気付いているのに
気付かない振りして。」
「尽くして、尽くして、夢まで捨てて。」
「どうしようもないバカだよ!」
声を荒げたせいで、
遼太郎は過呼吸を起こした。
駆け寄ろうとするかよ。
そんなかよと自分の過呼吸を制して言う。
「ごめんかよさん。」
「言いたいことはそんな事じゃないのに。」
「俺が言いたいのは、たったの6文字なのに。」
遼太郎が言いたい言葉に気付いたかよ。
かよは言った。
「やめといたほうがいいって。」
「私こんなのだよ。汚れてるよ。」
遼太郎は続けた。
「知ってるって。」
「初めて会ったとき言ってくれたでしょ?」
「『大丈夫だよ』って。」
「大丈夫。大丈夫だよ。」
「かよさんの過去なら、俺が一緒にしょうから。」
「俺はかよさん。」
「き・み・が・す・き・だ」
かよはその言葉に答えた。
「私も好き。」
その時・・・
その様子を見ていたネット仲間7人。
送風機にスイッチを入れた。
かよのスカートはめくりあがり、パンツが見えた。
興奮した遼太郎は再び過呼吸になった。
そんな遼太郎のもとに駆け寄った7人、
喜びを共感するのであった。
家に帰った遼太郎。
宅配ピザが届く。
騒がしい奥の部屋に向って言う。
「ちょっとお前ら、うるさいよ。」
そしてピザ屋に言った。
「本当にみんな育ち盛りで。」
ピザ屋は遼太郎の言葉に笑った・・・
(終わり)
〜〜 関 連 商 品 〜〜
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遼太郎:満島真之介
かよ:佐々木希
晋作(ネット住人):松坂桃李
中畑光男(かよの彼氏):中村倫也
住吉徹(金貸し):山中聡
河合(ネット住民):藤間宇宙
田中(ネット住民):駒木根隆介
滝田(ネット住民):穂のか
佐良田(ネット住民・作家):山田真歩
東出(ネット住民):上原実矩
新田(ネット住民):阿部進之介
風俗嬢:坂ノ上朝美
ピザ屋:谷村美月
ビデオ屋:金田哲
ヤッくん(ギャル男):滝藤賢一
ユッコ(ヤッくんの彼女):時田愛梨
毛糸おじさん(かよの地元のおじさん):諏訪太郎
コーチ(かよの地元のおじさん):菅原大吉
麦わらおじさん(かよの地元のおじさん):佐藤二朗
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【感想】
馬鹿げてるけど、面白い!!!
雰囲気としては『電車男』ですね〜
元気が出ます!!!
コメディ映画として、
アホ臭い作り方として、
とても徹底されていて、
それを中心としたストーリー展開もバッチリ!
以外性の高い映画だったと思います。
それにしても・・・
満島君って兄妹揃って演技うまいですよね〜
どんな生活したら、
あんな演技うまい兄妹が生まれるんでしょうね?
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
僕の名前は奥遼太郎。
29歳童貞。
ニート暦当然あり、
幼少期の吃音症の名残もあり、
パニックになると過呼吸にもなる。
現在どうにか実家を出て蒲田で1人暮らし。
薄給の契約社員。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
証明写真で何度も写真を撮った遼太郎。
帰りにギャルカップルにぶつかってしまう。
ギャルは遼太郎に言った。
「このメンズ、乳見てない?」
それを聞いたギャル男も言う。
「お前絶対童貞だろ!」
そしてギャル男は遼太郎の持つ証明写真を見て、
「こんな写真じゃさすがに受かるバイトねえんだよ。」
「お前、何が楽しくて生きているんだよ。」
そう言って遼太郎の首もとをつかみ、
連れて行こうとするギャル男。
遼太郎はパニックとなり過呼吸になった。
それを見て怖がり逃げるギャルカップル。
遼太郎はバックからビニール袋を出して口に当てた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大きく分けると人には2種類いるって思う。
ツイている奴と、いない奴。
少し前に流行った風に言うなら、
持っている奴と、いない奴。
もちろん絶対的に後者だ。
証明写真を撮るだけで緊張するような男。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その後免許の更新で警察署へ向かった遼太郎。
無事更新が終わり警察署を出ると大雨。
バックに入っていたはずの折りたたみ傘は、
ギャル男に絡まれた際に落としたようだ。
変わりに入っていたのはデリヘルのチラシ。
自分を変えたいと思った遼太郎は、
警察所の前からデリヘルに電話した。
ホテルでデリヘル嬢の到着を待っていると、
「始めまして。かよです。」
その整った顔に喜んだ遼太郎。
『キターーー!』
かよは部屋に入るなり言った。
「シャワー借りていいですか?」
「あっ!」
「ご一緒なさいますか?」
その言葉に動揺した遼太郎。
パニックを起こして、またもや過呼吸になる。
それを見たかよは、動じずに声をかけた。
「大丈夫ですか?」
かよの顔は遼太郎からは天使に見えていた。
ホテルを出て、かよは言った。
「今日はごめんなさい。」
「何も出来なくて。」
「なのにお金まで頂いちゃって。」
遼太郎は答えた。
「当然ですよ。呼んだのこっちですから。」
「こっちこそ・・・
こんな時間までつき合わせちゃって・・・」
「迷惑かけてすみません。」
かよは返した。
「今日はもう終わりでしたから。」
「良かったらこれ貰っていただけませんか?」
「もし次があったら、
今日の分までサービスしますから。」
かよは名刺を遼太郎の胸ポケットに入れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あの時点でもう惚れてた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日、遼太郎はかよの名刺先に電話した。
もちろん電話に出たのは受付の男性。
「もしかして今日もかよご使命ですか?」
「でもあいにく今日はダメなんですよ、かよ。」
「一日中予約で埋まってまして。」
「明日の20時以降なら空いてますよ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
彼女が風俗嬢であることを思い知った瞬間であった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それから何度もかよと会った遼太郎。
もちろん貯金もどんどん減っていった。
しかし遼太郎は毎回話すことも出来ずにいた。
そんな遼太郎にかよは言った。
「遼太郎さんって変わってますよね。」
「今日も何もしてこないですし。」
「そんなに話もしてないよ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
初めてのタメ語にグッと来た。
だから僕も思い切って使ってみた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
遼太郎の違和感のあるタメ語に笑うかよ。
以前の過呼吸になった時に怪我した額の傷に、
毎回絆創膏を張りなおしてくれるかよ。
その傷も、もう完治して張り直すことも無かった。
かよは何もしないり遼太郎に言う。
「こうして何もしないで普通にいるほうが、
逆に恥ずかしいですね。」
「服着ているのに裸みたい。」
「普通って言うのも、何か変か?」
それに対して遼太郎は答えた。
「俺。普通って難しいから。」
それを聞いて、かよは笑顔で言う。
「だね!」
自然な感じで近づく2人。
その瞬間時間終了のアラームが鳴った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一時間で二万弱。
かよさんにはお金を使わないと会えない。
そのことを自覚する瞬間だ。
そして金は、いずれ尽きる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お金を払おうとする遼太郎。
「もらえないよ。」
そう言うかよに、力ずくでお金を渡した。
そんな遼太郎に、かよは言う。
「よったら交換しない?連絡先。」
「だってこれ以上お金を使わせるの悪いから。」
「話をするの、
居酒屋でもファミレスでも出来るでしょ?」
「それに私、友達ほとんどいないんだ。」
遼太郎は答えた。
「僕なんか、ほとんどどころか1人もいないよ。」
かよは笑って言った。
「じゃあ、ほとんど一緒だね。」
「東京って1人にはきつい街だよね。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
綺麗だなって思ったけど、
かよさんの笑顔はなぜか泣いているように見えた。
29年間生きてきて、
女の子と話したことなんて、
ましてや触れたことなんて、
フォークダンス以来ほぼないこの俺が、
2人の妹たちには、
ばい菌扱いされているこの俺が、
最高2ヶ月誰とも口を聞かずに
過ごしたこともあるこの俺が、
女の子と2人で会うんだぜ!
二次元じゃないぜ!
かよさんと会うんだぜ!
それもタダなんだぜ!
消費者金融行かずにすんだぜ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ひょっとして神様っているのか〜い!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
だけど込み上げる嬉しさと同じくらい、
異様で泣きたくなるような得体の知れない不安が、
ヌタリと忍び寄ってくる予感があったんだ。
手に入れてさえないものを失うような。
その正体は何なのか、
この時はまだはっきりとは分からなかったけど
とにかくこの気持ちを誰かに言いたかった。
たとえ会ったことも無ければ顔も見たことも無い
光社会の誰かでも・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
遼太郎はチャットでネット住人仲間に、
今までの経緯を報告した。
遼太郎に恋が音連れたことに喜ぶ住人。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この3日後初めて外で待ち合わせをした。
でも日の光は僕には眩し過ぎた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
待ち合わせ場所で待つかよ。
その場所に行けずに、
木の影で隠れて見ていた遼太郎に気がつくかよ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして僕は初めて女の子とお酒を飲んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
話題も無い遼太郎の行動にかよは喜んだ。
「知ってる?」
「お絞りって絞ると結構絞れるんだよ。」
「知ってる?」
「大根っておろすと大根おろしって言うけど、
山芋はなんでとろろになるんでしょうか?」
このような意味のない会話を続ける遼太郎。
お酒の入って、更に勢い付いた遼太郎は聞いた。
「彼氏いるの?」
かよは答えた。
「いないよ。こんな仕事しててさ。」
そして2人は残ったお酒をボトルキープする。
ボトルに2人で名前を書いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
人生で初キープだった。
『遼太郎&かよ』
俺今ラッキー池田以上にラッキーだ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
別の日は一緒に買い物に行った。
帽子を一緒に選ぶ2人は、
まるで付き合っているかのようだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺がハット。
ハットに俺。
俺の人生にハットなんて
一生縁が無いものだと思ってた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それから数回会ったときに遼太郎は聞いた。
「かよさん。」
「僕、ひどく言葉が出ないときあるでしょ?」
「気になるでしょ?」
かよは答えた。
「私は遼太郎さんと話していると落ち着くよ。」
「言葉がゆっくりな分、
この人が言っていることは
本当なんだなって思えるっていうか・・・
実感できるっていうか・・・
とにかく信頼できる。」
遼太郎は言った。
「俺も、かよさんのこと信頼できる。」
「あの時思ったんだ。」
「東京にもこんな優しい子がいるんだなって。」
かよは素直に言う。
「ありがと。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
吃音のことを打ち明けられたことで、
苦手だった電話も平気になった。
どころか長電話の楽しさを初めて知った。
電話でしか話せないことも鳴るってことも・・・
それからついさっきまで会っていたのに、
声が聞きたくなるっていう気持ちも。
だけど肝心なことは、
『どうして風俗で働いているのか?』
とは聞けなかった。
いや、聞きたくなかったのかもしれない。
とにかく、恋だった・・・
紛れもなく僕はかよさんに恋をしていた。
かよさんの事を好きになればなるほど、
いとおしく思えば思うほど、
あの指で、あの唇で、
毎日いったい何人の男に、
どんなことをしているんだろう?
そんなドブみたいに汚い
最低な妄想が止まらなくなったんだ。
僕は海の厳しさを知らない淡水魚だった。
そしてこの日を境に、
かよさんからの連絡は途絶えた。
何があったんだよ?かよさん。
着信拒否をされてないことが、
せめてもの救いだった。
風俗嬢だったこと意外に、
僕はかよさんの事を何も知らなかった。
風俗嬢と客。
2人の間にそれ以上のものは無かった。
連絡しても、
彼女が答えてくれなければそれでおしまい。
そんな点線みたいな、
か細い関係だったことを今更自覚した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんな塞ぎこんだ遼太郎。
家から出ずに宅配ピザを注文した。
遼太郎は友達が来ているかのように、
奥の部屋で雑音を流し、騒がしくして対応した。
しかし店員はそんな気持ち悪い行動に言う。
「そんなの見栄にもなってないから。」
「どうせ張るなら意地張れよ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
失恋は地獄だって事初めて知った。
海水は思っていた以上にきつかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
落ち込んでいるとネット住人達が励ましてくれた。
「変わりたいって言ってたじゃない。」
そして電話することを薦めるも、
電話すること躊躇う遼太郎。
そんな遼太郎にネット住人の晋作は、
BSアンテナをずらしてみるように伝えた。
言われたとおりにアンテナをずらした後に、
部屋のテレビをつけると、BSチャンネルが映らない。
それを見て晋作は笑って言う。
「先輩の末来も同じって事ですよ。」
「ほんの数ミリの誤差かもしれないですけど、
見えない電波を飛ばしてるけど、
はるか宇宙の衛星においては、
何千キロ何万キロってずれてるって事です。」
「南米で飛んだ蝶の羽ばたきが、
北欧では嵐を起こすかもしれない。」
「つまり、届くか逃げるかです。」
その言葉で、遼太郎は再度かよに電話した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
だからとは思えないけど、
見えない電波はかよさんに繋がった。
奥遼太郎に誰より自分が驚いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
直ぐにかよの家に向かった遼太郎。
自転車に乗りながら叫んだ。
「奥手の奥じゃ無かったよ〜」
かよの家に着くと、かよは今までの話をした。
東北秋田から上京したかよ。本名サチコ。
昔から素直だったかよ。
田舎では遠まわしなセクハラと分からずに、
地元のおじさんたちに優しくした。
そんな純粋なかよ。
大学に行き先生を目指した。
しかし田舎から出てきたかよに、
声をかけたのはチャラチャラした先輩中畑。
新入生歓迎コンパに連れて行かれたかよ。
その日、かよは中畑に処女を奪われた。
一般的に考えればただのレイプ。
断れない性格のかよと、中畑の関係は続いた。
中畑は超ギャンブル狂。
借金を作ってかよの金まで持ち出した。
更に浮気をしまくるカス中のカス。
それでもかよは、
渡す金を作るためバイトを増やした。
しかし中畑の借金は増えていき、
ついに先生になる夢を諦め風俗で働き出した。
その話を聞いて遼太郎は聞いた。
「どうして別れなかったの?」
かよは答えた。
「悔しさと麻痺。」
「でも今はとっくに別れてる。ちゃんと。」
「私にちゃんと惚れさせたいって思ったから。」
「だから尽くした。」
「本当のカップルになりたかったの。」
その時、家の外から中畑の声が聞こえた。
「頼むよサチコ。開けてくれよ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
きっとこうやって開けてしまっていたんだろう。
かよさんは、優しいから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
何度もかよを呼ぶ中畑の声。
その声を聞いてかよは遼太郎に言う。
「開けるまで帰ってくれないの。」
「近所の目もあるし・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ということは、きっと・・・
それくらい童貞でもわかる。
そんなこと誰にも言えず、たった一人で・・・
この顔の意味がやっと分かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
遼太郎は最初に会った時の、
かよの言葉を思い出した。
『東京って1人にはきつい町だよね。』
そして震えるかよを抱きしめた後に、
「俺が追い払ってやる。」
そう言って玄関へ行く遼太郎。
玄関のドアを開けて、中畑に遼太郎は言った。
「ここは僕の家ですけど。」
「前の人は引っ越したんではないでしょうか?」
白々しい対応の遼太郎に中畑は言った。
「お前は誰なんだよ?」
そして無理やり部屋に入ろうとする中畑。
動揺した遼太郎は、
「かよさんの彼氏だ〜」
そう言って中畑に突進した。
その勢いに中畑は押され、
高層マンションの踊場から下に落とされそうになる。
本気の遼太郎にビビる中畑は謝った。
遼太郎は言った。
「お前、二度とかよさんに近づくな。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
以後、中畑が押しかけてくることは無くなった。
だけどかよさんには100万近くの借金だけが残った。
この紙切れ一枚をどうにかしなければ何も変わらない。
結局、話どころじゃなかった。
正直ちょっともらしちゃった。
かよさんとは一度だけ会った。
いつもの居酒屋で。
だけど・・・
どんな話をしたのかも覚えていない。
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以前の生活に戻りかけていた遼太郎。
ある日家のチャイムが鳴り、ドアを開けた遼太郎。
「初めまして先輩。」
来るはずないネット住人の晋作が家に来た。
来るはずない人間。
最初は疑ったが確かに前日の夜に
『助けに行きます。』
の書き込みが晋作からあった。
晋作は借用書奪還の作戦を立ててきた。
一通り作戦を聞き終わると晋作は言った。
「あんな話し聞かされて、
むかつかない奴は人間じゃないでしょ。」
「という訳で行きましょう。」
チャット仲間とはいえ初対面。
断る遼太郎に晋作は言った。
「コミュニケーション障害って、
言ってませんでしたっけ?」
「長電話。楽しかったんでしょ?」
「持ってんじゃないですか。コミュニケーション。」
「何かを乗り越えた人は先輩でしょ?」
「むかついている人も同じ。」
「他に理由ありますか?」
そして協力をすることを決めたチャット仲間たち。
ネット仲間7人が集結した。
闇金のボス住吉はBSで映画を見ていた。
作戦@
屋上に忍び込んでアンテナを曲げた。
見ていた映画が映らなく、不思議がる住吉。
作戦A
換気口におならをする。
同時に強烈な臭さにベランダの窓を開けた。
作戦B
チャイムを鳴らして
晋作が引越ししたと引き出物を届ける。
そして晋作はスカンクを飼っている話をし、
時間稼ぎを続ける。
作戦C
その間に家に入りDVDの中身を全て抜き取る。
部屋に戻った住吉は見ていた映画(キョンシー)
の続きが気になり、レンタルビデオ屋に向かった。
作戦D
キョンシー貸し出し中。
店員に扮したチャット仲間たちが対応。
板橋店、渋谷店、新宿店と回るも貸し出し中。
どの店でも嘘のテレビを流していた。
それは大風が来るとのニュース。
作戦E
住吉のマンションに向けて強風を吹かす。
家に戻った住吉。
最後の締めくくりの予定が、
設置した送風装置が動かない。
動揺する遼太郎。
しかし晋作はいたって冷静に、
隣のビルを指差して言った。
「先輩自己ベストいくつです?」
「走り幅跳びの?」
隣のビルには他のネット住人と送風装置。
遼太郎は晋作の質問に答えた。
「こう見えて4m60は飛んでたけど。」
晋作は言う。
「性格には4m78cmと3mm。」
「飛べる距離です。」
「勇気さえ出せば・・・」
「見本見せますよ。」
呆気にとられながら答える遼太郎。
「そんなの見せられても無駄です。」
「僕と晋作君では比べる要素も・・・」
遮るように晋作は言った。
「ありますよ。」
「僕も昔相当迫害されてましたし・・・」
「一度本気で死のうとしたことがあります。」
「その時知ったんですよ。」
「青すぎる空は、悲しいほど怖いって事を。」
そう言った晋作は飛んだ。
ビルから、仲間のいる隣のビルへと・・・
着地した晋作は隣のビルにいる良太郎に言う。
「早く飛べ〜」
「男には、
風を吹かせなきゃいけないときがあるんだよ。」
自分を奮い立たせた遼太郎は・・・
飛んだ!風を掻き分けるように・・・
月に映った影はまるでマイケル・ジョーダン。
その頃家に戻った住吉。
家の中は荒らされていた。
スカンクの仕業と勘違いする住吉。
その瞬間家に強風が入り、
沢山の借用書は窓から家の外へ・・・
時間はぴったり。
そこは大学相撲部の早朝練習のコース。
落ちた沢山の借用書を踏みつけていった。
遼太郎とネット住人は喜んだ。
その姿を遠くから見ていたかよ。
その日かよに会った遼太郎は聞いた。
「かよさん知ってる?」
「かよさんも夢見るでしょ?」
「ほとんどの哺乳類の動物は夢を見るらしいんだ。」
「でもね。」
「俺はカヨさんと出会うまであまり眠れなくて。」
「ギュっと目をつむっても、
いつまでたっても眠りは来ない。」
「苦しい想像ばっかり浮かんでは消えて。」
「大人になればなるほど、
そういう夜ばっかりが増えて。」
「でもね・・・
俺はカヨさんと会ってから、
良く眠れるようになったんだ。」
「瞼を閉じるとかよさんが浮かんできて、
僕を楽しいたびに連れて行ってくれるから。」
そう言った遼太郎は泣いていた。
そして話を続ける。
「嘘。本当は余計苦しいときもあった。」
「楽しい旅の後だからこそ、
苦しさは何倍にもなって。」
「したくも無い想像ばっか・・・
気付けばしてて・・・」
かよは言う。
「ごめんね。私がバカだから・・・」
被せるように遼太郎は言う。
「そうだよ。カヨさんはバカだよ。」
「1人で抱えて。」
「分かりやすいバカ男に騙されて、
その事に気付いているのに
気付かない振りして。」
「尽くして、尽くして、夢まで捨てて。」
「どうしようもないバカだよ!」
声を荒げたせいで、
遼太郎は過呼吸を起こした。
駆け寄ろうとするかよ。
そんなかよと自分の過呼吸を制して言う。
「ごめんかよさん。」
「言いたいことはそんな事じゃないのに。」
「俺が言いたいのは、たったの6文字なのに。」
遼太郎が言いたい言葉に気付いたかよ。
かよは言った。
「やめといたほうがいいって。」
「私こんなのだよ。汚れてるよ。」
遼太郎は続けた。
「知ってるって。」
「初めて会ったとき言ってくれたでしょ?」
「『大丈夫だよ』って。」
「大丈夫。大丈夫だよ。」
「かよさんの過去なら、俺が一緒にしょうから。」
「俺はかよさん。」
「き・み・が・す・き・だ」
かよはその言葉に答えた。
「私も好き。」
その時・・・
その様子を見ていたネット仲間7人。
送風機にスイッチを入れた。
かよのスカートはめくりあがり、パンツが見えた。
興奮した遼太郎は再び過呼吸になった。
そんな遼太郎のもとに駆け寄った7人、
喜びを共感するのであった。
家に帰った遼太郎。
宅配ピザが届く。
騒がしい奥の部屋に向って言う。
「ちょっとお前ら、うるさいよ。」
そしてピザ屋に言った。
「本当にみんな育ち盛りで。」
ピザ屋は遼太郎の言葉に笑った・・・
(終わり)
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2016年01月13日
【シュアリー・サムデイ】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【シュアリー・サムデイ】
【出演者】
喜志巧:小出恵介
真鍋京平:勝地涼
後藤和生:鈴木亮平
北村雄喜:ムロツヨシ
岩崎秀人:綾野剛
葉月美沙(ヒメノ):小西真奈美
宮城祐(美沙の彼氏):横田栄司
喜志建夫(巧の父):竹中直人
北村雄一郎(雄喜の父):モト冬樹
北村美和子(雄喜の母):原日出子
飯島(亀頭):遠藤憲一
亀頭(飯島):吉田鋼太郎
体育教師 - 高橋努
教頭 - 笹野高史
後藤翔子(和生の妹)井上真央
弁当屋の店長(宮城のバイト先):大竹しのぶ
警官A:妻夫木聡
警官B;小栗旬
上戸彩(エンドロール):上戸彩
やっさん(ホームレス):岡村隆史
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【感想】
意外としっかり作りこまれてます。
遊びの要素がふんだんに入っていて、
その中で友情や恋愛も入れている。
ここまで盛り沢山でよい映画って少ないです。
しかしこの映画は、ここまで詰め込んで、
この出来なんだから,成功なんでは?
って思いました。
小栗くんらしいストーリーな気がします。
今考えるととても凄い出演者ですよね〜
【あらすじ】(ネタバレあり)
真鍋京平は教室の窓から、
校庭で一部始終を見守る先生達に言った。
「ファック・ユー」
「校長あんたは何もわかっっちゃいねえ。」
「確かに今の若い奴らは、
愛国心も無ければ自立心もねえ。」
「平和ボケに漬かった連中ばかりだ。」
「でもな。俺たちは違う。」
「この腐れきった日本を、
根本から立て直すべく立ち上がったんだ。」
教頭先生は言った。
「学校爆破なんてバカな真似はやめなさい。」
それを無視して京平は続けた、
「異端児は戦う、それは100も承知だ。」
「それでもガバメントの犬にはならねえし、
ましてやハイスクールの言いなりにはならねえ。」
「俺たちが新しい日本を作っていくんだよ。」
「この第一歩が文化祭の復活だ〜。」
「今年から文化祭廃止だと?」
「ハメまくりだって言うから、
ギター猛特訓したんだぞ。」
「いつまで童貞でいさせる気だ〜。」
それを聞いていた喜志巧は呆れて言う。
「あれは完全な八つ当たりだ。」
京平は続けた。
「後5分だとよ〜。」
「創立57年の歴史が詰まった、
この校舎が一瞬でボンってわけだ。」
「さあ3分切ったぞ〜。」
「今から非難しても助かるかどうか〜。」
教頭は諦めて京平達の要望を飲んだ。
「君たちの要求どおり文化祭の開催を決定する。」
それを聞いた京平は喜んで言った。
「あんたら新しい時代の幕開けに立ち会ったんだ。」
「サンキュー!」
教室にいた5人。
巧、京平、和生、雄喜、秀人は喜んだ。
しかし・・・
「あれ?タイマーが止まらない。」
慌てた5人は教室を飛び出し逃げた・・・
しかし校庭に出ると雄喜が居なかった。
同時に爆発する校舎。
「雄喜〜。」
〜現在〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
京平は巧に言う。
「雄喜には焦ったけどな〜。」
「マジ死んだと思ったもん。」
巧は答えた。
「死んではねえけど、
片腕なくしてしまったけどな。」
その答えに対して京平は言う。
「そんなの単なる噂だろ?」
「あの事件から会ってねえからって、
被害妄想炸裂させんなよ。」
「暗くなるからあいつの話するなよ。」
「あれからもう3年だぞ。」
「さえない人生過ごしやがってよ。」
「お前の3年なんて10秒で語れてしまうよ。」
そう言って 巧の3年を話し始めた京平。
「高校3年で中退して、
デカだった親父を退職に追い込んで、
152日付き合った彼女にも振られて、
挙句の果てが、
親父の始めたバーの手伝いってドンだけだよ。」
それを聞いた巧は言い返す。
「だまれ童貞の分際で!」
「俺の3年が10秒ならな、
てめえの3年は8秒で語れる。」
そう言うと仕返しとばかりに京平の3年を話し始めた。
「高校3年で中退して
振られる彼女も居ないから
毎日ダッチワイフとバーチャルSEX。」
「生身の彼女が欲しくなって
大検受けたら奇跡的に3流大学に合格。」
「だけど、いまだ童貞。」
くだらない話の中で京平は呟いた。
「あ〜その辺に女転がってねえかな?」
その瞬間に目の前で車に引かれた金髪の女性。
驚きながら巧は答えた。
「女転がってますけど・・・」
急いで女のもとへ駆け寄る2人。
もちろん運転手も駆け寄ったが、
女は立ち上がり運転手にピストルを向けた。
そして跪く運転手を尻目に車に乗って逃げた。
車を奪われたヤクザ風の男性。
それは一緒に校舎を爆破した後藤和生だった。
その夜、巧の親父のバーで和生の話をする2人。
「あいつもこの3年でいろいろあったのかな?」
「高校辞めてから、
皆とは会わなくなっちまったからな。」
「よしっ!」
「僕たちの知らない和生君の3年を想像しよ。」
そう言うと2人で勝手に和生の3年を話し出す。
「高校3年で中退して、
格闘家を目指して頑張ってみたものの、
命より大切な妹の入院費が払えなくなって、
格闘家を断念・・・」
「金を稼ぐためにヤクザになった。」
とその時、慌てた様子の和生がバーに入って来た。
「その通り。」
そう言って2人の妄想通りと伝えると、
組長に追われていると話し、奥に逃げ込んだ。
同時にバーのガラスが割れて、
白いスーツを着た男が入ってきた。
「今ここにうちの若いもんが着たろ?」
急な展開に無言で答えない2人。
2人を無視し、男は和生を探し始めた。
和生を見つけられない白スーツの男は2人に言う。
「明日の夜までに和生と、
彼が奪った3億円用意しておいて貰えるかな?」
巧が口ごたえをしようとすると、
男はピストルを発砲して言った。
「マイネームイズ亀頭。」
「亀の頭って書いて亀頭。」
「約束破ったら、君たちと和生君皆殺し。」
「OK?」
2人は頷くことしか出来なかった。
亀頭が帰ると同時に和生は奥から出てきた。
言い寄る2人に和生は言った。
「俺は奪ってねえよ。」
「昼間、女に車パクられたの見ただろ?」
「あの中に3億積んでたんだよ。」
「昼間の女俺見たことあるんだよ。」
「あの女、ガキの頃にお前のお袋だと思って
歌舞伎町まで探しに行った女だ。」
「お前らなら知っていると思って。」
それを聞いて巧は昔を思い出し呟いた。
「あいつの名前はハッピーナイト。」
〜10年前〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『あの頃の俺はただ母親に会いたかった。』
『だけど、あれは俺の初恋だったのか・・・』
小さかった巧は雑誌を持って父親のもとへ。
「お父さん。この人。」
「綺麗な人だね?」
「この人に会いに行ってるの?」
「もしかしてお母さん?」
その雑誌は風俗紙であった。
何も言わない父親の反応に、
母親だと思った巧は仲間たちに教え、
その日5人で歌舞伎町に向かった。
雑誌に載っていた風俗店『ハッピーナイト』で、
呼び込みの男性に事情を話して中に通してもらった。
「君が私の子?」
そう言ってヒメノは現れた。
「私いくつだと思ってるの?」
「君のお父さんはタダの客。」
「せっかく来てくれて悪いけど・・・」
巧は答えた。
「お姉さんがお母さんじゃないって知ってた。」
「お父さんがお母さん以外の人を、
好きになっちゃたんじゃないかと思って。」
寂しそうな巧の顔を見て
「安心して。」
「お父さんは寂しさを紛らわせるために
私に会いにきているだけ。」
「誰も私なんか好きにならないよ。」
そう言うとヒメノは巧の手を自分の胸に当てて言う。
「お母さんよりいいおっぱいしてるでしょ?」
照れて手を離す巧は言う。
「知らないよ。触ったことないし。」
ヒメノはからかう様に巧に言う。
「じゃあちゃんと触ってみる?」
もう一度巧の手を自分の胸に持っていく。
巧は言った。
「あったかい・・・」
ヒメノは笑って言う。
「何かいいね。こういうの。」
優しいヒメノに巧は言った。
「お姉さんがお母さんだったら良かったのに。」
そしてヒメノは聞いた。
「お父さん何している人?」
巧は素直に答えた。
「刑事。」
その言葉に焦ったヒメノ。
ヒメノは事務所へと走って言う。
「警察が来る。」
同時にガサ入れが入った。
事務所ではヤクの取引が行なわれていた。
逃げようとするヤクザと、
それを捕まえようとする警察。
その中間に巧は居た。
逃げようとヤクザは銃を発砲する。
警察とヤクザの間で、頭を抱えて伏せる巧。
巧を守ろうとする父親。
想定外のことに親分の飯島だけを
捕まえそびれてしまった・・・
保護された巧の前を連行されるヒメノが通る。
思わず歩み寄った巧。
そんな巧にヒメノは言う。
「言ったでしょ?」
「誰も私なんか好きにならないって。」
「私は汚れちゃったのよ。」
さっきとは違い寂しそうな顔をするヒメノ。
そんなヒメノに巧は言った。
「お姉さんは綺麗だよ。」
「俺は好きだよ。」
それを聞いたヒメノは巧に抱きついて言う。
「君が大きくなったらお嫁さんにしてくれる?」
巧は答えた。
「いいよ。俺がお姉さんを守ってあげる。」
ヒメノは巧から離れ、
「ありがとう。」
「おかげで救われた・・・」
そう言い残してヒメノは連行された。
〜現在〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
荒れたバーに父親が帰って来た。
巧は聞いた。
「10年前の歌舞伎町の女覚えているか?」
親父は答えずに言う。
「お前らまた余計なことに、
首突っ込んでんじゃね絵だろうな?」
「お前らな〜そうやって、
一生自分たちで傷の舐め合いやってろ。」
「じゃあな負け犬。」
親父が出て行くと巧は叫んだ。
「あの事件のせいにして、
自分たちから逃げるのはもうやめだ。」
「3億取り戻して、
バカで最強だった俺たちを取り戻す。」
そして3人は岩崎秀人のもとへ向かった。
秀人は相変わらず路上ライブを行なっていた。
秀人を遠くから見た巧は言う。
「あいつも俺たちと一緒だ。」
「高校3年で中退して、
親の会社継ぐどころか家を追い出されて、
プロになれるわけでもねえのに、
とりあえず歌ってる。」
ライブを終えた秀人に事情を伝えると、
話を聞いた秀人は答えた。
「別に俺は楽しくやってるよ。」
その反応に巧は言う。
「本当にそうだったら、
こんな話持ちかけてねえよ。」
昔と変わらない巧のノリに秀人は答えた。
「とかいって、本当は道連れが欲しいんだろ?」
こうして協力することになった秀人。
巧は10年前の風俗紙の切抜きを持っていた。
それを見た秀人の顔は曇っていた・・・
秀人は巧に言った。
「美沙さんは宮城さんの女だよ。」
3人が探すヒメノは美沙と言う名前だった。
〜3年前〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『3年前この人は俺たちの近くにいたんだ。』
『間違いなく彼女はミサさんだ。』
5人は町で秀人を使ってナンパをしていた。
秀人は女生の目を5秒見つめる事で、
簡単に落とすことができる力を持っていた。
その近くで路上ライブをしていた宮城祐。
宮城の歌に秀人は一瞬で惚れこんだ。
そして4人にバンドを組もうと持ちかけた。
最初は反対した京平。
「告られまくりの、ハメまくりなのにな〜。」
の一言で一番乗り気になった。
秀人は毎晩のように宮城のもとでギターを勉強した。
そこに来ていた宮城の彼女が美沙だったのである。
文化祭を目標に練習を続けた5人。
そして巧が作った詩に宮城が、
メロディーを付けてくれることになった。
しかし文化祭が中止になった・・・
宮城のもとに居た秀人。
「頼まれてた曲もう少しで出来っから。」
そう言う宮城に秀人は答えた。
「文化祭が中止になったら意味ないですよ。」
秀人を諭すように宮城は言う。
「関係ねえよ。」
「楽器があればどこでもステージになる。」
「ラブ・アンド・ピース。」
「ロックは人を傷つけるためにあるんじゃねえ。」
「人に愛されるためにあるんだ。」
そして宮城は続けた。
「俺。美沙と一緒になろうって思ってるんだ。」
「秀人。人に愛される音出せよ。」
その後、5人は爆破事件の計画を立てた。
あくまで文化祭を開催するための脅しで、
校庭に置いた爆弾を爆発させて、
教室にある爆弾には火薬を入れない。
その予定で実行に移された計画・・・
しかし、勢いで教室の爆弾にも火薬を入れた京平。
ついに校舎は爆発してしまった・・・
〜京平〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
気付いたら俺はいつもの場所に向かってた。
宮城さんがバカって叱ってくれたら、
笑って流せる気がした。
でもそこに宮城さんは居なかった。
俺はもう2度と2人には会えないって、
なんだかそう思ったんだ。
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〜現在〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
京平は知っている限りの話を3人にした。
それから宮城と会っていないこと。
その後、美沙だけは見かけたこと。
北村雄喜の父親が勤める銀行の裏口から
美沙が出てきたのを見たと・・・
4人は直ぐに雄喜の家に向かった。
あの事件から家を出なくなった雄喜。
まずは母親に美沙の写真を見せた。
しかし知らないという母親。
そんな母親は雄喜について話す。
「高校3年で中退して、
その1ヵ月後に父親が自殺して、
外の世界から完全に心を閉ざしちゃった。」
「爆破事件のせいで
父親が自殺したと思い込んで。」
そして父親の自殺の理由を聞いた巧。
しかし雄喜の母親は笑って言った。
「絶対あなたたちのせいじゃないわよ。」
「あの人は、
あなたたちのことが大好きだったんだから。」
そして京平の腕の話も嘘だと笑った。
京平は直ぐに雄喜の部屋の前に行って、
中に居る雄喜に対して話し掛けた。
「雄喜。俺。元気そうで良かった。」
「留守電聞いてる?」
「毎日くだらない内容でウゼエかもしれないけど、
これからも毎日続けるから。」
あの事件から京平は毎日、
雄喜に留守電を残していたのだ・・・
その後4人は、
昔から同じ場所に居るホームレスのもとへ向った。
美沙の写真を見せて話を聞くと、
宮城は弁当屋で働いていたという。
そして危ない奴らに追われて、
連れていかれた2人を見たと・・・
4人は直ぐに宮城が働いていた弁当屋に行く。
店主は宮城が3年前に亡くなったと話す。
住所を聞いた4人は、
宮城が住んでいたアパートへ向かう。
誰も居なかったが、部屋はそのまま残っていた。
美沙と映る写真と、高校時代に依頼した曲の原案。
そして宮城の位牌・・・
それを見たタクミは言う。
「最悪だ〜。」
命日は3年前の今日9月15日。
それは3年前の爆破事件の日であった。
それから巧は事情を話さずに、
3人を車に乗せて墓地へと向かった・・・
そこは宮城の眠る墓。
そして美沙が宮城の墓の前に居た。
巧は美沙に言う。
「やっと会えましたね。美沙さん。」
「全ては偶然じゃなく、必然だったってことだ。」
「覚えてますか?俺らのこと?」
「10年前歌舞伎町の、
ハッピーナイトを尋ねたガキどもです。」
「あれからあなたが、
なぜ3億円を奪うことになったのか、
教えてもらえますか?」
美沙は今までの経緯を話し出した。
「10年前私は飯島という男に裏切られ、
麻薬取引の罪を全て背負って、
6年間刑務所で過ごした。」
〜3年前の9月15日〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
6年の実刑が終わり出所した美沙。
行く当てのない美沙に聞こえてきたのが、
路上で歌う宮城の曲であった。
その曲に感動した美沙は、
ギターカバンに大金の入った封筒を入れて、
曲の途中で立ち去ろうとした。
それに対して宮城は演奏を中断して言った。
「良かったら飲みに行かない?」
「すげえ美人が大金落として行ったんだ。」
美沙は宮城と一緒に居酒屋に行った。
お酒が入り本音を言う美沙。
「もう全部終わりにしたい。」
それを聞いた宮城は返す。
「もったいねえ。」
「後は幸せになるだけじゃねえか。」
しかし、美沙は反論する。
「後は死ぬだけよ。」
「私なんて生きている価値無いもん。」
慰めるように宮城は答えた。
「あんたが死んだら俺が泣く。」
「それって価値無いことかな?」
「人生やり直しなんかできねえけど、
まんざらでもねえって気がする。」
「俺とあんたがこうして会えたみたいにさ。」
こうして、幸せな時間が流れ出した美沙。
それから時が経ち、
宮城の演奏を評価した、
音楽プロデューサーが聞きに来ることになった。
宮城は成功して稼げたら、
結婚してロンドンで暮らそうと美沙に伝えた。
プロデューサーが聞きに来る日。
いつもの場所の近くにある交番は、
爆破事件のため誰も居なくなっていた。
同時に美沙を探しに飯島が現れた。
抵抗するも美沙と宮城は連れて行かれた。
そして美沙は宮城を助けるために、
飯島のもとへと戻った。
それからの美沙は、
マネーロンダリングの資金運用を任され、
宮城を守るためにも組織で働いた。
その片棒を担がされていたのが、
雄喜の父親であったのだ。
正義感のある雄喜の父親は自殺して、
遺書に全ての事実を残した。
大きな組織が裏で動いており、遺書も闇へ消え、
飯島も組織から消されそうになって逃げた。
飯島がいなくなって美沙は開放されたが、
宮城はあの時既に殺されていたことを知った。
そして飯島への復讐を考えたのであった。
〜現代〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
全ての事実を知った4人。
と同時に遠くから声が聞こえた。
「そういうことだったのか〜。」
そこには亀頭がいた。
和生の携帯のGPS機能を使い現れたのだった。
亀頭はミサに言う。
「会いたかったんだ〜。飯島に。」
美沙は亀頭のしている時計を見て気がついた。
「飯島?」
亀頭は言う。
「今亀頭って言うんだよ。」
「結構変わったろ?」
「向こうでさ〜いろいろいじってさ〜。」
「顔、髪型、骨格、皮膚・・・」
「見てくれよこの足。」
「タッパ変えるために足まで切ってさ〜。」
「でも変えなきゃ日本帰られないからさ〜。」
「どうしても、お前に会いたくてさ〜」
そう言って美沙の近くに歩み寄る飯島。
美沙は隠し持っていた銃を飯島に向けた。
「許さない。」
「この3年間どれだけあんたを憎んだか。」
飯島は怒鳴りながら言う。
「和生!銃を取れ!」
和生は躊躇いながらも、
飯島に言われたまま、美沙から銃を取った。
美沙をつれて行く飯島。
飯島に秀人は聞いた。
「どうして宮城さんを殺したんですか?」
飯島は答える。
「決まってるだろ!」
「人の物に手を出したからだよ。」
「それから・・・
俺の秘密を知ったからには、
君たちにも全員死んでもらうから。」
その言葉と同時に走り出した巧。
飯島を蹴り倒して美沙をつれ逃げた。
3人も3億のアタッシュケースを奪い逃げる。
追いかけてくる飯島と組員。
美沙は逃げられないと思い、巧に言う。
「ももいいよ。降ろして。」
「私が戻れば飯島は・・・」
それに対して巧は言った。
「そんな勝手な真似させるかよ。」
「あんたにはなあ、幸せになって欲しいんだよ。」
美沙は聞いた。
「なんで私なんかのために?」
巧は答える。
「違う。俺たちのためだ。」
「俺たちは3年前に爆弾事件を起こした犯人だ。」
「俺たちがあんなバカな真似をしなければ、
あの交番にはいつもどおり警官がいて
宮城さんは殺されずにすんだ。」
「今度こそ守ってやりたいんだよ。」
一生懸命逃げた5人だが、
とうとう飯島に追いつかれてしまう。
銃を向けて飯島は言う。
「手を上げろ、今度は本当に撃つぞ。」
観念し美沙を差し出す・・・
と思わせたが一緒に逃げていたのは、
美沙に扮したホームレス。
美沙は途中で3億円を持たせて逃げさせていた。
怒った飯島は和生の足に銃を撃った。
そしてボコボコにした4人言う。
「明日までに3億と美沙用意しろ。」
「出来なかったら、
臓器全部売って沈めちゃうからOK?」
「逃げたり察にちくったら、
てめえ等の家族も皆殺しだぞ。」
バーに戻った4人。
京平は声を荒げて言った。
「最強だった俺たちを取り戻す?」
「ただのバカだから、
こんな風になってるんじゃないのかよ!」
「3年前から何も変わってないじゃないかよ!」
返すことの出来ない3人を見て、
膝をついた京平は今までとは違い静かな声で言う。
「怖わいんだよ。」
「明日を生きるのが、怖いんだよ。」
「こんな毎日が続くなら、
死んじまったほうがましだ!」
それを聞て巧は言う。
「嘘つけ。」
「必死に生きようとしてたじゃねえか!」
「俺知ってるよ。]
[お前が影で必死こいて大検受かったことも。」
「大学で犯罪者みたいに呼ばれても、
俺らの前では明るく振舞っていたことも。」
「いつかきっと・・・
そうやって胸に秘めて、
生きりゃあいいじゃねええか。」
「お前の人生。俺たちが見届けてやるからよ。」
それを聞いていた秀人は言った。
「俺たちだって怖ええよ。」
「それでもヘラヘラ笑ってられるのは、
お前らが居るからだろ?」
続けて和生も言う。
「俺たちの痛みは、俺たちが分かってる。」
3人の気持ちを知った京平。
「お前ら寒いんだよ。」
そう言って笑った。
その笑みに3人も笑顔になった。
そして巧は静かに言った。
「銀行強盗すっか?」
各々はその日はバラバラになった。
秀人は宮城の歌ってた場所に行った。
ビールとタバコを供えて言う。
「人に愛される音、
出せるようになりましたかね?」
そして1人弾き語りを始めた。
和生は入院する妹のもとへ向った。
妹は和生に言う。
「あんまり無理しないでよ?」
「私今のままで凄い幸せだよ。」
「私も一緒に、
夢を追ってる気持ちになれるんだ〜。」
和生は妹に背を向けたまま泣いていた・・・
京平は雄喜のもとへ向った。
そして扉一枚挟んで話しかける。
「叔父さんは正義のために死んでいったんだ。」
「明日叔父さんの銀行に強盗しに行く。」
「それで俺たちはパクられて塀の中だ。」
「逃れる方法はそれしかねえんだと。」
「だから俺の留守電ダイアリーは
しばらく御預けだな。」
「明日最後に一個だけ、
やり残したことやっちまおうってことになってさ。」
「雄樹・・・ごめんな・・・」
そう言うと雄喜の部屋の前に、
宮城が作曲した楽譜を置いてその場を後にした。
巧は1人バーを掃除していた。
そして誰もいないバーの
カウンターに向かって言った。
「お世話になりました。」
〜翌日〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いつもの場所に集まった4人。
すると楽器を持って雄喜が駆けつけた。
「ごめん。送れちゃって。」
京平と和生は、雄喜の肩を叩き言う。
「遅せえんだよ。」
そして揃った5人。
巧が路上の真ん中で話す。
「この曲を、雄喜の叔父さんと宮城さんにささげる。」
そして『シュアリー・サムデイ』の演奏が始まった。
歌い終わった頃には沢山の観客が拍手を送っていた。
演奏を終えた5人は銀行に乗り込んだ。
しかし・・・
そこには大勢の警察と連行される飯島。
警察は5人を見て聞いた。
「なんだお前等は?」
顔を見合わせて笑った5人。
と同時に走って銀行から逃げた。
〜前日の夜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
4人がバーに逃げ込んだ後。
バーを訪れた美沙は、店の前で巧の父に会った。
そして全ての真実を教えたのであった。
父は警察の後輩に、美沙の自供したテープを渡し、
その代わりにミサを巻き込まないように伝えていた。
〜現在〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
走って逃げた5人は、路上ライブした場所に戻っていた。
恭平は言う。
「体力なくなったな〜俺たち。」
それを聞いた巧は答えた。
「けど、まだ走ってんだな〜。」
「走ってていいんだな〜。」
その日、巧がバーに帰ると父がいた。
父は巧に言う。
「務所に入らずにすんでよかったな。」
「美沙って子に感謝しておけよ。」
その言葉を聞いて巧は聞き返した。
「彼女がどうかしたのか?」
父は言う。
「知りたかったら直接彼女に聞け。」
「今夜の飛行機で日本を発つことになった。」
「彼女に伝えてくれ。」
「お前には2度救われたって。」
その言葉に、すぐに走り出した巧。
それを見た父は笑ってつぶやいた。
「勢いだけじゃねえかよ。」
空港に着いた巧は美沙を見つけて言う。
「約束したじゃねえかよ。」
「俺のお嫁さんになってくれるって。」
「あの時は何も出来なかったけど、
今なら俺があんたを守る。」
「幸せにする。だから・・・」
美沙は走って巧に抱きついた。
「ありがとう。」
「また救われちゃったね。」
「でも1人じゃないの。」
「心の中に祐が居るの。」
そして巧から離れていった。
「あなたが守ってあげる人は私じゃない。」
「もっと素敵な人が居るはずだから。」
巧はそれでも美沙に言う。
「俺はあんたが・・・」
しかし被せるように美沙は、
「じゃあね。」
とだけ言って背中を向け歩き出した。
そのまま立ち尽くす巧。
巧の後ろには・・・
「ふ〜られた君。ふ〜られた君。」
と変な曲を歌う京平と、3人がいた。
涙する巧を尻目に4人は駆け寄り、
涙する巧を中心にして写真を撮った。
(終わり)
〜〜エンドロール1〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いつもの公園で撮影する上戸彩を見かける。
遠くで見ていた京平は言った。
「彼女から見たら俺らはただの塵だぞ〜」
それに対して巧は返した。
「分からなねえぞ〜」
同時に上戸彩に歩み寄る秀人。
カウントダウンを始める巧。
「5・4・3・2・1。」
「落ちた〜。」
それを見ていた京平は言った。
「予知夢が当たった!」
〜〜エンドロール2〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
公衆トイレにこもる京平は変な曲を歌っていた。
「俺にもやっと彼女が出来た。」
「ボディコン時代遅れの女の子。」
と天井を見上げると・・・
天井のスプリンクラーの横に『性転換装置』の文字。
以前ホームレスが話していた噂『性転換装置』
それを見た京平は言う。
「あるじゃねえか〜。」
〜シュアリー・サムデイ(歌詞)〜〜〜〜〜〜〜
♪巧(小出恵介)withシュアリー・スターズ
作詞・作曲 トータス松本
どれだけの朝を どれだけの夜を
蹴飛ばせばいいのだろう
どれだけの嘘を どれだけの涙を
忘れれば気がすむのだろう
明日は風の中
あの虹の彼方に
どれほどの馬鹿と どれほどの間違いを
くり返してもまだ終わらない
どれくらい先まで どれくらい走れる
転んでも 滑り落ちても
明日は風の中
あの虹の彼方に
声を嗄らしながら
君の名を呼びながら
ぼくは大きく手を伸ばすよ
声を嗄らしながら
君の名を呼びながら
ぼくは大きく手を伸ばすよ
どれだけの人を どれだけの自分を
愛することができるのだろう
明日は風の中
明日は風の中
あの虹の彼方に
あの虹の彼方に
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【シュアリー・サムデイ】
【出演者】
喜志巧:小出恵介
真鍋京平:勝地涼
後藤和生:鈴木亮平
北村雄喜:ムロツヨシ
岩崎秀人:綾野剛
葉月美沙(ヒメノ):小西真奈美
宮城祐(美沙の彼氏):横田栄司
喜志建夫(巧の父):竹中直人
北村雄一郎(雄喜の父):モト冬樹
北村美和子(雄喜の母):原日出子
飯島(亀頭):遠藤憲一
亀頭(飯島):吉田鋼太郎
体育教師 - 高橋努
教頭 - 笹野高史
後藤翔子(和生の妹)井上真央
弁当屋の店長(宮城のバイト先):大竹しのぶ
警官A:妻夫木聡
警官B;小栗旬
上戸彩(エンドロール):上戸彩
やっさん(ホームレス):岡村隆史
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【感想】
意外としっかり作りこまれてます。
遊びの要素がふんだんに入っていて、
その中で友情や恋愛も入れている。
ここまで盛り沢山でよい映画って少ないです。
しかしこの映画は、ここまで詰め込んで、
この出来なんだから,成功なんでは?
って思いました。
小栗くんらしいストーリーな気がします。
今考えるととても凄い出演者ですよね〜
【あらすじ】(ネタバレあり)
真鍋京平は教室の窓から、
校庭で一部始終を見守る先生達に言った。
「ファック・ユー」
「校長あんたは何もわかっっちゃいねえ。」
「確かに今の若い奴らは、
愛国心も無ければ自立心もねえ。」
「平和ボケに漬かった連中ばかりだ。」
「でもな。俺たちは違う。」
「この腐れきった日本を、
根本から立て直すべく立ち上がったんだ。」
教頭先生は言った。
「学校爆破なんてバカな真似はやめなさい。」
それを無視して京平は続けた、
「異端児は戦う、それは100も承知だ。」
「それでもガバメントの犬にはならねえし、
ましてやハイスクールの言いなりにはならねえ。」
「俺たちが新しい日本を作っていくんだよ。」
「この第一歩が文化祭の復活だ〜。」
「今年から文化祭廃止だと?」
「ハメまくりだって言うから、
ギター猛特訓したんだぞ。」
「いつまで童貞でいさせる気だ〜。」
それを聞いていた喜志巧は呆れて言う。
「あれは完全な八つ当たりだ。」
京平は続けた。
「後5分だとよ〜。」
「創立57年の歴史が詰まった、
この校舎が一瞬でボンってわけだ。」
「さあ3分切ったぞ〜。」
「今から非難しても助かるかどうか〜。」
教頭は諦めて京平達の要望を飲んだ。
「君たちの要求どおり文化祭の開催を決定する。」
それを聞いた京平は喜んで言った。
「あんたら新しい時代の幕開けに立ち会ったんだ。」
「サンキュー!」
教室にいた5人。
巧、京平、和生、雄喜、秀人は喜んだ。
しかし・・・
「あれ?タイマーが止まらない。」
慌てた5人は教室を飛び出し逃げた・・・
しかし校庭に出ると雄喜が居なかった。
同時に爆発する校舎。
「雄喜〜。」
〜現在〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
京平は巧に言う。
「雄喜には焦ったけどな〜。」
「マジ死んだと思ったもん。」
巧は答えた。
「死んではねえけど、
片腕なくしてしまったけどな。」
その答えに対して京平は言う。
「そんなの単なる噂だろ?」
「あの事件から会ってねえからって、
被害妄想炸裂させんなよ。」
「暗くなるからあいつの話するなよ。」
「あれからもう3年だぞ。」
「さえない人生過ごしやがってよ。」
「お前の3年なんて10秒で語れてしまうよ。」
そう言って 巧の3年を話し始めた京平。
「高校3年で中退して、
デカだった親父を退職に追い込んで、
152日付き合った彼女にも振られて、
挙句の果てが、
親父の始めたバーの手伝いってドンだけだよ。」
それを聞いた巧は言い返す。
「だまれ童貞の分際で!」
「俺の3年が10秒ならな、
てめえの3年は8秒で語れる。」
そう言うと仕返しとばかりに京平の3年を話し始めた。
「高校3年で中退して
振られる彼女も居ないから
毎日ダッチワイフとバーチャルSEX。」
「生身の彼女が欲しくなって
大検受けたら奇跡的に3流大学に合格。」
「だけど、いまだ童貞。」
くだらない話の中で京平は呟いた。
「あ〜その辺に女転がってねえかな?」
その瞬間に目の前で車に引かれた金髪の女性。
驚きながら巧は答えた。
「女転がってますけど・・・」
急いで女のもとへ駆け寄る2人。
もちろん運転手も駆け寄ったが、
女は立ち上がり運転手にピストルを向けた。
そして跪く運転手を尻目に車に乗って逃げた。
車を奪われたヤクザ風の男性。
それは一緒に校舎を爆破した後藤和生だった。
その夜、巧の親父のバーで和生の話をする2人。
「あいつもこの3年でいろいろあったのかな?」
「高校辞めてから、
皆とは会わなくなっちまったからな。」
「よしっ!」
「僕たちの知らない和生君の3年を想像しよ。」
そう言うと2人で勝手に和生の3年を話し出す。
「高校3年で中退して、
格闘家を目指して頑張ってみたものの、
命より大切な妹の入院費が払えなくなって、
格闘家を断念・・・」
「金を稼ぐためにヤクザになった。」
とその時、慌てた様子の和生がバーに入って来た。
「その通り。」
そう言って2人の妄想通りと伝えると、
組長に追われていると話し、奥に逃げ込んだ。
同時にバーのガラスが割れて、
白いスーツを着た男が入ってきた。
「今ここにうちの若いもんが着たろ?」
急な展開に無言で答えない2人。
2人を無視し、男は和生を探し始めた。
和生を見つけられない白スーツの男は2人に言う。
「明日の夜までに和生と、
彼が奪った3億円用意しておいて貰えるかな?」
巧が口ごたえをしようとすると、
男はピストルを発砲して言った。
「マイネームイズ亀頭。」
「亀の頭って書いて亀頭。」
「約束破ったら、君たちと和生君皆殺し。」
「OK?」
2人は頷くことしか出来なかった。
亀頭が帰ると同時に和生は奥から出てきた。
言い寄る2人に和生は言った。
「俺は奪ってねえよ。」
「昼間、女に車パクられたの見ただろ?」
「あの中に3億積んでたんだよ。」
「昼間の女俺見たことあるんだよ。」
「あの女、ガキの頃にお前のお袋だと思って
歌舞伎町まで探しに行った女だ。」
「お前らなら知っていると思って。」
それを聞いて巧は昔を思い出し呟いた。
「あいつの名前はハッピーナイト。」
〜10年前〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『あの頃の俺はただ母親に会いたかった。』
『だけど、あれは俺の初恋だったのか・・・』
小さかった巧は雑誌を持って父親のもとへ。
「お父さん。この人。」
「綺麗な人だね?」
「この人に会いに行ってるの?」
「もしかしてお母さん?」
その雑誌は風俗紙であった。
何も言わない父親の反応に、
母親だと思った巧は仲間たちに教え、
その日5人で歌舞伎町に向かった。
雑誌に載っていた風俗店『ハッピーナイト』で、
呼び込みの男性に事情を話して中に通してもらった。
「君が私の子?」
そう言ってヒメノは現れた。
「私いくつだと思ってるの?」
「君のお父さんはタダの客。」
「せっかく来てくれて悪いけど・・・」
巧は答えた。
「お姉さんがお母さんじゃないって知ってた。」
「お父さんがお母さん以外の人を、
好きになっちゃたんじゃないかと思って。」
寂しそうな巧の顔を見て
「安心して。」
「お父さんは寂しさを紛らわせるために
私に会いにきているだけ。」
「誰も私なんか好きにならないよ。」
そう言うとヒメノは巧の手を自分の胸に当てて言う。
「お母さんよりいいおっぱいしてるでしょ?」
照れて手を離す巧は言う。
「知らないよ。触ったことないし。」
ヒメノはからかう様に巧に言う。
「じゃあちゃんと触ってみる?」
もう一度巧の手を自分の胸に持っていく。
巧は言った。
「あったかい・・・」
ヒメノは笑って言う。
「何かいいね。こういうの。」
優しいヒメノに巧は言った。
「お姉さんがお母さんだったら良かったのに。」
そしてヒメノは聞いた。
「お父さん何している人?」
巧は素直に答えた。
「刑事。」
その言葉に焦ったヒメノ。
ヒメノは事務所へと走って言う。
「警察が来る。」
同時にガサ入れが入った。
事務所ではヤクの取引が行なわれていた。
逃げようとするヤクザと、
それを捕まえようとする警察。
その中間に巧は居た。
逃げようとヤクザは銃を発砲する。
警察とヤクザの間で、頭を抱えて伏せる巧。
巧を守ろうとする父親。
想定外のことに親分の飯島だけを
捕まえそびれてしまった・・・
保護された巧の前を連行されるヒメノが通る。
思わず歩み寄った巧。
そんな巧にヒメノは言う。
「言ったでしょ?」
「誰も私なんか好きにならないって。」
「私は汚れちゃったのよ。」
さっきとは違い寂しそうな顔をするヒメノ。
そんなヒメノに巧は言った。
「お姉さんは綺麗だよ。」
「俺は好きだよ。」
それを聞いたヒメノは巧に抱きついて言う。
「君が大きくなったらお嫁さんにしてくれる?」
巧は答えた。
「いいよ。俺がお姉さんを守ってあげる。」
ヒメノは巧から離れ、
「ありがとう。」
「おかげで救われた・・・」
そう言い残してヒメノは連行された。
〜現在〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
荒れたバーに父親が帰って来た。
巧は聞いた。
「10年前の歌舞伎町の女覚えているか?」
親父は答えずに言う。
「お前らまた余計なことに、
首突っ込んでんじゃね絵だろうな?」
「お前らな〜そうやって、
一生自分たちで傷の舐め合いやってろ。」
「じゃあな負け犬。」
親父が出て行くと巧は叫んだ。
「あの事件のせいにして、
自分たちから逃げるのはもうやめだ。」
「3億取り戻して、
バカで最強だった俺たちを取り戻す。」
そして3人は岩崎秀人のもとへ向かった。
秀人は相変わらず路上ライブを行なっていた。
秀人を遠くから見た巧は言う。
「あいつも俺たちと一緒だ。」
「高校3年で中退して、
親の会社継ぐどころか家を追い出されて、
プロになれるわけでもねえのに、
とりあえず歌ってる。」
ライブを終えた秀人に事情を伝えると、
話を聞いた秀人は答えた。
「別に俺は楽しくやってるよ。」
その反応に巧は言う。
「本当にそうだったら、
こんな話持ちかけてねえよ。」
昔と変わらない巧のノリに秀人は答えた。
「とかいって、本当は道連れが欲しいんだろ?」
こうして協力することになった秀人。
巧は10年前の風俗紙の切抜きを持っていた。
それを見た秀人の顔は曇っていた・・・
秀人は巧に言った。
「美沙さんは宮城さんの女だよ。」
3人が探すヒメノは美沙と言う名前だった。
〜3年前〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『3年前この人は俺たちの近くにいたんだ。』
『間違いなく彼女はミサさんだ。』
5人は町で秀人を使ってナンパをしていた。
秀人は女生の目を5秒見つめる事で、
簡単に落とすことができる力を持っていた。
その近くで路上ライブをしていた宮城祐。
宮城の歌に秀人は一瞬で惚れこんだ。
そして4人にバンドを組もうと持ちかけた。
最初は反対した京平。
「告られまくりの、ハメまくりなのにな〜。」
の一言で一番乗り気になった。
秀人は毎晩のように宮城のもとでギターを勉強した。
そこに来ていた宮城の彼女が美沙だったのである。
文化祭を目標に練習を続けた5人。
そして巧が作った詩に宮城が、
メロディーを付けてくれることになった。
しかし文化祭が中止になった・・・
宮城のもとに居た秀人。
「頼まれてた曲もう少しで出来っから。」
そう言う宮城に秀人は答えた。
「文化祭が中止になったら意味ないですよ。」
秀人を諭すように宮城は言う。
「関係ねえよ。」
「楽器があればどこでもステージになる。」
「ラブ・アンド・ピース。」
「ロックは人を傷つけるためにあるんじゃねえ。」
「人に愛されるためにあるんだ。」
そして宮城は続けた。
「俺。美沙と一緒になろうって思ってるんだ。」
「秀人。人に愛される音出せよ。」
その後、5人は爆破事件の計画を立てた。
あくまで文化祭を開催するための脅しで、
校庭に置いた爆弾を爆発させて、
教室にある爆弾には火薬を入れない。
その予定で実行に移された計画・・・
しかし、勢いで教室の爆弾にも火薬を入れた京平。
ついに校舎は爆発してしまった・・・
〜京平〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
気付いたら俺はいつもの場所に向かってた。
宮城さんがバカって叱ってくれたら、
笑って流せる気がした。
でもそこに宮城さんは居なかった。
俺はもう2度と2人には会えないって、
なんだかそう思ったんだ。
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〜現在〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
京平は知っている限りの話を3人にした。
それから宮城と会っていないこと。
その後、美沙だけは見かけたこと。
北村雄喜の父親が勤める銀行の裏口から
美沙が出てきたのを見たと・・・
4人は直ぐに雄喜の家に向かった。
あの事件から家を出なくなった雄喜。
まずは母親に美沙の写真を見せた。
しかし知らないという母親。
そんな母親は雄喜について話す。
「高校3年で中退して、
その1ヵ月後に父親が自殺して、
外の世界から完全に心を閉ざしちゃった。」
「爆破事件のせいで
父親が自殺したと思い込んで。」
そして父親の自殺の理由を聞いた巧。
しかし雄喜の母親は笑って言った。
「絶対あなたたちのせいじゃないわよ。」
「あの人は、
あなたたちのことが大好きだったんだから。」
そして京平の腕の話も嘘だと笑った。
京平は直ぐに雄喜の部屋の前に行って、
中に居る雄喜に対して話し掛けた。
「雄喜。俺。元気そうで良かった。」
「留守電聞いてる?」
「毎日くだらない内容でウゼエかもしれないけど、
これからも毎日続けるから。」
あの事件から京平は毎日、
雄喜に留守電を残していたのだ・・・
その後4人は、
昔から同じ場所に居るホームレスのもとへ向った。
美沙の写真を見せて話を聞くと、
宮城は弁当屋で働いていたという。
そして危ない奴らに追われて、
連れていかれた2人を見たと・・・
4人は直ぐに宮城が働いていた弁当屋に行く。
店主は宮城が3年前に亡くなったと話す。
住所を聞いた4人は、
宮城が住んでいたアパートへ向かう。
誰も居なかったが、部屋はそのまま残っていた。
美沙と映る写真と、高校時代に依頼した曲の原案。
そして宮城の位牌・・・
それを見たタクミは言う。
「最悪だ〜。」
命日は3年前の今日9月15日。
それは3年前の爆破事件の日であった。
それから巧は事情を話さずに、
3人を車に乗せて墓地へと向かった・・・
そこは宮城の眠る墓。
そして美沙が宮城の墓の前に居た。
巧は美沙に言う。
「やっと会えましたね。美沙さん。」
「全ては偶然じゃなく、必然だったってことだ。」
「覚えてますか?俺らのこと?」
「10年前歌舞伎町の、
ハッピーナイトを尋ねたガキどもです。」
「あれからあなたが、
なぜ3億円を奪うことになったのか、
教えてもらえますか?」
美沙は今までの経緯を話し出した。
「10年前私は飯島という男に裏切られ、
麻薬取引の罪を全て背負って、
6年間刑務所で過ごした。」
〜3年前の9月15日〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
6年の実刑が終わり出所した美沙。
行く当てのない美沙に聞こえてきたのが、
路上で歌う宮城の曲であった。
その曲に感動した美沙は、
ギターカバンに大金の入った封筒を入れて、
曲の途中で立ち去ろうとした。
それに対して宮城は演奏を中断して言った。
「良かったら飲みに行かない?」
「すげえ美人が大金落として行ったんだ。」
美沙は宮城と一緒に居酒屋に行った。
お酒が入り本音を言う美沙。
「もう全部終わりにしたい。」
それを聞いた宮城は返す。
「もったいねえ。」
「後は幸せになるだけじゃねえか。」
しかし、美沙は反論する。
「後は死ぬだけよ。」
「私なんて生きている価値無いもん。」
慰めるように宮城は答えた。
「あんたが死んだら俺が泣く。」
「それって価値無いことかな?」
「人生やり直しなんかできねえけど、
まんざらでもねえって気がする。」
「俺とあんたがこうして会えたみたいにさ。」
こうして、幸せな時間が流れ出した美沙。
それから時が経ち、
宮城の演奏を評価した、
音楽プロデューサーが聞きに来ることになった。
宮城は成功して稼げたら、
結婚してロンドンで暮らそうと美沙に伝えた。
プロデューサーが聞きに来る日。
いつもの場所の近くにある交番は、
爆破事件のため誰も居なくなっていた。
同時に美沙を探しに飯島が現れた。
抵抗するも美沙と宮城は連れて行かれた。
そして美沙は宮城を助けるために、
飯島のもとへと戻った。
それからの美沙は、
マネーロンダリングの資金運用を任され、
宮城を守るためにも組織で働いた。
その片棒を担がされていたのが、
雄喜の父親であったのだ。
正義感のある雄喜の父親は自殺して、
遺書に全ての事実を残した。
大きな組織が裏で動いており、遺書も闇へ消え、
飯島も組織から消されそうになって逃げた。
飯島がいなくなって美沙は開放されたが、
宮城はあの時既に殺されていたことを知った。
そして飯島への復讐を考えたのであった。
〜現代〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
全ての事実を知った4人。
と同時に遠くから声が聞こえた。
「そういうことだったのか〜。」
そこには亀頭がいた。
和生の携帯のGPS機能を使い現れたのだった。
亀頭はミサに言う。
「会いたかったんだ〜。飯島に。」
美沙は亀頭のしている時計を見て気がついた。
「飯島?」
亀頭は言う。
「今亀頭って言うんだよ。」
「結構変わったろ?」
「向こうでさ〜いろいろいじってさ〜。」
「顔、髪型、骨格、皮膚・・・」
「見てくれよこの足。」
「タッパ変えるために足まで切ってさ〜。」
「でも変えなきゃ日本帰られないからさ〜。」
「どうしても、お前に会いたくてさ〜」
そう言って美沙の近くに歩み寄る飯島。
美沙は隠し持っていた銃を飯島に向けた。
「許さない。」
「この3年間どれだけあんたを憎んだか。」
飯島は怒鳴りながら言う。
「和生!銃を取れ!」
和生は躊躇いながらも、
飯島に言われたまま、美沙から銃を取った。
美沙をつれて行く飯島。
飯島に秀人は聞いた。
「どうして宮城さんを殺したんですか?」
飯島は答える。
「決まってるだろ!」
「人の物に手を出したからだよ。」
「それから・・・
俺の秘密を知ったからには、
君たちにも全員死んでもらうから。」
その言葉と同時に走り出した巧。
飯島を蹴り倒して美沙をつれ逃げた。
3人も3億のアタッシュケースを奪い逃げる。
追いかけてくる飯島と組員。
美沙は逃げられないと思い、巧に言う。
「ももいいよ。降ろして。」
「私が戻れば飯島は・・・」
それに対して巧は言った。
「そんな勝手な真似させるかよ。」
「あんたにはなあ、幸せになって欲しいんだよ。」
美沙は聞いた。
「なんで私なんかのために?」
巧は答える。
「違う。俺たちのためだ。」
「俺たちは3年前に爆弾事件を起こした犯人だ。」
「俺たちがあんなバカな真似をしなければ、
あの交番にはいつもどおり警官がいて
宮城さんは殺されずにすんだ。」
「今度こそ守ってやりたいんだよ。」
一生懸命逃げた5人だが、
とうとう飯島に追いつかれてしまう。
銃を向けて飯島は言う。
「手を上げろ、今度は本当に撃つぞ。」
観念し美沙を差し出す・・・
と思わせたが一緒に逃げていたのは、
美沙に扮したホームレス。
美沙は途中で3億円を持たせて逃げさせていた。
怒った飯島は和生の足に銃を撃った。
そしてボコボコにした4人言う。
「明日までに3億と美沙用意しろ。」
「出来なかったら、
臓器全部売って沈めちゃうからOK?」
「逃げたり察にちくったら、
てめえ等の家族も皆殺しだぞ。」
バーに戻った4人。
京平は声を荒げて言った。
「最強だった俺たちを取り戻す?」
「ただのバカだから、
こんな風になってるんじゃないのかよ!」
「3年前から何も変わってないじゃないかよ!」
返すことの出来ない3人を見て、
膝をついた京平は今までとは違い静かな声で言う。
「怖わいんだよ。」
「明日を生きるのが、怖いんだよ。」
「こんな毎日が続くなら、
死んじまったほうがましだ!」
それを聞て巧は言う。
「嘘つけ。」
「必死に生きようとしてたじゃねえか!」
「俺知ってるよ。]
[お前が影で必死こいて大検受かったことも。」
「大学で犯罪者みたいに呼ばれても、
俺らの前では明るく振舞っていたことも。」
「いつかきっと・・・
そうやって胸に秘めて、
生きりゃあいいじゃねええか。」
「お前の人生。俺たちが見届けてやるからよ。」
それを聞いていた秀人は言った。
「俺たちだって怖ええよ。」
「それでもヘラヘラ笑ってられるのは、
お前らが居るからだろ?」
続けて和生も言う。
「俺たちの痛みは、俺たちが分かってる。」
3人の気持ちを知った京平。
「お前ら寒いんだよ。」
そう言って笑った。
その笑みに3人も笑顔になった。
そして巧は静かに言った。
「銀行強盗すっか?」
各々はその日はバラバラになった。
秀人は宮城の歌ってた場所に行った。
ビールとタバコを供えて言う。
「人に愛される音、
出せるようになりましたかね?」
そして1人弾き語りを始めた。
和生は入院する妹のもとへ向った。
妹は和生に言う。
「あんまり無理しないでよ?」
「私今のままで凄い幸せだよ。」
「私も一緒に、
夢を追ってる気持ちになれるんだ〜。」
和生は妹に背を向けたまま泣いていた・・・
京平は雄喜のもとへ向った。
そして扉一枚挟んで話しかける。
「叔父さんは正義のために死んでいったんだ。」
「明日叔父さんの銀行に強盗しに行く。」
「それで俺たちはパクられて塀の中だ。」
「逃れる方法はそれしかねえんだと。」
「だから俺の留守電ダイアリーは
しばらく御預けだな。」
「明日最後に一個だけ、
やり残したことやっちまおうってことになってさ。」
「雄樹・・・ごめんな・・・」
そう言うと雄喜の部屋の前に、
宮城が作曲した楽譜を置いてその場を後にした。
巧は1人バーを掃除していた。
そして誰もいないバーの
カウンターに向かって言った。
「お世話になりました。」
〜翌日〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いつもの場所に集まった4人。
すると楽器を持って雄喜が駆けつけた。
「ごめん。送れちゃって。」
京平と和生は、雄喜の肩を叩き言う。
「遅せえんだよ。」
そして揃った5人。
巧が路上の真ん中で話す。
「この曲を、雄喜の叔父さんと宮城さんにささげる。」
そして『シュアリー・サムデイ』の演奏が始まった。
歌い終わった頃には沢山の観客が拍手を送っていた。
演奏を終えた5人は銀行に乗り込んだ。
しかし・・・
そこには大勢の警察と連行される飯島。
警察は5人を見て聞いた。
「なんだお前等は?」
顔を見合わせて笑った5人。
と同時に走って銀行から逃げた。
〜前日の夜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
4人がバーに逃げ込んだ後。
バーを訪れた美沙は、店の前で巧の父に会った。
そして全ての真実を教えたのであった。
父は警察の後輩に、美沙の自供したテープを渡し、
その代わりにミサを巻き込まないように伝えていた。
〜現在〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
走って逃げた5人は、路上ライブした場所に戻っていた。
恭平は言う。
「体力なくなったな〜俺たち。」
それを聞いた巧は答えた。
「けど、まだ走ってんだな〜。」
「走ってていいんだな〜。」
その日、巧がバーに帰ると父がいた。
父は巧に言う。
「務所に入らずにすんでよかったな。」
「美沙って子に感謝しておけよ。」
その言葉を聞いて巧は聞き返した。
「彼女がどうかしたのか?」
父は言う。
「知りたかったら直接彼女に聞け。」
「今夜の飛行機で日本を発つことになった。」
「彼女に伝えてくれ。」
「お前には2度救われたって。」
その言葉に、すぐに走り出した巧。
それを見た父は笑ってつぶやいた。
「勢いだけじゃねえかよ。」
空港に着いた巧は美沙を見つけて言う。
「約束したじゃねえかよ。」
「俺のお嫁さんになってくれるって。」
「あの時は何も出来なかったけど、
今なら俺があんたを守る。」
「幸せにする。だから・・・」
美沙は走って巧に抱きついた。
「ありがとう。」
「また救われちゃったね。」
「でも1人じゃないの。」
「心の中に祐が居るの。」
そして巧から離れていった。
「あなたが守ってあげる人は私じゃない。」
「もっと素敵な人が居るはずだから。」
巧はそれでも美沙に言う。
「俺はあんたが・・・」
しかし被せるように美沙は、
「じゃあね。」
とだけ言って背中を向け歩き出した。
そのまま立ち尽くす巧。
巧の後ろには・・・
「ふ〜られた君。ふ〜られた君。」
と変な曲を歌う京平と、3人がいた。
涙する巧を尻目に4人は駆け寄り、
涙する巧を中心にして写真を撮った。
(終わり)
〜〜エンドロール1〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いつもの公園で撮影する上戸彩を見かける。
遠くで見ていた京平は言った。
「彼女から見たら俺らはただの塵だぞ〜」
それに対して巧は返した。
「分からなねえぞ〜」
同時に上戸彩に歩み寄る秀人。
カウントダウンを始める巧。
「5・4・3・2・1。」
「落ちた〜。」
それを見ていた京平は言った。
「予知夢が当たった!」
〜〜エンドロール2〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
公衆トイレにこもる京平は変な曲を歌っていた。
「俺にもやっと彼女が出来た。」
「ボディコン時代遅れの女の子。」
と天井を見上げると・・・
天井のスプリンクラーの横に『性転換装置』の文字。
以前ホームレスが話していた噂『性転換装置』
それを見た京平は言う。
「あるじゃねえか〜。」
〜シュアリー・サムデイ(歌詞)〜〜〜〜〜〜〜
♪巧(小出恵介)withシュアリー・スターズ
作詞・作曲 トータス松本
どれだけの朝を どれだけの夜を
蹴飛ばせばいいのだろう
どれだけの嘘を どれだけの涙を
忘れれば気がすむのだろう
明日は風の中
あの虹の彼方に
どれほどの馬鹿と どれほどの間違いを
くり返してもまだ終わらない
どれくらい先まで どれくらい走れる
転んでも 滑り落ちても
明日は風の中
あの虹の彼方に
声を嗄らしながら
君の名を呼びながら
ぼくは大きく手を伸ばすよ
声を嗄らしながら
君の名を呼びながら
ぼくは大きく手を伸ばすよ
どれだけの人を どれだけの自分を
愛することができるのだろう
明日は風の中
明日は風の中
あの虹の彼方に
あの虹の彼方に
〜〜 関 連 商 品 〜〜
〜〜RIKUのメインブログ〜〜
・【アフィリエイトで稼ぐ】超初心者からの挑戦(リアルタイム)
〜〜RIKUのサブブログ〜〜
・「携帯・スマホゲーム」DORAKENを実際に攻略して・・・
・☆馬の気持ち☆
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2016年01月06日
【るろうに剣心】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【るろうに剣心】
【出演者】
緋村剣心:佐藤健
神谷薫:武井咲
相楽左之助:青木崇高
明神弥彦:田中偉登
高荷恵:蒼井優
武田観柳:香川照之
鵜堂刃衛:吉川晃司
外印:綾野剛
戌亥番神:須藤元気
斎藤一:江口洋介
桂小五郎:宮川一朗太
山県有朋:奥田瑛二
浦村署長 - 斉藤洋介
関原妙(牛鍋屋の店員):平田薫
三条燕(牛鍋屋の店員):永野芽郁
我荒・兄(道場に乗り込んだ男):平山祐介
我荒・弟(道場に乗り込んだ男):深水元基
清里明良(緋村に殺された若侍):窪田正孝
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【感想】
面白い。面白い。
さすがに、あの漫画を実写化なんて・・・
と思っていた自分が間違いだった。
ここまで忠実に再現するなんて・・・
愕然としました。
配役も完璧と言っても良いと思います。
後編もあるので、
総合的に感想は書こうと思いますが、
それにしても凄いですね〜
私の中では忘れられない漫画だけに、
細かい事を言ったらキリがないのですが、
はずは佐藤健くんに拍手です!
江口さんの配役も感動でしたが、
左之助役の青木崇高さんも、
しっかり味出していただいて最高です。
子供のころの目標は『三重の極み』修得でしたから・・・
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今から約140年前「幕末」の動乱期
「人きり抜刀斎」と呼ばれる暗殺者が居た
倒幕派の命により京都を暗躍し
その修羅の如き強さと冷徹さから
人々に恐れられた
時は天下分け目の戊辰戦争・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1868年1月
京都・鳥羽伏見の山中
幕府と維新軍の戦いが行なわれていた。
藩幕府に恐れられた新撰組の斎藤一。
斎藤は抜刀斎を探して山中を駆け回っていた。
とてつもない勢いで人を切り倒していく1人の男。
やっと巡り合った2人。目を合わせたとき、
「勝ったぞ〜。錦の見肌じゃ〜。」
その声を聞き、緋村はつぶやいた。
「来たか新しい時代が・・・」
立ち去ろうとする緋村に斎藤は言った。
「これで終わりだと思うなよ。」
「例え世の中が変わろうとも、
剣に生き、剣に死ぬしか俺たちに道はない。」
その言葉を聞いた緋村は、
何も言わず持っていた刀を地面に刺し、
背中を向けて歩き出したのであった・・・
その山中で1人の男が死体の中から立ち上がった。
「なぜだ、なぜ俺は生き残った・・・」
そう言って緋村の突き刺した刀に手を当てた。
その時多くの悲鳴が聞こえて、残像が脳裏をよぎる。
「コレが人きり抜刀斎の・・・」
時は流れ1978年(明治11年)東京
世の中は変わり抜刀令も出された時代。
一方で金にものを言わす人間も増えていた。
「人間とは弱いものだ。」
「口では理想を語りたがるが、
結局は三つのものの前では獣となる。」
「自分のため、金のため、そして快楽のため・・・」
そう言うのは武田観柳。
観柳は報告に来た高荷恵に言う。
「成功だ。」
「この新型のアヘンは人間どもを獣に変える。」
お褒めの言葉を頂き、恵が部屋を去ろうとすると、
黒ずくめの男たちが屋敷に入ってきた。
一瞬で恵以外の研究員は殺された。
怯える恵に観柳は言う。
「作り方を知っているのは一人で十分。」
その頃、東京の町では人が殺され、
死体に斬奸状が置かれる事件が続いていた。
斬奸状には
『人きり抜刀斎 神谷活心流』
との文字が・・・
東京にたどり着いた緋村。
緋村の腰にかける刀を見た神谷薫。
「そこの男。」
「廃刀令を蔑ろにして刀を持ち歩くとは、
お前が噂の人きり抜刀斎か?」
そう言って木刀を振りかざした。
薫の剣をかわして緋村は言った。
「拙者は流浪人。」
「あてのない剣客でござる。」
「これは逆刃刀でござる。」
そう言って腰にかける刀を見せた。
緋村の無実が分かり木刀をしまった薫。
薫は自分の流派を名乗って、
人を切り続ける『人きり抜刀斎』を探していた。
そのころ観柳のもとから逃げ出していた恵。
唯一の新型アヘンの製造方法を分かる恵。
観柳は直ぐに鵜藤刃衛に連れ戻しを命じた。
警察に助けを求めて駆け込んだ恵だが、
刃衛はそんなことは構わずに警察に乗り込む。
次々と警官を殺す刃衛。
刃衛は特殊な能力『心の一方』を使う。
それはまるで猛獣に睨まれたかのように、
身動きが一切聞かなくなる術法。
警官は一切歯が立たずに、
とうとう恵は追い詰められた。
恵は危機一髪で警察署から逃げだした。
恵に逃げられ町を歩く刃衛。
腰にかけた刀を見て刃衛に声をかけた薫。
「待ちなさい。お前が抜刀斎か?」
刃衛は直ぐに薫を殺そうとするが、
それを助けたのは緋村だった。
間一髪で薫を助けた緋村は刃衛に聞いた。
「お前か?抜刀斎を名乗る男は。」
刃衛は答えずに緋村の顔を見て言った。
「その傷、その速さは、お前が伝説の・・・」
そう言って『心の一方』を使うも緋村には効かない。
「お前には効かぬか・・・」
その時一連の騒動に駆けつけた警察。
緋村は剣を交えることなく、薫を連れて逃げた。
薫に家に行った緋村。
そこは神谷活心流の道場であり、
薫は道場の師範代であった。
死んだ父を慕った門下生は多数いたが、
抜刀斎騒動が始まってから門下生が、
次々にいなくなったと聞いた緋村。
悔しそうに薫は言う。
「剣は人を殺すための道具にあらず。」
「人を生かす剣を理想とする
神谷活心流が殺人剣に汚されるとは・・・」
その言葉を聞いた緋村。
自分の命を顧みず流派を守ろうとする薫に、
「亡き父上殿も、
娘の命を代償にしてまでも流儀を守ることを
望んだりはしないでござろう。」
そう言って屋敷から出て行った。
数日後の神谷活心流の道場。
唯一の門下生明神弥彦と薫は掃除をしていた。
すると、多数の男達が道場に入って来て言う。
「この道場を貰い受ける。」
「あるお方が高い値で買いたいと・・・」
「お前にとっても悪い話じゃない。」
「こんな人きり道場、誰もよりつかんじゃろ。」
抵抗するも力ずくで地上げをする男達は言う。
「人を活かす剣など甘っちょろい。」
「目的は暴力。極意は殺生。」
「それが剣術の本質よ〜。」
とその時、屋敷に入ってきた緋村は言った。
「確かに。」
「その方のいっていることは、
一度も己の手を汚したことの無い者がいう、
甘っちょろい戯れ言でござる。」
「剣は凶器、剣術は殺人術。」
「どんな綺麗事や、お題目を言ってもそれが真実。」
「けれども拙者はそんな真実よりも薫殿が言う
甘っちょろい戯れ言が隙でござるよ。」
そう言うと十数人いた大男たちを次々に倒しだした。
そして緋村は言った。
「人きり抜刀斎がふるう剣は飛天御剣流。」
「一対多数の切り合いを得意とする古流儀の術。」
「こんな刀で無い限り、確実に人を惨殺する。」
それの言葉を聞いて薫は気がついた。
緋村が人きり抜刀斎と呼ばれる人物だと・・・
近くの住人の通報で道場には警察がやって来た。
全てを自分のせいと伝え連れて行かれる緋村。
そんな緋村に薫は言う。
「待って、流浪人さん。」
「名前ぐらい教えなさいよ。」
緋村は静かな笑顔で答えた。
「緋村剣心でござるよ。」
警察に連行された緋村。
「久しぶりだな、人きり抜刀斎。」
そう斉藤に言われて獄中から出される緋村。
斎藤に連れて行かれた先には山県有朋がいた。
山県は緋村に言った。
「どこに雲隠れしておった?」
「ここ10年腕の立つ流浪人が、
人を助けたと噂が立つたび、
部下をやって調べさせた。」
「あの時代道は違ったが、
お互いより良い国を望んでた。」
そう言って緋村を讃えた後に、
話は新型アヘン『蜘蛛の巣』の話題になった。
山県は素直に緋村に言った。
「力を貸してくれ。」
「陸軍の要職に就き、この腕をもう一度・・・」
しかし緋村はすぐに断った。
「人きり家業で要職につく気は無いでござる。」
それを聞いていた斎藤は、
「腑抜けになったか?」
「人きりが切らずして、どうやって人を守る?」
「綺麗事を言う前に、まずは自分を守って見せろ。」
そう言うと同時に刀を抜き、
一方的に緋村に切りかかった。
間一髪でかわし続けるも、
斉藤相手に刀を抜かぬことは出来なかった。
間一髪で斉藤の刃を受け止めた緋村の逆刃刀。
「お前の抜いた刃は、
いずれお前を苦しめることになるぞ。」
という斉藤の言葉通りに、
自分に向いた刃は徐々に緋村の肩へと突き刺さった。
それでも緋村は答えた。
「拙者は過去を捨てた身。」
「もう人は切らぬ。」
決意の固い緋村を見て斉藤を止めた山県。
緋村に謝り釈放の手はずをとった。
緋村が警察を出ると薫が待っていた。
静かに緋村に歩み寄った薫は言った。
「行くとこないんでしょ?」
「うちに来て。」
緋村は答えた。
「分かったでござろう。」
「拙者が人きりだったって・・・」
薫は緋村の言葉を遮り言う。
「そんなの知らないわ。」
「私が出会ったのは、剣心って言う流浪人よ。」
「誰にだって語りたくない過去の1つや2つはある。」
「行くよ。」
薫が緋村を道場へと連れて行くと、
弥彦は道場に恵みを連れて来ていた。
弥彦は逃げる恵みを道で見かけて、
道場に連れて来たのであった。
その日は、緋村へのお礼を含めて、
弥彦と恵も連れて牛鍋を食べに行った。
牛鍋屋にたまたま現れたのは観柳。
直ぐにトイレへと逃げる恵。
観柳は緋村を見つけると近寄って、
多額の金額で用心棒として雇いたいと言う。
それをあっさり断った緋村。
一部始終を見ていた相楽左之助は横槍を入れた。
左之助は自分を雇えと観柳に言う。
観柳は金に見合うかと聞くと、
左之助は緋村を見ながら答えた。
「試してみるかい?」
「伝説の人きり緋村抜刀斎さんよ。」
緋村を人きりと知って客は騒ぎ出す。
それを見た緋村は左之助に言った。
「ここでは店の迷惑でござる。」
「外に出ていただければ。」
外に出た左之助は早速、大刀斬馬刀を振り回す。
緋村はそんな左之助に言った。
「おぬしとは剣をあわせたくない。」
「剣をあわせる理由が無い。」
「あんな男のために、
その腕をくれてやるでござるか?」
その言葉で我に返った左之助。
「まあいいさな。」
「また警察にしょっ引かれるのもなんだしな。」
翌日。
またしても偽抜刀斎によって人きりは行なわれた。
殺されたのは道場を襲った男たちと、数名の警官。
その現場を見て緋村は薫に言った。
「一度人を殺めると後戻りは出来なくなる。」
「それが人きりと言うものでござるよ。」
現場にいた斎藤は緋村に気がつき、話し掛けた。
「道場を襲ったあの男達。」
「お前が切っても同じことだった。」
「むしろお前が切っていれば、
あの警官達は巻き添えを食わずに済んだはずだ。」
緋村は何も答えずに、
ただ警官に寄り添い泣き崩れる妻を見て、
若かれし頃に犯した自分の罪を思い出した。
自分の頬につく十字傷の思い出。
若くして暗殺家業を頼まれた緋村。
緋村は夜な夜な幕府側の主要人物たちを暗殺した。
殺した若い男の死体に泣きつく妻を見た緋村。
「末来を担う若者を殺してまで、
何が新時代の為の暗殺なのか?」
「俺のしていることは正しいのか?」
そう維新軍に楯突いた過去と、
その時付けられた傷を思い出したのだった。
一方、観柳は『蜘蛛の巣』を売って、
観柳帝国を築こうと考えていた。
アヘン工場を作るために地上げを進める観柳。
そのために、どうしても神谷道場が欲しかった。
その頃から道場付近の井戸に毒が投入された。
道場にどんどん担ぎ込まれる住民たち。
居合わせた恵が主導を握り何とか、
住人たちの一命は取り留めた。
緋村はそんな恵に素性を聞いた。
すると恵は逆に聞いた。
「その手でさぞ多くの命を奪ってきたんでしょうね?」
「その傷はご自慢の傷?」
「何かの勲章かしら?」
緋村は自分の顔についた十字傷について話した。
1つは若い侍につけられ、
1つはその妻になるはずだった女につけられたと・・・
その話を聞いた恵も素直に過去を話した。
「私はあなたとは違う。」
「親も居ない。頼る親戚も居ない。」
「私は観柳に拾われて、あいつの女になった。」
「お互いに利用しあっただけよ。」
「あいつはアヘンで儲けるために。」
「そして私は生きていくために・・・」
恵の目には涙が浮かんでいた。
緋村は決心する。恵を守るため、
住人を守るためにも観柳を潰そうと・・・
緋村の動きに気がついた左之助は、
自分も行くと言い出した。
観柳の屋敷に向かおうとするも、
恵がいないことに気がつく。
恵は道場や緋村に迷惑がかからぬように、
何も言わずに観柳のもとへ戻ったのだ。
すぐに緋村と左之助は観柳の屋敷を目指した。
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観柳の屋敷には金で雇われた沢山の用心棒がいた。
屋敷に乗り込んできた緋村を見た観柳。
「倒したやるにはいくらでも金はやるぞ。」
そう言うと、金をばら撒いた。
必死に緋村と左之助に襲い掛かる用心棒達。
しかし力の差は圧倒的であった。
何十何百という用心棒を倒して屋敷の中に。
中に入ると今までとは違う腕の立つ用心棒が・・・
佐之助は戌亥番神と、
緋村は外印と手を合わせた。
今までとは違い一筋縄ではいかない相手。
しかし緋村と左之助は勝利した。
殺すことなく勝利した緋村に、外印は言った。
「何が殺さずの誓いだ?」
「殺さずしてこの戦いが終わると思うか?」
緋村は背を向けたまま答えた。
「終わらして見せる。」
緋村と左之助は観柳ぼ待つ部屋へ向い、
部屋の扉を開けた瞬間・・・
新型10連式ガトリング砲で、
止む事のない銃撃を繰り返す観柳。
手を出せない緋村と左之助。
そこに斉藤がやって来て言う。
「あいつを切るためなら手を貸す。」
「あの銃をある方向に向ければ、
反対側が死角になる。」
左之助は手を上げて観柳の前へ出た。
「参った。勝てるはず無い。」
同時に緋村も手を上げて出て行った。
「降参でござる。」
気を抜いた観柳。
それを見て、同時に反対方向に走り出す2人。
慌てた観柳はすぐにガトリング砲で2人を追う。
その隙を突き、正面から斉藤が観柳を襲った。
追い詰められた観柳に緋村は言った。
「金で買えないものがなんだか分かるか?」
「お前がいま乞うているもの。」
「命だ!」
観柳は斉藤に連行され、緋村は恵を助けた。
が・・・
恵は緋村に言った。
「急いで。薫さんが・・・」
この騒動の隙をつき刃衛が薫を連れ去った。
目的は本気の緋村と剣を交えるため。
「お前を人質にすれば抜刀斎は怒る。」
「あやつを往年の人きりに立ち戻らせる。」
すぐに刃衛を追いかけた緋村。
追いついた緋村に刃衛は言う。
「怒っているな?」
緋村は答えた。
「薫殿を巻き込んだ貴様と、
それを阻止できなかった俺自身にな。」
そして緋村と刃衛との戦いが始まった。
刃衛は強く、完全に押される緋村。
そんな緋村をあざ笑うように、
「まだおぬしは昔の抜刀斎には遠く及ばぬ。」
そう言うと薫に『心の一方』をかけた刃衛。
息が出来なくなった薫。
緋村は怒った。
「命が欲しければ薫殿にかけた心の一方を解け。」
それに対して刃衛は答える。
「俺にはもう解けぬ。」
「方法は二つに一つ。」
「自力で解くか、術者を殺し剣気を断ち切るか。」
本気になった緋村は昔の人きりへと戻っていった。
「遊びは終わりだ。殺してやるからかかって来い。」
そう言った緋村は鞘に刀を戻した。
そして最後の一撃・・・
『飛天御剣流双龍閃』
倒れこんだ刃衛に緋村は、
「肘の関節を砕き筋を絶った。」
「これでお前の剣の命は終わった。」
「そして・・・これで息の根も・・・」
そう言って逆刃刀を逆に向けた。
「薫殿を守るため、俺は今一度人きりに戻る。」
「死ね!」
逆刃刀が刃衛を襲おうとした瞬間・・・
「やめて〜!」
息も出来ないはずの薫が声をあげた。
「人きりに戻らないで。」
「あなたが殺してしまった人のために、
あなたが今まで助けた人のために、
人を切らなくても誰かを助けることは出来る。」
「それが、あなたが目指した新しい世の中でしょ。」
薫は自力で『心の一方』を解いたのだった。
それを見ていた刃衛は緋村に言う。
「決着をつけるぞ・・・抜刀斎。」
傷ついた刃衛に緋村は答えた。
「もうよせ。」
「左手しか使えぬおぬしに勝機はござらん。」
それを聞いた刃衛を刀を自分の体に差した。
「お前の本性は人きりよ。」
「同じ人きりが言ってるんだから間違いねえ。」
「所詮人きりは人きり。」
「お前がいつまでほざいてられるか、
地獄の淵で見ててやろう。」
そう言い残して自害した・・・
死闘が終わり薫を連れ帰ろうとした緋村。
そこに現われた斎藤は緋村に言った。
「思い知ったか?」
「殺さずの流浪人などと、
エセ正義をほざいていると
どんな目にあうのか?」
それに対して緋村は答えた。
「人を切れば、そこに恨みが生まれる。」
「恨みはまた、人を切らせる。」
「その連なりを絶つのが、
この切れない刀の役目でござる。」
斎藤は緋村の考えを否定するように言う。
「いつまでそんな綺麗事を言っているつもりだ。」
「流浪人など弱者の逃げ道に過ぎん。」
「剣に生き、剣に死ぬ。」
「それ以外に俺たちに道はない。」
翌日、目を覚ました薫。
料理を作る恵を見て、
「剣心は?」
と聞くと緋村を探し出した。
そこに買出しから戻ってきた緋村。
緋村の顔を見て薫は笑顔で言った。
「おかえりなさい。剣心。」
ヒムラも笑顔で答えた。
「ただいまでござる。」
(終わり)
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【るろうに剣心】
【出演者】
緋村剣心:佐藤健
神谷薫:武井咲
相楽左之助:青木崇高
明神弥彦:田中偉登
高荷恵:蒼井優
武田観柳:香川照之
鵜堂刃衛:吉川晃司
外印:綾野剛
戌亥番神:須藤元気
斎藤一:江口洋介
桂小五郎:宮川一朗太
山県有朋:奥田瑛二
浦村署長 - 斉藤洋介
関原妙(牛鍋屋の店員):平田薫
三条燕(牛鍋屋の店員):永野芽郁
我荒・兄(道場に乗り込んだ男):平山祐介
我荒・弟(道場に乗り込んだ男):深水元基
清里明良(緋村に殺された若侍):窪田正孝
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【感想】
面白い。面白い。
さすがに、あの漫画を実写化なんて・・・
と思っていた自分が間違いだった。
ここまで忠実に再現するなんて・・・
愕然としました。
配役も完璧と言っても良いと思います。
後編もあるので、
総合的に感想は書こうと思いますが、
それにしても凄いですね〜
私の中では忘れられない漫画だけに、
細かい事を言ったらキリがないのですが、
はずは佐藤健くんに拍手です!
江口さんの配役も感動でしたが、
左之助役の青木崇高さんも、
しっかり味出していただいて最高です。
子供のころの目標は『三重の極み』修得でしたから・・・
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今から約140年前「幕末」の動乱期
「人きり抜刀斎」と呼ばれる暗殺者が居た
倒幕派の命により京都を暗躍し
その修羅の如き強さと冷徹さから
人々に恐れられた
時は天下分け目の戊辰戦争・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1868年1月
京都・鳥羽伏見の山中
幕府と維新軍の戦いが行なわれていた。
藩幕府に恐れられた新撰組の斎藤一。
斎藤は抜刀斎を探して山中を駆け回っていた。
とてつもない勢いで人を切り倒していく1人の男。
やっと巡り合った2人。目を合わせたとき、
「勝ったぞ〜。錦の見肌じゃ〜。」
その声を聞き、緋村はつぶやいた。
「来たか新しい時代が・・・」
立ち去ろうとする緋村に斎藤は言った。
「これで終わりだと思うなよ。」
「例え世の中が変わろうとも、
剣に生き、剣に死ぬしか俺たちに道はない。」
その言葉を聞いた緋村は、
何も言わず持っていた刀を地面に刺し、
背中を向けて歩き出したのであった・・・
その山中で1人の男が死体の中から立ち上がった。
「なぜだ、なぜ俺は生き残った・・・」
そう言って緋村の突き刺した刀に手を当てた。
その時多くの悲鳴が聞こえて、残像が脳裏をよぎる。
「コレが人きり抜刀斎の・・・」
時は流れ1978年(明治11年)東京
世の中は変わり抜刀令も出された時代。
一方で金にものを言わす人間も増えていた。
「人間とは弱いものだ。」
「口では理想を語りたがるが、
結局は三つのものの前では獣となる。」
「自分のため、金のため、そして快楽のため・・・」
そう言うのは武田観柳。
観柳は報告に来た高荷恵に言う。
「成功だ。」
「この新型のアヘンは人間どもを獣に変える。」
お褒めの言葉を頂き、恵が部屋を去ろうとすると、
黒ずくめの男たちが屋敷に入ってきた。
一瞬で恵以外の研究員は殺された。
怯える恵に観柳は言う。
「作り方を知っているのは一人で十分。」
その頃、東京の町では人が殺され、
死体に斬奸状が置かれる事件が続いていた。
斬奸状には
『人きり抜刀斎 神谷活心流』
との文字が・・・
東京にたどり着いた緋村。
緋村の腰にかける刀を見た神谷薫。
「そこの男。」
「廃刀令を蔑ろにして刀を持ち歩くとは、
お前が噂の人きり抜刀斎か?」
そう言って木刀を振りかざした。
薫の剣をかわして緋村は言った。
「拙者は流浪人。」
「あてのない剣客でござる。」
「これは逆刃刀でござる。」
そう言って腰にかける刀を見せた。
緋村の無実が分かり木刀をしまった薫。
薫は自分の流派を名乗って、
人を切り続ける『人きり抜刀斎』を探していた。
そのころ観柳のもとから逃げ出していた恵。
唯一の新型アヘンの製造方法を分かる恵。
観柳は直ぐに鵜藤刃衛に連れ戻しを命じた。
警察に助けを求めて駆け込んだ恵だが、
刃衛はそんなことは構わずに警察に乗り込む。
次々と警官を殺す刃衛。
刃衛は特殊な能力『心の一方』を使う。
それはまるで猛獣に睨まれたかのように、
身動きが一切聞かなくなる術法。
警官は一切歯が立たずに、
とうとう恵は追い詰められた。
恵は危機一髪で警察署から逃げだした。
恵に逃げられ町を歩く刃衛。
腰にかけた刀を見て刃衛に声をかけた薫。
「待ちなさい。お前が抜刀斎か?」
刃衛は直ぐに薫を殺そうとするが、
それを助けたのは緋村だった。
間一髪で薫を助けた緋村は刃衛に聞いた。
「お前か?抜刀斎を名乗る男は。」
刃衛は答えずに緋村の顔を見て言った。
「その傷、その速さは、お前が伝説の・・・」
そう言って『心の一方』を使うも緋村には効かない。
「お前には効かぬか・・・」
その時一連の騒動に駆けつけた警察。
緋村は剣を交えることなく、薫を連れて逃げた。
薫に家に行った緋村。
そこは神谷活心流の道場であり、
薫は道場の師範代であった。
死んだ父を慕った門下生は多数いたが、
抜刀斎騒動が始まってから門下生が、
次々にいなくなったと聞いた緋村。
悔しそうに薫は言う。
「剣は人を殺すための道具にあらず。」
「人を生かす剣を理想とする
神谷活心流が殺人剣に汚されるとは・・・」
その言葉を聞いた緋村。
自分の命を顧みず流派を守ろうとする薫に、
「亡き父上殿も、
娘の命を代償にしてまでも流儀を守ることを
望んだりはしないでござろう。」
そう言って屋敷から出て行った。
数日後の神谷活心流の道場。
唯一の門下生明神弥彦と薫は掃除をしていた。
すると、多数の男達が道場に入って来て言う。
「この道場を貰い受ける。」
「あるお方が高い値で買いたいと・・・」
「お前にとっても悪い話じゃない。」
「こんな人きり道場、誰もよりつかんじゃろ。」
抵抗するも力ずくで地上げをする男達は言う。
「人を活かす剣など甘っちょろい。」
「目的は暴力。極意は殺生。」
「それが剣術の本質よ〜。」
とその時、屋敷に入ってきた緋村は言った。
「確かに。」
「その方のいっていることは、
一度も己の手を汚したことの無い者がいう、
甘っちょろい戯れ言でござる。」
「剣は凶器、剣術は殺人術。」
「どんな綺麗事や、お題目を言ってもそれが真実。」
「けれども拙者はそんな真実よりも薫殿が言う
甘っちょろい戯れ言が隙でござるよ。」
そう言うと十数人いた大男たちを次々に倒しだした。
そして緋村は言った。
「人きり抜刀斎がふるう剣は飛天御剣流。」
「一対多数の切り合いを得意とする古流儀の術。」
「こんな刀で無い限り、確実に人を惨殺する。」
それの言葉を聞いて薫は気がついた。
緋村が人きり抜刀斎と呼ばれる人物だと・・・
近くの住人の通報で道場には警察がやって来た。
全てを自分のせいと伝え連れて行かれる緋村。
そんな緋村に薫は言う。
「待って、流浪人さん。」
「名前ぐらい教えなさいよ。」
緋村は静かな笑顔で答えた。
「緋村剣心でござるよ。」
警察に連行された緋村。
「久しぶりだな、人きり抜刀斎。」
そう斉藤に言われて獄中から出される緋村。
斎藤に連れて行かれた先には山県有朋がいた。
山県は緋村に言った。
「どこに雲隠れしておった?」
「ここ10年腕の立つ流浪人が、
人を助けたと噂が立つたび、
部下をやって調べさせた。」
「あの時代道は違ったが、
お互いより良い国を望んでた。」
そう言って緋村を讃えた後に、
話は新型アヘン『蜘蛛の巣』の話題になった。
山県は素直に緋村に言った。
「力を貸してくれ。」
「陸軍の要職に就き、この腕をもう一度・・・」
しかし緋村はすぐに断った。
「人きり家業で要職につく気は無いでござる。」
それを聞いていた斎藤は、
「腑抜けになったか?」
「人きりが切らずして、どうやって人を守る?」
「綺麗事を言う前に、まずは自分を守って見せろ。」
そう言うと同時に刀を抜き、
一方的に緋村に切りかかった。
間一髪でかわし続けるも、
斉藤相手に刀を抜かぬことは出来なかった。
間一髪で斉藤の刃を受け止めた緋村の逆刃刀。
「お前の抜いた刃は、
いずれお前を苦しめることになるぞ。」
という斉藤の言葉通りに、
自分に向いた刃は徐々に緋村の肩へと突き刺さった。
それでも緋村は答えた。
「拙者は過去を捨てた身。」
「もう人は切らぬ。」
決意の固い緋村を見て斉藤を止めた山県。
緋村に謝り釈放の手はずをとった。
緋村が警察を出ると薫が待っていた。
静かに緋村に歩み寄った薫は言った。
「行くとこないんでしょ?」
「うちに来て。」
緋村は答えた。
「分かったでござろう。」
「拙者が人きりだったって・・・」
薫は緋村の言葉を遮り言う。
「そんなの知らないわ。」
「私が出会ったのは、剣心って言う流浪人よ。」
「誰にだって語りたくない過去の1つや2つはある。」
「行くよ。」
薫が緋村を道場へと連れて行くと、
弥彦は道場に恵みを連れて来ていた。
弥彦は逃げる恵みを道で見かけて、
道場に連れて来たのであった。
その日は、緋村へのお礼を含めて、
弥彦と恵も連れて牛鍋を食べに行った。
牛鍋屋にたまたま現れたのは観柳。
直ぐにトイレへと逃げる恵。
観柳は緋村を見つけると近寄って、
多額の金額で用心棒として雇いたいと言う。
それをあっさり断った緋村。
一部始終を見ていた相楽左之助は横槍を入れた。
左之助は自分を雇えと観柳に言う。
観柳は金に見合うかと聞くと、
左之助は緋村を見ながら答えた。
「試してみるかい?」
「伝説の人きり緋村抜刀斎さんよ。」
緋村を人きりと知って客は騒ぎ出す。
それを見た緋村は左之助に言った。
「ここでは店の迷惑でござる。」
「外に出ていただければ。」
外に出た左之助は早速、大刀斬馬刀を振り回す。
緋村はそんな左之助に言った。
「おぬしとは剣をあわせたくない。」
「剣をあわせる理由が無い。」
「あんな男のために、
その腕をくれてやるでござるか?」
その言葉で我に返った左之助。
「まあいいさな。」
「また警察にしょっ引かれるのもなんだしな。」
翌日。
またしても偽抜刀斎によって人きりは行なわれた。
殺されたのは道場を襲った男たちと、数名の警官。
その現場を見て緋村は薫に言った。
「一度人を殺めると後戻りは出来なくなる。」
「それが人きりと言うものでござるよ。」
現場にいた斎藤は緋村に気がつき、話し掛けた。
「道場を襲ったあの男達。」
「お前が切っても同じことだった。」
「むしろお前が切っていれば、
あの警官達は巻き添えを食わずに済んだはずだ。」
緋村は何も答えずに、
ただ警官に寄り添い泣き崩れる妻を見て、
若かれし頃に犯した自分の罪を思い出した。
自分の頬につく十字傷の思い出。
若くして暗殺家業を頼まれた緋村。
緋村は夜な夜な幕府側の主要人物たちを暗殺した。
殺した若い男の死体に泣きつく妻を見た緋村。
「末来を担う若者を殺してまで、
何が新時代の為の暗殺なのか?」
「俺のしていることは正しいのか?」
そう維新軍に楯突いた過去と、
その時付けられた傷を思い出したのだった。
一方、観柳は『蜘蛛の巣』を売って、
観柳帝国を築こうと考えていた。
アヘン工場を作るために地上げを進める観柳。
そのために、どうしても神谷道場が欲しかった。
その頃から道場付近の井戸に毒が投入された。
道場にどんどん担ぎ込まれる住民たち。
居合わせた恵が主導を握り何とか、
住人たちの一命は取り留めた。
緋村はそんな恵に素性を聞いた。
すると恵は逆に聞いた。
「その手でさぞ多くの命を奪ってきたんでしょうね?」
「その傷はご自慢の傷?」
「何かの勲章かしら?」
緋村は自分の顔についた十字傷について話した。
1つは若い侍につけられ、
1つはその妻になるはずだった女につけられたと・・・
その話を聞いた恵も素直に過去を話した。
「私はあなたとは違う。」
「親も居ない。頼る親戚も居ない。」
「私は観柳に拾われて、あいつの女になった。」
「お互いに利用しあっただけよ。」
「あいつはアヘンで儲けるために。」
「そして私は生きていくために・・・」
恵の目には涙が浮かんでいた。
緋村は決心する。恵を守るため、
住人を守るためにも観柳を潰そうと・・・
緋村の動きに気がついた左之助は、
自分も行くと言い出した。
観柳の屋敷に向かおうとするも、
恵がいないことに気がつく。
恵は道場や緋村に迷惑がかからぬように、
何も言わずに観柳のもとへ戻ったのだ。
すぐに緋村と左之助は観柳の屋敷を目指した。
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屋敷に乗り込んできた緋村を見た観柳。
「倒したやるにはいくらでも金はやるぞ。」
そう言うと、金をばら撒いた。
必死に緋村と左之助に襲い掛かる用心棒達。
しかし力の差は圧倒的であった。
何十何百という用心棒を倒して屋敷の中に。
中に入ると今までとは違う腕の立つ用心棒が・・・
佐之助は戌亥番神と、
緋村は外印と手を合わせた。
今までとは違い一筋縄ではいかない相手。
しかし緋村と左之助は勝利した。
殺すことなく勝利した緋村に、外印は言った。
「何が殺さずの誓いだ?」
「殺さずしてこの戦いが終わると思うか?」
緋村は背を向けたまま答えた。
「終わらして見せる。」
緋村と左之助は観柳ぼ待つ部屋へ向い、
部屋の扉を開けた瞬間・・・
新型10連式ガトリング砲で、
止む事のない銃撃を繰り返す観柳。
手を出せない緋村と左之助。
そこに斉藤がやって来て言う。
「あいつを切るためなら手を貸す。」
「あの銃をある方向に向ければ、
反対側が死角になる。」
左之助は手を上げて観柳の前へ出た。
「参った。勝てるはず無い。」
同時に緋村も手を上げて出て行った。
「降参でござる。」
気を抜いた観柳。
それを見て、同時に反対方向に走り出す2人。
慌てた観柳はすぐにガトリング砲で2人を追う。
その隙を突き、正面から斉藤が観柳を襲った。
追い詰められた観柳に緋村は言った。
「金で買えないものがなんだか分かるか?」
「お前がいま乞うているもの。」
「命だ!」
観柳は斉藤に連行され、緋村は恵を助けた。
が・・・
恵は緋村に言った。
「急いで。薫さんが・・・」
この騒動の隙をつき刃衛が薫を連れ去った。
目的は本気の緋村と剣を交えるため。
「お前を人質にすれば抜刀斎は怒る。」
「あやつを往年の人きりに立ち戻らせる。」
すぐに刃衛を追いかけた緋村。
追いついた緋村に刃衛は言う。
「怒っているな?」
緋村は答えた。
「薫殿を巻き込んだ貴様と、
それを阻止できなかった俺自身にな。」
そして緋村と刃衛との戦いが始まった。
刃衛は強く、完全に押される緋村。
そんな緋村をあざ笑うように、
「まだおぬしは昔の抜刀斎には遠く及ばぬ。」
そう言うと薫に『心の一方』をかけた刃衛。
息が出来なくなった薫。
緋村は怒った。
「命が欲しければ薫殿にかけた心の一方を解け。」
それに対して刃衛は答える。
「俺にはもう解けぬ。」
「方法は二つに一つ。」
「自力で解くか、術者を殺し剣気を断ち切るか。」
本気になった緋村は昔の人きりへと戻っていった。
「遊びは終わりだ。殺してやるからかかって来い。」
そう言った緋村は鞘に刀を戻した。
そして最後の一撃・・・
『飛天御剣流双龍閃』
倒れこんだ刃衛に緋村は、
「肘の関節を砕き筋を絶った。」
「これでお前の剣の命は終わった。」
「そして・・・これで息の根も・・・」
そう言って逆刃刀を逆に向けた。
「薫殿を守るため、俺は今一度人きりに戻る。」
「死ね!」
逆刃刀が刃衛を襲おうとした瞬間・・・
「やめて〜!」
息も出来ないはずの薫が声をあげた。
「人きりに戻らないで。」
「あなたが殺してしまった人のために、
あなたが今まで助けた人のために、
人を切らなくても誰かを助けることは出来る。」
「それが、あなたが目指した新しい世の中でしょ。」
薫は自力で『心の一方』を解いたのだった。
それを見ていた刃衛は緋村に言う。
「決着をつけるぞ・・・抜刀斎。」
傷ついた刃衛に緋村は答えた。
「もうよせ。」
「左手しか使えぬおぬしに勝機はござらん。」
それを聞いた刃衛を刀を自分の体に差した。
「お前の本性は人きりよ。」
「同じ人きりが言ってるんだから間違いねえ。」
「所詮人きりは人きり。」
「お前がいつまでほざいてられるか、
地獄の淵で見ててやろう。」
そう言い残して自害した・・・
死闘が終わり薫を連れ帰ろうとした緋村。
そこに現われた斎藤は緋村に言った。
「思い知ったか?」
「殺さずの流浪人などと、
エセ正義をほざいていると
どんな目にあうのか?」
それに対して緋村は答えた。
「人を切れば、そこに恨みが生まれる。」
「恨みはまた、人を切らせる。」
「その連なりを絶つのが、
この切れない刀の役目でござる。」
斎藤は緋村の考えを否定するように言う。
「いつまでそんな綺麗事を言っているつもりだ。」
「流浪人など弱者の逃げ道に過ぎん。」
「剣に生き、剣に死ぬ。」
「それ以外に俺たちに道はない。」
翌日、目を覚ました薫。
料理を作る恵を見て、
「剣心は?」
と聞くと緋村を探し出した。
そこに買出しから戻ってきた緋村。
緋村の顔を見て薫は笑顔で言った。
「おかえりなさい。剣心。」
ヒムラも笑顔で答えた。
「ただいまでござる。」
(終わり)
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2015年12月21日
【新宿スワン】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【新宿スワン】
【出演者】
白鳥龍彦(バースト):綾野剛
南秀吉(ハーレム幹部):山田孝之
アゲハ:沢尻エリカ
山城神(バースト社長):豊原功補
真虎(バースト幹部):伊勢谷友介
関玄介(バースト幹部):深水元基
時政(バースト幹部):村上淳
洋介(バースト):久保田悠来
松方(ハーレム社長):安田顕
葉山豊(ハーレム幹部):金子ノブアキ
毒山(ハーレム):一ノ瀬ワタル
涼子(クラブママ):山田優
栄子(キャバ嬢):真野恵里菜
梨子(関の彼女) - 丸高愛実
天野修善(会長):吉田鋼太郎
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【感想】
面白かった。
時間軸が分かり難いですが、
全ての出演者にスポットを当てるあたりは、
今後もストーリー化・・・を匂わしてますね〜
それぞれにストーリーがあり、
漫画が人気名理由が分かります。
しかし映画に全てを組み込みすぎたのは、
漫画を呼んでいない人からすると・・・
それでもここまで分かりやすい作りにして、
終わりもしっかりさせたあたりはさすがです!
とりあえず漫画読んでみようかな〜
って思ってます。
さすが園子温さんですね〜
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺はその頃は、人生の最下点にいた。
何も考えずに新宿にやって来た。
新宿は底辺からのし上がるには一番の町だ。
残された全財産・・・
帰る電車賃もねえ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
新宿の街を歩く白鳥龍彦。
新宿を徘徊する不良たちに、
「テンパかよ!だっせえ!」
と言われ、すれ違いざまに頭を叩かれた。
それに対して龍彦は怒った。
「おい、お前!」
「今日クソ機嫌わりい。」
そう言って不良たちを殴った龍彦。
しかし多勢に無勢。ボコボコにされる龍彦。
それを見ていた真虎は不良たちに言う。
「もう、いいんじゃないのそこらへんで。」
「こいつは俺のダチだ!」
真虎は新宿でも知られた存在。
不良は躊躇いながらも、ダチなはずないと言うが、
「今からダチになるんだよ。」
そう言って龍彦を引き取った。
その後無一文の龍彦に、ご飯をご馳走した真虎。
見ず知らずの自分に優しくしてくれる真虎に聞いた。
「どうして俺にこんなことしてくれるんですか?」
真虎は答える。
「言っちゃったからね。ダチになるって。」
「行く当てもない。仕事も無い。金もない。」
「人生がなくなりかかって、
プライドなんて言ってられない。」
「そんな奴を探してるんだ。」
「お前スカウトやらない?」
「いい顔している。お前向いてるわ。」
龍彦にスーツを着せた真虎。
クラブのスカウトをやらそうとする。
龍彦は簡単だと言って、
自信があるように女の子に声をかけた。
しかし一向に足を止めない新宿の女性たち。
見かねた真虎は手本を見せると言い、
あっという間に女性は足を止めた。
それを手本に真似をする龍彦だが、
何をやってもうまくいかない。
仕舞いには土下座までして、
「すいません。」
「忙しいの分かってますけど時間下さい。」
龍彦の行動に天を仰いだ真虎だったが、
「いいよ。」
「土下座までされたら、
聞かないわけにはいかないでしょ。」
そう言って女性は足をとめるのだった。
喜ぶ龍彦に真虎は言う。
「ここから先は俺が引き取るよ。」
次は足を止めた女性に真虎は聞いた。
「ヘルスでいいよね?」
そのまま知り合いのヘルスへ連れて行く。
店長は簡単な実技面接をしてから真虎に言う。
「テク普通だけど顔可愛いし、
真虎さんなんでAランクで。」
それを聞いて真虎は龍彦に言った。
「良かったな。」
「Aついたからまずお前にボーナス5万入る。」
「彼女がここで働き続ける限り、
彼女の給料の10%がお前に入る。」
「土下座してみるもんだな〜。」
それを聞いて複雑な気持ちになった龍彦は店を出た。
追いかけた真虎は声をかける。
「大丈夫か?」
その言葉に龍彦は言った。
「俺やっぱこの仕事向いてないです。」
それを聞いた真虎は怒った。
「てめえがビビっただけじゃねえか。」
「お前、あの女を不幸にしたなんて
思ってねえだろうな?」
「風俗で働く女を、
お前が不幸だと思うのは大間違いなんだよ!」
「金稼いで、いい服着て、
美味いもん食って、適当に遊べて、
男も女もみんな楽しみたい。」
「需要と供給。」
「俺たちはこいつらを幸せにして金儲けをする。」
「嫌なら辞めな。止めねえよ。」
そう言って背を真虎に龍彦は言う。
「待ってください。やらせてください。」
「ただ、俺がスカウトした女の子には、
必ず幸せだって言わせます。」
こうして龍彦のスカウトマンとしてが始まった。
新宿の町でスカウトをしていた秀吉。
あっさり女の子の足を止めさせていた。
「俺、秀吉。」
「新宿歩くんだったら
俺の名前覚えておかないとダメだよ。」
秀吉は名のあるスカウトマン。
他のスカウトマンたちには頭を下げられる存在。
そんな秀吉の視線の先には龍彦が立っていた。
龍彦は毎日教育係の洋介とスカウトをしていた。
そんな様子を遠くで見ていた真虎。
真虎は龍彦を連れて事務所に行った。
「洋介の話よりオブザベーションが大事。」
「この窓からの景色だ。」
真虎はそう言うと望遠鏡を龍彦に渡した。
オフィスから見える新宿を歩く女性。
その女性を見て人生を推測する。
「話す前、会う前に相手を一見しただけで見抜く。」
「そうすれば、話し方やり方もスマートになる。」
そう言い龍彦に指南した。
その頃秀吉は新宿のある場所にいた。
「1000万ある。」
「今月かこの分まわしてくれ。」
「今日からルール変えたらいいだろ。」
そう言われた売人はヤクを秀吉に渡した。
「俺が新宿を統一したら
今までの量じゃ足りないからな。」
秀吉が事務所に戻ると、
幹部の葉山に松方社長が怒鳴っていた。
「今月も売上落ちてるぞ。」
「お前バーストに幅効かされすぎなんだよ。」
それを見ていた秀吉は、事務所を出た葉山に言う。
「早く社長を追い出して、
2人でハーレム仕切りましょうよ。」
「今月の売上。1280万です。」
「もう軽く1億は越えているはずですから、
バーストなんていつでも潰せますよ。」
「あんまもたついてるなら俺1人でやっちゃうかな?」
翌日。
スカウトをしていたバーストのスカウトマン。
そのスカウトマンに近づく秀吉と取り巻き達。
「お前どこのもんだ?」
「あのブロックからこっちはバーストの島だ。」
怯えながら反論するバーストスカウトマン。
「ここグレーゾーンなはずじゃ?」
それに対して秀吉は、
「今日からここは、南秀吉の島にする。」
そう言ってスカウトマンの携帯を奪い、潰した。
そして秀吉は取り巻き達に言った。
「ハーレムなめる奴いたら容赦なく潰せ。」
天野会長に一千万を納めたバースト社長山城。
そんな山城に天野は言った。
「はした金だな。無いよりはましだな。」
「もし他社が、
この金の倍盛ってきたらどうなると思う?」
「安心なんて一番無駄なもんだよ。」
そう言って上納金のアップを要請した。
事務所に戻った山城は、
ハーレムが倍の上納金を払ったらと悩んでいた。
その話を聞いて真虎は言った。
「あるでしょ。一気に解決する方法が。」
「ハーレムをうちの参加に入れちゃう。」
「最近ハーレムのスカウトの行儀が悪い。」
「俺は上納金の話も、
ハーレムをまとめるいい話だと思ってます。」
「社長考えておいてくださいよ。」
真虎の提案を聞いて幹部の関も賛同した。
「ハーレムと、もめましょうや。」
何も知らずにスカウトをしていた龍彦は、
町を歩いていた涼子に話しかけていた。
龍彦に興味を持った涼子。一緒に居酒屋に向った。
その居酒屋では別れ話で、もめるカップルがいた。
涼子は、もめるカップルの女性に言った。
「男相手に泣いてるんじゃないよ。」
「さっさと新しい男でも作って見返してやりな。」
「歌舞伎町の女ならね、負けてんじゃないよ。」
「かっこ良く生きな。」
それを聞いてカッコいいと褒める龍彦。
負けじと龍彦も男に言った。
「関わった女全員幸せにしてやんな。」
「俺も同じ男だからよ。」
「男の評価下げてるんじゃねえぞ。」
それを見ていた涼子は龍彦を気に入り言う。
「決めた。」
「うちの店でくすぶっている子のリストあげる。」
「引き抜いて新しい店に入れてあげて。」
クラブママだったことに驚く龍彦。
そんな龍彦に涼子は言った。
「ハンコつこうか?」
そして2人ホテルへ・・・
数日後、真虎は龍彦を連れてクラブにいった。
そこは真虎がスカウトした女性が働いている店。
席につくと、その店のママが挨拶に来た。
そのママは涼子であった。
驚いた龍彦はつい名前を呼んだ。
しかし涼子は知らぬ顔して聞く。
「あれ?どこかでお会いしましたっけ?」
真虎は涼子に言った。
「お前も出世したな。これだから女は怖い。」
澄ました顔で涼子は答える。
「男が10年位かかるところを、
ある日一瞬にして手に入れる。」
「いい女だけが持っている特権よ。」
一方で龍彦に付いていた女の子は聞く。
「ママと会ったんでしょ?」
「ハンコ押された?」
「ママがハンコ押した男何年ぶりだろう!」
「ママがあなたを認めたんだよ。」
「絶対期待に答えなきゃね。」
ある日幹部の関が龍彦に声をかけた。
関に連れられて行った先はハーレムの島。
そこでスカウトするように支持をされた。
当然ハーレムのスカウトマンに絡まれて、
秀吉の下に連れて行かれた。
一部始終を見ていた関は、
助けるどころか笑いながらその場を去った。
秀吉を見た龍彦は、
「あんた誰?」
その言葉に怒った秀吉、
「知らねえ訳ねえだろ!」
そう言って龍彦を殴った秀吉。
龍彦は秀吉と取り巻きに囲まれ、
ボコボコに殴られ蹴られた。
そして最後には秀吉の指示で、
取り巻きたちに指の骨を折られた。
直ぐにバーストでは会議が行なわれた。
真虎は龍彦の話を聞き山城に言う。
「俺話しつけてきます。」
しかし山城は、
「この件、関に任せようじゃねえか。」
その言葉に反論する真虎。
「竜彦は俺の弟子だ。」
「勝手にあいつを使うんじゃねえ。」
それを制するように関は言う。
「バーストの社員だ。誰のものでもねえ。」
「任されたもんは仕方ねえよな。」
反対する真虎も山城が決めた事で、
仕方なく引くしかなかった。
完全に関のシナリオ通りであった。
関は龍彦のもとへ行き声をかけた。
「仕返しに行くぞ。」
「俺が責任を取る。真虎は関係ねえ。」
もちろん龍彦は賛同し、秀吉のもとへ向かった。
多数のハーレムスカウトマンに挑んだ二人。
しかし多勢に無勢。あっという間にボコボコになる。
これも関の思惑通りだった。
龍彦だけではなくて幹部も痛めつけられた。
これをネタにハーレムの社長松方を問い詰める。
松方に山城は言う。
「選択肢は2つに1つ。」
「ハーレムは本日を持って解散、廃業。」
「それが嫌なら、うちの傘下に入れ。」
もちろん条件を飲まない松方。
それに対して別の取引を持ちかける山城。
「金に困っているんだって?」
「買ってやるよハーレム。」
「しかも内緒で・・・」
ゆらぐ松方。しかし下のものに示しがつかない。
この反応も想定内とばかりに山城は言う。
「龍彦やるよ。」
それを聞いていた龍彦は、
「俺をハーレムに売るんですか?」
「あんたら、最初から俺のことを・・・」
「ふざけるなよ。俺は帰るぞ。」
帰ろうとする龍彦を止め殴る幹部の時政。
龍彦はボコボコにされて言う。
「ここで殺せ。今すぐ殺せ〜。」
「あんたらにおもちゃにされるくらいなら、
死んだほうがましだよ。」
「お前みたいな奴らにコケにされてよ〜。」
「脳みそ撒き散らして死んだら、
お前ら迷惑だろ?」
そう言って消火器で自分の頭を叩こうとしたとき、
「バカ何やってるんだ。」
「こんな風にしたら掃除大変だろうが。」
そう言って事務所に入っ龍彦を止めた真虎。
一緒に入ってきたのはハーレム幹部葉山。
真虎は葉山を山城に紹介して、
ハーレムを買っても誰もついて来ないという。
実質ハーレムを仕切っているのは葉山で、
葉山が納得しなければ話は成立しないと。
そしてさっきまでの松方の商談を録音した、
タイムレコーダーを流した。
慌てる松方を尻目に真虎は山城に言う。
「社長商談の話を少し変えるだけです。」
そして葉山も松方に言った。
「松方さんあんたには降りてもらうよ。」
「このたびの件は全てハーレム側の落ち度です。」
「三千万円はいりません。」
「社長を除く全員が無条件で、
今日からバーストの参加に入ります。」
「以後よろしくお願いします。」
それを聞いて喜んだ山城。
この話に納得していなかったのは関だけだった。
「いい話は裏が見えるまでは納得しねえぞ。」
話がまとまり龍彦はハーレムに差し出されずに済んだ。
騙されていた事にショックを受けた龍彦に真虎は、
「まだお前は、
利用されるだけの価値しかなかったって事だよ。」
そう言い龍彦の頭を叩くのだった。
ハーレムの吸収は社長の松方以外、
葉山を筆頭に全ての幹部はグルであった。
理解のできないでいる松方に葉山と秀吉は言う。
「バーストとつるんでバーストでかくするんだよ。」
「金も力もあって、頭のいいやつが、
でかくなったバーストをしきる。」
「誰とも争わず、
血も見ないでバーストそっくり頂くんだよ。」
翌日バーストとハーレムの全社員が集められた。
幹部は真虎と関、葉山と時政。全員が横並び。
そして社長が出した結論は、実力勝負。
1ヶ月トータルで、
最もスカウトを多く成立させた人間を幹部とする。
それを聞いて幹部になれるかも?と喜ぶ龍彦。
〜〜〜Sponsords Link〜〜〜
新宿の街を黒服から逃げるアゲハ。
それを助けた秀吉。
アゲハは金庫から5万を抜いて逃げていた。
秀吉は黒服に5万を渡していった。
「俺この子買うよ。」
「どうせ今の店じゃ働けねえだろ?」
そしてアゲハを買った秀吉は、
馴染みのヘルスの店長大林に引き渡した。
秀吉はアゲハには借金を立て替える約束をして、
大林には寝させずに働かせろと伝えた。
龍彦はスカウトをしていて、
ちょうど店を探していた栄子とであった。
風俗で働きたいと言う栄子を説得して、
キャバクラへと連れて行った龍彦。
栄子はリストカット跡が沢山あったが、
顔のよさで店長は受け入れてくれた。
真虎と葉山はビルの屋上で新宿の街を見ていた。
真虎は葉山に言う。
「素性も知れねえ、行き先も見えねえ、
そんな奴等がどっからとも無く集まってくる。」
「人生をかけて、
思いのたけを尽くしてこの街で生きる。」
「だが、誰一人として他所者扱いされねえですむ。」
「それが新宿って街だ。」
そう言ってから葉山の今後のプランを聞いた真虎。
「時の流れるままにですよ。」
そう言って聞き流す葉山。
葉山は関について真虎に聞く。
関の性分を教えた真虎は、
逆に秀吉のことを葉山に聞いた。
しかし葉山は知らないと答えるのみだった。
秀吉の素性を知りたい真虎は、
涼子の紹介で探偵を雇い秀吉を調べる事にした。
秀吉はスカウトを成功したスカウトマンを呼び出し、
スカウトした女性が欲しいと脅しをかけていた。
もちろん多額の金額を積んで買収を始めた。
何もせずに数字を稼ごうとの動きであった。
それを知った関は山城に伝えた。
山城は聞き流すように答えた。
「幹部のほとんどがバーストだ。」
「1人位昇格したからってどうでもねえ。」
アゲハ寝ずに働いていた。
そして店で暴力を振るう大林におびえていた。
店を訪れた秀吉はアゲハに優しくして、
「いいものあげるよ。」
と言ってヤクを渡した。
龍彦は栄子と新宿の街で会い、
栄子の相談に乗ろうとしていた。
しかし笑って誤魔化した栄子。
一緒にとったUFOキャッチャーのぬいぐるみを、
龍彦に渡して言った。
「コレあげる。仕事紹介してくれたお礼ね。」
しかしその翌日栄子は自殺した。
落ち込む龍彦に真虎は言った。
「お前のせいじゃない。」
「行ってお前がスカウトした
女の子たちがいる通り歩いてみろよ。」
「ここまでお前がやって来たことが見えるから。」
落ち込みながら新宿の町を歩いた龍彦。
会う女の子達はみんな笑顔で龍彦に話し掛けた。
優しさに触れた龍彦は泣きながら言う。
「みんな大好きだバカヤロウ!」
関はまたしても計画をたてた。
彼女の梨子をハーレム側にスカウトさせた。
ハーレム側にスカウトされた女性の行く店では、
ヤクが出回っていることを嗅ぎつけた。
アゲハは寝ずに働き続け、
朦朧とする中絵本を読んでいた。
〜「まぼろしの王子さま」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
親に捨てられて
ずっと奴隷として働いていた家から
王子様は私を見つけ出すと、
手を握り、森に連れ出してくれたんです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そこに大林が来て仕事をお願いする。
休みのはずのアゲハだが、
大林に脅されついには逃げ出した。
ちょうどスカウトした女性を紹介に来ていた龍彦。
アゲハに手を上げていた大林を殴り、
紹介するはずだった女の子に言った。
「こんな店やめよう。別紹介するから。」
そう言ってアゲハの鞄から落ちた絵本を拾った。
するとアゲハは龍彦の手をとって言う。
「一緒に逃げよう。」
言われるままに龍彦はアゲハと
店を出て新宿の町を走った。
〜「まぼろしの王子さま」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コレだけ走ったのはいつ以来だろう。
私は嬉しくて楽しくて
王子様は私のために、
木の枝と森の花で家を建ててくれたのです。
王子様は私と森に逃げると
魔法のカーテンを使い追っ手を見事に撹乱したんです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
逃げた2人は、
ゲームセンターのプリクラの中へ逃げ込んだ。
「王子様だ。よろしくね。私の王子様。」
そして龍彦に金を貰い一緒にプリクラを撮った。
しかし我に返るアゲハ。
「店戻んないと。」
そんなアゲハに戻ってはいけないと伝え、
新たな店を紹介した龍彦。
王子様と呼ぶアゲハに由来を聞くと、
「私の好きな絵本があってね。」
「龍彦君その王子様に似ているんだ。」
「なんで優しくしてくれるの?」
「今日会ったばかりなのに?」
龍彦は答えた。
「あんなの見たらほっとけないよ。」
「スカウトマンとしても。」
それを聞いて一瞬落ち込むアゲハ。
「そっか・・・仕事だもんね。」
「商売道具なんだよね私。」
龍彦はアゲハの表情を見て続けた。
「アゲハはアゲハだろ。」
「男の子が女の子を守るの当然でしょ?」
「俺が店を紹介したからには、
アゲハには幸せになってもらうよ。」
〜「まぼろしの王子さま」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
王子様は私を心から笑顔にしてくれました。
生まれて初めて心から笑いました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
関は彼女を通じて、
秀吉のヤクの売買の事実を突き止めた。
売買の予定とされるボーリング場に向かった関。
しかしそれは秀吉の罠であった。
関は秀吉のヤク売買を漏らすと言うも、
秀吉は関をここから出さないと告げた。
そして関の彼女を人質に取った秀吉。
関は取り押さえられて、
ボーリングのレーンに押さえつけられた。
そして秀吉は関をピンに見立てボーリングを始めた。
関が最後に発した言葉は・・・
「真虎。こいつをぶっ潰せ。」
龍彦はアゲハが持っていたヤクに気がついた。
同時に関が重態になったことを知る。
山城は天野会長にヤクの話を相談しに行った。
すると天野は言う。
「この件解決なしにお前とは向き合うことはない。」
この言葉に秀吉の真相を調べることを決めた。
秀吉はどんどん調子に乗っていた。
涼子の店で暴れる秀吉。
涼子が秀吉のもとに行くと、
「俺のこと知っているよね?南秀吉。」
涼子は澄ました顔で答える。
「存じ上げませんわ。」
「他のお客様のご迷惑になります。」
「お引取り願いますか?」
その言葉に怒った秀吉。
「後悔するぞ。」
「俺はいずれこの町を仕切る男だ。」
それでも負けない涼子は言う。
「あなたが仕切るような町になったら、
私たちのほうから出て行きます。」
アゲハはヤクでおかしくなっていた。
急に店を飛び出したと店長から連絡の入った龍彦。
新宿の町を走り探した。
〜「まぼろしの王子さま」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
王子様の腕に抱かれた私はね
ゆっくり寝られたよ。
こんなにゆっくり寝られたことは無かった。
目を覚ますとね。
王子様はいなくなっていた。
家も小鳥もいなくなっていた。
そう王子様は幻だったの。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
龍彦はアゲハの以前の店に行った。
そこで見たのは、
店長の大林に抱きつきヤクを打つアゲハ。
大林は龍彦に言った。
「こいつシゃブ漬けだよ。」
「アゲハは従順な奴隷だよ〜。」
龍彦は何も言わず大林を殴った。
そしてアゲハを連れて帰ろうとすると、
アタッシュケースを持った秀吉が現れた。
「何しにここに?」
そう聞きあう龍彦と秀吉。
少しの間があり龍彦は気がついた。
秀吉の持っていたアタッシュケースを鞄を奪い取る。
しかし秀吉と大林が取り返そうと必死となる。
揉み合いになる中でアゲハは大林を刺した。
それを見た秀吉は、
「鞄はお前が持ってろ。」
「中身気をつけろ。直ぐに取り返しに行くからな。」
そう言って逃げるように店を出た。
龍彦はアゲハに逃げようと言うも、
アゲハは言う。
「アゲハ行かないほうがいい。」
「私は捕まったほうがいいの。」
「こんな体じゃなくて、
綺麗な体になってまたやり直す。」
「だから、いつか迎えに来てね。」
龍彦は泣きながらアゲハを強く抱きしめた。
アゲハは言った。
「ありがとう龍彦。」
「またね。私の王子様。」
白鳥は命一杯の笑顔で
「またな。」
と言って店を後にしたのだった・・・
真虎は葉山を呼び出していた。
葉山からヤクの出所を聞いた真虎。
同時に龍彦を呼び出した。
店での一軒を情報網で入手した真虎は、
アタッシュケースの行方を聞いた。
しかし秀吉に取られたと嘘をつく龍彦。
そんな龍彦の嘘にも気がついた真虎は、
龍彦の上着にGPSを忍ばせた。
龍彦はアタッシュケースを持ち、
秀吉のもとに向おうとしていた。
そんな龍彦に声をかけた涼子。
「似合わない鞄を持ってどこにお出かけ?」
「あんたの上着の右ポケット。」
そう言ってGPSの存在を教え、
真虎が探偵に調べさせた資料を渡した。
秀吉の本名は違った。
その名前で思い出した龍彦。
龍彦と秀吉は同じ中学校の同級生。
中学生同士の大乱闘で、
秀吉は同級生を刺した経歴を持つ。
資料に目を通した龍彦に涼子は言った。
「行ってきな。」
「あいつうちの店荒らしたから、
その分も殴ってきて。」
秀吉との待ち合わせ場所に着いた龍彦。
隣のビルの屋上に現れた秀吉が言った。
「俺はその鞄が欲しいだけだ。」
「そっから投げてくれればいい。」
龍彦は昔の名前で呼び言う。
「どこまでも腰抜けだね。」
「あの日お前は事件を起こして
学校を出て行ったんだ。」
「殴られてもいじめられても
ヘラヘラしていたお前が、
あの日ビビッて出した答えがナイフだ。」
「何も受け止めてねえんだな。」
「名前を変えて自分の過去も捨てて。」
秀吉は答えた。
「俺は変わったんだよ。あの頃とは違う。」
「お前は喧嘩も強くて仲間もいっぱいいた。」
「俺は1人でずっと孤独だった。」
「お前には分からねえだろ。」
「もういい。早く鞄投げろ。」
「ここに2千万ある。」
「それ投げてくれたら、この鞄投げ返してやるよ。」
龍彦はアタッシュケースを投げた。
中身を確認した秀吉は言った。
「バカだな龍彦。」
「この街で生きていくにはお前は優しすぎるよ。」
「お前がこっちに上がってくる前に俺は消えてるよ。」
「お前はこの街には向かない。じゃあな。」
龍彦は言う。
「お前は生かせない。」
「お前の人生間違いだらけなんだよ。」
そして助走をつけて走り出した白鳥。
「俺が叩きなおしてやる。」
そう言ってビルをジャンプで飛び越えた龍彦。
秀吉の前に立った龍彦は言った。
「今が命の賭け時なんだよバカ。」
秀吉は龍彦に手を組もうと話し近づいた。
間合いに入るとナイフで切りつけた。
気付いていた龍彦はナイフをかわして言う。
「相変わらずナイフ取り出す癖なおらねえな。」
「素手じゃ適わねえぞ。」
そう言うと龍彦と秀吉の殴り会いが始まった。
お互いボロボロになって倒れこんだ2人。
すると秀吉は笑いながら言った。
「お前の惚れてるアゲハさ。」
「俺も2、3発やったけど、
シャブ漬けだからすげえんだよ。」
それを聞いて怒った白鳥。
「心の芯まで腐ってる。」
「俺が目覚まさせてやる。」
そう言って秀吉を再び殴り始めた。
秀吉は泣きながら言った。
「俺があの頃もっと強かったら、
仲間もいっぱいいてもっと楽しかった。」
それを聞いて龍彦も泣きながら答えた。
「てめえは今日から俺のダチだバカヤロウ。」
「また喧嘩しような・・・」
そして秀吉を逃がした白鳥。
山城には逃げられたと嘘をつき謝った。
しかしアタッシュケースを渡しお咎めも無く、
逆にチーフのポジションを与えたれた。
しかし真虎は龍彦の嘘に気付いていた。
「秀吉逃がしただろ?」
「まあ、どっちでもいいけどね。」
「かえって危ないぞ。」
秀吉は1人新宿の町から逃げようとしていた。
しかし凶器を持った男たちに囲まれる。
振りほどこうと殴りかかるも、
離れた場所から撃たれて倒れこむ。
「耐えることねえ。」
「ちょうどいいか。」
そう口ずさんで息絶えた・・・
数日後事件現場を訪れた龍彦と真虎。
真虎は龍彦に言った。
「信じらんねえよな・・・」
「だが人が死ぬときなんてこんなもんだ。」
「秀吉は死んだ。歌舞伎町って町に飲まれた。」
「誰のせいでもねえ。」
龍彦は泣きながら言った。
「あいつバカなんですよね・・・」
「バカなんすよ・・・」
真虎は葉山とビルの屋上にいた。
葉山は真虎に聞く。
「1つ聞いていいですか?」
「真虎さんバースト潰したいんですか?」
「いい加減真虎さんのこと怖くなってきたな〜」
そんな葉山に真虎は聞く。
「秀吉殺しはお前がやったんだろ?」
葉山はとぼけたように返した。
「一体だれの仕業なんでしょうね〜?」
龍彦はいつものように新宿の街を歩いていた。
沢山の人が話しかけてくる。
「テンパーかっこいいっすよ〜。」
龍彦はスカウトを開始した。
「やっしゃ〜。いくぞ〜。」
「俺あなたのこと幸せにしますよ。」
「白鳥龍彦です。今仕事何してるの?」
スカウトをする龍彦の横をアゲハが歩いていった・・・
(終わり)
〜〜 関 連 商 品 〜〜
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・【アフィリエイトで稼ぐ】超初心者からの挑戦(リアルタイム)
〜〜RIKUのサブブログ〜〜
・「携帯・スマホゲーム」DORAKENを実際に攻略して・・・
・☆馬の気持ち☆
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【新宿スワン】
【出演者】
白鳥龍彦(バースト):綾野剛
南秀吉(ハーレム幹部):山田孝之
アゲハ:沢尻エリカ
山城神(バースト社長):豊原功補
真虎(バースト幹部):伊勢谷友介
関玄介(バースト幹部):深水元基
時政(バースト幹部):村上淳
洋介(バースト):久保田悠来
松方(ハーレム社長):安田顕
葉山豊(ハーレム幹部):金子ノブアキ
毒山(ハーレム):一ノ瀬ワタル
涼子(クラブママ):山田優
栄子(キャバ嬢):真野恵里菜
梨子(関の彼女) - 丸高愛実
天野修善(会長):吉田鋼太郎
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【感想】
面白かった。
時間軸が分かり難いですが、
全ての出演者にスポットを当てるあたりは、
今後もストーリー化・・・を匂わしてますね〜
それぞれにストーリーがあり、
漫画が人気名理由が分かります。
しかし映画に全てを組み込みすぎたのは、
漫画を呼んでいない人からすると・・・
それでもここまで分かりやすい作りにして、
終わりもしっかりさせたあたりはさすがです!
とりあえず漫画読んでみようかな〜
って思ってます。
さすが園子温さんですね〜
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺はその頃は、人生の最下点にいた。
何も考えずに新宿にやって来た。
新宿は底辺からのし上がるには一番の町だ。
残された全財産・・・
帰る電車賃もねえ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
新宿の街を歩く白鳥龍彦。
新宿を徘徊する不良たちに、
「テンパかよ!だっせえ!」
と言われ、すれ違いざまに頭を叩かれた。
それに対して龍彦は怒った。
「おい、お前!」
「今日クソ機嫌わりい。」
そう言って不良たちを殴った龍彦。
しかし多勢に無勢。ボコボコにされる龍彦。
それを見ていた真虎は不良たちに言う。
「もう、いいんじゃないのそこらへんで。」
「こいつは俺のダチだ!」
真虎は新宿でも知られた存在。
不良は躊躇いながらも、ダチなはずないと言うが、
「今からダチになるんだよ。」
そう言って龍彦を引き取った。
その後無一文の龍彦に、ご飯をご馳走した真虎。
見ず知らずの自分に優しくしてくれる真虎に聞いた。
「どうして俺にこんなことしてくれるんですか?」
真虎は答える。
「言っちゃったからね。ダチになるって。」
「行く当てもない。仕事も無い。金もない。」
「人生がなくなりかかって、
プライドなんて言ってられない。」
「そんな奴を探してるんだ。」
「お前スカウトやらない?」
「いい顔している。お前向いてるわ。」
龍彦にスーツを着せた真虎。
クラブのスカウトをやらそうとする。
龍彦は簡単だと言って、
自信があるように女の子に声をかけた。
しかし一向に足を止めない新宿の女性たち。
見かねた真虎は手本を見せると言い、
あっという間に女性は足を止めた。
それを手本に真似をする龍彦だが、
何をやってもうまくいかない。
仕舞いには土下座までして、
「すいません。」
「忙しいの分かってますけど時間下さい。」
龍彦の行動に天を仰いだ真虎だったが、
「いいよ。」
「土下座までされたら、
聞かないわけにはいかないでしょ。」
そう言って女性は足をとめるのだった。
喜ぶ龍彦に真虎は言う。
「ここから先は俺が引き取るよ。」
次は足を止めた女性に真虎は聞いた。
「ヘルスでいいよね?」
そのまま知り合いのヘルスへ連れて行く。
店長は簡単な実技面接をしてから真虎に言う。
「テク普通だけど顔可愛いし、
真虎さんなんでAランクで。」
それを聞いて真虎は龍彦に言った。
「良かったな。」
「Aついたからまずお前にボーナス5万入る。」
「彼女がここで働き続ける限り、
彼女の給料の10%がお前に入る。」
「土下座してみるもんだな〜。」
それを聞いて複雑な気持ちになった龍彦は店を出た。
追いかけた真虎は声をかける。
「大丈夫か?」
その言葉に龍彦は言った。
「俺やっぱこの仕事向いてないです。」
それを聞いた真虎は怒った。
「てめえがビビっただけじゃねえか。」
「お前、あの女を不幸にしたなんて
思ってねえだろうな?」
「風俗で働く女を、
お前が不幸だと思うのは大間違いなんだよ!」
「金稼いで、いい服着て、
美味いもん食って、適当に遊べて、
男も女もみんな楽しみたい。」
「需要と供給。」
「俺たちはこいつらを幸せにして金儲けをする。」
「嫌なら辞めな。止めねえよ。」
そう言って背を真虎に龍彦は言う。
「待ってください。やらせてください。」
「ただ、俺がスカウトした女の子には、
必ず幸せだって言わせます。」
こうして龍彦のスカウトマンとしてが始まった。
新宿の町でスカウトをしていた秀吉。
あっさり女の子の足を止めさせていた。
「俺、秀吉。」
「新宿歩くんだったら
俺の名前覚えておかないとダメだよ。」
秀吉は名のあるスカウトマン。
他のスカウトマンたちには頭を下げられる存在。
そんな秀吉の視線の先には龍彦が立っていた。
龍彦は毎日教育係の洋介とスカウトをしていた。
そんな様子を遠くで見ていた真虎。
真虎は龍彦を連れて事務所に行った。
「洋介の話よりオブザベーションが大事。」
「この窓からの景色だ。」
真虎はそう言うと望遠鏡を龍彦に渡した。
オフィスから見える新宿を歩く女性。
その女性を見て人生を推測する。
「話す前、会う前に相手を一見しただけで見抜く。」
「そうすれば、話し方やり方もスマートになる。」
そう言い龍彦に指南した。
その頃秀吉は新宿のある場所にいた。
「1000万ある。」
「今月かこの分まわしてくれ。」
「今日からルール変えたらいいだろ。」
そう言われた売人はヤクを秀吉に渡した。
「俺が新宿を統一したら
今までの量じゃ足りないからな。」
秀吉が事務所に戻ると、
幹部の葉山に松方社長が怒鳴っていた。
「今月も売上落ちてるぞ。」
「お前バーストに幅効かされすぎなんだよ。」
それを見ていた秀吉は、事務所を出た葉山に言う。
「早く社長を追い出して、
2人でハーレム仕切りましょうよ。」
「今月の売上。1280万です。」
「もう軽く1億は越えているはずですから、
バーストなんていつでも潰せますよ。」
「あんまもたついてるなら俺1人でやっちゃうかな?」
翌日。
スカウトをしていたバーストのスカウトマン。
そのスカウトマンに近づく秀吉と取り巻き達。
「お前どこのもんだ?」
「あのブロックからこっちはバーストの島だ。」
怯えながら反論するバーストスカウトマン。
「ここグレーゾーンなはずじゃ?」
それに対して秀吉は、
「今日からここは、南秀吉の島にする。」
そう言ってスカウトマンの携帯を奪い、潰した。
そして秀吉は取り巻き達に言った。
「ハーレムなめる奴いたら容赦なく潰せ。」
天野会長に一千万を納めたバースト社長山城。
そんな山城に天野は言った。
「はした金だな。無いよりはましだな。」
「もし他社が、
この金の倍盛ってきたらどうなると思う?」
「安心なんて一番無駄なもんだよ。」
そう言って上納金のアップを要請した。
事務所に戻った山城は、
ハーレムが倍の上納金を払ったらと悩んでいた。
その話を聞いて真虎は言った。
「あるでしょ。一気に解決する方法が。」
「ハーレムをうちの参加に入れちゃう。」
「最近ハーレムのスカウトの行儀が悪い。」
「俺は上納金の話も、
ハーレムをまとめるいい話だと思ってます。」
「社長考えておいてくださいよ。」
真虎の提案を聞いて幹部の関も賛同した。
「ハーレムと、もめましょうや。」
何も知らずにスカウトをしていた龍彦は、
町を歩いていた涼子に話しかけていた。
龍彦に興味を持った涼子。一緒に居酒屋に向った。
その居酒屋では別れ話で、もめるカップルがいた。
涼子は、もめるカップルの女性に言った。
「男相手に泣いてるんじゃないよ。」
「さっさと新しい男でも作って見返してやりな。」
「歌舞伎町の女ならね、負けてんじゃないよ。」
「かっこ良く生きな。」
それを聞いてカッコいいと褒める龍彦。
負けじと龍彦も男に言った。
「関わった女全員幸せにしてやんな。」
「俺も同じ男だからよ。」
「男の評価下げてるんじゃねえぞ。」
それを見ていた涼子は龍彦を気に入り言う。
「決めた。」
「うちの店でくすぶっている子のリストあげる。」
「引き抜いて新しい店に入れてあげて。」
クラブママだったことに驚く龍彦。
そんな龍彦に涼子は言った。
「ハンコつこうか?」
そして2人ホテルへ・・・
数日後、真虎は龍彦を連れてクラブにいった。
そこは真虎がスカウトした女性が働いている店。
席につくと、その店のママが挨拶に来た。
そのママは涼子であった。
驚いた龍彦はつい名前を呼んだ。
しかし涼子は知らぬ顔して聞く。
「あれ?どこかでお会いしましたっけ?」
真虎は涼子に言った。
「お前も出世したな。これだから女は怖い。」
澄ました顔で涼子は答える。
「男が10年位かかるところを、
ある日一瞬にして手に入れる。」
「いい女だけが持っている特権よ。」
一方で龍彦に付いていた女の子は聞く。
「ママと会ったんでしょ?」
「ハンコ押された?」
「ママがハンコ押した男何年ぶりだろう!」
「ママがあなたを認めたんだよ。」
「絶対期待に答えなきゃね。」
ある日幹部の関が龍彦に声をかけた。
関に連れられて行った先はハーレムの島。
そこでスカウトするように支持をされた。
当然ハーレムのスカウトマンに絡まれて、
秀吉の下に連れて行かれた。
一部始終を見ていた関は、
助けるどころか笑いながらその場を去った。
秀吉を見た龍彦は、
「あんた誰?」
その言葉に怒った秀吉、
「知らねえ訳ねえだろ!」
そう言って龍彦を殴った秀吉。
龍彦は秀吉と取り巻きに囲まれ、
ボコボコに殴られ蹴られた。
そして最後には秀吉の指示で、
取り巻きたちに指の骨を折られた。
直ぐにバーストでは会議が行なわれた。
真虎は龍彦の話を聞き山城に言う。
「俺話しつけてきます。」
しかし山城は、
「この件、関に任せようじゃねえか。」
その言葉に反論する真虎。
「竜彦は俺の弟子だ。」
「勝手にあいつを使うんじゃねえ。」
それを制するように関は言う。
「バーストの社員だ。誰のものでもねえ。」
「任されたもんは仕方ねえよな。」
反対する真虎も山城が決めた事で、
仕方なく引くしかなかった。
完全に関のシナリオ通りであった。
関は龍彦のもとへ行き声をかけた。
「仕返しに行くぞ。」
「俺が責任を取る。真虎は関係ねえ。」
もちろん龍彦は賛同し、秀吉のもとへ向かった。
多数のハーレムスカウトマンに挑んだ二人。
しかし多勢に無勢。あっという間にボコボコになる。
これも関の思惑通りだった。
龍彦だけではなくて幹部も痛めつけられた。
これをネタにハーレムの社長松方を問い詰める。
松方に山城は言う。
「選択肢は2つに1つ。」
「ハーレムは本日を持って解散、廃業。」
「それが嫌なら、うちの傘下に入れ。」
もちろん条件を飲まない松方。
それに対して別の取引を持ちかける山城。
「金に困っているんだって?」
「買ってやるよハーレム。」
「しかも内緒で・・・」
ゆらぐ松方。しかし下のものに示しがつかない。
この反応も想定内とばかりに山城は言う。
「龍彦やるよ。」
それを聞いていた龍彦は、
「俺をハーレムに売るんですか?」
「あんたら、最初から俺のことを・・・」
「ふざけるなよ。俺は帰るぞ。」
帰ろうとする龍彦を止め殴る幹部の時政。
龍彦はボコボコにされて言う。
「ここで殺せ。今すぐ殺せ〜。」
「あんたらにおもちゃにされるくらいなら、
死んだほうがましだよ。」
「お前みたいな奴らにコケにされてよ〜。」
「脳みそ撒き散らして死んだら、
お前ら迷惑だろ?」
そう言って消火器で自分の頭を叩こうとしたとき、
「バカ何やってるんだ。」
「こんな風にしたら掃除大変だろうが。」
そう言って事務所に入っ龍彦を止めた真虎。
一緒に入ってきたのはハーレム幹部葉山。
真虎は葉山を山城に紹介して、
ハーレムを買っても誰もついて来ないという。
実質ハーレムを仕切っているのは葉山で、
葉山が納得しなければ話は成立しないと。
そしてさっきまでの松方の商談を録音した、
タイムレコーダーを流した。
慌てる松方を尻目に真虎は山城に言う。
「社長商談の話を少し変えるだけです。」
そして葉山も松方に言った。
「松方さんあんたには降りてもらうよ。」
「このたびの件は全てハーレム側の落ち度です。」
「三千万円はいりません。」
「社長を除く全員が無条件で、
今日からバーストの参加に入ります。」
「以後よろしくお願いします。」
それを聞いて喜んだ山城。
この話に納得していなかったのは関だけだった。
「いい話は裏が見えるまでは納得しねえぞ。」
話がまとまり龍彦はハーレムに差し出されずに済んだ。
騙されていた事にショックを受けた龍彦に真虎は、
「まだお前は、
利用されるだけの価値しかなかったって事だよ。」
そう言い龍彦の頭を叩くのだった。
ハーレムの吸収は社長の松方以外、
葉山を筆頭に全ての幹部はグルであった。
理解のできないでいる松方に葉山と秀吉は言う。
「バーストとつるんでバーストでかくするんだよ。」
「金も力もあって、頭のいいやつが、
でかくなったバーストをしきる。」
「誰とも争わず、
血も見ないでバーストそっくり頂くんだよ。」
翌日バーストとハーレムの全社員が集められた。
幹部は真虎と関、葉山と時政。全員が横並び。
そして社長が出した結論は、実力勝負。
1ヶ月トータルで、
最もスカウトを多く成立させた人間を幹部とする。
それを聞いて幹部になれるかも?と喜ぶ龍彦。
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新宿の街を黒服から逃げるアゲハ。
それを助けた秀吉。
アゲハは金庫から5万を抜いて逃げていた。
秀吉は黒服に5万を渡していった。
「俺この子買うよ。」
「どうせ今の店じゃ働けねえだろ?」
そしてアゲハを買った秀吉は、
馴染みのヘルスの店長大林に引き渡した。
秀吉はアゲハには借金を立て替える約束をして、
大林には寝させずに働かせろと伝えた。
龍彦はスカウトをしていて、
ちょうど店を探していた栄子とであった。
風俗で働きたいと言う栄子を説得して、
キャバクラへと連れて行った龍彦。
栄子はリストカット跡が沢山あったが、
顔のよさで店長は受け入れてくれた。
真虎と葉山はビルの屋上で新宿の街を見ていた。
真虎は葉山に言う。
「素性も知れねえ、行き先も見えねえ、
そんな奴等がどっからとも無く集まってくる。」
「人生をかけて、
思いのたけを尽くしてこの街で生きる。」
「だが、誰一人として他所者扱いされねえですむ。」
「それが新宿って街だ。」
そう言ってから葉山の今後のプランを聞いた真虎。
「時の流れるままにですよ。」
そう言って聞き流す葉山。
葉山は関について真虎に聞く。
関の性分を教えた真虎は、
逆に秀吉のことを葉山に聞いた。
しかし葉山は知らないと答えるのみだった。
秀吉の素性を知りたい真虎は、
涼子の紹介で探偵を雇い秀吉を調べる事にした。
秀吉はスカウトを成功したスカウトマンを呼び出し、
スカウトした女性が欲しいと脅しをかけていた。
もちろん多額の金額を積んで買収を始めた。
何もせずに数字を稼ごうとの動きであった。
それを知った関は山城に伝えた。
山城は聞き流すように答えた。
「幹部のほとんどがバーストだ。」
「1人位昇格したからってどうでもねえ。」
アゲハ寝ずに働いていた。
そして店で暴力を振るう大林におびえていた。
店を訪れた秀吉はアゲハに優しくして、
「いいものあげるよ。」
と言ってヤクを渡した。
龍彦は栄子と新宿の街で会い、
栄子の相談に乗ろうとしていた。
しかし笑って誤魔化した栄子。
一緒にとったUFOキャッチャーのぬいぐるみを、
龍彦に渡して言った。
「コレあげる。仕事紹介してくれたお礼ね。」
しかしその翌日栄子は自殺した。
落ち込む龍彦に真虎は言った。
「お前のせいじゃない。」
「行ってお前がスカウトした
女の子たちがいる通り歩いてみろよ。」
「ここまでお前がやって来たことが見えるから。」
落ち込みながら新宿の町を歩いた龍彦。
会う女の子達はみんな笑顔で龍彦に話し掛けた。
優しさに触れた龍彦は泣きながら言う。
「みんな大好きだバカヤロウ!」
関はまたしても計画をたてた。
彼女の梨子をハーレム側にスカウトさせた。
ハーレム側にスカウトされた女性の行く店では、
ヤクが出回っていることを嗅ぎつけた。
アゲハは寝ずに働き続け、
朦朧とする中絵本を読んでいた。
〜「まぼろしの王子さま」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
親に捨てられて
ずっと奴隷として働いていた家から
王子様は私を見つけ出すと、
手を握り、森に連れ出してくれたんです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そこに大林が来て仕事をお願いする。
休みのはずのアゲハだが、
大林に脅されついには逃げ出した。
ちょうどスカウトした女性を紹介に来ていた龍彦。
アゲハに手を上げていた大林を殴り、
紹介するはずだった女の子に言った。
「こんな店やめよう。別紹介するから。」
そう言ってアゲハの鞄から落ちた絵本を拾った。
するとアゲハは龍彦の手をとって言う。
「一緒に逃げよう。」
言われるままに龍彦はアゲハと
店を出て新宿の町を走った。
〜「まぼろしの王子さま」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コレだけ走ったのはいつ以来だろう。
私は嬉しくて楽しくて
王子様は私のために、
木の枝と森の花で家を建ててくれたのです。
王子様は私と森に逃げると
魔法のカーテンを使い追っ手を見事に撹乱したんです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
逃げた2人は、
ゲームセンターのプリクラの中へ逃げ込んだ。
「王子様だ。よろしくね。私の王子様。」
そして龍彦に金を貰い一緒にプリクラを撮った。
しかし我に返るアゲハ。
「店戻んないと。」
そんなアゲハに戻ってはいけないと伝え、
新たな店を紹介した龍彦。
王子様と呼ぶアゲハに由来を聞くと、
「私の好きな絵本があってね。」
「龍彦君その王子様に似ているんだ。」
「なんで優しくしてくれるの?」
「今日会ったばかりなのに?」
龍彦は答えた。
「あんなの見たらほっとけないよ。」
「スカウトマンとしても。」
それを聞いて一瞬落ち込むアゲハ。
「そっか・・・仕事だもんね。」
「商売道具なんだよね私。」
龍彦はアゲハの表情を見て続けた。
「アゲハはアゲハだろ。」
「男の子が女の子を守るの当然でしょ?」
「俺が店を紹介したからには、
アゲハには幸せになってもらうよ。」
〜「まぼろしの王子さま」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
王子様は私を心から笑顔にしてくれました。
生まれて初めて心から笑いました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
関は彼女を通じて、
秀吉のヤクの売買の事実を突き止めた。
売買の予定とされるボーリング場に向かった関。
しかしそれは秀吉の罠であった。
関は秀吉のヤク売買を漏らすと言うも、
秀吉は関をここから出さないと告げた。
そして関の彼女を人質に取った秀吉。
関は取り押さえられて、
ボーリングのレーンに押さえつけられた。
そして秀吉は関をピンに見立てボーリングを始めた。
関が最後に発した言葉は・・・
「真虎。こいつをぶっ潰せ。」
龍彦はアゲハが持っていたヤクに気がついた。
同時に関が重態になったことを知る。
山城は天野会長にヤクの話を相談しに行った。
すると天野は言う。
「この件解決なしにお前とは向き合うことはない。」
この言葉に秀吉の真相を調べることを決めた。
秀吉はどんどん調子に乗っていた。
涼子の店で暴れる秀吉。
涼子が秀吉のもとに行くと、
「俺のこと知っているよね?南秀吉。」
涼子は澄ました顔で答える。
「存じ上げませんわ。」
「他のお客様のご迷惑になります。」
「お引取り願いますか?」
その言葉に怒った秀吉。
「後悔するぞ。」
「俺はいずれこの町を仕切る男だ。」
それでも負けない涼子は言う。
「あなたが仕切るような町になったら、
私たちのほうから出て行きます。」
アゲハはヤクでおかしくなっていた。
急に店を飛び出したと店長から連絡の入った龍彦。
新宿の町を走り探した。
〜「まぼろしの王子さま」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
王子様の腕に抱かれた私はね
ゆっくり寝られたよ。
こんなにゆっくり寝られたことは無かった。
目を覚ますとね。
王子様はいなくなっていた。
家も小鳥もいなくなっていた。
そう王子様は幻だったの。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
龍彦はアゲハの以前の店に行った。
そこで見たのは、
店長の大林に抱きつきヤクを打つアゲハ。
大林は龍彦に言った。
「こいつシゃブ漬けだよ。」
「アゲハは従順な奴隷だよ〜。」
龍彦は何も言わず大林を殴った。
そしてアゲハを連れて帰ろうとすると、
アタッシュケースを持った秀吉が現れた。
「何しにここに?」
そう聞きあう龍彦と秀吉。
少しの間があり龍彦は気がついた。
秀吉の持っていたアタッシュケースを鞄を奪い取る。
しかし秀吉と大林が取り返そうと必死となる。
揉み合いになる中でアゲハは大林を刺した。
それを見た秀吉は、
「鞄はお前が持ってろ。」
「中身気をつけろ。直ぐに取り返しに行くからな。」
そう言って逃げるように店を出た。
龍彦はアゲハに逃げようと言うも、
アゲハは言う。
「アゲハ行かないほうがいい。」
「私は捕まったほうがいいの。」
「こんな体じゃなくて、
綺麗な体になってまたやり直す。」
「だから、いつか迎えに来てね。」
龍彦は泣きながらアゲハを強く抱きしめた。
アゲハは言った。
「ありがとう龍彦。」
「またね。私の王子様。」
白鳥は命一杯の笑顔で
「またな。」
と言って店を後にしたのだった・・・
真虎は葉山を呼び出していた。
葉山からヤクの出所を聞いた真虎。
同時に龍彦を呼び出した。
店での一軒を情報網で入手した真虎は、
アタッシュケースの行方を聞いた。
しかし秀吉に取られたと嘘をつく龍彦。
そんな龍彦の嘘にも気がついた真虎は、
龍彦の上着にGPSを忍ばせた。
龍彦はアタッシュケースを持ち、
秀吉のもとに向おうとしていた。
そんな龍彦に声をかけた涼子。
「似合わない鞄を持ってどこにお出かけ?」
「あんたの上着の右ポケット。」
そう言ってGPSの存在を教え、
真虎が探偵に調べさせた資料を渡した。
秀吉の本名は違った。
その名前で思い出した龍彦。
龍彦と秀吉は同じ中学校の同級生。
中学生同士の大乱闘で、
秀吉は同級生を刺した経歴を持つ。
資料に目を通した龍彦に涼子は言った。
「行ってきな。」
「あいつうちの店荒らしたから、
その分も殴ってきて。」
秀吉との待ち合わせ場所に着いた龍彦。
隣のビルの屋上に現れた秀吉が言った。
「俺はその鞄が欲しいだけだ。」
「そっから投げてくれればいい。」
龍彦は昔の名前で呼び言う。
「どこまでも腰抜けだね。」
「あの日お前は事件を起こして
学校を出て行ったんだ。」
「殴られてもいじめられても
ヘラヘラしていたお前が、
あの日ビビッて出した答えがナイフだ。」
「何も受け止めてねえんだな。」
「名前を変えて自分の過去も捨てて。」
秀吉は答えた。
「俺は変わったんだよ。あの頃とは違う。」
「お前は喧嘩も強くて仲間もいっぱいいた。」
「俺は1人でずっと孤独だった。」
「お前には分からねえだろ。」
「もういい。早く鞄投げろ。」
「ここに2千万ある。」
「それ投げてくれたら、この鞄投げ返してやるよ。」
龍彦はアタッシュケースを投げた。
中身を確認した秀吉は言った。
「バカだな龍彦。」
「この街で生きていくにはお前は優しすぎるよ。」
「お前がこっちに上がってくる前に俺は消えてるよ。」
「お前はこの街には向かない。じゃあな。」
龍彦は言う。
「お前は生かせない。」
「お前の人生間違いだらけなんだよ。」
そして助走をつけて走り出した白鳥。
「俺が叩きなおしてやる。」
そう言ってビルをジャンプで飛び越えた龍彦。
秀吉の前に立った龍彦は言った。
「今が命の賭け時なんだよバカ。」
秀吉は龍彦に手を組もうと話し近づいた。
間合いに入るとナイフで切りつけた。
気付いていた龍彦はナイフをかわして言う。
「相変わらずナイフ取り出す癖なおらねえな。」
「素手じゃ適わねえぞ。」
そう言うと龍彦と秀吉の殴り会いが始まった。
お互いボロボロになって倒れこんだ2人。
すると秀吉は笑いながら言った。
「お前の惚れてるアゲハさ。」
「俺も2、3発やったけど、
シャブ漬けだからすげえんだよ。」
それを聞いて怒った白鳥。
「心の芯まで腐ってる。」
「俺が目覚まさせてやる。」
そう言って秀吉を再び殴り始めた。
秀吉は泣きながら言った。
「俺があの頃もっと強かったら、
仲間もいっぱいいてもっと楽しかった。」
それを聞いて龍彦も泣きながら答えた。
「てめえは今日から俺のダチだバカヤロウ。」
「また喧嘩しような・・・」
そして秀吉を逃がした白鳥。
山城には逃げられたと嘘をつき謝った。
しかしアタッシュケースを渡しお咎めも無く、
逆にチーフのポジションを与えたれた。
しかし真虎は龍彦の嘘に気付いていた。
「秀吉逃がしただろ?」
「まあ、どっちでもいいけどね。」
「かえって危ないぞ。」
秀吉は1人新宿の町から逃げようとしていた。
しかし凶器を持った男たちに囲まれる。
振りほどこうと殴りかかるも、
離れた場所から撃たれて倒れこむ。
「耐えることねえ。」
「ちょうどいいか。」
そう口ずさんで息絶えた・・・
数日後事件現場を訪れた龍彦と真虎。
真虎は龍彦に言った。
「信じらんねえよな・・・」
「だが人が死ぬときなんてこんなもんだ。」
「秀吉は死んだ。歌舞伎町って町に飲まれた。」
「誰のせいでもねえ。」
龍彦は泣きながら言った。
「あいつバカなんですよね・・・」
「バカなんすよ・・・」
真虎は葉山とビルの屋上にいた。
葉山は真虎に聞く。
「1つ聞いていいですか?」
「真虎さんバースト潰したいんですか?」
「いい加減真虎さんのこと怖くなってきたな〜」
そんな葉山に真虎は聞く。
「秀吉殺しはお前がやったんだろ?」
葉山はとぼけたように返した。
「一体だれの仕業なんでしょうね〜?」
龍彦はいつものように新宿の街を歩いていた。
沢山の人が話しかけてくる。
「テンパーかっこいいっすよ〜。」
龍彦はスカウトを開始した。
「やっしゃ〜。いくぞ〜。」
「俺あなたのこと幸せにしますよ。」
「白鳥龍彦です。今仕事何してるの?」
スカウトをする龍彦の横をアゲハが歩いていった・・・
(終わり)
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2015年12月19日
【イニシエーションラブ】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【イニエーションラブ】
【出演者】
鈴木:松田翔太・森田甘路
成岡繭子(マユ):前田敦子
石丸美弥子:木村文乃
海藤(同僚):三浦貴大
梵ちゃん(同僚):前野朋哉
和美(成岡の友人):八重垣琴美
桑島課長:山西惇
静岡支店部長:木梨憲武
石丸詩穂(美弥子の母):手塚理美
石丸広輝(美弥子の父):片岡鶴太郎
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【感想】
裏切られたといえば裏切られました。
皆さんは気がつくかな〜
確かにここで書くと分かってしまうので、
感想ではネタバレにかかわる事は書きません。
知りたい方は「あらすじ」読んでください。
でも・・・
僕は何となく気がつきましたよ。
少なくても最初から違和感ありました。
でもここまで作るとは〜
ある意味感心しました。
しっかり作られた映画ですね〜
くりぃむしちゅーの有田哲平が、
最高傑作のミステリーと言っただけの事はある。
ストーリーだけとるとあまり面白いとは・・・
しかし最後まで見ると!!!
そんな映画なんです。一度見てください。
そして皆さんはどこで気がつきますか?
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜 1987年7月10日静岡市 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あの日かかってきた電話に、
僕は感謝しなければならない。
あの電話のおかげで僕は、
彼女と出会うことが出来たのだから。
それは人数あわせで誘われて、
たまたま行ったコンパだった。
僕みたいにデブで朴訥とした顔をした人間が、
コンパに誘われるなんて、
よっぽど誘う人がいなかったに違いない。
これが彼女のまなざしを受けた最初の瞬間だった。
それ以来僕は彼女の眼差しが忘れられなくなっていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
成岡繭子と初めてあったコンパ。
成岡は歯科助手。
鈴木は理学部数学課の学生。
富士通に内定が決まっていた。
成岡は薬指にルビーの指輪をしており、
彼氏から貰ったのか?と友人は聞いた。
しかし成岡は答えた。
「先週誕生日だったから自分で買ったんです。」
〜 8月2日 〜
以前のコンパメンバーで海に誘われた鈴木。
もちろん鈴木の目はずっと成岡を見ていた。
そんな鈴木に成岡は声をかけた。
「タバコ一本いただけますか?」
「友達の前でも吸わないし、
今日も吸わないつもりだったんですけど。」
「やっぱりタバコ吸う女って嫌いですか?」
そう言ってタバコを吸った成岡は、
「やっぱりこれきつい。」
「カプリっていうやつ吸ってるんですけど、
これの半分くらいの細さだから、
いつもの倍煙吸っているって事か?」
それに対して理学部数学課の鈴木は、
「いや。」
「断面積は1/4になるから、
4倍の煙吸っているって事になるんじゃない?」
すごい。と褒めた成岡は聞いた。
「じゃあ数字を覚えるのも得意ですか?」
そう言って紙に数字を書き鈴木に見せた。
「覚えられましたか?」
「それ忘れないで下さい。」
「家の電話番号ですから。」
〜 8月9日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
何度も電話しようと試みるが挫折する毎日。
僕なんか電話したとこで何かがある訳じゃないんだ。
何を期待しているんだ僕は。
勇気を出せ。鈴木夕樹。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そしてやっと電話した鈴木に成岡は言う。
「ずっと待ってたんですよ。」
「もう諦めてました。」
「実は鈴木さんに食事に誘ってもらいたくて。」
驚き鈴木は答えた。
「僕なんかじゃ。」
「女の人と付き合ったこともないし・・・」
成岡は言った。
「真面目で不器用だけど、
嘘なんてつけないような人がいいなって・・・
前から思ってた。」
それを聞いて鈴木は言う。
「僕と食事していただけませんか?」
〜 8月14日 〜
スーツを着て行った鈴木。
おしゃれなバーで小説の話をして盛り上がった。
帰り際に鈴木に聞く成岡。
「そういえば免許なんて、持ってないですか?」
「車があれば・・・」
聞き取れず聞き返す鈴木に成岡は言う。
「次は来週の金曜日でいいですか?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こうして僕にとって金曜日が特別なものになっていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
おしゃれをしてメガネからコンタクトにした。
そして美容室に行って髪型も変えた。
〜 8月21日 〜
成岡は鈴木の容姿を見て言った。
「一週間で凄い変わりましたね。」
「そのほうがいいと思う。」
「私は好き。」
そしてお互いの好きな小説を貸し合う2人。
鈴木は成岡に言う。
「そういえば報告があって。」
「教習所に通い始めたんだ。」
そんな鈴木の行動に喜ぶ成岡。
成岡は鈴木を夕樹の夕から「タックン」。
鈴木は長岡を「マユちゃん」と呼んだ。
〜 9月15日 〜
みんなでテニスに行くことになった。
鈴木と成岡はペアではなかった・・・
成岡は北原とペアで楽しそうであった。
一方鈴木に付きまとう和美。
落ち込み家に帰った鈴木。
すると電話が鳴りった。相手は成岡だった。
「タックン今日不機嫌じゃなかった?」
「タックンは、和美のこと好きなの?」
それを聞いた鈴木は逆に質問した。
「マユちゃんも北原の事どう思ってるの?」
成岡は言った。
「もしかして・・・
お互い意味の無い嫉妬心燃やしてたのかな?」
「嫉妬するって事は大丈夫だよね?」
「それだけ好きだって事の現われだと思うし。」
それを聞いて自分の嫉妬だった事が分かった鈴木。
「マユちゃん。僕はあなたのことが好きです。」
「愛しています。」
それに対して成岡も言う。
「ありがとう。タックン。私もタックンが好きです。」
電話を切り鈴木は成岡の家に向かった。
そして成岡の顔を見て再度言った。
「マユちゃんのことが好きです。」
そして成岡を押し倒した鈴木。
成岡は言う。
「私もタックンのことが好きです。」
「初めての相手がタックンでよかった。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こうして僕たちは正式に恋人同士になった。
今までのうだつの上がらない人生の
帳尻をあわせるかのように、
僕の人生は急速に方向転換を始めた。
僕はまるでドラマの主人公になったような気持ちで、
毎日毎日マユちゃんのことを
考えられる幸せを感じていた。
変わったことといえば10月から始まった
「男女七人秋物語」が金曜日に放送されるため、
会うのが木曜日に変わったくらい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 10月14日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月日が流れ無事に免許を取得。
僕は中古車を買った。
今まで経験したことの無い時間に、
僕は何でもできるような気がしていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
クリスマスの計画を鈴木に話す成岡。
ホテルでの食事を希望するが、
満室でホテルがとれない・・・
と思っていたがタイミングよく先客から
キャンセルが入って予約が出来た。
〜 12月24日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして初めて女の子と過ごす、
クリスマスイヴがやって来た。
半年前まではまさか僕が女の子と一緒に、
こんなお洒落な場所にいるなんて
想像もしていなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ホテルでのディナーを食べた2人。
成岡がしていたルビーの指輪はなく、
なくしてしまったと話す成岡。
来年のプレゼントはルビーの指輪を買う約束をし、
今年のプレゼントはネックレスをあげた鈴木。
一方成岡のプレゼントはバスケットシューズ。
「私男の子にプレゼントしたことが無いから、
何を買ったらいいのかわからなくて。」
鈴木は幸せな時間を過ごし、成岡に言う。
「来年も再来年も、
ずっとこんなクリスマスが過ごせたらいいね。」
ディナーの帰り道、
鈴木と成岡を見て通りかかったカップルは、
釣り合ってないと話していた。
それが聞こえて鈴木は成岡に言う。
「マユちゃんに恥じかかせちゃって・・・」
成岡は答えた。
「今でもかっこいいよ。」
「少しぽっちゃりしてるけど。」
「やせたら凄くハンサムかもね?」
応えるように鈴木は言う。
「僕マユちゃんのために痩せるよ。」
「マユちゃんのために、
もっとかっこいい男にならなきゃ。」
「これは僕の決意表明だから。」
「マユちゃんを幸せにするための・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この子と廻り合ったことで僕の人生は180度変わった。
そう、まるでカセットテープが、
A面からB面に変わったかように、
僕の新たな人生が始まったんだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 6月19日 〜
成岡から貰ったバスケットシューズを履いて、
一生懸命ランニングをする鈴木。
鈴木の体系も変わっていた。
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【SIDE−B】
仕事の評価が認められて、
静岡から東京への転勤を命じられたタッ君。
その話を成岡にすると、
「ようするにタッ君が認められたってことだよね?」
寂しがる成岡にタッ君は言う。
「静岡くらいなら直ぐに飛んでこれるよ。」
成岡はそれに答えた。
「ありがとう。でもそんなワガママ言わない。」
「都会の絵の具に染まらないで帰ってね。」
〜 7月1日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺はマユを置いて東京へと向かった。
このときは俺はマユのためなら、
何でもできると思ってた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
明日は成岡の誕生日。
タッ君は成岡に電話して静岡に帰る約束をした。
電話を切ると同僚の海道が部屋へ遊びに来て、
タッ君の昔の写真を見て言う。
「これ高校時代のスーさん?」
「スマートだね〜」
〜 7月2日 〜
同僚と銀座に行った鈴木。
「俺時間無いから別行動するわ。」
そう言って銀座でルビーの指輪を買って、
成岡のいる静岡に向ったタッ君。
長岡に指輪を渡して言った。
「俺はいつもマユのこと思っているよって言う
気持ちがそこにはこもっているから。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俗に言う遠距離恋愛と言うものになってしまったけれど
俺とマユの間に東京と静岡の距離なんて関係ない。
俺が車を飛ばせば済むことだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 7月6日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
なれない東京での仕事は確かに辛い。
だけど仕事と恋愛を両立させる。
俺がしっかりすればいいだけのことだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
会社に行くと、
「あっ鈴木さんですか?」
と声をかけたのは石丸。
「私も新入社員なんですよ。」
「同じ新入社員同士頑張りましょう。」
とても綺麗な女性だった。
〜 7月10日 〜
会社の飲み会。
パワハラ・セクハラ・アルハラ当たり前の桑島課長。
石丸に絡んだでいる桑島をみて、助けるタッ君。
〜 7月11日 〜
静岡に帰ったタッ君は長岡に言う。
「早く静岡帰って来たい。」
「帰ってマユと一緒に暮らしたい。」
〜 7月13日 〜
パソコンを使えない石丸。
タッ君は助けてデータ入力を手伝った。
「ありがとう。鈴木君のおかげで助かったよ。」
「良かったら、軽くご飯行きません?」
こうしてご飯を食べに行った2人。
家に帰るとすぐに成岡に電話した。
「ごめん。残業だったんだ。」
成岡は言う。
「新しい水着買ったんだ〜。ハイレグ。」
「だから今度海行こうよ。」
こうして海に行く約束をしたタッ君。
〜 7月14日 〜
石丸が大学に所属していた劇団サークル。
その劇団の公演に誘われたタッ君。
同期の海道と梵ちゃんも行くとのことで、
断る事できずに行くことにしたタッ君。
しかし公演日は長岡と海へ行く約束した日。
〜 7月16日 〜
長岡に海に行く約束を断ったタッ君。
〜 7月18日 〜
劇団の公演を見に行った。
そこで石丸の元彼で演出家である男性をみた。
〜 8月8日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それからなかなか都合が合わず、
マユに会いにいけたのは3週間後の土曜日だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
マユの肌は焼けており、指摘したタッ君。
「お前焼けてない?」
成岡は友達と海に行ったと話すが、
タッ君と一緒に海に行くために買った水着は、
まだ着てないと話した。
〜 8月9日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
次の日俺は運転の疲れから、
かかなり寝坊してしまった。
海に向かうも大渋滞で、行くことを諦めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その車の中で成岡は言う。
「ずっと言おうと思ってたんだけど、
ここしばらくアレが来てないの・・・」
驚いたタッ君の顔を見て続ける。
「心配かけてもあれだから、
でもいつまでたっても来ないから。」
タッ君は答えた。
「もし子供できてたら、するか?結婚。」
その言葉を聞いて長岡は言う。
「妊娠したから結婚するって・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺は根拠も無く大丈夫と
声をかけるしか出来なかった。
それから俺とマユは
電話で連絡を取り合うだけとなっていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 8月10日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
世間は夏休みに突入していたが、
俺のいた商品開発部にそれは関係なかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
昼休みに石丸はタッ君に聞いた。
「鈴木君、海道君に番号教えた?」
タッ君は返した。
「いや。教えてないけど。後輩の子達は?」
石丸は言った。
「あの子達はそんな事しないだろうし。」
「実はあの時・・・
海道って言う人が苦手だから助けてねって
言っておいたから。」
「ちなみに私は鈴木って言う人が好きだから
ちょっかい出ださないでねって。」
タッ君は驚き聞き返す。
「えっ?今の何?何か・・・告白した?」
石丸は答えた。
「した。」
「サラっと言わないと言えないと思ったんだもん。」
それに対して返事をするタッ君。
「ごめん。」
「俺今君と付き合いたいと思ってないんだ。」
その返事を知ってたかのように平然と言う石丸。
「分かった。大丈夫。謝らないでいいって。」
「これからも普通に接してね。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
石丸さんはアレから
何事も無かったように普通に働いていた。
昼食を一緒にとる機会もあったけど、
別に普通通りに雑談するだけで
恋愛話が再現することは無かった。
マユの家にも言ったけど、
金の事も気になってきたから、
高速道路は使わないようにした。
マユからそのあと変化があったとか、
そういう話はなくて、俺も聞きづらくて、
なんだか気まずい時間が流れるだけだった。
俺は帰り道石丸さんのことを考えてしまっていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
東京に帰り街道と梵ちゃんと酒を飲んだタッ君。
タッ君は海道に問いただした。
部屋に勝手に入って名簿を見たと話す街道。
タッ君は怒った。
「石丸さんはお前の子と嫌ってるぞ。」
「迷惑だって。」
〜 8月23日 〜
タッ君は成岡を連れて産婦人科に来ていた。
診察から戻った成岡に聞いた。
「どうだった?」
成岡は答えた。
「3ヶ月だって・・・」
「どうしよう?」
それには答えずに家に帰った2人。
家に帰ると成岡の部屋には本が沢山あった。
それを見て怒鳴るタッ君。
「俺がおまえと会うために、
どれだけ切り詰めているか分かっているか?」
「高速も使わずに
5、6時間かけて運転してきているのに、
こんな高い本買いやがって。」
「じゃあ俺もう帰るわ。」
お腹の子の話は一切せずに、
怒って帰ろうとするタッ君に成岡は言う。
「私はどうしたらいいの?」
しかし無視して成岡の家を出るタッ君。
タッ君は帰り道に公衆電話から成岡に電話した。
「逃げてごめん。」
「もう逃げないから。」
「決めた。おろそう。」
成岡は電話越しに泣き続けていた。
〜 8月30日 〜
成岡は子供をおろした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺とマユはその日から同じ罪を背負うことになった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 9月4日 〜
その日タッ君は石丸と夕食を食べていた。
石丸は言う。
「橋本さんといい海道くんといい、
何で興味のない人には好かれるのかな〜」
「肝心な人からは、
まったく電話はかかってこないのに。」
「さっき私のこと、
男ならほおって置かないって言ってたけど、
鈴木君はどうなの?鈴木君だって男でしょ?」
「私のこと放って置けないわけ?」
その質問にタッ君は答えた。
「放って置けないけど、状況にもよるって言うか?」
石丸は間髪いれずに言う。
「彼女がいるからだ?」
「どんな子なの?」
その質問にタッ君は答えた。
「普通の子。石丸さんに比べて子供だし・・・」
「石丸さんのほうが美人だよ。」
「もし俺と君が付き合ったとして、
そんなに簡単に乗り帰るなんて
石丸さんも嫌だろ?」
そんなタッ君の正等な答えに石丸は言う。
「分かってるよ。」
「鈴木君がいい加減な人じゃないって事。」
「でも自分がいい加減になりたくないからって
その子と付き合っているんだとしたら、
その子がかわいそうだと思うけどね。」
「私前の彼氏に言われたんだ。」
「お前にとって俺は
イニシエーションだったんだって。」
「通過儀礼ってこと。」
「子供から大人になるための儀式なんだって。」
「初めての恋愛なんてそんなもんなんだって。」
「その時はこの人しかいない絶対って思っても、
絶対なんてないって分かるときが来る。」
「それが分かって、
初めて大人になるっていうかな?」
「それを分からせてくれる恋愛。」
「イニシエージョンラブってとこね。」
「鈴木君とその子の恋愛が
イニシエーションラブなら、
私にもまだチャンスはあるかな?
なんて思っちゃったりして。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺はこのとき彼女の言葉に
何かがスーっと抜けるような感じがした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夕食の帰り道、ラブホテルの前で足を止めた石丸。
「明日休みだからいいでしょ?」
「女に恥欠かせないでよ。行くよ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
これをきっかけに
美弥子と俺は関係を持つようになった。
マユと会うのもいつしか隔週に変わり
東京で過ごす週末は美弥子と会うようになっていた。
美弥子は遊びの関係でいいって言っていたけど、
いつしか俺はどっちが本命かよく分からなくなっていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 10月31日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんな綱渡りな日々を重ねていた10月末、
突然この生活に終わりが来た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
成岡と会っていたタッ君。
つい成岡を呼ぶときに間違えた。
「おい美弥子?」
成岡は突然の言葉に聞き返した。
「タッ君。それ誰?」
「嘘でしょ?違うよね?」
自分の失敗に逆切れを始めたタッ君。
「お前は一度も来ないじゃないかよ。」
「こっちは時間をかけて何度も何度も・・・」
「俺が悪いって言うのかよ?」
そう言って成岡に手を上げようとし、
とどめたタッ君は、
「2ヶ月前のあの日。」
「終わってたんだよ。俺たち・・・」
そう言って成岡の家を出た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1年半も続いた恋愛の、
あっけなく最悪な幕切れだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 11月4日 〜
成岡からルビーの指輪が送り返されてきた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それから俺と美弥子は正式に付き合うことになり、
マユの記憶は日を追うことに薄れていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 11月5日 〜
美弥子からクリスマスを両親と過ごそうと言われ、
成岡と行くはずだった静岡のホテルをキャンセルした。
〜 12月18日 〜
美弥子に電話したはずのタッ君。
しかし間違って長岡に電話が繋がっていた。
電話に出た成岡に対して言葉が出ないタッ君。
成岡は気がついたように言った。
「もしもし・・・タックン?」
タッ君は焦って受話器を置いた。
〜 12月24日 〜
美弥子の家で両親とご飯を食べたタッ君。
その後美弥子の部屋に行きタッ君は聞く。
「なあミヤコ?俺たち結婚するのかな?」
石丸は答えた。
「どうだろうね?」
「そんな先のこと、
誰にも分からないんじゃないかな?」
その時タッ君は成岡との時間を思い返していた。
そして石丸に言った。
「別れた彼女にこの前間違えて電話しちゃって。」
「そしたらあいつタッ君って・・・」
「さも当然のように。」
「かなり久々に連絡したのに。」
「俺からの電話待っているような感じでさ。」
「俺あのとき、
勝手にあいつん家、出てきちゃったから。」
「ひょっとしたら別れたとか、
分かってないのかもしれないと思って。」
「何も知らなかったら、
ホテルキャンセルしたこともしらないから、
ひょっとしたら・・・
ホテルで待っているんじゃないかと思って。」
そう言うとタッ君は家を飛び出し静岡に向かった。
〜 過去の回想 〜
1986年
・4月25日
成岡はコンパでタッ君と出会う。
・8月2日
成岡とタッ君の初めての海デート
1987年
・2月4日
成岡はエアジョーダンをプレゼントし、
自分の誕生日と誕生石を教えた。
・4月1日
タッ君の入社。
・6月19日
東京への転勤を伝えられる。
・7月2日
タッ君は長岡にルビーの指輪をプレゼントする。
・7月10日
成岡はコンパで鈴木と出会う。
・8月2日
成岡と鈴木は友人たちと海へ出かけた。
・8月8日
タッ君が長岡に会いに来て、
焼けた肌を指摘する。
・8月9日
鈴木は初めて長岡に電話した。
・8月14日
成岡と鈴木の初デート。
「タックン」とニックネームをつける。
・8月21日
成岡と鈴木は、お互いに好きな本を交換した。
・8月23日
妊娠が発覚して家に帰ると大量の本があり、
タッ君は怒って帰る。
・8月26日
鈴木と毎週会うはずの金曜日。
体調不良で成岡はキャンセルの連絡をする。
・8月30日
成岡はタッ君と共に子供を下ろす。
・9月4日
成岡は鈴木とデート
体調不良を便秘が原因と伝えた。
・9月15日
鈴木は成岡に部屋に呼ばれる
・10月31日
タッ君は成岡と別れた
・11月4日
成岡はタッ君に指輪を送り返した。
・11月14日
タッ君は静岡のホテルをキャンセルする。
鈴木は静岡のホテルに予約を入れる。
・12月18日
タッ君は間違えて成岡に電話する。
・12月24日
成岡は鈴木とホテルにいた。
タッ君は急遽静岡に向かった。
そしてホテルの前でぶつかった鈴木とタッ君。
タッ君は成岡を見て言う。
「マユ。」
倒れた男性に手を差し伸べた成岡は驚いた。
「タックン?」
(終わり)
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・「携帯・スマホゲーム」DORAKENを実際に攻略して・・・
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【イニエーションラブ】
【出演者】
鈴木:松田翔太・森田甘路
成岡繭子(マユ):前田敦子
石丸美弥子:木村文乃
海藤(同僚):三浦貴大
梵ちゃん(同僚):前野朋哉
和美(成岡の友人):八重垣琴美
桑島課長:山西惇
静岡支店部長:木梨憲武
石丸詩穂(美弥子の母):手塚理美
石丸広輝(美弥子の父):片岡鶴太郎
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【感想】
裏切られたといえば裏切られました。
皆さんは気がつくかな〜
確かにここで書くと分かってしまうので、
感想ではネタバレにかかわる事は書きません。
知りたい方は「あらすじ」読んでください。
でも・・・
僕は何となく気がつきましたよ。
少なくても最初から違和感ありました。
でもここまで作るとは〜
ある意味感心しました。
しっかり作られた映画ですね〜
くりぃむしちゅーの有田哲平が、
最高傑作のミステリーと言っただけの事はある。
ストーリーだけとるとあまり面白いとは・・・
しかし最後まで見ると!!!
そんな映画なんです。一度見てください。
そして皆さんはどこで気がつきますか?
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜 1987年7月10日静岡市 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あの日かかってきた電話に、
僕は感謝しなければならない。
あの電話のおかげで僕は、
彼女と出会うことが出来たのだから。
それは人数あわせで誘われて、
たまたま行ったコンパだった。
僕みたいにデブで朴訥とした顔をした人間が、
コンパに誘われるなんて、
よっぽど誘う人がいなかったに違いない。
これが彼女のまなざしを受けた最初の瞬間だった。
それ以来僕は彼女の眼差しが忘れられなくなっていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
成岡繭子と初めてあったコンパ。
成岡は歯科助手。
鈴木は理学部数学課の学生。
富士通に内定が決まっていた。
成岡は薬指にルビーの指輪をしており、
彼氏から貰ったのか?と友人は聞いた。
しかし成岡は答えた。
「先週誕生日だったから自分で買ったんです。」
〜 8月2日 〜
以前のコンパメンバーで海に誘われた鈴木。
もちろん鈴木の目はずっと成岡を見ていた。
そんな鈴木に成岡は声をかけた。
「タバコ一本いただけますか?」
「友達の前でも吸わないし、
今日も吸わないつもりだったんですけど。」
「やっぱりタバコ吸う女って嫌いですか?」
そう言ってタバコを吸った成岡は、
「やっぱりこれきつい。」
「カプリっていうやつ吸ってるんですけど、
これの半分くらいの細さだから、
いつもの倍煙吸っているって事か?」
それに対して理学部数学課の鈴木は、
「いや。」
「断面積は1/4になるから、
4倍の煙吸っているって事になるんじゃない?」
すごい。と褒めた成岡は聞いた。
「じゃあ数字を覚えるのも得意ですか?」
そう言って紙に数字を書き鈴木に見せた。
「覚えられましたか?」
「それ忘れないで下さい。」
「家の電話番号ですから。」
〜 8月9日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
何度も電話しようと試みるが挫折する毎日。
僕なんか電話したとこで何かがある訳じゃないんだ。
何を期待しているんだ僕は。
勇気を出せ。鈴木夕樹。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そしてやっと電話した鈴木に成岡は言う。
「ずっと待ってたんですよ。」
「もう諦めてました。」
「実は鈴木さんに食事に誘ってもらいたくて。」
驚き鈴木は答えた。
「僕なんかじゃ。」
「女の人と付き合ったこともないし・・・」
成岡は言った。
「真面目で不器用だけど、
嘘なんてつけないような人がいいなって・・・
前から思ってた。」
それを聞いて鈴木は言う。
「僕と食事していただけませんか?」
〜 8月14日 〜
スーツを着て行った鈴木。
おしゃれなバーで小説の話をして盛り上がった。
帰り際に鈴木に聞く成岡。
「そういえば免許なんて、持ってないですか?」
「車があれば・・・」
聞き取れず聞き返す鈴木に成岡は言う。
「次は来週の金曜日でいいですか?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こうして僕にとって金曜日が特別なものになっていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
おしゃれをしてメガネからコンタクトにした。
そして美容室に行って髪型も変えた。
〜 8月21日 〜
成岡は鈴木の容姿を見て言った。
「一週間で凄い変わりましたね。」
「そのほうがいいと思う。」
「私は好き。」
そしてお互いの好きな小説を貸し合う2人。
鈴木は成岡に言う。
「そういえば報告があって。」
「教習所に通い始めたんだ。」
そんな鈴木の行動に喜ぶ成岡。
成岡は鈴木を夕樹の夕から「タックン」。
鈴木は長岡を「マユちゃん」と呼んだ。
〜 9月15日 〜
みんなでテニスに行くことになった。
鈴木と成岡はペアではなかった・・・
成岡は北原とペアで楽しそうであった。
一方鈴木に付きまとう和美。
落ち込み家に帰った鈴木。
すると電話が鳴りった。相手は成岡だった。
「タックン今日不機嫌じゃなかった?」
「タックンは、和美のこと好きなの?」
それを聞いた鈴木は逆に質問した。
「マユちゃんも北原の事どう思ってるの?」
成岡は言った。
「もしかして・・・
お互い意味の無い嫉妬心燃やしてたのかな?」
「嫉妬するって事は大丈夫だよね?」
「それだけ好きだって事の現われだと思うし。」
それを聞いて自分の嫉妬だった事が分かった鈴木。
「マユちゃん。僕はあなたのことが好きです。」
「愛しています。」
それに対して成岡も言う。
「ありがとう。タックン。私もタックンが好きです。」
電話を切り鈴木は成岡の家に向かった。
そして成岡の顔を見て再度言った。
「マユちゃんのことが好きです。」
そして成岡を押し倒した鈴木。
成岡は言う。
「私もタックンのことが好きです。」
「初めての相手がタックンでよかった。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こうして僕たちは正式に恋人同士になった。
今までのうだつの上がらない人生の
帳尻をあわせるかのように、
僕の人生は急速に方向転換を始めた。
僕はまるでドラマの主人公になったような気持ちで、
毎日毎日マユちゃんのことを
考えられる幸せを感じていた。
変わったことといえば10月から始まった
「男女七人秋物語」が金曜日に放送されるため、
会うのが木曜日に変わったくらい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 10月14日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月日が流れ無事に免許を取得。
僕は中古車を買った。
今まで経験したことの無い時間に、
僕は何でもできるような気がしていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
クリスマスの計画を鈴木に話す成岡。
ホテルでの食事を希望するが、
満室でホテルがとれない・・・
と思っていたがタイミングよく先客から
キャンセルが入って予約が出来た。
〜 12月24日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして初めて女の子と過ごす、
クリスマスイヴがやって来た。
半年前まではまさか僕が女の子と一緒に、
こんなお洒落な場所にいるなんて
想像もしていなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ホテルでのディナーを食べた2人。
成岡がしていたルビーの指輪はなく、
なくしてしまったと話す成岡。
来年のプレゼントはルビーの指輪を買う約束をし、
今年のプレゼントはネックレスをあげた鈴木。
一方成岡のプレゼントはバスケットシューズ。
「私男の子にプレゼントしたことが無いから、
何を買ったらいいのかわからなくて。」
鈴木は幸せな時間を過ごし、成岡に言う。
「来年も再来年も、
ずっとこんなクリスマスが過ごせたらいいね。」
ディナーの帰り道、
鈴木と成岡を見て通りかかったカップルは、
釣り合ってないと話していた。
それが聞こえて鈴木は成岡に言う。
「マユちゃんに恥じかかせちゃって・・・」
成岡は答えた。
「今でもかっこいいよ。」
「少しぽっちゃりしてるけど。」
「やせたら凄くハンサムかもね?」
応えるように鈴木は言う。
「僕マユちゃんのために痩せるよ。」
「マユちゃんのために、
もっとかっこいい男にならなきゃ。」
「これは僕の決意表明だから。」
「マユちゃんを幸せにするための・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この子と廻り合ったことで僕の人生は180度変わった。
そう、まるでカセットテープが、
A面からB面に変わったかように、
僕の新たな人生が始まったんだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 6月19日 〜
成岡から貰ったバスケットシューズを履いて、
一生懸命ランニングをする鈴木。
鈴木の体系も変わっていた。
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【SIDE−B】
仕事の評価が認められて、
静岡から東京への転勤を命じられたタッ君。
その話を成岡にすると、
「ようするにタッ君が認められたってことだよね?」
寂しがる成岡にタッ君は言う。
「静岡くらいなら直ぐに飛んでこれるよ。」
成岡はそれに答えた。
「ありがとう。でもそんなワガママ言わない。」
「都会の絵の具に染まらないで帰ってね。」
〜 7月1日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺はマユを置いて東京へと向かった。
このときは俺はマユのためなら、
何でもできると思ってた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
明日は成岡の誕生日。
タッ君は成岡に電話して静岡に帰る約束をした。
電話を切ると同僚の海道が部屋へ遊びに来て、
タッ君の昔の写真を見て言う。
「これ高校時代のスーさん?」
「スマートだね〜」
〜 7月2日 〜
同僚と銀座に行った鈴木。
「俺時間無いから別行動するわ。」
そう言って銀座でルビーの指輪を買って、
成岡のいる静岡に向ったタッ君。
長岡に指輪を渡して言った。
「俺はいつもマユのこと思っているよって言う
気持ちがそこにはこもっているから。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俗に言う遠距離恋愛と言うものになってしまったけれど
俺とマユの間に東京と静岡の距離なんて関係ない。
俺が車を飛ばせば済むことだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜 7月6日 〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
なれない東京での仕事は確かに辛い。
だけど仕事と恋愛を両立させる。
俺がしっかりすればいいだけのことだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
会社に行くと、
「あっ鈴木さんですか?」
と声をかけたのは石丸。
「私も新入社員なんですよ。」
「同じ新入社員同士頑張りましょう。」
とても綺麗な女性だった。
〜 7月10日 〜
会社の飲み会。
パワハラ・セクハラ・アルハラ当たり前の桑島課長。
石丸に絡んだでいる桑島をみて、助けるタッ君。
〜 7月11日 〜
静岡に帰ったタッ君は長岡に言う。
「早く静岡帰って来たい。」
「帰ってマユと一緒に暮らしたい。」
〜 7月13日 〜
パソコンを使えない石丸。
タッ君は助けてデータ入力を手伝った。
「ありがとう。鈴木君のおかげで助かったよ。」
「良かったら、軽くご飯行きません?」
こうしてご飯を食べに行った2人。
家に帰るとすぐに成岡に電話した。
「ごめん。残業だったんだ。」
成岡は言う。
「新しい水着買ったんだ〜。ハイレグ。」
「だから今度海行こうよ。」
こうして海に行く約束をしたタッ君。
〜 7月14日 〜
石丸が大学に所属していた劇団サークル。
その劇団の公演に誘われたタッ君。
同期の海道と梵ちゃんも行くとのことで、
断る事できずに行くことにしたタッ君。
しかし公演日は長岡と海へ行く約束した日。
〜 7月16日 〜
長岡に海に行く約束を断ったタッ君。
〜 7月18日 〜
劇団の公演を見に行った。
そこで石丸の元彼で演出家である男性をみた。
〜 8月8日 〜
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それからなかなか都合が合わず、
マユに会いにいけたのは3週間後の土曜日だった。
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マユの肌は焼けており、指摘したタッ君。
「お前焼けてない?」
成岡は友達と海に行ったと話すが、
タッ君と一緒に海に行くために買った水着は、
まだ着てないと話した。
〜 8月9日 〜
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次の日俺は運転の疲れから、
かかなり寝坊してしまった。
海に向かうも大渋滞で、行くことを諦めた。
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その車の中で成岡は言う。
「ずっと言おうと思ってたんだけど、
ここしばらくアレが来てないの・・・」
驚いたタッ君の顔を見て続ける。
「心配かけてもあれだから、
でもいつまでたっても来ないから。」
タッ君は答えた。
「もし子供できてたら、するか?結婚。」
その言葉を聞いて長岡は言う。
「妊娠したから結婚するって・・・」
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俺は根拠も無く大丈夫と
声をかけるしか出来なかった。
それから俺とマユは
電話で連絡を取り合うだけとなっていた。
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〜 8月10日 〜
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世間は夏休みに突入していたが、
俺のいた商品開発部にそれは関係なかった。
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昼休みに石丸はタッ君に聞いた。
「鈴木君、海道君に番号教えた?」
タッ君は返した。
「いや。教えてないけど。後輩の子達は?」
石丸は言った。
「あの子達はそんな事しないだろうし。」
「実はあの時・・・
海道って言う人が苦手だから助けてねって
言っておいたから。」
「ちなみに私は鈴木って言う人が好きだから
ちょっかい出ださないでねって。」
タッ君は驚き聞き返す。
「えっ?今の何?何か・・・告白した?」
石丸は答えた。
「した。」
「サラっと言わないと言えないと思ったんだもん。」
それに対して返事をするタッ君。
「ごめん。」
「俺今君と付き合いたいと思ってないんだ。」
その返事を知ってたかのように平然と言う石丸。
「分かった。大丈夫。謝らないでいいって。」
「これからも普通に接してね。」
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石丸さんはアレから
何事も無かったように普通に働いていた。
昼食を一緒にとる機会もあったけど、
別に普通通りに雑談するだけで
恋愛話が再現することは無かった。
マユの家にも言ったけど、
金の事も気になってきたから、
高速道路は使わないようにした。
マユからそのあと変化があったとか、
そういう話はなくて、俺も聞きづらくて、
なんだか気まずい時間が流れるだけだった。
俺は帰り道石丸さんのことを考えてしまっていた。
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東京に帰り街道と梵ちゃんと酒を飲んだタッ君。
タッ君は海道に問いただした。
部屋に勝手に入って名簿を見たと話す街道。
タッ君は怒った。
「石丸さんはお前の子と嫌ってるぞ。」
「迷惑だって。」
〜 8月23日 〜
タッ君は成岡を連れて産婦人科に来ていた。
診察から戻った成岡に聞いた。
「どうだった?」
成岡は答えた。
「3ヶ月だって・・・」
「どうしよう?」
それには答えずに家に帰った2人。
家に帰ると成岡の部屋には本が沢山あった。
それを見て怒鳴るタッ君。
「俺がおまえと会うために、
どれだけ切り詰めているか分かっているか?」
「高速も使わずに
5、6時間かけて運転してきているのに、
こんな高い本買いやがって。」
「じゃあ俺もう帰るわ。」
お腹の子の話は一切せずに、
怒って帰ろうとするタッ君に成岡は言う。
「私はどうしたらいいの?」
しかし無視して成岡の家を出るタッ君。
タッ君は帰り道に公衆電話から成岡に電話した。
「逃げてごめん。」
「もう逃げないから。」
「決めた。おろそう。」
成岡は電話越しに泣き続けていた。
〜 8月30日 〜
成岡は子供をおろした。
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俺とマユはその日から同じ罪を背負うことになった。
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〜 9月4日 〜
その日タッ君は石丸と夕食を食べていた。
石丸は言う。
「橋本さんといい海道くんといい、
何で興味のない人には好かれるのかな〜」
「肝心な人からは、
まったく電話はかかってこないのに。」
「さっき私のこと、
男ならほおって置かないって言ってたけど、
鈴木君はどうなの?鈴木君だって男でしょ?」
「私のこと放って置けないわけ?」
その質問にタッ君は答えた。
「放って置けないけど、状況にもよるって言うか?」
石丸は間髪いれずに言う。
「彼女がいるからだ?」
「どんな子なの?」
その質問にタッ君は答えた。
「普通の子。石丸さんに比べて子供だし・・・」
「石丸さんのほうが美人だよ。」
「もし俺と君が付き合ったとして、
そんなに簡単に乗り帰るなんて
石丸さんも嫌だろ?」
そんなタッ君の正等な答えに石丸は言う。
「分かってるよ。」
「鈴木君がいい加減な人じゃないって事。」
「でも自分がいい加減になりたくないからって
その子と付き合っているんだとしたら、
その子がかわいそうだと思うけどね。」
「私前の彼氏に言われたんだ。」
「お前にとって俺は
イニシエーションだったんだって。」
「通過儀礼ってこと。」
「子供から大人になるための儀式なんだって。」
「初めての恋愛なんてそんなもんなんだって。」
「その時はこの人しかいない絶対って思っても、
絶対なんてないって分かるときが来る。」
「それが分かって、
初めて大人になるっていうかな?」
「それを分からせてくれる恋愛。」
「イニシエージョンラブってとこね。」
「鈴木君とその子の恋愛が
イニシエーションラブなら、
私にもまだチャンスはあるかな?
なんて思っちゃったりして。」
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俺はこのとき彼女の言葉に
何かがスーっと抜けるような感じがした。
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夕食の帰り道、ラブホテルの前で足を止めた石丸。
「明日休みだからいいでしょ?」
「女に恥欠かせないでよ。行くよ。」
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これをきっかけに
美弥子と俺は関係を持つようになった。
マユと会うのもいつしか隔週に変わり
東京で過ごす週末は美弥子と会うようになっていた。
美弥子は遊びの関係でいいって言っていたけど、
いつしか俺はどっちが本命かよく分からなくなっていた。
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〜 10月31日 〜
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そんな綱渡りな日々を重ねていた10月末、
突然この生活に終わりが来た。
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成岡と会っていたタッ君。
つい成岡を呼ぶときに間違えた。
「おい美弥子?」
成岡は突然の言葉に聞き返した。
「タッ君。それ誰?」
「嘘でしょ?違うよね?」
自分の失敗に逆切れを始めたタッ君。
「お前は一度も来ないじゃないかよ。」
「こっちは時間をかけて何度も何度も・・・」
「俺が悪いって言うのかよ?」
そう言って成岡に手を上げようとし、
とどめたタッ君は、
「2ヶ月前のあの日。」
「終わってたんだよ。俺たち・・・」
そう言って成岡の家を出た。
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1年半も続いた恋愛の、
あっけなく最悪な幕切れだった。
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〜 11月4日 〜
成岡からルビーの指輪が送り返されてきた。
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それから俺と美弥子は正式に付き合うことになり、
マユの記憶は日を追うことに薄れていった。
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〜 11月5日 〜
美弥子からクリスマスを両親と過ごそうと言われ、
成岡と行くはずだった静岡のホテルをキャンセルした。
〜 12月18日 〜
美弥子に電話したはずのタッ君。
しかし間違って長岡に電話が繋がっていた。
電話に出た成岡に対して言葉が出ないタッ君。
成岡は気がついたように言った。
「もしもし・・・タックン?」
タッ君は焦って受話器を置いた。
〜 12月24日 〜
美弥子の家で両親とご飯を食べたタッ君。
その後美弥子の部屋に行きタッ君は聞く。
「なあミヤコ?俺たち結婚するのかな?」
石丸は答えた。
「どうだろうね?」
「そんな先のこと、
誰にも分からないんじゃないかな?」
その時タッ君は成岡との時間を思い返していた。
そして石丸に言った。
「別れた彼女にこの前間違えて電話しちゃって。」
「そしたらあいつタッ君って・・・」
「さも当然のように。」
「かなり久々に連絡したのに。」
「俺からの電話待っているような感じでさ。」
「俺あのとき、
勝手にあいつん家、出てきちゃったから。」
「ひょっとしたら別れたとか、
分かってないのかもしれないと思って。」
「何も知らなかったら、
ホテルキャンセルしたこともしらないから、
ひょっとしたら・・・
ホテルで待っているんじゃないかと思って。」
そう言うとタッ君は家を飛び出し静岡に向かった。
〜 過去の回想 〜
1986年
・4月25日
成岡はコンパでタッ君と出会う。
・8月2日
成岡とタッ君の初めての海デート
1987年
・2月4日
成岡はエアジョーダンをプレゼントし、
自分の誕生日と誕生石を教えた。
・4月1日
タッ君の入社。
・6月19日
東京への転勤を伝えられる。
・7月2日
タッ君は長岡にルビーの指輪をプレゼントする。
・7月10日
成岡はコンパで鈴木と出会う。
・8月2日
成岡と鈴木は友人たちと海へ出かけた。
・8月8日
タッ君が長岡に会いに来て、
焼けた肌を指摘する。
・8月9日
鈴木は初めて長岡に電話した。
・8月14日
成岡と鈴木の初デート。
「タックン」とニックネームをつける。
・8月21日
成岡と鈴木は、お互いに好きな本を交換した。
・8月23日
妊娠が発覚して家に帰ると大量の本があり、
タッ君は怒って帰る。
・8月26日
鈴木と毎週会うはずの金曜日。
体調不良で成岡はキャンセルの連絡をする。
・8月30日
成岡はタッ君と共に子供を下ろす。
・9月4日
成岡は鈴木とデート
体調不良を便秘が原因と伝えた。
・9月15日
鈴木は成岡に部屋に呼ばれる
・10月31日
タッ君は成岡と別れた
・11月4日
成岡はタッ君に指輪を送り返した。
・11月14日
タッ君は静岡のホテルをキャンセルする。
鈴木は静岡のホテルに予約を入れる。
・12月18日
タッ君は間違えて成岡に電話する。
・12月24日
成岡は鈴木とホテルにいた。
タッ君は急遽静岡に向かった。
そしてホテルの前でぶつかった鈴木とタッ君。
タッ君は成岡を見て言う。
「マユ。」
倒れた男性に手を差し伸べた成岡は驚いた。
「タックン?」
(終わり)
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